4月19日(水)~23日(日)東京芸術劇場シアターウエストにて舞台『夏の夜の夢』が上演される。2021年度の本公演では俳優の山本一慶が演出家としてデビューし話題に。6年ぶりに3度目のハーミア役を演じる山本、初の女性役に挑む宇野結也、シェイクスピア作品初挑戦の稲垣成弥と岸本勇太をはじめ、お笑い芸人のピクニックとオラキオらが妖精のいたずらに巻き込まれ大騒ぎとなる一夜を描く。お騒がせ妖精には実力派俳優の鯨井康介、髙木俊、石田隼。シェイクスピアに和テイストを加えた新たな『夏の夜の夢』とは? 作品を代表して、ハーミア役・山本一慶、ライサンダー役・稲垣成弥、ヘレナ役・宇野結也、ディミートリアス役・岸本勇太の4人に話を聞いた。
もくじ
見ていて飽きない、あっという間に感じる作品
――ただいま絶賛稽古中ですが、インタビュー当日(4月上旬)は3幕の立稽古が行われていました。ハーミアとライサンダーが駆け落ちし森へ、それを追ったディミートリアスとヘレナも迷い込み、妖精たちに魔法をかけられ、さらに職人たちも森に集結し、関係がごちゃごちゃしてくる見どころのパート。各々セリフと動きのマッチングを探る熱の入った稽古が繰り広げられていました。
山本:この4人のシーンは難しいところでもあり、まだみんな探り探りしているところです。妖精チーム、職人チームはやっぱりおもしろくて、毎日笑わせていただいていますね。
稲垣:まずセリフがいつも使うような言い回しではないのでちょっと苦戦中ですが、いま頑張っているところです。一慶は前回演出をしていたので、いろいろ聞いたりして試行錯誤しながらやっています。一慶さんのお陰です!
山本:ここに攻略本があるのでみんなに使っていただければ!
宇野:稽古場は和気あいあいとしていて、キャストの皆さんが生き生きとされているのですごく和みます。ヘレナ役をどう筋道を通して行くか、わりと何パターンか作れそうなので、今いろいろ考えて試している最中です。やっぱり一慶くんがこの作品を俯瞰(ふかん)で見れる力を持ってるし、ハーミアとしてそこにいてくださるので本当にありがたいです。
山本:どういたしまして!
岸本:僕も楽しくしていこうと思いながらやっています。セリフが全部入ってくれば楽しさが見えてきますよね。今はまだセリフに追われているから余裕がなくて、かん違いコメディなので早く振り切れるようになれたら。
――山本さんをのぞいて3人は初シェイクスピア作品に挑みます。
稲垣:最初はシェイクスピアだからという気構えはありましたよね。
岸本:まだ構えてます。
山本:だとしたらこの作品は、めちゃくちゃ入りやすいと思う。ほかのザ・シェイクスピアの有名な作品だと頭から終わりまで重厚で暗かったり、それに比べたら『夏の夜の夢』は自由度があると思うので、楽しめた者勝ちかなと。
――台本を手にしてから稽古に入り、印象の変化や手応えなどお聞かせください。
稲垣:一慶という攻略本を手にして、立ち稽古が始まって動いてみて、今は少し光が見えた気がしています。
山本:成弥は力が強いんですよ! 取っ組み合いのシーンは激しく飛ばされてます。
稲垣:あのシーンに関しては思いきり非情にやってます!
山本:終わる頃には防御力でマッチョになってるかもしれない(笑)
――宇野さんは初の女性役で今までとは180度違う役どころです。
宇野:ヘレナは発散するセリフもありますが、わりと内向的な面も持ち合わせているので、そのセリフを自分に落とすのか発散するかで、だいぶキャラクターの方向性が変わるなと。
本を読んでいる段階から立ち稽古になってみると、相手のセリフの受け答えで、ここは自分に入れた方がいいな、今はこっちにぶつけた方がいいなみたいな、毎日実験している感じですね。
岸本:台本だけ読んでいたときはちょっとシリアスなシーンだと思うところがあったんですけど、稽古が始まると魔法の力ゆえに、意外とそこがおもしろいシーンになっていたり。そういう意味では、自分が思っていたものではなかったと、稽古に入って気づいているところです。
――山本さんはハーミア役として3度目の稽古場です。相手も演出も違いますが、この座組の稽古はまた違ったおもしろさがあるのでは?
