インタビュー

【2.5の前、何してた?】すべてのことには意味がある フクシノブキ「32歳にして新人の気分です!」

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『青山オペレッタ THE STAGE』、舞台『弱虫ペダル』シリーズなどの2.5次元舞台のほか、「WORLD ~Run for the Sun~」「群盗」といった骨太な作品でも存在感を発揮している俳優、フクシノブキ。

2.5ジゲン!!では、フクシに単独インタビューを実施。芸能界に入ったきっかけから、初めての事務所で経験したこと、強く影響を受けた先輩の存在、これからのビジョンなどについて話を聞いた。

――まず、芸能の道を志したきっかけから伺います。どのような経緯だったのですか?

高校の部活の先輩の誘いがきっかけでした。当時ダンス部に入っていたのですが、先輩が「事務所のオーディションを受けてみないか?」と、とても積極的で。将来的には芸能の世界に行ってみたい…とふんわり想像していたものの、そのときは「まだ高校生だし早いのでは」と思っていたんです。でも先輩が熱心に誘ってくださったので、じゃあ受けてみようかな、と。そこで合格して、この道に入ることになりました。

事務所に入ってすぐに、20年以上もの歴史があるミュージカルに出演させていただけることになりました。「まず現場の空気を感じなさい」という事務所の愛だったのでしょうね。周りは大先輩ばかりですから「とにかく迷惑をかけてはいけない」と必死になったのを覚えています。

お芝居のノウハウなどを学ぶ余裕はまったくなかったですが、あの現場にいられたことは僕の中で大きな財産になっています。

――入所後すぐに大きなミュージカルへ出演ということは、活動初めの頃からお芝居メインの活動を志望されていたのでしょうか

実はそうではありませんでした。というのも、当時の僕は自分の声が好きではなくて…。お芝居をすれば自分の声をたくさん聞くことになるので、それは避けたかったんです。はじめに大きなミュージカルに出演してからも舞台には出させていただいていましたが、セリフがひとこと、ふたことだけの役だったので、「お芝居が楽しい!」と思えるところにまでは到達できていませんでした。

でも、2018年に出演した「コインロッカー・ベイビーズ」で考え方が大きく変わりました。この舞台は僕にとって、初めて名前の付いた役とたくさんのセリフをいただいた作品です。現場で揉まれながら、いただいた5つもの役を作り上げていきました。

この舞台の稽古のときにある先輩から言われたことを、今でも強く覚えています。大声で叫ぶシーンの多い役だったので、声を枯らさないように稽古ではセーブしていたところ、その先輩が「全力でやれ」と言ってくれたんです。でも喉を傷めてしまっては…と戸惑う僕に先輩は「全力でやらなければ、限界が分からない。自分の可能性を狭めてしまうぞ」と。その時の自分にできる限界でやって、あとは引き算で作っていけばいいんだと言われて…。

先輩たちにとっては、“全力で稽古に臨む”のは当たり前のことだったんですよね。でも、舞台経験の浅い僕にはそれが分からなかったんです。それからは稽古でも全力を出すようになりました。

公演期間が長かったので、心境の変化とともに徐々にお芝居が変わっていくことも経験できました。作品の内容も役どころもとても重い作品でしたが、「お芝居はおもしろい」と思えるようになったのはそこからです。

――その後、時代劇やコメディなどさまざまな舞台へ出演されるようになりましたね。所属していた事務所を退所後に出演された「群盗」(2021年)は名戯曲の作品でした。

大変重い役で、難しい内容の作品でしたね。窃盗団の頭首であるカールを演じました。故郷の恋人・アマーリア、弟のフランツ、それから父であるモーア伯爵…それぞれへの思いを背負う戯曲の解釈が大変でしたが、演出の松森望宏さんが一緒に悩んでくださって。

コロナの影響で1度延期になってしまったのですが、無事に上演できてよかったです。とても充実していました。もし再演があったら、また呼んでいただけたら嬉しいなと思っています。

――では、これまでの芸能人生の中で、大きく影響を受けた方やその方とのエピソードがあれば教えてください。

僕が今、稽古場で疲れていても「疲れた」と言わないのをモットーにしているのと、あきらめることをしたくないのは、先輩の滝沢秀明くんの背中を見てきたからです。そのストイックで厳しい姿勢に憧れて、今の僕があると言っても過言ではありません。

滝沢くんが座長と演出を務める舞台に、何度も出させていただきました。フィジカルの面でも本当にキツい作品なので、稽古期間はすさまじい疲労がたまっていくんです。キツさのあまり、ひと段落ついた瞬間に思わず「疲れたぁ!」と声を上げてしまう人も少なくありません。

そんな時、滝沢くんは「疲れたと口にするな。周りの士気が下がるし、自分が疲れたと認めることになる」といつも注意されていました。確かに、滝沢くんは僕たち以上に疲れているはずなのに絶対に「疲れた」とは口にしなかったんです。座長としての立ち姿と精神が本当にかっこよくて…そんな滝沢くんの背中を近くで見て、さまざまなものを学び盗みました。

それから、滝沢くんには自分のすべてをいつも見透かされているように感じていました。だから、休憩中であっても決して気が抜けなかったです。常に気を張って稽古に臨んでいました。とても厳しい現場でしたが、あの現場を経験したからこそどこへ行っても折れずに乗り越えられると感じています。でもこれはきっと僕だけではなく、あの場にいた全員が同じように刺激を受けていたはずです。

この数年で出演させていただいている原作付きの作品では、僕は年上の方の年代に入ります。その僕が「疲れた」と口にしてしまえば周りの士気が下がるだろうと感じて、「疲れた」とは冗談でも言わないようにしています。ある時、とある舞台の稽古で「疲れた」と言っている子がいて、それを聞いた僕は「それは周りにも自分にも良くないよ」とたしなめてしまったんです。そう言ってから「あっ…滝沢くんと同じことを言っている」と、影響力の強さを改めて感じました。

――いろいろな経験を経て、今、舞台に立つときに大事にしていることは何ですか?

