5月に3作目が上演される舞台『信長の野望・大志 夢幻 〜本能寺の変〜』。上演に向けて作品への意気込みを語る制作記者会見がおこなわれた。
登壇者は織田信長役の鶏冠井孝介、お市の方役の田中れいな、明智光秀役の谷佳樹、今井宗久役の彦摩呂、脚本・演出を手がける久保田唱氏の5名。
MCはお箸役として初演から出演している笹木香利が務めた。
ついに織田信長にとって大きな事件である本能寺の変が描かれる本作。そのストーリーについて、まずは久保田氏から話があった。
久保田:第3弾ということで、映画とかでもシリーズが続くとパターンができてくるのかなと思うんですけど、あえて今回は今までの流れを踏襲するのではなく、新たなドラマを作れたらなと。
この舞台の最大の特徴が“本当の歴史ではないこと”を描けるところなので、本能寺の変も本来の本能寺の変とは違うかもしれない、というのがポイントだと思います。
ただ、本能寺の変は確実に起こります! そこが、本来の歴史とズレているとしたらどう起こるのか? SIDE織田とSIDE明智で、それぞれの気持ちがどうなのか、というのが描かれます。
ーーいまSIDE織田、SIDE明智という言葉がありましたが、改めて本作の特徴であるダブルサイドストーリーについて教えてください。
久保田:別の話が描かれるのでもなく、マルチエンディングでもなく、始まりと終わりの物語は同じです。
片方をみているときは、そちらの心情が描かれ、最後にはまたひとつの結末に合流するので、どちらのSIDEを観るかでラストに感じる心情が違うと思います。
久保田氏も語っていたが、このシリーズのダブルサイドストーリーはかなり特殊である。
たとえばSIDE①を観るとそちらでメインに描かれた武将たちに感情移入しエンディングを迎えるのだが、その後SIDE②を観るとその裏側で別の陣営のなかで起きていたドラマが明らかになる。
そうすると、片方のSIDEだけではみえてこなかったキャラクターたちの内情や想いが浮かび上がるのだ。
それからまたSIDE①に戻ると、相手側の事情も想像したうえで改めて①の物語を感じることができる。
初演から観てきた筆者のおすすめは、できれば2回ずつ交互に観ることだ。どっぷりと作品の世界に浸れるはずである。
ーーダブルサイドストーリーということで、演じる我々は台本が2冊になるわけですが、慣れましたか?
鶏冠井:な……れましたが、大変さは変わらないですね(笑)
さらに今回、田中れいな演じるお市の方はSIDE織田にてほぼ出ずっぱりになるとのこと。
田中:しかも前回のSIDE織田・徳川では兄上を怒るシーンがあったんですけど、どうやら今回はもっと怒るみたいで。気合い入れて怒ってやろうと思ってます(笑)
谷:じゃああんまり稽古場と変わんないね、日常と一緒。
と、ここで稽古場の様子について谷が突然の暴露(!?) 「そんなことない」と言う田中に対して「いつも、ちゃんとしぃって言ってるイメージ」と返すと、鶏冠井が「俺がちゃんとしてないみたいじゃん」と3人で笑いあっていた。
初演から1年が経ち、稽古場ではカンパニーとしていいムードが出来ていることを感じさせた。
▲和やかなムードの会見になった
ーー史実では兄上が死んでしまいますが……
田中:死んじゃうのかな……。でも、この舞台のなかでは兄上よりお市のほうが心が強いので、お市が兄を守って戦いに出ます!
