日本の演劇クリエイターに大きな影響を与えている韓国の大人気舞台「私に会いに来て」が、ついに日本版キャストで生まれ変わる。
藤田玲、中村優一ら、話題のキャストを迎え、2019年9月13日(金)〜16日(月祝)東京・新国立劇場 小劇場にて、9月19日(木)・20日(金)大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。
今回は、2019年6月10日(月)に行われた制作発表会見・囲み取材の模様をお届けする。
▲登壇者。左からヨリコ ジュン(演出・映像)、兒玉遥(パク・ヨンオク記者役)、藤田玲(キム・インジュン刑事役)、栗原英雄(キム・セゴン課長役)、中村優一(チョ・ナンホ刑事役)、西葉瑞希(ミスキム役)
日本演劇界に影響を与える、舞台「私に会いに来て」とは
舞台「私に会いに来て」は、劇作家・演出家キム・グァンリムが脚本を執筆し、1996年韓国にて初上演。その後も再演に再演を重ね続ける本格派ラブサスペンスだ。
この舞台を原作とした映画「殺人の追憶」が2003年ポン・ジュノ監督により制作され、日本でも広く知られる所となった。
なおポン・ジュノ監督は、2019年第72回カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高作品賞)を受賞している。今最も話題の映画監督の一人だ。
日本の劇作家、演出家、俳優などにも熱狂的ファンを持つ「私に会いに来て」が、ついに東京・大阪で上演される。
主役のエリート刑事キム・インジュン役を務めるのは、MANKAI STAGE「A3!」やミュージカル「刀剣乱舞」など数々の2.5次元作品にも出演する実力派俳優・藤田玲。
またその相棒となる暴力刑事チョ・ナンホ役に挑戦するのは、「薄桜鬼SSL 〜sweet school life〜」や仮面ライダーシリーズで注目される中村優一だ。
これまでとはガラリと異なるイメージの役柄を演じるふたりのコメントを中心に、制作発表会見・囲み取材の様子をご紹介しよう。
出会いは女装、時は経ち……お互い30代に。制作発表会見・囲み取材コメント
――見どころと意気込みをお願いします。
▲舞台単独初主演となる藤田玲
藤田玲(キム・インジュン刑事役):僕の演じる役は、片田舎に派遣されたエリート刑事。ちょっと詩的な面もあり、黙々と動く役柄です。
最近活発な役を演じることが多かったので、それを全部逆に振り切って演じます。
舞台では初の単独主演となる今作、すごく嬉しく、また楽しみです。
この作品は1996年に韓国で初演されてから、20年以上再演され続けている人気作。「殺人の追憶」というタイトルで映画化もされています。
作品の力が本当に強いなあと感じる舞台なので、その主役を演じることはプレッシャーであると同時に光栄です。
この舞台を原作とした映画「殺人の追憶」を観たんですが、一昔前の日本を見ているような泥臭い感じが作品全体にありました。
ちょっと懐かしかったり、逆に新鮮だったり、そういう部分を大切にして演じたいと思っています。
また韓国で上演された舞台の写真を見せて頂いたんですが、たくさん小道具を使った写実的なセットが使われていて、なるほどな、映画のような世界観でやっていたんだなって思いました。
それがヨリコさん(演出のヨリコ ジュン)の演出でどういうふうに変わるのか、日本版はどういう見せ方をするのかという点にも注目してほしいです。
あとは、役者同士の台詞のやりとりがウィットに富んでいるというか、面白い部分もあったりします。
物語は韓国で実際にあった連続殺人事件が元になっているので、すごく重いサスペンスだし、男たちは熱いし、という感じなんですけど、そのウィットに富んだ台詞回しでちょっと気持ちよさを出していければいいなと思っています。
すばらしいキャスト・スタッフの皆さん、演出のヨリコさんとともに、日本版の「私に会いに来て」どんな作品が作れるのか今からすごく楽しみです。
▲暴力刑事に初挑戦の中村優一
中村優一(チョ・ナンホ刑事役):演出のヨリコさんと2年くらい前に違う作品でご一緒したとき、映画「殺人の追憶」についてお話したんです。
ふたりともこの映画が好きで、その原作である「私に会いに来て」で何かできないかなってお話をしていたところ、こうやってヨリコさんとこの作品でご一緒させていただけることになった。
すごく嬉しいですし、この作品の一員になれたことがとても幸せです。
僕が演じるチョ・ナンホ刑事はちょっと暴力的で、取り調べでもすぐ手が出てしまうような役どころ。そういう荒くれ者のキャラクターは今回が初挑戦です。
僕の唯一の取り柄であり名前にも入っている「優しさ」を、今回は取り除き、封印し(笑)、この役柄と向き合って頑張っていきたいです。
――素と全然違う役を演じるということですよね。
中村:そうですね、どちらかというとあの、安全なほうが好きで……(笑)。
僕は小心者であんまり人と争うことがないので、今回は舞台上でちゃんと争い合いたいなと思っています。
容疑者と戦ったり、藤田玲くんと喧嘩したり、たくさん荒くれたいと思います!
