『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Track to Miracle- が2022年2月19日(土)、日本青年館ホールにて開幕した。
原作メインストーリーに沿った舞台としては、実に4年ぶりとなる今作。脚本・演出にほさかようを新たに迎え、シリーズ名も『オン・ステージ』から『THE STAGE』へとリニューアル。物語は夢ノ咲学院を飛び出し、強力なライバルが待ち受ける未知の領域へと広がっていく。
新章への力強い一歩を踏み出した今作について、19日に行われた初日公演の様子をお届けする。
※この記事にはストーリーや演出上の見どころ(ネタバレ)が含まれるため、まっさらな気持ちで作品を楽しみたいという方はぜひ観劇後に読み進めていただければと思う。
2つのライブを通して描く「キセキ」の道すじ
「Track to Miracle」(=奇跡への軌跡)と銘打たれた今作では、原作の大人気ゲームアプリ『あんさんぶるスターズ!』における2つのストーリー、「輝石☆前哨戦のサマーライブ」「軌跡★電撃戦のオータムライブ」が描かれる。
これらは「キセキシリーズ」と呼ばれる三部作の1〜2作目にあたり、物語が夢ノ咲学院の外へと新たな広がりを見せ、ダイナミックに展開していくエピソードだ。
夢ノ咲学院の頂点を競うドリフェス【DDD】に優勝した『Trickstar』は、年末の一大イベント『SS』を前に、校外のアイドルと競演する「サマーライブ」「オータムライブ」の2つのライブに挑むこととなる。
彼らの前に立ちはだかるのは、同世代トップと言われるアイドルユニット『Eden』。彼らは『Trickstar』と同じく4人組であるものの、『Eve』『Adam』という各2人組のユニットとしても活動している。
一幕で『Trickstar』が対峙するのは、玲明学園に通う『Eve』の2人だ。『Eve』との合同レッスンで格上のパフォーマンスを見せつけられ、刺激を受けた『Trickstar』は各自スキルを磨くべく特訓を開始する。
個々のレベルアップは順調に進んでいるように思えた。だが、『Trickstar』のメンバー・遊木 真は、事態の流れに妙な違和感を感じとる。そして迎えたサマーライブ当日、違和感の正体がついに明らかになる――。
続いて二幕では、秀越学園の『Adam』が登場。彼らの学園で開催されるオータムライブに招待された『Trickstar』は、『Adam』のメンバー・七種 茨から思わぬ歓待を受け、戸惑う。一方で単独行動をしていた『Trickstar』・衣更真緒は、学園内でとある人物と出会い、辛辣な言葉を投げかけられる。
アイドルとしての根幹を揺るがされ、自信を失い仲間たちから距離を置く真緒。謀略と駆け引きが交錯するオータムライブ、はたしてその結末は?
