「イブステ」シリーズ初のスピンオフ公演となるALIVESTAGE外伝 ZIX STAGE『Break It!』が2021年2月27日(土)に幕を開ける。
初日に先立ち実施されたゲネプロの様子をレポート。
ストーリーに関するネタバレはないが、劇中ショットを多数掲載している。また2部のZIXライブセットリストも公開する。まっさらな状態で観劇に臨みたい場合は、観劇後に読んでもらえたらと思う。
▲フォトセッションの1コマ。仲のいい雰囲気が伝わる
“未完成”のZIXとGrowth、表裏一体の“始まりの物語”
ツキノ芸能プロダクション所属ユニットにスポットを当てて展開されてきた2.5次元ダンスライブシリーズ。本作はシリーズ初のサンプロことサンプロモーション・エンターテイメント所属ユニットをメインとした作品となる。
「ここからまた新たな道が生まれるのではないか?」と思わず胸が高まるような、刺激的なZIXの“始まりの物語”が紡がれた。
本作は、2月26日にリリースされたZIXの新ドラマCD『Break It!』で描かれた、ZIX結成までのストーリーをもとに展開されていく。いち早くドラマCDを入手して予習していたファンにとっては、目の前で文字通り2次元が2.5次元へと肉付けされていく感覚を味わえるだろう。
物語は、人気絶頂となったZIXの須貝誠(演:五十嵐拓人)と菱田満(演:山根理輝)が、ライブ後に結成当時を振り返る形で始まる。6年前、2人はどうやって出会い、ユニット結成に至ったのか。
華やかに見える芸能界の決して“綺麗”とは言えない大人の事情や、10代の子供にはどうすることもできない家庭環境。そういったしがらみを乗り越え、2人が手を取り合い“取引”を交わすまでのストーリーが丁寧に描かれていく。
▲物語は“現在”のZIXから始まる
作中で2人は様々な大人に出会い、衝突し、気持ちをぶつけ合っていくのだが、その姿はいい意味でとても泥臭い。その“青さ”とも言える泥臭さは、彼らが完成されたZIXではなく、“未完成”な存在だからこそ生まれてくるものだろう。
これまで目にしてきた完全無欠のZIXではない、デビューして這い上がっていくことを夢見る2人の若者の姿は、とにかく真っ直ぐだ。そしてこれまで彼らが「イブステ」でGrowthやSOARAを支えてきたように、彼らもまた多くの人々の力に支えられて、ZIXという“これ以上ない最高の”場所へと辿り着いていく。
▲ZIX結成に至るまでの苦悩と葛藤が描かれていく
本作を観ると、過去の「イブステ」シリーズを振り返りたくなるかもしれない。特に、同じ東京・草月ホールで上演されたGrowthの“始まり”を描くシリーズ1作目と本作は表裏一体な部分がある。
衛藤昂輝(演:塩澤英真)が藤村衛(演:岩佐祐樹)と出会い、八重樫剣介(演:石川翔)や桜庭涼太(演:橘りょう)と共にツキプロで新たな一歩を歩み始めた一方で、昂輝ら3人が退所した後のサンプロではZIXが誕生した。
▲新生活の準備をする衛藤昂輝(演:塩澤英真)と藤村衛(演:岩佐祐樹)
▲衛には欠かせないパキラとの出会いも?
▲涼太との出会いを振り返る八重樫剣介(演:石川翔)
▲珍しく桜庭涼太(演:橘りょう)がデレる場面も……
その数年後、事務所の枠を飛び越えたライバルユニットとしてGrowthとZIXは切磋琢磨することになるが、この「ジクステ」と「イブステ」1作目を観ることで、ようやく彼らの“スタート”が完成するのかもしれない。ZIXファンはもちろん、「イブステ」ファン、そしてGrowthファンにも見届けてもらいたい作品と言える。
完璧×計算で夢を掴め、ストレートな芝居が光る1幕
本作で舞台初主演となった五十嵐と山根は、等身大の若者の人間ドラマという、ごまかしの効かないストレートな内容の物語を好演。初主演とは思えない安定した芝居を見せてくれた。
彼らが2019年から共に歩んできた誠と満は、きっと彼らにとってもかけがえのないパートナーなのだろう。役同士の歯車がカチリとハマり、同時に演者である五十嵐と山根の芝居が噛み合う心地良さを感じられる作品に仕上がっていたのが印象的だ。
そして、彼らの魅力を引き出していたのがゲストキャラクターたちだ。誠の父親・須貝仁(演:吉田晃太郎)と満の父親・菱田忠司(演:武田知大)、サンプロの社長である小松原良一(演:本郷小次郎)、満のバイト先のコンビニ店長(演:川末敦)と常連客(演:田中崇士)。
▲誠の父親・須貝仁(演:吉田晃太郎)
▲満の父親・菱田忠司(演:武田知大)と満の間には大きな溝が
▲満のバイト先のコンビニ店長(演:川末敦)
