パルコ・プロデュース 2021 『ザ・ドクター』が10月30日(土)、埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホールで開幕した。演出の栗山民也、大竹しのぶ、橋本さとし、村川絵梨、橋本淳、宮崎秋人、那須凜、天野はな、久保酎吉、明星真由美、床嶋佳子、益岡徹からのコメントと舞台写真が到着した。
演出:栗山民也
彩の国の劇場で初日を開け、今、自宅に向かっているところ。いろんな場面のいろんなセリフが、今も容赦なくこちらに向かってくる。登場人物たちの多くの問いかけが、エンドレスに繰り返される。現代という時代を輪切りにしたような言葉の戯曲と格闘したこの数週間の時間が、だがなんとも心地よい疲労感の中に少しずつ溶けていくようだ。時代と向き合うことから目を背けず、ぐっと近距離まで近づいて見ることの覚悟を、この作品から学んだように思う。なんだか、とてつもなく熱く鋭利な一つの塊に出会ったような感じ。「演劇は、時代を映す鏡である」という馴染みの一文が、また新たな声で深く響いている。
ルース・ウルフ 役:大竹しのぶ
これほどスリリングな舞台になるとは思ってもみませんでした。この緊張感がたまらなく楽しいです。劇場を出た後に、誰かと3時間ぐらいは話したくなるような芝居です。人間について、それを取り巻く社会について。あらゆることに無関心、無自覚に生きてきたことを痛感します。劇場は様々なことを教えてくれる場です。今、そこで生身の人間が言葉を交わし、その場で人生が変わってゆくのを目の当たりにすることができるのです。だからやっぱり演劇は面白いなと、改めて思える作品です。
ロジャー・ハーディマン/パネリスト2 役:橋本さとし
ついに幕が上がりました。しかし答えは出ていません。そう、この芝居には答えがないのです。あえて言うなら、一瞬一瞬に起こる事、感じる事が答えです。善も悪もなく、各々の主義主張が正義なのです。これは役者にとってかなり高いハードルで毎回がスリリングで集中力を要します。対立する役柄とは裏腹にカンパニーの結束力は日々高まっております。ぜひそんなヒリヒリとした空間で「言葉の力」を楽しんでください。
レベッカ・ロバーツ/パネリスト1 役:村川絵梨
2021年もいろいろありましたね。今日初日を迎えられたこと、いまこの作品を上演出来ること、本当に嬉しく思います。稽古期間中、数々の台詞に何度もハッとさせられ気付かされ、考えさせられました。今、目撃していただききたい! そんなお芝居です。最後まで意義を持ってステージに立ち続けたいと思います。劇場でお待ちしてます!!
ポール・マーフィ/パネリスト3 役:橋本淳
現実をそのまま映したような作品。演劇でありながら演者である私たちは、まるで日常を生きているかのようになるべく稽古を積んできました。その瞬間瞬間に起きることが、生であればあるほどきっと多くのモノが届くと信じています。現代社会が抱える目を背けたくなる問題に、真正面から切り込む本作。どうか多くの方に、届きますように。ガラスのように脆く儚い、しかし熱い時間を、丁寧に紡いでいきたいと思います。まずは開幕出来たことが、本当に幸せです。
マイケル・コプリー/ディベート番組のホスト 役:宮崎秋人
稽古場で毎日行われた抗原検査や、定期的なPCR検査のお陰もあり、常に新型コロナウイルスに気をつける姿勢を持ちながら今日まできました。ホッとしています。この作品が持つ”問いかけ”。これは、是非誰かと共有してほしいなと思います。日本ではこの作品の中にある問題というのはやはり遠いモノで、それを誰かと共有して話し合うことで身近になると思います。そうして初めてこの作品を日本でやる意義があるのかなと。僕自身、この作品に勉強する機会を与えてもらって今後の世界の見方が変わっていくと思います。
若手医師 役:那須凜
皆さまのおかげで『ザ・ドクター』無事に幕が上がりました。お客さまの拍手を聞いて、お芝居を生で観ていただくことの有り難み、そして何より現代の問題を鋭く突いたこの作品を今、上演出来ることの素晴らしさを改めて実感いたしました。今後いらっしゃるお客さまにも、多種多様な問題に一緒に悩み考えていただけたら嬉しいです。お客さまと一緒に成長していくであろう『ザ・ドクター』どうぞお楽しみに!
