「SK∞ エスケーエイト The Stage」が12月2日(木)、が東京・天王洲 銀河劇場で開幕した。
原作は、アニメーション監督・内海紘子が初挑戦したオリジナルアニメ「SK∞ エスケーエイト」(テレビ朝日系)。スケートボードをモチーフに、「S」と呼ばれる危険なレースに挑む少年たちの熱いバトルと友情を描いたストーリーで、2021年7月には新作アニメプロジェクトも発表されている。
2.5ジゲン!!では、初日に先駆け行われたゲネプロの様子をレポート。見どころであるビーフ(決闘)のシーンなどの演出ネタバレには触れないが、劇中写真を多く含む記事のため、初見を大事にしたい人は観劇後に読むなど気をつけてほしい。
今回上演される第一部「The First Part~熱い夜のはじまり~」は、暦とランガの出会いから、2人の愛抱夢への挑戦までが描かれる。
スケートボードが大好きな沖縄の高校生、喜屋武暦(演:木津つばさ)。同級生たちが少し引くほどの勢いでスケートの楽しさを彼らに力説していると、担任に連れられ一人の転校生がやってくる。ぼうっとしたところもある彼の名は馳河ランガ(演:滝澤諒)。カナダから来たという。
ふとしたきっかけでランガがスノーボード経験者だと知った暦は、一緒にスケートボードをやろうと彼を強く誘い、ランガも暦の熱い思いに触発されるようにスケートボードの楽しさに目覚めていく。
スケートボードが大好きでたまらない暦を演じる木津つばさ。少年漫画の王道主人公のような無邪気な明るさと真っ直ぐさがハマり役だ。その体に詰まっているのはスケートボードへの愛。スケートを愛する人はみんな仲間、と言わんばかりに面倒見の良さを発揮し、ランガの世話を焼く。
ゲネプロ前の囲み会見では、「ここまでチーム一丸となって作品作りをしてきました。原作ファンの方が多い中、すごくすごく見ものな舞台になっていると思います」と自信を込め、「年末のこの時期ですが『SK∞ エスケーエイト The Stage』と一緒に過ごしてもらえれば」とファンに呼びかけた。
内に熱さと頑固さを秘める馳河ランガは滝澤諒が演じる。ランガはただのスケートボード初心者ではなく、幼い頃からスノーボードをしている実力者なので、重心の掛け方や動き方はスノーボーダーという難しい身体的表現を見事にクリアしている。
会見では「稽古もあっという間でした。今までに見たことのない作品にしたいなという思いでカンパニーのみんなで力を合わせて頑張ってきました」と稽古期間を振り返り、「暦が作中で『スケボーは無限大なんだ』と言ってくれているように、この作品も無限の可能性を秘めています」と作品への自信を覗かせた。
輝山立演じるMIYA(知念実也)。日本代表候補である孤高の少年の寂しさと同時に小生意気さが表現されていた。MIYAは生意気だが憎めなく、実力者アスリートとして暦にアドバイスを行う。
「S」界のアンチヒーローであるシャドウ(比嘉広海)は、ダーティなヒールとして登場するが、徐々に、面倒事に巻き込まれるお兄さん的な存在に。木内太郎が演じているが、表の顔であるかわいい広海ちゃんとしての演技にも注目だ。
ジョー・南城虎次郎(演:伊万里有)とCherry blossom・桜屋敷薫(演:久保田秀敏)。因縁の存在である2人は、顔を合わせれば互いを罵り合い口げんかを繰り返している。
今作ではまだバックボーンが明かされておらず、先輩スケートボーダーとして暦とランガを見守る存在であったが、第二部では2人の大きな活躍に期待が募る。
「S」の創設者であり伝説の存在である愛抱夢(演:小波津亜廉)。マタドール姿に仮面をつけた姿で登場し、ビーフ(決闘)を愛の儀式と称している。
2次元でしかありえないだろうという存在の愛抱夢を、小波津が怪演とも言える芝居で見事に再現。スタイル、声、動き、雰囲気どれをとってもまさに愛抱夢だ。カーテンコールの時までその“仮面”を決して外さず、愛抱夢として存在している姿に称賛の拍手を送りたい。
石渡真修演じる菊池忠は、愛抱夢の表の顔である国会議員・神道愛之介の秘書だ。本作では愛之介の陰で動く役割の面が強調されていたが、第二部ではさらなる活躍が大いに期待される。
原作を丁寧に再現したストーリーで、セリフの一つ一つはもちろん、シーンの切り替えや随所に使われているBGMなども従来ファンの期待に充分応えるものだと感じる。特にオープニングは「これが見たかった」と膝を叩いてしまう人も多いことだろう。
ただし、「原作を再現しただけ」ではないのが本作のポイント。キーとなるのは目の前で繰り広げられるスケートボードの演技。舞台左右に作られた“アール”というセクションを滑り降り、その勢いのまま滑り戻る。池慧野巨、佐川海斗、高萩翼、本橋瞭の4人のスケーターの存在が、この舞台にワクワク感をさらに与えている。
2021年夏にあった東京オリンピックで、スケートボードの競技を目にした人は多いことだろう。誰もが難しい技に果敢に挑戦し、競技者たちはお互いのチャレンジと勇気に心からの拍手を送っていた。
画面越しに感じたのは「スケートは楽しい」という気持ちだ。楽しいから滑る、そしてみんなでやるからもっと楽しい、そんな空気を強く感じた。本作でも、暦の“スケートは楽しい”がランガに伝わっていく。そしてシャドウもMIYAも、結局はスケートボードに魅せられているのだと分かる。
2次元のアニメの世界から、3次元の生身の世界へ。アニメでしかありえない強いキャラクターたちが表現する真っ直ぐな“スケートは楽しい!”のメッセージが伝わってくる本作、ぜひスケーターたちの演技に拍手を送りながら劇場で味わってほしい。
第一部は12月12日(日)まで天王洲 銀河劇場で上演。続編となる第二部の「The Last Part~俺たちの無限大~」は2022年1月15日(土)から東京・日本青年館ホールで行われる。
取材・文:広瀬有希/撮影:ケイヒカル
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