舞台「東京リベンジャーズ」東京公演が8月12日、日本青年館ホールで開幕した。
2.5ジゲン!!では、東京公演初日に先立ち行われたゲネプロ公演の様子をお届けする。大きなネタバレはないが、簡単なあらすじやキャストの見どころを劇中写真と共に紹介するため、まっさらな状態で楽しみたいという方は観劇後の閲覧をおすすめする。
原作の魅力が濃縮されたストーリー
原作は、2017年より「週刊少年マガジン」(講談社)で連載中の和久井健による漫画「東京卍リベンジャーズ」。アニメ、実写映画化もされ、現在、累計発行部数3,200万部を突破する人気作品だ。
主人公の花垣武道(演:木津つばさ)は、最凶最悪の悪党連合“東京卍會”に、中学時代に付き合っていた人生唯一の恋人が殺されたことを知る。その後、線路に落ちたことをきっかけに突如12年前にタイムリープしてしまう。恋人を救うため、逃げ続けた自分を変えるため、タケミチ(※花垣武道)は人生のリベンジを決意する。
公演時間は休憩を含め2時間45分。原作のおよそ4巻までが描かれている。原作の重要なストーリーをぎゅっと詰め込んだ構成だが、急ぎ過ぎていると感じるところは一切ない。
清水将貴(演:桜庭大翔)とのタイマンや、佐野万次郎(演:松田凌)、龍宮寺堅(演:陳内将)の登場シーン、東京卍會の集会、そして『8・3抗争』など、手に汗握る怒涛の展開の数々に、上演時間は一瞬に感じてしまう。
原作へのリスペクトと愛に溢れた脚本・演出は伊勢直弘によるもの。もちろん、原作を知らない観客も楽しめる流れになっているため、安心してリベステの世界に飛び込んでほしい。
熱量に溢れたキャストたち、各キャラ紹介
主人公のタケミチは、公演時間のほとんど出ずっぱりの状態だ。主人公でありながら、喧嘩シーンでは殴られているところがほとんど。見ていて思わず目を覆ってしまいそうになる程、痛々しいシーンが続く。
不良漫画なのに、こんなにもやられっぱなしの主人公がいるのだろうか――と首を傾げたくもなるが、その弱さこそがタケミチの魅力の1つだろう。大切な人たちを救うため、何度倒れても立ち上がり続ける姿はどこまでも眩しい。木津の演じるタケミチは、“泣き虫のヒーロー”と呼ぶのに相応しい真っ直ぐな魅力に溢れていた。
中尾暢樹が演じる千堂敦を中心に、溝中五人衆の魅力も光る。シリアスなシーンが目立つ中、溝中五人衆の存在は一種の清涼剤でもあった。
1幕終盤で、大人になったアッくん(※千堂敦)がタケミチと言葉を交わすシーンに涙腺を刺激される観客も多いのではないだろうか。複雑な心境を表現する中尾の表情に注目だ。
東京卍會の総長・マイキーこと佐野万次郎を演じたのは松田凌。ひょうひょうとした緩い空気をまとっている時と、総長として立つ際のギャップがすさまじい。原作屈指の名セリフ「パーの親友やられてんのに“愛美愛主(メビウス)”に日和ってる奴いる? いねえよなぁ!!?」は圧倒的なカリスマ性に溢れており、筆者の一押しポイントである。
他にも重力を感じさせない足技やタケミチたちの前で見せる無邪気な表情など、魅力をあげ始めたらキリがない。マイキーが皆の前に立つだけでがらりと雰囲気を変える空気は、ぜひとも劇場に足を運んでその肌で感じてほしいところ。
東京卍會の副総長、ドラケンと呼ばれる龍宮寺堅は陳内将が熱演。金の辮髪(べんぱつ)と左のこめかみに彫られた龍の刺青という特徴的な外見は、実際に髪を刈り上げて完成させているらしい。
数多の舞台でキャストを支える陳内の盤石さは、今作でも健在。マイキーの精神的支柱といわれるのに相応しい安定感、言葉の節々から滲む男気など、陳内がドラケンを演じてくれて良かった…と心の底から感謝したくなる。
他にも林田春樹(演:中島大地)、林良平(演:川隅美慎)、三ツ谷隆(演:相澤莉多)など東京卍會には魅力的なキャストが集まっていた。友情に厚いパーちん(※林田春樹)とペーやん(※林良平)の姿、終盤の三ツ谷の喧嘩シーンも必見だ。特に三ツ谷は、喧嘩が強いだけではなく男気に溢れた性格が伝わってくる表情や声のトーンなど、全てが最高の一言に尽きる。
桜庭大翔の演じる清水将貴は、シンプルに悪いし、怖いし、強い。桜庭自身が持つ普段の爽やかな雰囲気は舞台上では一切感じられず、タケミチの前に立ちはだかる悪役として圧巻の存在感を放っていた。
また、半間修二役の菊池修二の存在も、敵側のキャラクターを語る上では外せない。登場は終盤だが、舞台に現れた瞬間のスタイルや髪型の再現度に驚くファンも多いだろう。マイキーとも互角に渡り合う喧嘩シーンは目が離せない。
そして、花瀬琴音が演じるヒロイン・橘日向はとにかくかわいい。男だらけの世界に咲く一輪の花である。日向が喋るたびに舞台上の空気がぱっと明るくなるし、ただかわいいだけではなくマイキーやドラケン相手に啖呵を切る姿はかっこよくもある。あらゆる魅力を兼ね備えた日向のためなら、命を懸けてタイムリープをしたくなるのも納得だ。
他にも日向の弟であり重要なキーパーソンでもある橘直人役の野口準や長内信高役の新田新太、身体能力で魅せてくれるアンサンブルなど、魅力的なキャストが多く揃っている。
全てのキャラクターに見せ場やグッとくるセリフがあり、瞬きをする時間すらもったいなく思えてしまうほど。どのキャストからも原作に対する熱量が感じられるので、より楽しむために観劇前に原作を読むことを個人的にはおすすめしたい。
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現在、さまざまなメディアミックスがなされている「東京卍リベンジャーズ」。もちろんそれぞれの作品に魅力があるが、舞台の一押しポイントはやはり真っ直ぐに伝わってくる熱量だ。一方で、今作の演出は、非常にシンプルだと感じた。派手なセットや照明はなく、だからこそ一人一人の動きやセリフが映える。拳と拳がぶつかり合って生まれる熱量を、ぜひ全身で浴びてほしい。
事前インタビューで松田は、「“ぜひ来てください”じゃありません。必ず来てください」と語っていた。観劇を終えた瞬間、その言葉に全力で同意してしまった。「リベステ」は、何度でもこの夏にタイムリープして観たくなるような最高の作品だった。新たな時代の幕開けを、多くの人が見届けてほしいと切に願っている。
公演は8月14日(土)まで東京・日本青年館ホール、8月19日(木)~22日(日)に神奈川・KT Zepp Yokohamaで行われる。
取材・文:水川ひかる
(C)和久井健・講談社/舞台「東京リベンジャーズ」製作委員会
※記事初出時より、一部内容を修正いたしました。
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