『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』~Meteor Lights~が2021年4月10日(土)、東京・天王洲 銀河劇場にて開幕。東京公演を皮切りに、兵庫・AiiA 2.5 Theater Kobe、東京凱旋・品川プリンスホテル ステラボールにて順次上演となる。
東京公演初日の前日に行われた公開ゲネプロの様子をレポートする。
「~Meteor Lights~」全体の見どころ
まずは、原作ファンの筆者から見たネタバレなしの全体像、見どころをお届けしたい。
本作「~Meteor Lights~」は、原作ゲームアプリ『あんさんぶるスターズ!』から「追憶*流星の篝火」のエピソードを基に構成されている。「追憶*流星の篝火」といえば、『あんスタ!』の物語の中でもひときわ難しい題材を描いたエピソードだ。
舞台となるのは、本編の1〜2年前にあたる夢ノ咲学院。信仰と現実、正義といじめ、ヒーローとは、アイドルとは……。そんな答えのないテーマに対峙するキャラクターたちの事情と思惑が絡み合い、迷路のような人間模様を形成していく。
1組のユニットの誕生秘話と呼ぶには、あまりにも濃密なストーリーだ。しかしそれでも、この一連の出来事なくして、現在の「流星隊」は存在し得ない。その意味で、これはやはり紛れもなく「現・流星隊の誕生秘話」と言えるだろう。
主演を務めるのは、今作で「あんステ」シリーズ5度目の出演となる佐伯亮(守沢千秋役)。
佐伯はこれまでも、体当たりの大胆な演技と表情の変化による繊細な芝居で、守沢千秋の人物像を見事に浮かび上がらせてきた。今作ではさらにパワーアップした大胆さ、繊細さにより、「生身の千秋」の新たな魅力を演じきっている。
また、「あんステ」シリーズ初登場となる三毛縞斑役・横井翔二郎も必見だ。ソロユニットとして活動する斑=『MaM』だが、ストーリーパートはもちろんライブパートでもソロとは思えない存在感を発している。
発声、セリフの抑揚、表情、仕草、全てに「斑らしさ」が追究され、徹底して磨き抜かれた表現力と横井ならではの抜群のスタイルが光る。
もちろん安定の実力を誇る「紅月」、新メンバーの投入でフレッシュな魅力あふれる「流星隊」にも注目してほしいし、ライブパートでは舞台オリジナルの新曲5曲を含む各ユニットのナンバーも見逃せない。
どこを見ても「見どころ」しかないのが今作「Meteor Lights」だ。
入り組みがちなストーリーを分かりやすく再構成している部分もあり、原作の該当エピソードを未読の方にも楽しめる内容となっている。
ストーリー|流星レッド&ブルーの原点を描く
(※ここから先はストーリーのネタバレを含みます)
物語の舞台は、幻想的な「おとぎ話」から始まる。それは、ヒーローに憧れていた少年・守沢千秋(演・佐伯亮)と、『かみさま』を名乗る少年・深海奏汰(演・井澤巧麻)の出会いの物語へと観客を導いていく。
板の上に広がるのは、星の形をモチーフとした大きなステージ。客席のワクワクを引き受けるように、開幕直後に早速「MaM」が一曲披露してくれるので、ペンライトはぜひお手元に。
ライブが終わると場面は変わり、物語は過去へと突入していく。
舞台となるのは2年前の夢ノ咲学院。当時「流星隊」は学院最古の伝統を持つユニットでありながら、素行不良の生徒のたまり場のようになっていた。
そんな流星隊の現状を嘆いていたのが、1年生の守沢千秋。ヒーローに真剣に憧れる千秋は、現状を変える力を持たない自分に不甲斐なさを感じつつ、他のメンバーが汚したプールの掃除など、できることを探して実践していた。
そんなとき夜のプールでたまたま出会ったのが、不思議な言動を繰り返す少年・深海奏汰。奏汰は自身を『かみさま』と名乗り、千秋の『ねがい』を叶えると言う。
最初は半信半疑の千秋だったが、日を増すごとに奏汰の周囲で起きる不思議な出来事に気が付く。常識では考えられない現象が次々と実現する様を目の当たりにし、千秋の中にも「まさか」という思いが芽生え始める。
しかし、どんな願いも叶える『かみさま』には不穏な秘密が隠されていた。それは地元の因習とも深く関わる秘密であり、その影響はやがて学院内にもじわじわと浸透していく……。
そしてついに、千秋が友情を交わした鬼龍紅郎(演・武子直輝)の周囲で、起きてはならない事件が起きてしまう。紅郎は千秋を責めるが、心当たりのない千秋は「奏汰が関係しているのでは」と思い、彼に会おうとする。
