2020年1月10日(金)初日を迎える舞台「憂国のモリアーティ」。ミュージカル化・舞台化・アニメ化と続々メディアミックスされる話題作とあって、この舞台版も大きな注目を集めている。
今回は舞台「憂国のモリアーティ」のゲネプロ及び囲み会見の様子をお届けする。
芝居と舞台装置で魅せるモリアーティ兄弟の人間ドラマ
幕が開けると、まずウィリアム(演:荒牧慶彦)の瞳に心を揺さぶられた。その瞳は、確固たる信念に突き動かされ、まっすぐに己の正義を見つめている目そのものであった。
淡々と、ときに偽りの笑みを浮かべ“正義の所業”を為している姿は、まるで青く燃える炎のように熱さと冷たさを同時に感じる光景である。作り物のように端正な顔立ちの彼だからこそ生み出せる、体温を感じさせない無機質な質感が、よりウィリアムという人物が持つ絶対的な信念を浮かび上がらせていた。
アルバート(演:瀬戸祐介)の人たらしな柔和な笑顔と、その裏に隠された切れ者の顔。ルイス(演:糸川耀士郎)の少ないセリフから染み出している兄への思いと、大切にされるがあまり感じてしまっている孤独感。そういったものも、過去の出来事を交えながら丁寧に描かれていた。
兄弟3人がチラリと視線を交わす。たったそれだけの所作で、ウィリアムを軸に、絶対的な信頼と畏怖の念でつながれた強固な絆が感じられるだろう。
モリアーティ陣営でいえば、モラン(演:君沢ユウキ)やフレッド(演:設楽銀河)の出演シーンも見応えがある。彼らが登場するシーンはぜひアクションにも期待していてほしい。可動式のセットが大胆に動き、その不安定な足場のなかステージ上を文字通り右へ左へと動くアクションは、その空間が有限であることを忘れさせてくれる。
北村諒の新境地・シャーロック・ホームズ、加速するクライマックス
1幕ではモリアーティ兄弟を中心に、彼らが国を変えるために動き始めた様子が、いくつかの事件を通して描かれていく。原作を大胆にアレンジしている部分も多い印象だが、根っこのところにある登場人物たちの思いというのは損なわれることなくしっかり表現されていた。
一方で、シャーロック・ホームズ(演:北村 諒)とワトソン(演:松井勇歩)、そしてアイリーン・アドラー(演:立道梨緒奈)のとある文書をめぐる事件は2幕でじっくりと描かれていく。
シャーロック陣営の見どころは、なんといってもモリアーティ側にはない軽快さだ。ワトソンやミス・ハドソンを中心に、コミカルでテンポのいいやりとりが心地良い。
▲シャーロックの兄マイクロフト・ホームズ(演:早乙女じょうじ)も登場。兄弟のやりとりは必見
これまで数多くの2.5次元作品に出演してきた北村だが、今作ではまた新たな魅力を開花させたのではないだろうか。ときに無邪気な子供のようであり、ときに大人の男性の色気を感じさせる。そんなシャーロックを好演しており、舞台版ならではのシャーロックが新たに生まれたと感じさせてもらった。
さらに、終盤では両陣営が対峙していくことになるのだが、本来混じり合わない色が混ざって新たな色を作り上げていくとき、ステージ上にはどんな光景が、そしてどんな結末が待っているのか。ぜひ劇場で、約3時間の壮大な彼らの“信念”の物語を見届けてほしい。
囲み会見レポート
ゲネプロの前には、モリアーティ陣営・シャーロック陣営の計5名が囲み会見に登壇した。笑いあふれる会見の様子をお届けする。
ーー抱負、みどころをお願いします。
荒牧慶彦(ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役):この「憂国のモリアーティ」という作品は先にミュージカル版が大盛況で終わり、そのあとにアニメ化も発表され、それに続き舞台版も上演されるということで、これから盛り上がっていく作品だと思っております。内容もすごく面白い作品ですし、僕自身この作品がどう進化していくのか見守っていきたいと思っています。
まずはこの舞台「憂国のモリアーティ」を、まだ「憂国のモリアーティ」という作品を知らない人に向けて、本当に本当に素晴らしい作品だぞと僕らの思いを込めてお届けします。
視覚的にも内容的にもハラハラドキドキするような内容になっておりますので、たくさん楽しんでいただけたらと思います。
瀬戸祐介(アルバート・ジェームズ・モリアーティ役):だいたい全部まっきー(荒牧慶彦)が言ってくれた通りですね(笑)。
今回の作品では、人間の価値観の深層に迫る作品だなと思っておりまして、観ているみなさんも各々の価値観と照らしあわせてみると面白いと思います。
この1ヶ月間、演出の西田さんのもと、西田さんがすごく作品を理解してくださっていたので、僕らも西田さんについていくのがこの作品を成功させる1番の近道だなと思って細かいところまで作り込んできたので、その世界観をぜひ堪能してほしいな、と思います。
