ファン待望の「ペルソナ」シリーズ、「ペルソナ5」の舞台化作品「PERSONA5 the Stage」が2019年12月13日大阪で幕を開けた。
今回は、2019年12月19日(木)に東京公演初日を迎えた本作の東京公演ゲネプロ及び囲み会見取材の様子をお届けする。
色鮮やかでスタイリッシュな世界が出現! 欲望が赤裸々に描き出される
原作の「ペルソナ5」の多彩でスタイリッシュな作風。それが見事に舞台作品としてステージ上に構築されているのがなによりも印象的だった。
大胆に映像演出も使っているのだが、それによりペルソナという一見すると非現実的な存在、そして普段は目にすることがない欲望を映し出す〈パレス〉の現実と妄想の“狭間の欲望”が視覚に訴えかけてきたのだ。
映像も相まって、まるでアトラクションに乗っているような気分になる。総合的なエンタメ力が高く、どのシーンも飽きさせない工夫が凝らされていた。
本作は、主人公(演:猪野広樹)たちがペルソナに覚醒し心の怪盗団を結成していくまでの物語、そしてその過程で避けることができない鴨志田(演:髙木 俊)との対峙の内容を丁寧に描いている。
現実世界と〈パレス〉を行ったり来たりする関係で場面転換が多いが、上述した複数の仕掛けや工夫により、観客はスムーズに両方の世界を往復できるだろう。
原作ファンは思わず「そうそうこれ」と頷いたり、「あえてこのシーン入れるんだ!?」と驚いたりしながら楽しめるはずだ。
原作からのシーンもそうだが、なによりオリジナルシーンがとても魅力的。キャラクターたちが胸のうちに抱える苦悩を舞台ならではの歌やダンスも用い、観客たちの五感に訴えかけてくる。これによって、観客は彼らが抱えているものをより自分に近いリアルな感情として捉えられるだろう。
また束の間の日常的なシーンも印象的だ。ステージ上でなにげなく交わされる会話やアイコンタクト。これらはストーリーの核心に関わる部分ではないが、主人公たちの高校生としての素顔が垣間見え、戦闘シーンとの対比を色濃く映し出していた。
戦闘シーンは原作でもアニメでも縦横無尽のアクションが爽快である。ステージ上にも躍動感あふれるアクションが満載であった。アニメのようにコマ割りがない分、より彼らが共闘する姿が楽しめる。
“ONE TEAM”として次第に固まっていく絆の変化が、戦闘シーンからも感じられるので、ぜひ仮面の下に隠れた表情を想像しながら観てみてほしい。
シルエットまでも完璧に再現! 弱さと強さを感じさせる主人公たち
今回は鴨志田編として、主人公・竜司(演:塩田康平)・杏(演:御寺ゆき)を中心にストーリーが展開していく。
どのキャラクターもまずシルエットがまさに原作そのままなのだ。各キャラクターのシルエットは原作でも効果的に演出に使われていることもあり、シルエットの完成度の高さが観客を作品の世界に誘うファクターとなっている。
3人は初対面の状態から次第に関係が変わっていく。とくに主人公の、心を開いた相手とそうでない相手に対する距離感の違いが絶妙な差。これを猪野が繊細に演じ分けていた。真顔で冗談だか本気かわからないような冗談を言う姿が次第に増えてくるところも、原作ファンは思わずニヤけてしまうはずだ。
竜司のいつでも勢いに任せて進んでいくところや、杏の根の優しいところ。それぞれの苦悩がしっかり描かれているからこそ、戦っている彼らの格好良さが浮き上がってくる。
またモルガナ(声:大谷育江)の可愛さに目を奪われる観客も続出するのではないだろうか。原作でも可愛さが際立っているモルガナだが、あの姿でアクションをこなしたりダンスをしたりするのだ。その度にぴょこぴょこ尻尾が揺れ、猫(といったら怒られてしまうが)好きにはたまらない作品ともいえる。
主人公たちが活躍するには、敵となる大人が汚い欲望にまみれている必要がある。そういった意味では、完成された再現度の高い肉体美で鴨志田を熱演した髙木 俊の存在は大きい。
観客までもイラッとさせる下衆な演技はもちろん、客席を巻き込んでのコミカルな演技もお手の物。会見でも見どころとして挙げられていた日替わりネタも、ぜひ複数回観劇してどんなネタが飛び出したのか確認してみてほしい。
囲み会見コメント
囲み会見には主人公役の猪野広樹、坂本竜司役の塩田康平、高巻 杏役の御寺ゆき。さらに天才高校生探偵・明智吾郎役の佐々木喜英、鴨志田卓役の髙木 俊の計5名が登壇。
大阪公演でつかんだ手応えや、いよいよ始まる東京公演に向けての意気込みを熱く語ってくれた。
ーー公演への意気込みを聞かせてください。
猪野広樹(主人公役):大阪公演を経まして今日から東京公演ということで、大阪のお客様が集中して観てくださったのですごくやりやすい環境でした。そのままいい雰囲気で東京に持ってこられたかなと思っています。
それぞれ日替わりシーンもありますし、エンターテイメントというところももちろんありますが、演出の西森さんがおっしゃっていた「エンターテイメントだけではない地に足がついたお芝居の部分を楽しんでいただきたい」という言葉をしっかりと意識しながらやっていきたいと思っています。
