舞台『機動戦士ガンダム00 −破壊による再生−Re:Build』(通称「ダブステ」)の公開ゲネプロと初日挨拶が2月15日(金)におこなわれた。
「機動戦士ガンダム40周年プロジェクト」の一環であると同時に、同シリーズ初の舞台化作品。注目度の高い原作×2.5次元界で人気の俳優陣、というタッグに情報解禁時から話題だった本作の見どころと魅力をお伝えする。
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▲ステージにはたしかに「機動戦士ガンダム00」の世界が広がっていた
幕が開けてから数分、率直な感想は「そう来たか……!」だった。原作ファンのみならず、「機動戦士ガンダム」という作品をどこかで見聞きしたことがある人なら、あの宇宙規模の作品をどう表現するのか?と気になっていただろう。
これが、これこそが「ガンダムを演劇で魅せる」ということなのか。そんな妙な納得感を得られる作品に仕上がっていた。
ストーリーの本筋は原作アニメのファーストシーズンを追っていく内容。刹那・F・セイエイ(橋本祥平)やロックオン・ストラトス(伊万里有)の過去と確執、アレルヤ・ハプティズム(鮎川太陽)の二面性、ティエリア・アーデ(永田聖一朗)の脆さ。
激しい戦闘シーンについ目が奪われてしまうが、ソレスタルビーイングのガンダムマイスターたちの心情が丁寧に描かれている。
母艦プトレマイオスのクルーたちとの何気ないやりとりや、4人での地上での語らいなど、ふとした瞬間にみせる表情からはガンダムマイスターではない等身大の彼らの素顔が観られるだろう。
▲なにかと面倒見のいいロックオン
▲衝突の多い刹那とティエリア
しかし、なんといってもこれは武力に武力で介入するガンダムマイスターたちの物語。劇中でも絶え間なく繰り返される戦闘シーンに、この西暦2307年の世界がどれだけ争いであふれているかを肌で感じられた。
従来の殺陣やアクションともひと味違った、この「ダブステ」でしか観られないであろう戦闘シーンは必見。独特な機構によって、宇宙空間で繰り広げられる縦横無尽な動きが表現されていた。
機体同士の衝突と、パイロットたちのせめぎあいを同時に体感できる、舞台作品ならではの演出を存分に味わって欲しい。
今回主演を務めるのは橋本祥平だ。彼のよく通る張りのある声が刹那らしさを見事に表現していた。敵を見据えるシーンでは持ち前の眼力を発揮。その瞳に射抜かれてしまうファンが続出するだろう。
▲刹那の物静かだが強い意志を感じる佇まいは見事
ロックオン役の伊万里有とアレルヤ役の鮎川太陽は、まずパイロットスーツを着こなすその体型の再現度に驚かされた。ロックオンは刹那との、アレルヤはソーマ・ピーリスとの因縁も描かれているので、ファンは楽しみにしていてほしい。
▲ロックオンのあの“相棒”ももちろん登場する
▲こちらはアレルヤ。ハレルヤの登場は……
ティエリア役の永田聖一朗はこの役で新境地を開いたのではないだろうか。中性的な魅力を持つティエリアを好演。彼の内面の変化を繊細かつダイナミックに演じていた。
▲ティエリアの変化にはぜひ注目して欲しい
ユニオンのグラハム・エーカー(前山剛久)、AEUのパトリック・コーラサワー(瀬戸祐介)は、シリアスなストーリーのなかでスパイスを効かせていた。前山はグラハムの変態的で情熱的なガンダムへの“愛”を、ある種狂気的な笑顔で熱演。瀬戸のコーラサワーは笑いどころを提供しつつも、カティ・マネキン大佐とのアノやりとりも再現されていた。
▲グラハムの“名言”は飛び出るのか!?