見どころとしては、この兄弟チームとシャーロックチーム。空気感がすごく違うので、1幕は主に僕ら兄弟で、そのあとシャーロックたちが入ってくるんですが、その2つが混じり合うときの緊張感を楽しんでいただけたらと思います。
糸川耀士郎(ルイス・ジェームズ・モリアーティ役):この話を頂いたときから、キャストみなさんのお名前を拝見をして。この方々と一緒に作品をつくれることを楽しみに稽古にも臨みました。荒牧さんもおっしゃてたんですけど、ミュージカル版が先に上演されまして、この舞台「憂国のモリアーティ」として何をお客様にお届けするのかっていうのを稽古前から悩んでいたんですけど、完成した作品を場当たりしてみて、これはすごく舞台にしかない魅力もたくさんつまっているなと思ったので、僕も初日の幕が開くのが楽しみです。
ほんっとうに誰一人休まず、すごく動き回ってつくる作品なのでひとりも怪我なく千秋楽を迎えられることを祈って公演をしたいと思います。
松井勇歩(ジョン・H・ワトソン役):この作品は演劇の良さが存分につまりまくった作品になったなと思っています。この作品自体が明るいか暗いかでいったら、暗い話がメインだったりするんですけど、そのなかでも僕は1番明るいキャラなので、その存在意義を舞台上でみなさんにお届けできればなと思っています。
北村 諒(シャーロック・ホームズ役):この作品が決まってキャストを見たときすごく楽しみになりましたし、演出西田大輔さんということで一番ワクワクしたのは、人間味のある舞台になるだろうなって始まる前に勝手に思っていて。実際に稽古を重ねるなかで、登場人物たちがより人間味が増したり、逆に人によっては人間味がある意味無かったりっていう部分がはっきり描かれているので、そのあたりをみていただきたいな、と思います。
瀬戸くんも言っていましたが、モリアーティ兄弟チームとシャーロックチームのコントラストがはっきり出ているので、そこを楽しんでいただけたらなと思います。
ーー稽古場でチームごとの面白かったり仲が良かったりが感じられるエピソードがあれば教えて下さい。
荒牧:モリアーティチームは、だんだんルイス役の(糸川)耀士郎がいじられキャラになっていったなって。役の特性上そこまで喋るキャラクターじゃないので、喋らないからこそ「なんで今そこいんの?」みたいな、ちょっとしたいじりがありましたね(笑)。
糸川:僕のところにくれば、誰でも笑い取れる、みたいな。
糸川がそう補足すると、すかさず兄2人から「それはないだろ(笑)」と、いじりが。それに対し、糸川は「1番おもちゃにしてたくせに~!」と末弟らしく拗ねる姿も見られた。瀬戸と糸川のやりとりをにこにこ見つめながら、最後は荒牧が「こんな感じで仲いいエピソードがありました。」とまとめていた。
北村:こちらはですね、ワトソン君が1番動ける子ですから、困ったことあったらワトソンにやっとけ、っていう感じで。稽古場でいろんなことやったよね。
松井:はい(笑)。いろんなことやってました!
北村:そんな感じです(笑)!
ーーここにいないキャストもたくさん出演されていますが、なにか魅力的だなと感じたエピソードがあれば教えてください。
荒牧:個人的には今回出演しながらも演出助手を務めてくださっている佐久間祐人さんがすごくお気に入りです。演出助手をしながら役を演じるというのは、頭がこんがらがってしまう立場で、それでも西田さんの素晴らしいアイディアをどうしたら舞台で表現できるのか。すごく知恵を絞ってくださって、この作品の影の功労者でもあると思うので、佐久間さんがすごく印象的です。
北村:僕ら側からしたらミス・ハドソン(演:野本ほたる)さんですかね。
松井:稽古一発目のときからもう「そのまんまやん」みたいな、漫画から出てきたみたいな完成度がすごい高い女優さんで、同じシーンで出ているときは助けて頂いていたりします。
瀬戸:そうですね……。ここにいないメンバーでいうと、ルイス役の糸川耀士郎ですかね。
瀬戸らしいナチュラルなボケに、糸川が「ちょいちょいちょい! いますから!」と突っ込んだものの、いまいちウケず……。糸川が、あれおかしいな? と首をかしげる様子がなんとも微笑ましかった。
フォトセッションではさらにキャスト陣のお茶目な一面が存分に発揮されることに。その和気あいあいとした様子は、ぜひ写真から感じ取ってほしい。
▲「楽しげに」というリクエストに応えてくれた2枚
舞台「憂国のモリアーティ」は2020年1月10日(金)から19日(日)まで東京公演が、1月31日(金)から2月2日まで大阪公演が上演される。新たに提示される「憂国のモリアーティ」という作品のもうひとつの可能性の姿を、ぜひ劇場で感じてみて欲しい。
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