ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」〝ゴミ捨て場の決戦〞が、2020年10月31日(土)に東京・TOKYO DOME CITY HALLで開幕した。
2015年の初演から2020年3月の〝最強の挑戦者(チャレンジャー)〞に至るまで新たな演劇としての挑戦を次々と行い、熱狂を巻き起こしてきた演劇「ハイキュー!!」。
シリーズ10作目となる今作では、原作屈指のベストゲーム〝ゴミ捨て場の決戦〞がついに描かれる。
2.5ジゲン!!では、初日に先立ち実施されたゲネプロの様子をレポート。キャストコメントもお届けする。
※以下、ネタバレを含む内容あり
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ついに始まる、“ゴミ捨て場の決戦”
前作の春高2回戦で優勝候補の稲荷崎高校に勝利を収めた烏野高校排球部。迎える3回戦では、因縁のライバル・音駒高校との烏対猫「ゴミ捨て場の決戦」がいよいよ始まる。
試合開始早々、日向翔陽(演:醍醐虎汰朗)と影山飛雄(演:赤名竜之輔)による変人速攻やシンクロ攻撃をフルに使い、超攻撃型チームの名に相応しい戦いっぷりを見せる烏野。
エース・東峰旭(演:福田侑哉)や田中龍之介(演:鐘ヶ江洸)の迫力あるスパイクも決まり、1セット目冒頭から怒涛の勢いで試合が展開される。
こうした熱い試合展開を彩るのは、観客の予想をはるかに越える演出の数々。傾斜のある八百屋舞台は今回も健在で、横幅だけではなく奥行、高低差など、立体的な演出を楽しむことができる。また、木下久志(演:森本将太)や福永招平(演:石上龍成)を筆頭とした迫力あるアクロバットも見どころだ。
スロースターターである音駒に対して、烏野が一気に試合を持っていくかと思われたが、そこに立ちはだかるのが孤爪研磨(演:永田崇人)だ。ツーアタックに見せかけたフェイント、選手間の隙間を狙った返球など、音駒の“脳”である研磨が見事にゲームメイクしていく。
研磨は圧倒的なパワーの持ち主なわけでも、人より抜き出た長身というわけでもない。しかし、相手を徐々に追い詰めていく“静”の迫力は、永田の幾重にも計算され尽くした芝居があってこそだろう。
続く2セット目は、徹底的な“日向潰し”が行われる。サーブはすべて日向を狙い、助走の隙すら与えない。
十分な助走を取れずに飛べなくなる日向の姿は、見ていて苦しくなるほど痛々しい。ジャンプという武器を失った日向から研磨は興味を失いかけるが、そのピンチを救ったのは影山だった。
影山は、速さを捨てたオープン攻撃を選択をする。助走を取るために高くトスを上げ、日向に3枚ブロックと真っ向から勝負させるというのだ。
“ドンジャンプ”を習得した日向が覚醒し、自身よりもずっと高い3枚ブロックを上からぶち抜くシーンは漫画さながらの迫力だ。
影山のおかげで再び翼を得た日向の止まらぬ勢い。烏野と音駒の“殴り合い”が繰り広げられる。
そして迎えたファイナルセットは、一瞬たりとも目を離すことのできない展開が続く。両チーム一歩も譲らない壮絶なラリー合戦からは、舞台上に存在する全ての登場人物が全力であるということが伝わってくる。
音駒応援団のひとり、山本茜(演:重石邑菜)の「コートの中に面白くない人はいないの!」という台詞もおおいに納得だ。コートの外ももちろん面白いことになっている。
田中冴子(演:安川里奈)は、前作から引き続き迫力ある和太鼓演奏で観客を引きつけるし、観客席の大将優(演:福澤侑)のキレのあるダンス、ミカちゃんとのコミカルなシーンも注目ポイントだ。
全員が主役ともいえる試合は、熱気を増して最終局面へと突き進んでいく。結末はどうかその目で見届けてほしい。
人の数だけ存在するドラマが、試合に深みを持たせる
先述した通り、“ゴミ捨て場の決戦”は手に汗握る熱い試合展開が魅力のひとつだが、加えて、この試合が多くのファンに愛される理由は、登場人物の数だけ存在する感動的なドラマにあるだろう。
今作では、烏養一繋元監督(演:木村靖司)と猫又育史監督(演:大高洋夫)がまず舞台に登場する。全ての始まりともいえるふたり。遠い昔に交わした約束が今日に繋がっているのだと、冒頭から胸を締め付けられるような感覚を覚える。