勇ましい宣言にキャスト陣からも「おお」と歓声があがった。
そして、前作の千秋楽後にスペシャルイベントとして上演された予告編でお市が手に持っていた槍に触れ、「槍を持ちたいと思います!」と兄上もたじたじの強さを見せた。
ーーさて、今回いよいよ本能寺の変が描かれますが……
谷:1年前の初演から本能寺の変を意識している部分はあって、ついにきたなという気持ちはありますね。
そこに向かって明智光秀として、この1年間作り上げてきたので、これから稽古を経てどんな明智光秀としてみなさんの前に立つのか、すごい楽しみですね。
▲織田と明智の関係は一体どんな結末を迎えるのか
気になる信長との関係については、「バチバチになるかもしれないし、ならないかもしれない」とのこと。
明智はもちろん織田陣営なのでこれまで2人の直接対決はない。明智としては織田のために動いているのだが、初演で旦那となった浅井長政を殺された恨みが募っているのか、相変わらずお市からの評価は「悪い人」のようだ。
谷:ぼく2作連続で“通り魔”してるんですよね。
通り魔とは、過去のシリーズを通しての明智の評価で、アフタートークなどで度々登場しているワードである。
明智の策で本来は死なずに済んだはずの仲間たちが死んでいったり、織田のためにと躊躇わずに人を斬っていくため、そう呼ばれるようになったとのこと。
彦摩呂:それから明智は帰蝶への色目がすごいんですよ。
谷:織田の見えないところで密会したりしてましたからね。
さらに今回新しくなった衣装では、明智と帰蝶は同じ柄の布を使っている部分があるとのこと。
ますます怪しさ漂う明智と帰蝶との関係についても、今作でどうなるのか楽しみな部分である。
▲新衣装の柄にも注目だ
今回も50人近いキャストが登場するが、新しいキャラクターも増える。
そこで気になる人物を聞かれると、谷は黒田官兵衛、彦摩呂は森蘭丸、鶏冠井は森蘭丸と石田三成をそれぞれ挙げた。
前作では井伊直虎や竹中半兵衛、前田利家、酒井忠次、前野長康といった本来の歴史ではまだ死ぬはずでなかった武将たちが、ズレた歴史のなかで命を落としていった。
新たに登場する武将たちも加わり、いったいどんな結末が待ち構えているのだろうか。
ーー最後に意気込みをお願いします。
田中:今回3作目ということで、シリーズ化する作品に携われてすごく嬉しいです。
私も最初は歴史が分からないとこからスタートだったんですが、舞台を通じて歴史に興味が出てきて、だからこれから台本を読んで稽古をしていくのが楽しみです。お市もどう動くのか楽しみにしながら、頑張りたいと思います!
谷:ついにこのときがやって来たのか、という武者震に近いものを感じています。久保田さんと少しお話をさせて頂いて、今回の流れを教えて頂いたんですけど……。
みなさんが思っている展開じゃないというか、僕も度肝を抜かれた展開が待っていて。その展開を、全編通してワクワクドキドキをずっとお届け出来るように全身全霊で挑ませていただきます!
彦摩呂:歴史上の有名な出来事ということで、ここへ持ってくるための1作目・2作目だったように思います。
ショートケーキの苺の部分が今回の公演に込められていて、もっとも美味しいところではありますが、初めて観た方も楽しめるようなエンターテイメントショーとしてつくっていきたいと思います。
久保田:いままで観てない方は不安になるかもしれないんですが、ここから観ても今まで起こったことがわかる作りになっています。
それから、この作品の特徴は“本来の歴史を知っている”人物が何人かいるということで、もちろん織田信長も本能寺の変が起こることを知っています。知っている人たちが、どう本能寺の変を迎えるのかというのが見どころになっていると思います。
鶏冠井:ちょうど1年前にこの場所で初演の顔合わせがあって、それから1年続いてきたこの作品がついに本能寺の変まで来たな、という思いがあります。
舞台『信長の野望・大志』でしか観られない、出来ない本能寺の変をおみせできたらいいな、と思っています。
久保田氏によると、SIDE織田はどちらかというとこれまで登場してきた武将たち、SIDE明智は新たに登場する武将たちにスポットが当たるとのこと。
出番の量はそれぞれ違うが、この作品はやはり両SIDE観ることで面白みが2倍にも3倍にも膨らむと筆者は思っている。
過去の作品では、オープニングもSIDEによって演出が違っており、表裏一体な内容になっている。複数の視点で観るからこそ見えてくる物語を、ぜひ味わってみてほしい。
舞台『信長の野望・大志 夢幻 〜本能寺の変〜』は2019年5月18日(土)の戸田市文化会館でのプレビュー公演を皮切りに、5月21日から26日までシアター1010にて上演される。圧巻の戦国絵巻を存分に楽しんでもらいたい。
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