▲かっこいいと面白いのいいとこ取りなコーラサワー
そして赤澤燈演じるリボンズ・アルマーク。舞台版ならではの結末を迎えるにあたって、鍵となる役どころをミステリアスに演じている。
彼らしい満点の笑顔は今作では封印され、代わりに背筋が冷たくなるような不気味な笑みを浮かべていた。
▲暗躍するリボンズ・アルマーク
他にも窪寺昭演じるアリー・アル・サーシェスや立道梨緒奈演じるスメラギ・李・ノリエガ、一内侑演じるビリー・カタギリなど、どのキャラクターも再現性が高く魅力的だった。ぜひその姿を劇場、またはライブビューイングで確かめてほしい。演劇の新たな可能性に出会えるだろう。
▲刹那とサーシェス、巡る因縁
▲軍服姿のグラハムも
初日挨拶レポート
公開ゲネプロの直前、ステージにメインキャストが集まり初日挨拶の会見がおこなわれた。
登壇したのは刹那・F・セイエイ役の橋本祥平、ロックオン・ストラトス役の伊万里有、アレルヤ・ハプティズム役の鮎川太陽、ティエリア・アーデ役の永田聖一朗、グラハム・エーカー役の前山剛久、リボンズ・アルマーク役の赤澤燈、アリー・アル・サーシェス役の窪寺昭の7名。
ーーまずは舞台への意気込みをお願いします。
橋本祥平(刹那・F・セイエイ役):「ガンダムを舞台化」ということで……。誰が思っていたでしょうかね?ガンダムの舞台化って。
でも、舞台上でガンダムができるんだということで表現の幅が広がったことが嬉しくもあり、演劇の可能性に出会えた作品だなと思っています。
この稽古期間は、僕らが間違いなく誰よりも「00」について考えて熱く語って戦い続けてきたので、この努力の結晶を皆さんにお届けしたいと思います。なので、僕らはプレッシャーを与え続けるので、覚悟して観て頂けたらなと思います。
と、最初はこの作品の舞台化に驚きを隠せなかったことを明かしつつも、キャスト陣の作品への熱が感じられる座長らしいコメントを披露した。
伊万里有(ロックオン・ストラトス役):ロックオン・ストラトスはいつも明るくてお兄さん的な役柄で。僕も稽古場では明るくしてたんですけど、帰ってからめちゃくちゃ悩みました。
悩みに悩んで、もう夢の中にもガンダムが出てきたり稽古風景が出てきたりして、“24時間ガンダム体制”モードに入っていましたね。すごく悩んだし考えさせられて、勉強できる役どころになったなと思います。
さらに意気込みについては、アンサンブルの方たちの頑張りを観てほしいと語った。アンサンブル陣が休みの日には「自分たちだけではまったく成り立たなくって」と、いかに今回の演出においてアンサンブルの存在が重要かを語ってくれた。
鮎川太陽(アレルヤ・ハプティズム役):マスコミのみなさんもお客さんも「どうなるんだろう?」と期待と不安があると思います。
僕たちも新しいものに挑戦していくということで、昨日の夜中までああしようこうしようと話し合っていまして、そのなかで(橋本)祥平くんが「新しいものに武力で介入していこう」って言っていたんですね。新しいものに挑戦するって本当に未知なことで、0を1にするのは難しいと思うんですけど……。
みなさまの期待に応えられるように稽古をしてきたので、あとは落ち着いて届けられたらなと思っています。
永田聖一朗(ティエリア・アーデ役):ティエリアはクールでプライドも高くて、自分とはかけ離れているんですけど、実は意外と子供だったり精神的に未熟だったり自分にも共通してるなって思うところもあって。舞台上でティエリアの成長を等身大で演じられるよう努めて参ります。
赤澤燈(リボンズ・アルマーク役):原作と舞台ではこのリボンズ・アルマークはちょっと違うような気がしていて、舞台上では新しいリボンズ・アルマークに出会えるんじゃないかなと思います。
あとさっきもあったんですけど、祥平がグループLINEですごいいいことを言っていて。「ガンダムという作品に演劇の力で武力介入しましょう」って。グループLINEではスベってたんですけど(笑)ただ、本当にその通りだなって僕は思っていて。
「ガンダム」という強い4文字に立ち向かえるのは「演劇」っていう4文字しか無い、と。
かっこいい名言が飛び出て、そのまま締めに入ろうとするも、なにやらざわつくキャスト陣。なんかかっこいいこと言ってる、と冗談交じりで冷ややかな視線を送られるなか、強引に挨拶を締めくくった。
続く挨拶はグラハム・エーカー役の前山剛久。キャスト解禁時からTwitterでも原作への愛を語っていた彼からは、やはり熱いコメントが飛び出た。
前山剛久(グラハム・エーカー役):グラハム・エーカーは名言のオンパレードなので、楽しく演じさせてもらっています。「愛」について語るグラハムにすごくシンパシーを感じてまして……
と、「愛」について語りだすとキャスト陣からは笑いがこぼれた。しかし、前山はそこでめげずにさらにキャストや作品、観客への愛を語りだし、その流れで原作への愛とも呼べる熱い思いを話し始めた。その姿はたしかにグラハム・エーカーに通じるところがあった。
窪寺昭(アリー・アル・サーシェス役):残忍な男を演じることってあまりないので、自分自身がこう生きたいってことはないですが、芝居としてはとても楽しみです。
また人間ドラマに注目してほしいと、見どころを語ってくれた。
ーー衣装のこだわりや着心地について
ピッチリしたパイロットスーツについて質問されると、口々に「着心地がいい」「通気性がいいですよ」と感想が飛び出た。ただし「トイレが大変」という声も……。
他の作品ではなかなか着る機会のないパイロットスーツに、キャストたちのテンションが上がっている様子がうかがえた。
ーーお気に入りのシーンは?
橋本:ド派手な戦闘シーンもですが、やっぱり人間ドラマの部分に注目して頂けたらと思います。僕だとソレスタルビーイングの4人の芝居の部分は、何回も案を出して、タイトル通り破壊しては作って再生してっていうのを繰り返してきました。なのでぜひそういったシーンがとくにお気に入りです。
タイトルを絡めた見事なコメントに、他のキャストたちも「以下同文です」と同意。グループLINEの話も出ていたが、何度も話し合いを重ねて積み上げてきたことがうかがえる初日挨拶となった。
彼らが壊しながら作って、ようやく出来上がった本作。ぜひ「演劇」が「ガンダム」に武力介入する瞬間を味わってみて欲しい。
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