舞台「Another lenz」が5月15日(土)に開幕。初回公演に先立ち実施されたゲネプロの様子を劇中写真と共にレポートする。
本作は、同じ作品を自分の目で見るか配信のカメラのレンズを通して見るかで全く異なる作品に見えるという“別次元舞台”。会場を物語の雰囲気に寄せ、休演日には一部キャストの案内のもと、無料で劇場内ツアーを行うという新しいエンターテイメントを掲げている。
野心的なテーマの本作。レポートは「ネタバレOK」とのことだったので、本当に少しだけネタバレしつつ、全体的な作品のテイストを舞台写真とともに見どころをお届けする。
舞台の見どころは劇中劇とも言える“生ライブドラマ”。ノーカット撮影される生ライブドラマの模様は、生配信の映像として楽しむことができる。そして、生の舞台上では、その裏側とも言うべきカメラに映っていない舞台裏が描かれる。
一般的な生配信と一線を画している。本来の生配信は、舞台での上演をリアルに伝えるもの。劇場に足を運ばなくても自宅で舞台の模様を楽しむことができる。一方の本作は、従来の考えとは根本的に異なり、カメラの位置が変わるだけで「見える世界が全く違う」ということに挑戦している。
生配信のドラマを事前に観ることで、どういったことが起きたのかを想像でき、観劇することで、その表と裏を楽しむことができる。一つの作品でも切り取り方を変えるだけで、より多くのエンターテインメントを感じられる。コロンブスの卵的なアイデアだけではなく、それに紐づく脚本としても納得性のあるものに仕上がっていた。
失敗できない緊張感を体感
物語の終盤、ソリッドでスリルのあるショッキングな映像がそこには映し出されるだろう。虚か実か見間違えるほどの熱を帯びた、狂気的な空気に魅せられている。
実際に一つのカメラが追う映像に偽りはない。失敗できないノーカット映像作品を作ろうとしているクルーを演じる役者たちの演技は、一般的な舞台のそれよりも高い感度で行われているのではないか…。
その緊張感は観客席にも伝わり、舞台上では何が行われるのか、誰が何を行うのか、という一挙手一頭足に目がいく。この緊張感は普段とは別の意味で観劇を集中させる。目が離せない、とはまさにこのことで、新しい体験ともいえる。
物語の行く末にも注目
突飛なコンセプト、突飛な手法で突き進む本作だが、入り乱れる人間関係などのストーリーラインにも注目。劇中劇のシナリオ自体が、役者たちが演じるキャラクターと酷似している設定で、一見パラレル世界? と思わせる。
冷静に考えなければいけない頭をさらに沸騰させる。その熱量は狂気と繋がり、物語終盤に一気に加速する。尖りまくったコンセプトに加速するシナリオ…とても挑戦的で面白く、見応えは十分だ。「生配信」から「舞台」という観劇進行がお勧めである。
なお、公式からアナウンスされている「一部、暴力シーンやグロテスクな表現が含まれております。ご観劇、御視聴の際にはご注意ください」に偽りはない。苦手な方もいるかもしれないので、自分の体調などと相談した観劇を心掛けよう。
太田将熙
松田翔役。性格がよく誰からも信頼されている注目の若手俳優を演じる。監督の跡を継ぎ、まとめるリーダーシップを披露するが、次第にその熱は狂気を帯び…その怪演に注目。
菊池修司
苅野優一役。二番手で、松田をライバル視している俳優を演じる。太田将熙との熱いバトルが見どころ。
碕理人
藤原タカシ役。実力があり、作品に対しての想いは熱いのだが、癇癪持ちの監督。トラブルメーカー的な存在でもあり、物語の推進役でもある。
ゲネプロ後には会見が行われ、主演の太田将熙と菊池修司、碕理人、AKB48・北澤早紀、伊崎龍次郎が登壇。それぞれの見どころを語った。
太田は「本当に全部と言いたいくらい」と自信を込めつつ、「自分のキャラクターの松田がいいやつに見えるんですけど、色々と抱えていて、松田が高橋という監督を演じるという。監督であり監督を演じるというのがあり…カメラから出た時は松田として、カメラが回っている時は監督を演じるという、そういう細かい部分を見てもらいたいです」と呼びかける。
菊池は「個性豊かなキャラクターがいるというのが魅力なんですけど、生配信と観劇という視点から見られて、本当に情報量の多い舞台だと思います。どの役者がどう動いているのかいろんな角度から見て貰いたいですね」とコメント。
碕は「本作は生配信と舞台になるんですけど、皆さんの見方が異なると思いますので、だからこそ僕たちは集中力を切らさず全力で頑張っていきたいです」と意気込み、「あと、山沖勇輝に言えって言われたんですけど、序盤に彼との掛け合いがあるのでそこに注目してください」と付け加えた。
北澤はアイドル役で出演するが「かなり酷いアイドルで…恋愛はするし、タバコはするし、最後はちょっと愛情のために人々を襲っていくという…。私が出会ったことのないアイドルだったので、探り探り想像しながら演じています」「すごい嫌われる役だなと思っているので、嫌われたら私の勝ちだなと思っています」、伊崎は「森さん(山沖勇輝)が配信にほとんど出ません。ですので、ぜひ、劇場で森さんの活躍をご覧ください。配信だけ見ると『何だこの人は』と思うと思いますが、そこがこの舞台の二面的な魅力だと思います」とそれぞれ語った。
公演は5⽉23⽇(日)まで東京・新宿FACEで行われる。配信は5月15日(土)18:00、5月21日(金)〜23日(日)の2公演ずつの計7公演。
文:木皿儀隼一/撮影:ケイヒカル/構成:2.5ジゲン!!編集部
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