第10幕から実に1年半以上の時を経て開幕した2.5次元ダンスライブ「ツキウタ。」ステージ第11幕「月花神楽~黒と白の物語~」。シリーズファンにはお馴染みの「月花神楽」の世界を舞台とした物語が描かれる。
2.5ジゲン!!では、9月30日(木)に初日を迎えた「漆黒の章」のゲネプロをレポート。芝居パートの見どころやライブパートの迫力を劇中ショットと共にお届けする。
ストーリーの根幹に触れるネタバレはないが、各キャラの役どころなどは紹介しているので、観劇予定のファンはその点を留意して読み進めてもらいたい。
美しい月花神楽の世界、ついに顕現
本作における月花神楽の時間軸は、争いのない泰平の世となった世界が舞台。それを象徴するかのように、凛と美しく舞う卯月新(演:中島礼貴)と皐月葵(演:上仁樹)の姿から物語は幕を開ける。雄々しく力強い様は、かつて最強の軍事力を有した漆黒らしさがあふれる。同時に2人から滲み出る美しさは、今のこの世界の在り方を観客に教えてくれていた。
▲お当番の皐月葵(演:上仁樹)と卯月新(演:中島礼貴)
漆黒と月白の面々はそれぞれの思いを胸に、4年に一度開催される「月花祭」を待ち侘びていた。
中でも祭りで夢の大役・舞手を任された漆黒の守り手・新と葵、月白の守り手・葉月陽(演:鷲尾修斗)と長月夜(演:秋葉友佑)は、緊張も入り混じる面持ちで現地へと足を踏み入れる。陽と夜の傍らには、彼らの幼馴染で観光を楽しもうとやってきた、まっつんこと松永太一(演:成瀬広都)の姿もあった。
準レギュラーのまっつんが登場することで、より濃縮されたアットホーム感が舞台上に広がる。お馴染みの「ツキステ。」が久々に帰ってきたのだと、感慨深く感じるファンが続出することだろう。
そんな彼らが祭りの開催地・無色で出会ったのは4人組の旅の一座。真壁高虎(演:田中彪)の力強い歌声はあたり一帯を包み込み、祭りを心待ちにする人々を虜にしていく。年中組の面々も、その楽しげな歌と踊りに引き込まれるように、彼らの歌の輪の中に加わっていった。
▲陽気な旅の一座
各国(各花)を渡り歩いているという彼らの話に耳を傾け、新たちは祭りが繋いだこの縁をどこか愛おしむような表情を浮かべる。
一方漆黒では、弥生春(演:太田裕二)の目を盗んではしょっちゅう旅に出ている睦月始(演:縣豪紀)、そのお供を自称する如月恋(演:鈴木遥太)、師走駆(演:澤邊寧央)は、この日も相変わらずほのぼの和気あいあいなやりとりを4人で交わしていた。ところが隣国・桃から物騒な事件の噂が届く。平和の護り手として噂を無視するわけにはいかず、心配事をなくして祭りに臨むためにも4人はその調査に赴くことに。
▲座っているだけで優雅な始さん(演:縣豪紀)
▲元気に可愛く登場の駆(演:澤邊寧央)&恋(演:鈴木遥太)
▲ちょっぴり困り顔の春さん(演:太田裕二)
時を同じくして、月白では宗主・霜月隼(演:TAKA[CUBERS])を筆頭に、文月海(演:平井雄基)や神無月郁(演:佐藤智広)、水無月涙(演:佐藤友咲)がまったりゴロゴロの真っ最中。余暇を持て余しているだけに見えた彼らだが、神秘の国らしく、世界に現れたよからぬ異変に気づいていて――。
▲ゴロゴロしているだけでも神秘的な隼さん(演:TAKA(CUBERS))
▲頼れる兄貴感がさらに増した文月海(演:平井雄基)
▲不思議かわいさ健在の涙(演:佐藤友咲)
平和を貫き「月花祭」を滞りなく開催するため、奔走する漆黒と白月の12人。武力とはまた違う、ちょっと不思議な力で軽やかかつ華やかに不穏な空気をはらっていく様子が、まさにこの月花神楽の世界観を体現していた。
悪意に晒される推しの姿はつらくて観ていられない、そんな人にとっても安心して観られる作品に仕上がっていたのが印象的だ。この世界に流れる平和で優美な空気は、客席をも浄化していく。心が癒やされ、美しい舞と音で満たされていく感覚をぜひ劇場で味わってみてほしい。