ZIX誕生には、親子関係が濃厚に関わってくるのだが、彼ら“大人組”の熱演あってこそ見応えのあるシーンになっている。ちなみに小松原を演じる本郷は「ツキステ。」9幕に出演していたので、見覚えのある人もいるかもしれない。彼は日替わりパートにも登場するので、観劇する際には拍手で会場を盛り上げてあげよう。
▲サンプロの社長も演じている本郷小次郎は日替わりパートにも登場
▲ゲネプロでは日替わりパートに指名されていた衛
ZIX色に染まるダンスライブ。ZIXセトリ&2幕レポート
先日、主演の2人に実施したインタビューで、山根はそのセリフ量に驚いたと語ってくれた。その話を聞いて脳内で想像していた以上に、完成した作品は「こんなZIXが観られるなんて!」という驚きの連続であった。驚きというよりも感慨深さが勝っていたかもしれない。
これまでの「イブステ」シリーズで、出番は多くはないもののピリッと効くスパイスのような存在感を見せてくれていたZIX。筆者も含め多くのファンが、そんな2人に慣れ親しんできた。
長い間その姿を観てきたからこそ、幕が開けると同時にステージの中央に浮かび上がる2人のシルエットには心揺さぶられるものがある。1幕はZIXらしい疾走感あふれるナンバー「Break It!」から始まるのだが、そのパフォーマンスは「ZIXが主人公だ」と雄叫びを上げているようにも観えた。
▲1幕冒頭のライブには、応援に駆けつけたGrowthの姿も
そして2幕、ファンお待ちかねのZIXメインのライブパートが始まる。2幕でも新曲の「Break It!」を再び披露するのだが、観客は1幕で2人の結成までの物語を観て、それを踏まえてこの曲を聴くことになる。
そうすると、振付の中のちょっとした仕草や視線の交差にも、彼らが背負うものを感じられた。せっかく同じ曲を2度聴けるチャンスなので、自分の中にどんな変化が生まれたか比べてみるのも面白いだろう。
しかし、そんな心の余裕はないかもしれない。怒涛の息つく暇のないパフォーマンスが待っているからだ。
ZIXは「BML」や「brilliant」といったおなじみの楽曲に加え、初披露の「Z.I.X.A.G.」「アウトサイダーダンス」「Break it!」「Overload」の新曲も。
4曲も初披露楽曲があるので、平常心でいられるわけがないのだ。幸いにもZIXは2人組ユニット。物理的に目は足りるかもしれないが、それでも“攻め”の楽曲の連続にとめどなくアドレナリンが溢れることになるだろう。
本作では五十嵐が振付も担当している。インタビューで彼は、シリーズの“らしさ”を取り入れつつも全然違うものを観せたいと意気込みを語っていた。彼の言葉通り、他のユニットには出せないであろうZIX色のパフォーマンスが客席を飲み込んでいく様は圧巻だった。
本作ならではの見どころとしては、GrowthがZIXのバックダンサーを務めている点も見逃せない。Growthの楽曲では決して観ることがないであろう、メンバーの言葉を借りるなら「バッキバキ」のダンスを踊っている姿は必見。
▲「BML」では昂輝&涼太がバックダンサーに
▲「brilliant」では剣介&衛がバックダンサーを務める
ハードなセトリを終えた後の中盤のMCでは、消耗の激しいZIXを気遣ったGrowthがトークパートを引き伸ばす場面も。本編でもライブパートでも、ミントのようなGrowthの清涼感は健在だ。
▲ついにステージ中央で観られる主演2人の笑顔が眩しい
▲MC中にはおなじみの“犬猿”なやりとりも!?
ユニット色がまるで違う2組が織りなすダンスライブは、唯一無二の空間を生み出していた。声を出しての応援ができないことがもどかしいほどの熱い時間を楽しんでほしい。
2日間4公演で上演されるALIVESTAGE外伝 ZIX STAGE『Break It!』。公演数は少ないものの、劇場ではZIXにしか醸し出せない圧と色気漂う濃厚な約3時間が待っている。
ビジネスライクな関係性の裏側にある誠と満の絆が味わえるのは、この「ジクステ」ならでは。ZIXの虜になること間違いなしの「ジクステ」は、2月27日ついに幕開。これが新たな“一歩”になることを、願わずにはいられない。
五十嵐拓人(須貝 誠役)コメント
お客さまの応援、そして皆さんがZIXをすごく好きになってくださったからこそ、ついにZIXがメインの舞台ができることになりました。ですので、僕たちもさらにZIXを愛して、皆さんに「ありがとう」の気持ちを込めたパフォーマンスをしたいと思っています。劇場で、そしてオンラインで、その姿を目に焼き付けてください。
山根理輝(菱田 満役)コメント
とにかく全力で頑張ります! 僕たちが“焦がれた世界”を掴みとる過程を、そして“焦がれた世界”を掴みとった僕たちをぜひ見ていただけたらと思います。
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