サミ 役:天野はな
毎日必死に向き合ってきたこの作品を無事にお客さまの元へお届けできる喜びで胸がいっぱいです。初日を迎えた今、『ザ・ドクター』という作品には、この時代を生きる皆さまに聞いて欲しいと願う言葉がたくさん詰まっていると改めて実感しています。その言葉が届くよう、千秋楽まで日々丁寧に作り上げていきたいと思っておりますので、どうぞお楽しみに! 劇場でお待ちしております。
ブライアン・シプリアン/パネリスト5 役:久保酎吉
初日が開きました。ラウンドにあがるボクサーのような、高揚感と緊張で闘い、ヘロヘロになりましたが、カーテンコールの熱い拍手に包まれ、今はとにかくホッとしています。役者の闘いざま、是非、体感しに劇場に来て下さい、「最後に選ぶのは、あなたです。」
ジェマイマ・フリント/パネリスト4 役:明星真由美
舞台袖で共演者のシーンを見ながら、こういうお芝居を日本で上演出来る事を演劇人として喜びに思いました。終わった後、観た人達が個々の価値観を交換するまでが作品の一部であるような。あの人が許せなかった、あの人の気持ちはわかる、などなど、自分とは違う意見に出会う事が演劇の一つの意味であることを改めて思いました。この後、最後のワンステージまで、我々もまたああだこうだ交換しながら作品を進化させて行きたいと思います。
チャーリー 役:床嶋佳子
この台本を初めて読ませていただいた時のワクワク感! そしてきっとスリリングな作品になるのではないか? と思ったその予感は間違いなかったです! 本日初日を終え観客の皆さまの食い入るような目線、カーテンコールの温かな拍手! 大竹さんをはじめキャスト全員本当に皆さん素敵です! 私はこのチームに携われて本当に嬉しいです! 地方公演を含め12月26日までの長丁場このチームの時間を緊張感を持って楽しみます! 皆さま劇場でお待ちしています!
ジェイコブ・ライス神父/エミリー・ローナンの父 役:益岡徹
昨年からの長期に渉るコロナ禍。舞台を上演できることへの感謝の念が増しています。舞台を立ち上げてお客様に見ていただく、大切なことだと改めて感じています。『ザ・ドクター』、彩の国で初日の幕を開け、PARCO 劇場へ。膨大なセリフの量、病院のモノトーンの装置、対立と喪失。美しい舞台になっていると思います。これから上演を重ね、さらにいいものになるよう、皆で力を合わせて行きた
いと思っています。ぜひご覧いただきたい大切な作品です。
同舞台は、ロバート・アイクが1912年に発表されたシュニッツラーの「Professor Bernhardi(ベルンハルディ教授)」を翻案して演出を手掛け、2019年ロンドンで初演された作品。
主人公のルース・ウルフは、イギリスの医療機関・エリザベス研究所の創設者。あるとき、自ら妊娠中絶を行い、敗血症で運び込まれた14歳の少女を看取ろうとしていた。そこに「彼女の両親から臨終の典礼を頼まれた」と神父が現れるが、ルースはそれを拒否し、面会謝絶をする。しかし、その後、少女の容態が急変しそのまま亡くなってしまう。少女の死に立ち会えなかった神父は、典礼を拒絶されたことに怒り、この出来事を公にしてしまう。これにより、ルースは世間から激しいバッシングを受けることに…。
公演は11月4日(木)~28日(日)東京・PARCO 劇場、12月2日(木)~5日(日)兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、12月10日(金)~12日(日)愛知・穂の国とよはし芸術劇場 PLAT 主ホール、 12月18日(土)~19日(日)長野・まつもと市民芸術館 主ホール、12月25日(土)~26日(日)福岡・北九州芸術劇場 大ホールで上演される。
撮影:宮川舞子
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