他にも因縁・宿敵・友情・師弟など、数えきれないほどの物語がこの試合には凝縮されている。“進化の夏”を経て描かれる黒尾と月島蛍(演:山本涼介)の師弟対決、田中と山本猛虎(演:川隅美慎)のライバル関係など――さまざまな物語が存在するが、その中でもやはり、幼馴染である研磨と黒尾の絆は特別だったように思う。
幼少期に出会い、今日までバレーを続けてきたふたり。交わす言葉の一つ一つに目に見えない信頼が滲み出ているようで、舞台上では描かれなかった今までの時間まで感じることができた。
事前インタビューで、永田は「頌利と一緒だから、幼馴染になれたと思っています」と語っていた。“烏野、復活!”から4年間にわたり演劇「ハイキュー!!」の舞台に立ち続けたキャスト同士の絆も、今作の感動を彩る大きな要素となっている。
数多の物語が繋がった上に成り立つ“ゴミ捨て場の決戦”はシリーズ屈指の感動作だ。集大成ともいえるこの作品を、ひとりでも多くの人に見てもらいたい。
スタッフ・キャストコメント
ウォーリー木下(脚本・演出):シリーズを通して目指していた、ある意味”頂上決戦”。全てのドラマがここに集約するように今まで作っていたので、僕としてもとても感慨深いものになりました。演出面でも今までの集大成ができたのではないでしょうか。同時に、”演劇を創り上演する”ことの難しい時代にどんぴしゃ重なったのも、また別の意味で感慨深いものでした。ともあれ、観客の皆さまには純粋に「ハイキュー!!」の面白さを感じてもらえれば幸いです。バレーは楽しい。演劇は楽しい。それだけです。
醍醐虎汰朗(日向翔陽役):音駒高校の方々と今回初めて共演しましたが、稽古の段階で空気感や熱量を芝居上でビリビリと伝えてくれるので、それに刺激されて相乗効果になり素敵なシーンがたくさん生まれたと思います。音駒高校のメンバーとご一緒できて本当に良かったなと思います。ここからキャスト・スタッフの方々と一緒により素敵な作品にできるよう、日々考えて公演に臨みたいと思います。そして、舞台に足を運んでくださる皆さま、本当にありがとうございます。 この時期だからこそ、この熱量を会場全体を通して必ず心にお届けします。楽しみにしていてください!!
赤名竜之輔(影山飛雄役):演劇「ハイキュー!!」は、作品自体の熱さもそうですが、熱量と躍動感、 キャストの熱さも感じられることが魅力です。原作のベストゲーム1位の”ゴミ捨て場の決戦”ですので、演劇「ハイキュー!!」でも面白い作品にしたいと思っています。観に来てくださった方が実際に試合を観戦しているように感じたり、物語に入り込んでいただけるよう、精一杯演じたいと思います。そして、音駒の皆さんに今の烏野と”ゴミ捨て場の決戦”ができて良かったと言ってもらえると嬉しいです。最後まで走りきりますので、よろしくお願いします。
永田崇人(孤爪研磨役):今回の演劇「ハイキュー!!︎」は、僕にとって集大成ということもあり、日々稽古をしながら、たくさんの想いが込み上げてきます。今まで積み上げてきたもの、そして新しいものを融合させて、最高の作品をお届けできたらと思います。このような時期だからこそ、観に来てくださった方の背中を押せる、きっと、そんな作品になっていると思うので、沢山の方々に劇場まで足を運んでいただきたいです。最後まで応援よろしくお願いします!!
近藤頌利(黒尾鉄朗役):黒尾鉄朗役の劇団Patch・近藤頌利です。今作で6作品目の出演となります。恥ずかしながら、演劇「ハイキュー!!」歴で言えばベテランになってしまいました。ですが初心を忘れずに、精一杯声を出し、走り回って汗をかきたいと思います。“烏野、復活!”から今作まで、約8カ月間の物語を4年かけて演じてきました。稽古を経て改めて音駒高校が好きになりました。集大成の勝負、最後のご褒美タイムを楽しみたいと思います。楽しんでもらえる作品になっています。応援よろしくお願いします!
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