塩田康平(坂本竜司役):主人公が覚醒するシーンで、彼に影響を与えているのは僕(坂本)と鴨志田先生なんですけど、影響を主人公とか他の俳優さんに与え続けてそれがお客様に伝わっていい広がりになればいいなと思っていますので、影響を与え続けられるよう頑張りたいと思います。
御寺ゆき(高巻杏役):私自身舞台自体が2回目なので、先輩がたにすごく引っ張っていただいているところがあるんですけど、最後まで集中力をきらさないのと、毎公演すべてのエネルギーをかけて突っ走っていきたいです。あとこの役を御寺ゆきが演じて良かったなっていってもらえるくらい頑張っていきたいと思います。
佐々木喜英(明智吾郎役):今回のストーリーの範囲ではまだ明智吾郎という役はベールに包まれているので、影から怪盗団の活躍を見守りながら、そのなかでも次回作につながる爪痕を残していきたいと思います。
髙木俊(鴨志田卓役):今回第一弾ということで、稽古から難しいことがすごく多くて。ここまで積み重ねてきたものが次に繋がるように、ここまで僕ら頑張ってきたのでそこを観てほしいです。
ーー見どころを教えてください。
猪野:それぞれが大人に対して反逆していく意識をもった人たちが覚醒していくというシーンがあるんですが、そこまでの過程、どういうストレスを抱えていてどういうふうに爆発していくのか。
覚醒する人たちがそれぞれそこを大切にしていますのでそこを観ていただければなと思います。あとは、しゅんりーさん(髙木俊)演じる鴨志田卓が笑わせにきます(笑)。公演の8割くらいもっていくと思うのでそこを楽しみにしていただければと(笑)。
塩田:歌・ダンス・芝居・殺陣たくさんやる作品ですけど、僕はラップもあるんですね。まずラップがあることに稽古場で衝撃を受けたんですけど、頑張っているので注目してほしいです。
あと原作ゲームでコープが深まるっていうんですけど関係値が上がっていくシーンがところどころにあります。そのコープが上がるシーンが捕まえられると、「あ、いま2人のコープあがったな」ってより楽しめると思います。
御寺:覚醒シーンでは鞭を振っている場面があるので、他の人とは違う戦闘の仕方を観てほしいなと思います。志帆と杏ちゃんとのシーンも作り上げてきたのでそこも観てほしいなと思います。
佐々木:原作のゲームでも楽曲を手掛けてらっしゃる喜多條敦志(アトラス)さんが舞台のために6曲作ってくださいました。そのなかの2曲を僕は歌わせていただくんですが、僕自身舞台での歌唱というのが約1年半ぶりとなるので、久しぶりに舞台で歌えることをとても楽しみに思っています。魂のこもった歌をぜひ聴いてほしいと思います。
髙木:大阪公演はすでに終わっているので噂に聞いているかもしれませんが、脱ぎます。本番までに食事制限もして体脂肪率8%まで落として、肉体も役作りとしてがんばってきたので、自分で言うのも恥ずかしいんですが裸観てください(笑)! 今作は第一弾ということで鴨志田はここで終わっちゃうんですけど、1作目に恥じない役作りをしてきたのでその熱演を観てほしいです。
ーー最後にお客様へのメッセージをお願いします。
塩田:「怪盗おねがいチャンネル」というサイトが登場するんですけど、実際にサイトがあったらお客様がそこに書き込みをして応援したくなるような、そんな舞台にしたいと思いますので応援よろしくお願いいたします!
御寺:千秋楽まで突っ走っていきますのでぜひみなさん楽しみにしていてください。
佐々木:ストーリーももちろん楽しんでほしいんですけど、僕個人としては原作にはまだまだこの先のストーリーがあるので、どんどんこの作品が大きくなっていって続いていってほしいなと思います。そのためには皆さんの応援が必要なので、末永くこの舞台を応援してほしいです。
髙木:悪役なんですけど、皆さんで一緒に鴨志田パレス盛り上げていきましょう(笑)!
猪野:もともと原作ゲームがすごく人気で、演じることに対してあんまりプレッシャーは感じないほうだったんですけど、改めてみんなでこうやって作っていく作業を経て、自分が課されていることの大事さというのがわかりました。稽古・本番ともに誰一人妥協することなくここまでやってこれて本当にいい座組になったので、このチームワークで“ONE TEAM”でやっていきたいと思います。
格好よく決め顔で「ONE TEAM」を力強く宣言する猪野に、隣の塩田からはドヤ顔や」とツッコミも。その言葉に「言いたかった」と笑みをこぼしみんなで笑いあう姿からは、しっかりと“ONE TEAM”の絆が感じられた。最後に「応援のほどよろしくお願いいたします」と締め、和やかな囲み会見が終了。
原作ファンの熱くなる要素をあらゆる表現を用いてステージ上に描きながら、自分のなかの正義と向き合い立ち上がりはじめる主人公たちの第一歩。2019年12月19日から29日まで天王洲 銀河劇場に現れる怪盗団に、思わず心盗まれてしまうような刺激を受け取ってみてはどうだろうか。
©ATLUS ©SEGA ©SEGA/PERUSONA5 the Stage Project
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