“未成年犯罪者×SPY×忍者”をテーマとしたメディアミックスプロジェクト「COLOR CROW」の第1弾となる舞台「COLOR CROW -蒼霧之翼-」が、3月12日（土）に初日を迎える。2.5ジゲン!!ではゲネプロ公演の様子をレポート。本作の見どころや魅力を劇中ショットとともに紹介する。
COLOR CROWとして生きる男たちの“始まりの物語”
暗闇に潜むワケあり少年たちのバディアクション劇が東京・シアターサンモールで産声をあげた。新プロジェクトとして始動した「COLOR CROW」の第1弾となる本作は、「絆」「バディ」「復讐」「国家機密機関」といったキーワードにピンとくるアクション好きにぜひ観てもらいたい作品だ。
作品タイトルにもなっている「COLOR CROW」とは、公安組織“トクボウ”こと国家特別防衛課に属する、主に裏の仕事を担う精鋭たちの呼称だ。AIが選別したワケあり青年の中から、さらに狭き門をクリアした者だけがCOLOR CROWとなれる。
物語は、COLOR CROWとしての初任務の時を待ちわびる阿佐美煉（演：高本学）、乃木杏莉（演：設楽銀河）、羅生聖護（演：日向野祥）の気合いあふれるアクションシーンから動き出す。「アクションで魅せる」と宣言するようなド迫力のオープニングに期待は高まるばかりだ。
そんな彼らについに豪華客船でのテロ計画の阻止という初任務の命が下る。2人1組での任務遂行がCOLOR CROWの掟。煉と杏莉がバディとして任務の舞台となる客船へと潜入する。教官の神楽瑠唯（演：湯浅雅恭）、司令官の椿泰親（演：内田裕也）とともに本部に残ることになった聖護は不満げな表情を浮かべるが……。
一方で船内には、ナイフを隠し持つ謎の青年・蒼田三月（演：阿部快征）も乗っていた。さらに船には、かつて椿と袂を分かった「Dolce」代表の大迫由紀夫（演：村上幸平）やその部下・福丸環（演：杉江優篤）、さらにクロウたちと因縁のある「白夜会」の影もちらついていて――。
熱量の高いアクションとともに、COLOR CROWとして生きる道しか残されていないワケありな青年たちの第一歩がときに重く、ときに軽快に描かれていった。
印象的だったのは、COLOR CROWたちが痛みを伴いながら任務を遂行していた姿だ。彼らはこの物語の主人公であるが、いわゆる漫画の主人公のようなヒーローではない。敵に痛めつけられ、血を吐き、地べたに這いつくばりながらも、執念に似た想いを胸に立ち上がり生きようとする。血のかわりに滴り落ちる無数の汗が、その戦いの過酷さ、そしてCOLOR CROWとして生きることの決意を物語っているようだった。
クロウはワケありな少年たちから選ばれるのだが、その“ワケ”がそれぞれヘビーなのも本作の見どころだろう。大人であっても耐えられないであろう過去を背負い、彼らはCOLOR CROWとして出会う。思い出として割り切るには重すぎるそれぞれの凄惨な過去が、今後どんな形で彼らの前に立ち表れるのか。この“始まりの物語”で提示された過去が、これから“未来の物語”にどうつながっていくのか、それを追うことができるのもシリーズものの醍醐味だ。2022年秋には劇場版の公開も予定されているが、やはりまずはこの1作目を見届けてほしい。
序盤でも述べたように、バディというのも重要なキーワードだ。本作では煉と杏莉がバディを組んだ。熱血漢で情に厚い煉と、おとなしくて計画性のある杏莉。互いに無いものを補い合う2人が、背中を預けあって戦うシーンはバディものならでは。共闘シーンが登場する度、思わず熱くなってしまった。
以前実施したインタビューで原作を手掛ける中原裕也は、今後バディの組み合わせが変わることも十分あり得ると語っていた。煉と杏莉と聖護、さらに三月を加えた4人が、今後どんな関係値を築いていくのかも楽しみだ。
熱さを内に秘めた高本学は、感情豊かで面倒見の良い煉を賑やかに演じた。不可能を可能にしてくれそうな、見ていてワクワクさせられる人物に仕上がっており、まさに主演にふさわしい存在感を放っていたのが印象的だ。
普段は臆病だが、ふとした瞬間にスイッチが切り替わり強さを発揮する杏莉を設楽銀河が好演。COLOR CROWの中では歳上組に入る杏莉を、不意に大人の表情を覗かせながら演じていた。
寺で育った聖護はクロウ随一と言われる格闘センスの持ち主。体術で魅せるシーンも多く、日向野祥のアクションが冴え渡る。彼のアクションが好きなファンはたまらない時間となるだろう。
そしてある目的で船に乗り込んでいた、クロウではないワケありの少年・三月を阿部快征が繊細に表現。大きな瞳から溢れる感情をお見逃しなく。華奢でいて誰よりも図太そうな性格をしているのも三月の魅力だろう。距離感を一気に詰めてくる煉への“塩対応”は必見だ。
「クロウは現代の忍」という設定を最大限に活かしているのが、忍術を取り入れたアクションシーンだ。中でも教官でありCOLOR CROWの教育係でもある神楽の動きは別格。演じる湯浅はジャパンアクションエンタープライズに所属していた経歴を持つとあって、華麗な身のこなしで忍のエッセンスを作品に加えていた。
そんな個性豊かな部下たちをまとめている椿司令官を演じるのは、中原裕也名義で本プロジェクトの原作を担当している内田裕也。まだ謎に包まれた部分が多く、腹の底が読めない不気味さを漂わせていた。
ほかにも人体兵器の研究組織「Dolce」を率いる大迫役の村上幸平、その部下・福丸役の杉江優篤がアクの強い芝居で作品にダークな味わいをプラス。彼らはテロを首謀する組織とあってCOLOR CROWにとっては敵なのだが、どこか憎めないチャーミングな言動にも注目してみてほしい。
かつて絆を失った少年たちが集い戦い、再び絆を手にしていく姿を描く「COLOR CROW」シリーズがついに始動。人と交流する機会が減っているこのご時世だからこそ、傷を負いながらも心でつながっていく彼らの物語は、観る者の胸に迫るものがあるのではないだろうか。オリジナル作品とあって、COLOR CROWの行き着く先はどこなのか、その結末をまだ誰も知らない。舞台「COLOR CROW -蒼霧之翼-」から始まる、彼らの成長の軌跡をぜひ見守ってほしい。
舞台「COLOR CROW -蒼霧之翼-」は3月12日（土）～21日（月・祝）、シアターサンモールにて上演される。
取材・文・撮影：双海しお
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