どれだけ公演期間の長い作品であっても、毎日がオーディションの気持ちでいます。1つひとつの公演に全力で挑み、新鮮な気持ちで臨む。“慣れ”が悪い方に作用しないように心がけることを大事にしています。その公演1度だけを観劇してくださる方にとっては一期一会のものを、何度も来てくださる方にも新鮮な観劇体験をお届けしたいです。

――2.5次元作品ではアニメ・ゲーム・漫画などの原作がありますが、どのように役や作品と向き合っているのでしょうか?

もちろん原作をリスペクトして、イメージをなるべく崩さないように作っていきます。けれども、原作そのままに演じていては舞台にする意味がなくなってしまうとも感じていて。さじ加減が難しいのですが、キャラクターの延長線上に自分自身の色をなるべく出したいと思っています。今のところありがたいことに「イメージと違った!」と原作ファンの方から指摘されたことはないので、今後もその点に気を付けながら演じていきたいです。

反対に、オリジナルの作品では、明確なゴールとなる答えがないので、想像が無限にふくらむ点が楽しいですね。観てくださる方には作中で伝えないようなバックボーンの部分まで勝手に妄想しています(笑)。

――舞台「サザエさん」(2022年)は、国民的アニメの原作はあれども、原作世界の10年後という特殊な設定でしたね。自由な感じでお芝居ができたのでしょうか。

実はとても難しかったです。僕は役者同士の間に生まれるその時々の空気や感情でお芝居が変わるタイプなので、「毎回同じものを」と演出の田村孝裕さんからオーダーされて「どうしよう?」と。僕の演じた伊佐坂甚六は、カツオと一緒のシーンがほとんどだったのですが、カツオが和田琢磨くん(東京公演)と近藤頌利くん(大阪・福岡公演)のWキャストだったんです。相手が変われば受ける芝居はまったく変わるので、同じ芝居をする感覚を掴むのに苦労しました。

でも、大先輩の方々とともに明治座・新歌舞伎座・博多座という大きな劇場に立たせていただいたのは貴重な経験になりました。

大先輩といえば松平健(波平役)さんには硬派で怖い方というイメージを勝手に持っていたのですが、実はお茶目な面もある方でした。タラちゃん役の北乃颯希くんとのアドリブの前に、少年がイタズラをするようにニヤッとされていて。僕が言うのも失礼になってしまいますが「かわいい面もお持ちの方なんだ!」と嬉しくなったのを覚えています。

――多くの方と共演してきて、これから理想とする役者像や、やってみたいことなどのビジョンがありましたらお聞かせください。

いい意味で、“こうなりたい”という役者像や具体的な目標は決めていません。好きな役者さんはたくさんいます。けれども、僕は僕として、自分のオリジナリティを持って進んでいきたいんです。目指す人を持つと真似をしてしまうかもしれない、とも感じていて。

芸歴で言えば15年を超えていますが、最初の事務所を退所して新しい世界への一歩を踏み出してからはまだ3年目です。知らなかったことがたくさんあって、毎日が勉強であり新鮮です。32歳にして新人の気分を味わっています! この先も、すべてのことには意味があるととらえて経験を積んでいけたらと思っています。

――それでは最後に、応援してくださっているファンの皆さんへメッセージをお願いします。

いつも応援してくださりありがとうございます。SNSやファンクラブへのコメントでは、リアルな声が聞けてありがたく感じています。僕を応援してくださる中で「次は何をするのだろう」とたくさんサプライズ的な驚きを感じていただきたいです。

何でも、やってみなければ分かりません。「やらない後悔より、やって後悔」です。これからもチャレンジ精神を忘れずにさまざまなことをやっていきたいので、楽しみにしていてほしいです。まだまだ力不足ではありますが、さらにたくさんの方に僕を知っていただけるように、そして楽しんでいただけるように、模索しながら頑張っていきます。

取材・文:広瀬有希/撮影:泉健也

各種概要

■出演
・フクシノブキ2023カレンダー発売記念イベント
4月2日(日)
12:00~/14:00~/16:00~
会場:HMV&BOOKS SHIBUYA5階洋楽スペース

・舞台『遙かなる時空の中で3 Ultimate』
梶原景時役で出演
4月23日(日)~30日(日)
会場:東京・こくみん共催coopホール/スペースゼロ

・舞台『弱虫ペダル』THE DAY1
箱根学園 東堂尽八役で出演
8月4日(金)~8月13日(日)
会場:東京・天王洲 銀河劇場

■フクシノブキ公式FC「ちくわーズの冒険」
https://fanicon.net/fancommunities/4150

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WRITER

広瀬有希
							広瀬有希
						

金融・印刷業界を経てフリーライターへ。エンタメメディアにて現場取材・執筆の他、日本語・日本文化教育ソフト監修、ゲームシナリオ、ノベライズなどで活動中。感動が伝わる文章を目指して精進の日々を送っています。

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