山本:今回のキャストもすごく個性豊か。今まで演出したのも含めて言えば、すごく濃い人たちが揃ってくれたので『この人たちだから、こうなるよな』と思った通りのおもしろさを見られて楽しいですね。
今回、職人チームに芸人さんのオラキオさんとピクニックさんに入っていただいて、いい意味で今までにないおもしろいワチャワチャ感が生まれています。僕らとの対比や妖精チームとの対比がより大きく出ていて、見ていて飽きがこない。あっという間に感じていただけるような作品になりそうです。
――特に職人チームの見え方が今までとは違って感じられました。
山本:台本は以前とほぼ一緒なのですが、やはりオラキオさんとピクニックさんの存在感ですよね。いつも職人チームを引き上げてくれています。
今はLikeとLoveの間のLiveって感じ? 性別は意識しないで稽古しています
――それぞれカップルごとにお話を伺います。山本さん(ハーミア)と稲垣さん(ライサンダー)カップルから、お2人は久しぶりの共演になります。
稲垣:そうなんです! お芝居をするのはアオハル(ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』)以来ですけど、その時も一慶とはそれほど絡んでいなくて、たくさん絡んだテニミュ以来7~8年ぶりですね。一慶のことが好きなのでね! LikeがLoveに変わるように演じていけたら。今はLikeとLoveの間のLiveって感じ?(笑)一慶が綺麗で(山本、大きくうなずく)しかも知っている仲なのでやりやすいです。
山本:僕を暗がりで見たらかわいいよ!
――稲垣さんはビジュアル撮影の時に、「一慶を女性として愛せるかな」とつぶやいていらっしゃいましたが、全く問題は無さそうですね。
稲垣:そうですね! いまはLiveです!
山本:なに気にいってるのよ! Liveは浸透してないって(笑)
稲垣:あははは! (宇野)結也とビジュアル撮影が一緒で、仕上がったヘレナを見たらかわいかったんです。これなら一慶のハーミアも愛せる、イケるなと。
宇野:言葉のチョイス!
山本:成弥は背も大きくて頼れる感じ。掴み合いのときに男と女の身長差が出せます。やっぱり知っている相手なので、やりやすさはありますよね。
――稽古では力いっぱい転がされていました。
稲垣:イチゴを押すくらいの力でも2メートルくらい飛んでくれます。さすが一慶だよね。
山本:いやいや! イチゴだったらすりつぶされてるくらい飛ばされてるから(笑)いいカップルになれるように頑張ります!
――そして宇野さん(ヘレナ)と岸本さん(ディミートリアス)は初共演ですがお互いの印象は?
宇野:岸本くんはとても真面目で芝居に対してすごく真摯に向き合っていますよね。初共演でカップルですが、とても好感度が高くて、その真面目さがディミートリアスに通じる部分があるのかなと。ライサンダーより地位が上で認められている男、役とご本人がリンクする部分があるので、すんなりと好きになることができました」
――岸本さんのビジュアルはとてもクールで美しくインパクトがあります。
山本:いいよね! あのスンとした目線! スターのたたずまいだった。
岸本:ありがとうございます! 結也さんはめちゃくちゃ男っぽいイメージがあったんです。その方が女性役!? と、とても想像ができない第一印象でした。でも稽古に入ったら180度印象が変わって、外国人モデルのようで一慶くんとはタイプの違う素敵なビジュアルで本当にヘレナは何の違和感も無いです。性別は意識しないで稽古しています。
気になる女性の仕草とは?
――演じる役について、どうとらえていますか? 一慶さんは『初心に戻って挑むことが課題』とおっしゃっていました。
山本:そうですね、いろいろ経験してきてしまっているのでね。ハーミアは、男の子が好きなタイプだけど女の子からはちょっと裏で嫌われてるだろうなっていう天然なかわいさを追求しています。あざとくではなく、ちょっと天然な感じのところが男は好きじゃないですか(笑)。そういう部分をヘレナと対比で出せたらいいかなと思っています。僕が好きな女の子の仕草、好きな動きとか…ハーミアは僕の好みが入っています。(一同笑)
稲垣:え! 例えば?