年中組が魅せる! 各キャラクターレポート
ここからはソロショットやライブショットと共に各キャラクターの見どころを紹介する。
まずは今作お当番担当の年中組。漆黒の章では、舞手に強い憧れを抱いていた新と葵の心境が丁寧に描かれていた。舞手に憧れがありながらも、家の役目や自分の役割に囚われ、どこか一歩踏み出せずにいた葵。優しい葵だからこそ、自分の願望を突き通していいのか悩んでしまうのだろう。優しさと弱気が入り交じる笑顔がなんとも切なく、彼との付き合いの長い上仁ならではの繊細な役作りが窺えた。
そんな葵にとって心のヒーローとなったのが、マイペースな新だ。葵の芯の強さも踊りの上手さも知る新ならではの言葉で、葵の背中を押していく姿は幼馴染だからこそだろう。自信に満ちた表情の作り方が上手い中島の芝居は、新の言葉に説得力を持たせていた。
月白の章では、陽と夜の思いが掘り下げられることだろう。第8幕ぶりとなる鷲尾の演じる陽に懐かしさを感じつつ、陽と夜の幼馴染コンビは何を思いながら「月花祭」を迎えるのか。その内容は実際に月白の章を観劇して確かめてみてほしい。
Six Gravityでは春を演じる太田が初出演。実に柔和で温和な春が、クールな始との絶妙なコントラストを生み出していた。内面から滲み出るマイナスイオンに骨抜きにされてしまうファンも多いだろう。
始は先日、別の世界へ“すってんころりん”していたが、その時ともまた違った優雅さを兼ね備えた月花神楽の始が作り出されていた。仲間と一緒にいるときの、ちょっとお茶目な姿が観られるのも「ツキステ。」らしいの魅力と言える。
※参考記事:イブステEp5「月野百鬼夜行綺譚 天獄」ゲネプロレポート
年少組の駆と恋は今回も天使。始のお供として、彼の周りをぴょこぴょこと飛び跳ねている姿は絶品だ。ライブパートではかわいさはそのままに、さらに磨きのかかったダンスでその存在感を示していた。
お馴染みの日替わりコーナーは今回はミニに。ゲネプロでは陽と夜の漫才に、一人でツッコミ続ける健気な駆の姿も…。
▲ミニ日替わりコーナーでの一幕
Procellarumでは郁を演じる佐藤が初出演。その小顔とスタイルの良さで、アイドル・郁を体現していた。早くも郁のお当番回がやってくるのが楽しみだ。
▲ふとした瞬間に溢れ出るピュアで真っ直ぐなところが実に郁らしい
海と涙は安定した存在感とボケで会場を温め、隼は久々に“始LOVE”モードを発動。恋する乙女を見守る親のような心境で、微笑ましく2人のやり取りを見守ろう。
▲始センサーがビビビッときて「大きなかぶ」状態になるいつもの隼
舞台オリジナルキャラクターは4人。登場からその歌声で視線をかっさらっていったのが、真壁高虎役の田中。しっかりと1曲分を歌い上げるので、ファンはお楽しみに。長田信之(演:宮崎卓真)と長田信繁(演:池田謙信)は兄弟で、三好半兵衛(演:谷岡拓爾)は単純明快な元気キャラ。そんな4人がどうして一緒に旅の一座をしているのか、どう「月花祭」に関わってくるのか、注目しながら楽しんでもらいたい。
豪華絢爛にいざ舞る
芝居パート終盤には、懐かしい楽曲のアレンジもありつつ、和風な月花神楽の世界観が生演奏の和太鼓&三味線と共に表現されていく。12人の優美な舞は、アイドルのダンスとはまた違った雅な魅力に溢れている。和風な音色に誘われ、神々しさすら感じる彼らの舞を肌で感じてみてはどうだろうか。
もちろんその後にはたっぷり約1時間のライブパートが待っている。たっぷりとは言ったが、一新されたセットリストに驚いたり興奮したりしている間に、気づけばラストの曲になっているだろう。芝居パートの舞では封印されていたキラキラ眩しいアイドルの顔のグラビとプロセラを目一杯浴びて、豪華絢爛な時間を堪能してみてほしい。
取材・文・撮影:双海しお
※2021年10月4日更新
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