Identity Ⅴ STAGE Episode2「Double Down」が3月24日(水)、東京・TACHIKAWA STAGE GARDENで開幕。初回公演に先立ち行われたゲネプロをレポートする。
本作は、4人のサバイバーと1人のハンターで対戦が行われる非対称対戦ゲーム「Identity V」の舞台化作品。個性的なキャラクターたちの特性と世界観を引き継ぎながら、独自のアレンジによる脚本でストーリーが展開される。
今回のお当番は3種類。Aチームは庭師 エマ・ウッズ(藤白エイミ)と泣き虫 ロビー・ホワイト(渡部大稀)、Bチームは傭兵 ナワーブ・サベダー(才川コージ)とリッパー ジャック(成松慶彦)、Cチームはカウボーイ カヴィン・アユソ(田中晃平)と芸者 美智子(大滝 樹)の組み合わせ。
今回のゲネプロではAチームがクローズアップ。ストーリーや演出の深いネタバレはないが、公演写真は多く掲載するのでまっさらな気持ちで観劇したい人は観劇後に見てほしい。
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今度の荘園はチェイスがすごい!
今回のEpisode2「Double Down」は本来、2020年9月に上演が予定されていた公演。新型コロナウイルスの感染拡大により延期となり、公演順がEpisode3、Episode2となったが、エピソードごとに1話構成のため、展開上何も問題はない。
今回のチェイスはトランプの「Blackjack」を原型とした「Blackjack(ブラックジャック)」モードだ。手持ちカードの合計数「21」を目指してフィールドを駆け抜ける、息詰まるチェイスが繰り広げられる。
ゲネプロで披露されたAチーム庭師 エマ・ウッズと泣き虫 ロビー・ホワイト。この2人の共通点は“無邪気さ”と“植物”だろう。冒頭から、かわいさが大渋滞の無邪気な2人のやりとりに思わず笑顔になってしまう。
人気オンラインゲーム原作で、3作目の舞台。「原作ゲームに詳しくないし…」「今回から観ても大丈夫かな」と思う人もいるかもしれないが、大丈夫だ。
世界観、チェイスのルール説明はもちろん、キャラクターの自己紹介もある。ストーリーはシンプル、かつ原作ストーリーを丁寧になぞるような展開ではない。
原作ゲームの世界観を引き継ぎ、キャラクターの設定と特性を活かしたストーリーになっているので、「原作を知らないと置いてけぼり」ということにはならないだろう。
もちろん、ゲームをやりこんでいる人たちはキャラ同士のちょっとしたやりとりに想像力をかきたてられたり、それぞれの動きや特殊能力の再現性に驚くことだろう。
丁寧に作られた豪華な衣装にメイク、一度聴いたら忘れられない主題歌、ゲーム音楽をアレンジしたBGM。さまざまなお楽しみポイントがあるのだが、オープニングの全員そろっての激しいダンスは圧巻だ。完全に目が足りない。
キャラクターとして生き生きと「第五人格」の世界を生きる役者たちは皆、実に楽しそうだ。この作品とキャラクター、世界観を愛しているのが伝わってくる。
役者たちだけではなく、制作もまた然りだ。会場に一歩足を踏み入れた瞬間、舞台、天井、頭上のセットに息を呑むだろう。「第五人格」の世界を3次元に再現しようという意気込みが伝わってくる。愛の強さは観ている側の胸を打つ。
少し気分が塞ぎがちになりそうなこんな時だからこそ、現実を忘れるほどに夢中になって没入できる舞台の存在は貴重だ。公演時間およそ2時間半。ぜひ東京・立川の荘園でのひとときを楽しんでほしい。
まだまだ続いてほしい「第五舞台」
今回の舞台の席配置は前作Episode3と同じく、会場中央にせり出した部分を3方囲む1階と2階の席と、舞台上の額縁内に設置された「ブラックジャックシート」とがある。
フロアの1階席は舞台を見上げる形でより迫力を、ブラックジャックシートは間近で行われる芝居とチェイスを、2階席からは全景として舞台の床部分でも何が行われているのかを、それぞれ堪能できる作りになっている。
個人的には、今回から登場の墓守(磯野大)の特徴は上方向の席から観てこそだと感じた。Episode1、Episode3にはなかった早替えやあっと驚く登場の仕方などもある。
今回も、通常の芝居公演の他に特別衣装によるコメディ公演がある。さらにA、B、Cそれぞれに特別衣装による通常公演がある。都合や予算に合わせてチケットを選んだり、オンラインも一度だけではないなど、さまざまな選択肢があるのも嬉しい。
出演キャラクターが多く、あちこちでわちゃわちゃとしたやりとりやチェイスが繰り広げられているので、一度だけの観劇ではとても目が足りない。できればこれらにオンラインシート観劇を足して、さまざまな角度で楽しんでほしい。
第五舞台のEpisode1ではチェイスとストーリー両方がバランス良く織り交ぜられ初心者にも分かりやすく、2作目のEpisode3はキャラクターの特性を活かした重厚で深みのある舞台に。
そして3作目である今回のEpisode2では、わくわくするチェイス中心でありながらブラックジャックモードを取り入れたことで新しい可能性を提示してくれた。
まだスポットライトを浴びていないキャラクターもたくさんいる。こんな展開があったらいいな、と思うことも山ほどあるだろう。ぜひEpisode4、5と続いていってほしい作品だ。
文:広瀬有希/撮影:ケイヒカル
※メインビジュアルは提供写真
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