山本:振りむき方とか、スカートのいなしとか。
稲垣・宇野・岸本:あ~~~~~。
山本:僕は稽古では細かくやらないので、本番で成弥が1番ドキドキしちゃうんじゃないかと。
稲垣:Loveになるのね。
山本:Very~~~Love! 僕の好みが成弥に刺さってくれたらうれしい。
稲垣:それは楽しみだな!
――ちなみに稲垣さんは女性のどんな仕草にグッとつかまれますか?
稲垣:僕ですか!? 僕の好み……。(一同爆笑)
岸本:何を想像してるの!?(笑)
稲垣:あははは! 髪をかき上げるとか? 何だろう、そう聞かれると思いつかない。
――ライサンダー役についてはいかがですか?
稲垣:一慶と話しているうちに役のイメージがだいぶクリアになって、自分の中でいろいろ腑(ふ)に落ちました。駆け落ちをする野性的な部分を持ち、ディミートリアスとは全然違う育ち方をしている。さらに侯爵の前ではちゃんと自分の意見を言う芯の強さも持っています。まだまだこれからですが、ヤンチャだけど誠実さを持っているピュアさも出していけたら。
――ありがとうございます、では宇野さんは役どころについていかがでしょうか。
宇野:自分の美しさや、他人の美しさに言及するセリフがありまして、自分のビジュアルとヘレナのマッチングが大事になってくるのかなと思っています。
僕自身は普段怖そうと言われることが多いのですが、実際会うとフレンドリーだねと、受ける印象と実際は違うんです。僕が演じるヘレナもたぶん強く見えそうで、でも内向的な部分や自分に自信がない部分があったりとか、そういうところも踏まえて自分の見た目と、ヘレナの台本から受けた印象をくみ取りつつ作っていけたらと。それが今の課題ですね。男っぽい役が多かったので女性役を演じることになるとは思いもしませんでした。新たな一面をお見せできたら。
――ビジュアル撮影では演出の今井先生から女性のポージングについてアドバイスがあり、実践されていらっしゃいました。
宇野:そうですね、華奢に見える肩の方向や手の置き方とかレクチャーしていただきました。『オンディーヌ』では男性が女性役を演じる姿を間近で見ることができて、米吉さんには本当に感謝しています。その後の『巌流島』では、演出でお小姓(こしょう)のようにやってほしいと言われたことがあって、そのときに首筋のラインを見せるために肩をちょっと落として胸を張るとか、すごくいいタイミングでいろんな方から知恵をもらえたのでヘレナに生かしていけたらと思っています。
――演出や音楽、衣裳も和の要素が入っているので、より生かせそうですね。そして岸本さん、ビジュアル撮影ではずっと鏡を見ながらいろんなポージングを研究されていた印象がございます。
岸本:顔の方向とかどう魅せるのがいいのか試していましたね。ディミートリアスは、真面目に高貴に振り回される、をテーマにしています。それがそれぞれのシーンで出てきたらいいなと。まだまだ本番に向けて取り入れたいことが出てくると思うので、そういう意味ではあんまり自分の中でイメージしすぎないことですね。決めてしまうと抜け出せないことがあるので、全部受け入れ態勢でいることを意識しています。考えすぎずフラットにしておこうと。
――岸本さんにもお尋ねしますが、女性のどんな仕草にグッときますか?
岸本:僕は笑顔が好きです。楽しそうに笑ってくれている姿は何よりもキラキラ輝いて見え、とても魅力的に感じます。
森の4人のシーンに注目
――見どころや注目してほしいところなど教えてください。
稲垣:やはり4人が森に迷い込むシーンは僕たちの見せ場だよね。この4人が集まってできる楽しいシーンです。
山本:そうだね、1番ぐちゃぐちゃになりつつも笑えるコミカルさを持ち合わせるシーンなので、まず見てもらいたいところですね。(一同うなずき)
岸本:僕は最初の登場シーンですね。
宇野:ヘレナがディミートリアスに、わ~~と迫るシーン。物悲しくて応援したくなるような女性像がまずあるといいなと思っていて。したたかな女性が好きな男性を目の前にしたときのはしたなさ、好きすぎているさまがおもしろい。
山本:あと僕は、あのビジュアルのきっしー(岸本)が、ぶったり蹴ったりしてるって考えるとちょっと怖くておもしろい。
宇野:女の子によっては刺さる層がいそう。
岸本:紳士なイメージがあるのに殺すと言ったり実は裏があって…。
宇野:ヘレナはそこに惹かれているのかなと。ヘレナの歪んだ苦しい愛、追っかけたくて何なら追っかけてる自分に酔いしれている感じ。あとヘレナの見どころは彼を前にしたときと、その他の友人を前にしたときの態度の違いかな。
山本:ヘレナは応援したくなりますよね。1番かわいそうなのはディミートリアス(笑)誰も被害を受けなかったように終わっているけど、ひとりだけ魔法の犠牲になってるという。前回僕は演出の立場で見てたけど、今回一緒の舞台に立ってて、魔法が解けて起きたシーンのセリフが僕の目線に入っておもしろすぎて。
岸本:真面目がゆえにですよね。振り回されて、でも元サヤで1番幸せでもあります!