▲この日が初顔合わせとは思えないほど、キャスト陣の雰囲気はリラックスしていた
また、藤田・中村の懐かしい出演作についてこんな会話も飛び出した。
中村:主演の藤田玲くんとは、10代の頃に女装する役でドラマ共演していたんですよね。
藤田:コラ。
中村:「それ喋るなよ」ってさっき(控室で)言われたんですけども。
(※編集部注:ふたりは2006年にテレビドラマ「プリンセス・プリンセスD(つだみきよ原作)」にて初共演。互いに「端麗な容姿を活かして日常的に女装する」という役を演じていた。)
藤田:ほんとに言ったな! でも本当に、それくらい付き合いが長いですからね。
中村:ふたりとも16〜17歳くらいで、まだ高校生でした。お互い今は30代になりましたね。
藤田:そうですね。他の舞台でも共演させていただきましたが、そのときは中村さんが優しい役で、僕が血気盛んな役でした。
中村:今回は真逆ということで、喧嘩するシーンでは藤田玲くんと思いっきり喧嘩したいと思います。
藤田:楽しみですね。
実力も華やかさも抜群、多才な共演者がズラリ
今作には、藤田・中村の他にも魅力的な俳優陣が顔を揃える。
副署長でもあるキム・セゴン課長役を務めるのは、大河ドラマや朝ドラでも活躍し、ミュージカルにも多数出演している栗原英雄。
▲自ら志願して捜査に参加する刑事を演じる、栗原英雄
栗原:最近悲惨な事件が続いていることもあり、この作品の元になった事件が未解決である事実にすごく心が痛みます。
でもこの作品を上演することで、さまざまな事件を「風化させてはいけない」ということを伝えられるのではないかとも思っています。
この作品の登場人物は、ひとりひとりがそれぞれの正義の中で生きています。お客様もそのうちの誰かの目線になって観劇すると、より楽しめるのではないかと思います。
この事件が実際に起きた時期は、奇しくも僕が役者になった時期と重なります。
23年もの間、この作品が演じられ続けているということ自体が得難く大切なことで、日本で僕たちが受け継ぐことには意義があると感じています。
そして仕事熱心な女性記者パク・ヨンオク役を演じる兒玉遥は、会見の前日アイドルグループ「HKT48」を卒業したばかり。今回が卒業後初の舞台となる。
▲バリバリ働く女性記者を演じる、兒玉遥
兒玉:私の演じる女性記者はすごく情報通で、仕事ができる女性。強い女性を演じられるよう頑張ります。
がっつり舞台に出演するのは初めてなので、力いっぱいお芝居を吸収していきたい。とにかく学ぶ、吸収、(アイドルから)女優モードに切り替えて挑戦していきたいです。
またキーパーソンとなるカフェ店員ミスキム役を演じるのは、アイドルグループ「きゅい~ん’ズ」のリーダーであり女優としても活躍中の西葉瑞希。
▲捜査本部の癒し的なカフェ店員を演じる、西葉瑞希
西葉:この作品に参加できること、キャストの先輩方と共演できること、すごく大きな会場で上演させて頂けること、全て光栄です。
映画「殺人の追憶」を初めて観たとき、私は一視聴者としてすごく怖かったんですね。
本当にあった猟奇的な事件なので重たいテーマではありますが、それを舞台で表現することで人間の強さや脆さをよりリアルに伝えられるのではないかと思っています。
重たさの中にもスピード感のある作品なので、ぜひ皆さんに見て頂けたらと思います。
▲事件の容疑者役を演じる、グァンス(SUPERNOVA)
さらに、6月10日の正午に出演情報が解禁となった韓国の俳優・ダンスヴォーカリスト、グァンス(SUPERNOVA)が、事件の容疑者役を演じる。
グァンスの登壇はなかったものの、「映画を100回くらい観るほどに大好きな作品。ヨリコさんや他の演者さんとともに、この作品の新しい世界観をたっぷりと観客の皆様に届けたいと思っています。ビジュアル含め役作りのために頑張っています。丁寧に演じたいです」とのコメントが寄せられた。
また今作で演出・映像を手がけるヨリコ ジュンは、次のように語った。
▲演出を手がけるヨリコ ジュン
ヨリコ:実際に起きた事件を元にしている以上、作品を好き嫌いで表現するのは難しい。ただ僕がクリエイターとしてスタートしてから物凄く影響を受けている作品だ、ということは言えます。
時代的には少し前の事件なので、当時の捜査方法や登場人物の人間性など、現代の観客の皆様にも分かりやすく伝えられる演出にしていきたい。
ここに集った俳優陣の皆さんも、おそらくファンの方々が見たことのないような演技を見せてくれると思うので、そこが見どころです。
▲会見の最後には「私たちに会いに来て」とタイトルに引っ掛けたコメントで手を振った面々。早くもカンパニーの結束力が感じられた
実際の連続殺人事件を元に創作された本作。
犯行の猟奇性を鋭く描き出すセンセーショナルな内容と、捜査にあたる刑事たちのビハインドストーリー、そしてそれを演じる俳優たちのウィットに富んだ演技も見逃せない。
チケットは先行発売2019年6月15日(土)12:00〜、一般発売8月4日(日)10:00〜開始。
サスペンスものが好きなあなた、注目度ピカイチの本作に触れてみるのはいかがだろうか。
あらすじ
人生を懸けて闘い続ける
刑事(おとこ)たちの人間模様を描いた
究極のラブサスペンスが日本に登場!
「ああ、もう死んでしまいたい。」
何が彼らをそこまで追い詰めるのか…1980年代後半に実際に韓国で起こった殺人事件。性格も捜査方法も異なる4人の刑事が集結した。彼らの目的はただひとつ、残虐な犯人の逮捕。
だが、捜査線上に浮かぶサマザマナ容疑者に翻弄され苦しめられ、
もがきながら闘い続けた先で得たものとは――。
映画賞を総嘗めにした韓国映画「殺人の追憶」の原作となった
究極のラブサスペンスドラマが日本のキャストによって新しく生まれ変わる。
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