一幕、二幕ともに濃密なストーリーだが、整理された構成でスッキリと内容が伝わってくる。爽やかな疾走感にあふれるテンポで、原作ファンはもちろん、ストーリーを知らない人も肩の力を抜いて楽しめるはずだ。
ユニット毎の空気感、新たな展開に要注目
『Trickstar』、『Eve』、『Adam』…と、今作にはいくつものユニットが登場する。それぞれに異なる個性と魅力を少しご紹介していきたい。
『Trickstar』は今回初めて、学院の外のアイドルたちと本格的に対峙する。各々が自身の成長課題や方向性、そして胸の奥に秘めた思いと向き合うことになる。
特に、衣更真緒(演:谷水 力)にはかつてない試練が待っている。ずっと見ないふりをしていた、自分の弱点。認めたとたん、築き上げてきた自信が砕けてしまうかもしれない。そんな弱点に、真緒はついに向き合うこととなるのだ。
いつも明るく頼りがいのある真緒。彼が立ち上がれないほどの衝撃を受ける姿は、痛ましく胸に迫る。普段の真緒とのギャップ、隠そうとしてもにじむ本音。そして恐怖と不安の壁を超え、「踏み出せなかった一歩」を「過去」に変えたときの、ひときわ輝く笑顔。
一つ一つのシーンに熱い説得力があり、谷水の好演が光る。
そんな真緒を支える『Trickstar』は、キャスト陣のコンビネーション、芝居のテンポが抜群に良い。今作が初参加となる明星スバル役・竹中凌平は、天真爛漫ではつらつとしたスバルの輝きを見事に表現。目を離すと風船のようにひょいひょいと飛んでいってしまいそうなスバルの魅力が、実によく伝わってくる。
スバルの自由な浮遊感を、頼れるリーダー・氷鷹北斗(演:山本一慶)と、仲間思いで親しみやすい遊木 真(演:松村泰一郎)が、安定感のある芝居でしっかりとステージにつなぎとめる。キャラクターとしてもキャストとしても、4者4様に役割を果たすバランスの良さは、しっくりとして心地よい。
一方、『Eve』『Adam』のメンバーも独特の空気感を持っている。
『Eve』の巴 日和(演:宮城紘大)と漣 ジュン(演:岸本勇太)は、『Trickstar』と出会いまじわる中で、徐々に変化していく心情を繊細な芝居で表現。このユニットの内側には、ぽんぽんと飛び交う憎まれ口とは裏腹に、互いを認め合い懐に招き入れているような温かな空気が感じられる。
原作からそのまま飛び出てきたかのような華麗なビジュアルも、『Eve』の大きな魅力だ。ライブでは真夏の太陽のようにエネルギッシュなパフォーマンスを披露し、『Trickstar』の面々に、また観客に、トップアイドルの力を見せつける。
『Adam』の2人は、存在感が圧倒的だ。乱 凪砂(演:松田 岳)は、「劇団『ドラマティカ』ACT1/西遊記悠久奇譚」でも好演を見せたが、今回さらに磨きのかかった怪物オーラを放っている。不思議なことに、凪砂がステージに佇むだけで視線がスッと惹きつけられてしまうのだ。あの強大な引力は、観る者にとっていっそ快感ですらある。
そんな凪砂とユニットを組む七種 茨(演:橋本真一)は、今回いわば「見どころしかない」状態だ。本音を見せずにこやかに振る舞うシーンはもちろん、感情を奔出させて挑むライブシーンでは一瞬にして沸点まで駆け上がり、激しさで魅せてくれる。茨らしいギャップをぜひ堪能してほしい。
原作ファンに嬉しい仕掛けも多数
今作には、原作および『あんステ』シリーズのファンにとって嬉しい仕掛けが次々と用意されている。
たとえば、選曲。各ユニットを代表するナンバーはもちろん、一部キャラクターのソロ曲、かつて存在した旧『fine』の楽曲、『Trickstar』と『Eve』、『Adam』の舞台オリジナル曲まで、「ここでこれが聞きたい!」と感じるタイトルが絶妙なタイミングで披露される。ちなみに、『あんステ』シリーズではおなじみの舞台オリジナル曲「Singin’☆Shine!」も健在だ。
またライブシーンでは、原作ファンなら「あっ」と驚く振り付けを大胆に取り入れるなど、嬉しいサプライズも待っている。
座長の山本一慶(氷鷹北斗 役)は、初日カーテンコールにて「無事に初日を開けることができました。本当に皆さんの応援のおかげだと思っています」と挨拶し、「厳しい時期ですが、このメンバーで誰一人欠けることなく、最後まで走りきりたい。どうぞ応援のほどよろしくお願いします」と結んだ。
『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Track to Miracle-は2月19日(土)から27日(日)まで東京・日本青年館ホールで、 3月4日(土)から13日(日)まで兵庫・AiiA 2.5 Theater Kobeで上演。DMM.comにてライブ・ディレイ・アーカイブ配信も予定されているので、ぜひチェックしてみてほしい。
取材・文:豊島オリカ
(C)2021 Happy Elements K.K /あんステ製作委員会
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