しかし奏汰は見つからず、代わりに現れたのは千秋と同じ流星隊に所属する三毛縞斑(演・横井翔二郎)だった。斑は、自らを『かみさま』に古くから関わる家系の一員であると言う。
祀り上げられた『かみさま』を取り巻く真実、一般的な「幸せ」に触れたことのない奏汰の生い立ち。そんな奏汰と友情を結ぶことの困難さを、実体験を交えつつ斑は語る。
「奏汰さんには関わるな」と忠告された千秋が、悩み苦しみながら、最終的にどんな行動を選ぶのか。そして流星レッドと流星ブルーはどのようにして生まれたのか……。
物語の続きは、ぜひあなたの目で確かめてほしい。
ライブパート|流星隊、MaM、紅月が新曲を披露
ここで、「あんステ」の醍醐味であるライブパートについてもご紹介したい。
今作では、流星隊、MaM、紅月の3ユニットにそれぞれ舞台オリジナルの新曲(全5曲)が用意されている。また、「~Meteor Lights~」ならではの組み合わせで披露される曲、原作でもおなじみの盛り上がるあの曲などなど、数々のライブシーンが待っている。
感染対策のため声を出すことはできないが、その分ペンライトの光と拍手でアイドルたちにエールを送ろう。
特に注目したいのが、舞台オリジナルとなる流星隊の新曲、タイトルは『High Five For You!!!!!』。アイドルとしての流星隊はもちろん、「家族」としての5人をも象徴するような温かい曲だ。レッドの思いが他のメンバーに伝播していく…そんな物語を想起させる振り付けも見どころである。
流星隊は他にも数曲のナンバーを披露する。原作ファンにはおなじみの曲もあり、流星隊らしい元気なパフォーマンスを楽しむことができる。と同時に、ストーリーを経ることで「いつもの曲」がいつもと少し違って聞こえ、胸が熱くなる場面もあるかもしれない。
「あんステ」初登場のMaMは、原作の人気曲から『Blooming World』を披露。抜群のスタイルが映えるテクニカルなダンスで、MaMの優しさ、楽しさ、かわいらしさと格好良さとのバランスなどを、横井が絶妙に表現している。(筆者としては、原作ファンとキャストファン、どちらにも「必見です」と伝えたい)
そして紅月はさすがの貫禄を誇る。舞台オリジナルの新曲『春の雪』は、紅月らしい美しさを湛えた豊かな旋律だ。パワフルながら細やかな振付、小道具を使った華やかな演出、すべてが圧巻、「これぞ紅月」という一曲である。
ゲネプロ終了後、座長を務める佐伯は、
「このようなご時世で大変なこともありましたが、無事ゲネプロを迎えられたのはスタッフの皆さま、関係者の皆さまのおかげです。本公演は45回という長い公演期間となりますけれども、座組みんなで力を合わせて健康第一に素敵な舞台をお届けしたいです」
と語り、カーテンコールを締めくくった。
5月9日まで上演|ライブ・アーカイブ配信も
「思うように生きること」は難しい。本作の登場人物たちは皆、自力ではどうにもならない大きな渦の中でもがき続けている。それは現実を生きる私たちも同じかもしれない。
でも劇中の言葉を借りるのであれば――“『おなじ』があると『うれしい』”。
同じだからこそ共感できる。共感はきっと強さを連れてくる。苦悩しながらも必死で生き抜く彼らの姿は、観客の心に何かを灯してくれるだろう。
『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』~Meteor Lights~は、4月10日(土)~25日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、4月29日(木)~5月9日(日)まで兵庫・AiiA 2.5 Theater Kobe、5月13日(木)~16日(日)まで東京・品川プリンスホテル ステラボールで上演。
4月10日(土)13:00・18:00公演、5月16日(日)17:00公演(大千秋楽)がDMMでライブ・ディレイ配信。5月16日(日)12:00公演を含めた4公演はアーカイブ配信も予定されている。
文:豊島オリカ
(C)2016 Happy Elements K.K/あんステ製作委員会
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