2019年3月7日(木)東京公演初日を迎える舞台『どろろ』。鈴木拡樹がアニメ版とのW主演ということで注目を浴びている本作。
サンシャイン劇場でのゲネプロを控えるキャスト陣による舞台挨拶が行われた。その様子をゲネプロとあわせてご紹介する。
登壇したのは百鬼丸役の鈴木拡樹、どろろ役の北原里英、多宝丸役の有澤樟太郎、賽の目の三郎太役の健人、仁木田之介役の影山達也、助六役の田村升吾、琵琶丸役の赤塚篤紀、寿海役の児島功一、醍醐景光役の唐橋充、縫の方役の大湖せしる、そして脚本・演出を担当する西田大輔の11名。
それぞれが語った意気込みのコメントをご紹介する。
鈴木拡樹(百鬼丸役):「どろろ」という作品は本当に愛されているな、というのをこの作品を通じてひしひしと感じています。アニメ化も映画化もされている作品です。
今回舞台化にあたって「ここが今までの数ある「どろろ」のシーンの中でみどころだなぁ」と感じたのが、ここにいるほぼすべての登場人物がなにかしらの家族の縁というもので繋がっているストーリーを描いた作品になっている点です。
今までにない家族をピックアップした「どろろ」。できればご家族で楽しんでほしいな、と思って公演に臨んでおります。
なので、ぜひご家庭でも盛り上がっていただけるような「どろろ」として公演をしていきたいなと思っております。
トップバッターを務めた座長の鈴木拡樹が、穏やかな口調で意気込みを語った。続くのは、はつらつとしたどろろを演じる北原里英。
北原里英(どろろ役):今日はあいにくの雨となってしまったんですが……この「どろろ」は手塚治虫さんの傑作ダークファンタジー作品と言われているだけあって、雨が似合う作品になっています。
そのなかでも私が演じるどろろは、太陽としてみんなを照らしていけるように、元気いっぱいでいかせていただいておりますので、今日は本当の天気のほうは晴らせなかったんですけど、舞台の上では太陽として生きていけるようにやっていきます!
と、どろろを思わせる元気いっぱいの笑顔で、会場の雰囲気を軽やかにした。
有澤樟太郎(多宝丸役):この「どろろ」は全体的に「生」の良さが出ていると思います。生ならではの迫力だったり、人間の生々しさだったりが出ていると思うので、そういったところを注目してほしいです。
大阪公演4公演終えて、とてもいい勢いで来ていると思いますので、その勢いのままさらに上げていく気持ちでいきたいと思いますので、応援のほどよろしくお願い致します。
健人(賽の目の三郎太役):この作品に携われて本当に嬉しく思っています。
大阪に続く東京公演ということで、初心を忘れず全力でやっていきますので、応援のほどどうぞよろしくお願いします。
続く影山達也は司会に名前を呼ばれると、挨拶とともに「雨男です!」と力強く宣言し、笑いを誘っていた。
影山達也(仁木田之介役):刀を使っての殺陣が初めてなので、怪我なく終えられるように頑張っていきたいと思います。
殺陣への特別な意気込みが垣間見えた。その仕上がりはぜひ本編でたしかめてほしい。
田村升吾(助六役):この作品はダークファンタジーって呼ばれている作品ですけれど、たくさんの愛でできている作品になっていると思います。そんな愛あるところも観て頂ければ、みなさんの心に残る作品になると思います。
人生初の泥だらけの役です! 泥だらけになりながらがむしゃらに生き抜いていきたいと思います。
琵琶丸役の赤塚篤紀は「この「どろろ」の世界を思う存分楽しみたい」と語り、続く寿海役の児島功一は鈴木が口にした「家族の絆」の話に触れ、寿海と百鬼丸をはじめとした家族の絆を見どころとして挙げた。
唐橋充(醍醐景光役):原作では醍醐景光という役はただただ冷血な悪い男なんですが、舞台では父として家族として百鬼丸と多宝丸とどう関わっていくかというのがテーマになっています。
このあと、「鈴木さんのファンを公言している私なんですけど」と鈴木に視線を投げかけつつ話を続けた。
ずっと彼をみているんですけど、百鬼丸って寂しくて切なくて、いろんなものを背負い込んでただただ純粋で、ダイナミックで優しい。
と、稽古から観てきた百鬼丸の印象を語ってくれた。さらに、鈴木・北原版の「どろろ」は伝説になるんじゃないかと、大阪公演を経て感じた手応えを口にしていた。
縫の方役の大湖せしるは「人々の想い、様々な生き様を見届けて欲しい」と、母性あふれるコメントで意気込みを語った。
最後は脚本・演出の西田大輔がこの作品が「舞台である意味」について、暗転を例に話をした。
西田大輔:舞台を暗くすることを“暗転”と言いますが、この作品ではそれを“暗闇”として捉えて作っています。暗転ひとつでも観客の皆さんに訴えかけられるものがあるのでは、と思います。
この話を聞いてから作品を観ると、暗闇ひとつにどんな意味があるのだろうか、と想像が広がった。これから観劇予定のファンは、ぜひ小さな演出ひとつにも目を凝らし、感性を研ぎ澄ませて観て欲しい。
ゲネプロレポート
和やかな会見から一転、数十分後のステージ上には「どろろ」らしいダークな世界が広がっていた。
物語は景光が自身の領土の繁栄と引き換えに鬼神像と取引をする場面から始まる。12の鬼神が奪ったのは、景光のもとに生まれた赤子の身体だった。目も耳も足も手もないその赤子は、名前をつけられることもなく川に流されてしまう。
数奇な出会いのなかで、その赤子は百鬼丸と名付けられ、やがてどろろという少年とともに旅をするようになる。
百鬼丸とどろろは様々な人に出会い、戦う。その殺陣が見応えバッチリなのは言うまでもないが、丁寧に描かれる回想シーンが作品の核になっているように感じた。
それぞれの登場人物が誰かを愛し、また誰かに大切に想われている。根底には愛があるが、その捉え方や伝え方が違っているから、分かりあえずもがき苦しむ。
全体としてたしかにダークファンタジー作品に仕上がっているが、3時間の上演を終えたとき、筆者の胸に残ったのは「生きるための強さと愛」であった。
手数の多い殺陣と、心にガツンと響く効果的な挿入歌。まさに“西田節”が炸裂している本作。主演・鈴木拡樹の言葉を発さない全身での演技や殺陣に魅了されている間に、3時間はあっという間に過ぎた。
周りを固める役者陣も、これまで演じてきた役柄とは大きく印象が異なる役を見事に演じていた。
舞台挨拶で鈴木が語っていた「家族の絆」の意味は、観終わったときに納得ができるだろう。百鬼丸の姿を通じて、血の繋がりや一緒に過ごした時間の長さだけでは計れない愛のあり方に気付かされる作品だった。
あなたの目にはどんな愛が映るだろうか。ぜひ劇場で舞台版『どろろ』の結末を見届けて欲しい。
▲ドラマティックなオープニング
▲どろろ(北原里英)との出会い、百鬼丸(鈴木拡樹)の目に映るのは……
▲妖刀を手にした妖しさが見事な田之介(影山達也)
▲腕に仕込んだ刀で戦う百鬼丸
▲身体を取り戻すごとに表情が変わっていく百鬼丸
▲助六(田村升吾)とどろろのシーンは数少ない癒やしシーン
▲殺陣がとにかくかっこいい
▲百鬼丸と実弟の多宝丸(有澤樟太郎)に訪れる結末とは
▲賽の目の三郎太(健人)の狙いは果たして
▲殺陣の変化にもぜひ注目してほしい
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