魅力的な共演者たちが楽しくて
――妖精チームの鯨井康介さん、髙木俊さん、石田隼さんのキャスト発表では、気になるという声でSNSがザワザワしました。
宇野:僕は隼くんと共演経験があって、パックを演じると聞いて楽しみでした。鯨井さんと髙木さんは初共演で、稽古に入ったらもうすごくて! 三者三様、めちゃめちゃ濃いとこ攻めてるなと。3人ともまったく似てなくて、ちゃんと濃い。
山本:さすがの濃さ! 濃いチームです! いいよね、いま自由に稽古をしているので見ていて楽しいです。
稲垣:僕たち4人のところ、妖精チーム、職人チーム、ブロック全部違って別の作品みたい。職人チームのオラキオさんやピクニックさんと妖精のからみもすごくおもしろい。
宇野:素敵だなと思ったのが、オラキオさんが舞台経験の少ない子や若手と早い段階で打ち解けられていて、自分からいじられ役に徹しているんです。稽古でもすごく安心感があって、ピクニックさんと2人が混ざると稽古場の熱量がバーンと上がっていますね。
岸本:常にチームワークを作ってくださっていて素敵で心強いですよね。
――最後に山本さん、作品を代表してメッセージをお願いします。
山本:シェイクスピアの良さに加えて、いろんな活動を経てきたこの4人だからこそできる良さがあると思っていて、いろんなものがプラスに作用して魅力的な作品になったらいいなという想いです。貴族チームを初め、職人チームや妖精チームが絡み合い、色が違う場面の応酬が見られると思います。あっという間に時が過ぎていく、スピーディーで濃い物語です。シェイクスピアだからという壁をとっぱらって、楽しかったと思っていただける作品をお届けします。
誕生日サプライズって意外と少ない!?
――この作品では結婚式の余興として劇中劇がありますが、それにちなんで、お祝いなどのサプライズで印象深いエピソードを教えてください。
宇野:2つあります! ある作品で、千秋楽が僕の誕生日よりちょっと前で、おめでとう! と盛り上がったから『おめでとう誰?』って全力で拍手していたら僕だったっていう。
あとは松平健さんや浅野ゆう子さん、藤原紀香さんとか素晴らしい方々と共演したときに、本番が誕生日と重なって祝っていただいたときは夢見心地で不思議な感覚でしたね。テレビで見ていた方々にお祝いされてる! と緊張したことを覚えています。
稲垣:それは思い出深いね! サプライズは難しいですよ。祝ってもらえそうと思って稽古場に行くでしょ、そのときにどう喜べばいいかわからない(笑)うれしいけど照れる。
山本:僕サプライズに気づいちゃうから言っちゃうもん、ケーキあるんでしょ! 冷蔵庫開けないよって。
宇野:なるほどね!
山本:最近は誕生日当日に仕事のことが多いけど、前にこの日だけ稽古や仕事がオフばかりの時期があったな。
稲垣:僕もあった! 祝ってもらったこともあるけど、公演が終わって次の公演の間で、稽古も被ってなくて何もない。外されてるかもしれないエピソードが多い(笑)
岸本:僕は現場で誕生日の人がいると、何を渡そうか考えるのが好きかも。自分の誕生日は同じく稽古前とかで被ってないことが多いですね。
宇野:意外と自分の誕生日忘れない?
山本・稲垣・岸本:それは無い。
宇野:ない? 僕だけ?
山本:いいよいいよ盛らなくて、おもしろく締めてくれてありがと(ニヤリ)(一同笑)
取材:谷中理音
公演は4月19日(水)~23日(日)に東京・東京芸術劇場シアターウ工ストで行われる。
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