11月13日(日)、ミュージカル「ヘタリア~The world is wonderful~」のBlu-ray発売記念イベントが開催された。
2.5ジゲン!!では、同イベント昼の部を取材後、主演の長江崚行(イタリア役)と植田圭輔(日本役)に対談インタビューを実施。2人にとって「ヘタミュ」とはどんな存在なのか…?イベントの振り返りから、カンパニーの関係性などについて話を聞いた。
――Blu-ray発売記念イベントお疲れさまでした! まずは感想をお聞かせください。
長江崚行(イタリア役):楽しかったです! このカンパニーで集まるのも久しぶりですし、お客さまの前でイベント…となると本当に久しぶりになりますから。お客さまもあたたかいし、とても素敵な時間を過ごさせていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。「ちょっとおもしろいことしたいな」「ここは盛り上げたいな」なんてことは全部取っ払って、ただただ楽しくいられました。
植田圭輔(日本役):みんな放っておいても何か起きるので、普通に、いつものように喋っているだけでしたね(笑)。僕らと同じようにお客さまも「ヘタミュ」への強い愛を持ってくださっていて、お互いに共通見解が取れているんだと改めて感じました。
――ヘタミュは「The world is wonderful」から新シリーズとなりました。少しさかのぼって、数年ぶりにまた新シリーズが始まると聞いたときのお気持ちはいかがでしたか?
長江:1番嬉しかったのは、新しいシリーズとしてスタートを切るにあたって、キャストが変わらなかったことです。この「ヘタミュ」のカンパニーは、キャストもスタッフチームも、ひとつも欠けてはいけないピースで成立しています。だからやっぱり、大好きな人たちとまた一緒に作り上げられることが嬉しかったですし、こんなに幸せなことはありません。
植田:ファイナルライブ(『ミュージカル「ヘタリア」FINAL LIVE 〜A World in the Universe〜』)のとき僕たちは、本当にファイナルだと思っていたんです。もう(続きや新シリーズは)無いと思っていたからこそ、あふれる思いを持ってのライブとなりました。あれから「ヘタミュ、本当に楽しかったなぁ」と思うことはありましたけれど、「もう1度」と言ってくださってこうして始められて、さらにキャストも変わりませんと言われたら…。それはもう、決まったときには特別な感情が色濃く生まれたのを覚えています。
――「The world is wonderful」は、イタリアとロマーノの兄弟を中心としたストーリーでした。これまでのシリーズで描かれていたよりも前の時代のできごとでしたが、演じる側としても数年を経て、役へはどのように向き合われましたか?
長江:この作品に関わり始めたころ、僕は17、8歳でした。そしてまた改めて関わることになったのが去年、23歳のときですね。改めて、今の自分ができる1番素敵だと思うイタリアを1から作ろう、と。なるべく色々と考えすぎず、フラットに向き合うようにしました。
植田:僕は以前と何も変わりませんでした。というのも、この作品は色々な時代を行ったりきたりすることを以前からやってきていたので、特別に「よし!」と力むこともなく。あれから長い時間が経っているのに、自分でもそうとは思わないくらいにスッと入れましたし、現場の空気もそうだったと思います。変わったのは、年を取ったということだけですね(笑)。
――「The world is wonderful」で久しぶりに集合しての稽古で、“変わった”、または“変わらない”と感じたことはありましたか?
長江:「ヘタミュ」への愛があふれすぎて、みんなが「尺取りじじい」になりました(笑)。それまでは、尺を取る人は数人しかいなかったのに。年を重ねたとかいろいろな理由があるのでしょうけれども、おのおのが「ヘタミュ」の舞台に立って生きている瞬間をもっと味わっていたいのかな、と思います。本番中は舞台の袖で「今日も長いな!」と思っていました(笑)。稽古でも、ただ自分たちが見たいがために日替わりのシーンがどんどん長くなっていったり。
そうやって、尺を取ることは変わりましたけれど、愛は変わらず…いや、もっと大きくなって帰ってきたと感じています。
植田:僕個人の“変わらないこと”は、(他の仕事の都合で)稽古が途中合流になること…。
長江:圭輔さんが稽古に合流しての帰り道にスケジュールを聞いて、驚きました。でも、スタッフさんもキャストのみんなも、圭輔さんなら大丈夫だろう、と信頼しているんですよね。
植田:誰もプレッシャーをかけてこないんです。すごいと思います。普通は「本人がいないとわからない」ということになったりするんですが、それも何もない。合流したら「お帰り~」「揃った~」「やってるな」で終わり。甘えてはいけないと思うんですが、“変わらないこと”と言えばそれになりますね。
――ヘタミュは、カンパニーの仲の良さや絆の強さをとても感じます。いつからこんなに仲良くなったのか、というきっかけのようなものはありますか?
長江:圭輔さん、いつからこんなに仲良くなったと思います?
植田:何でだろうね?
長江:僕も分からないんですけれども、いつからかマチソワ(昼公演・夜公演)間のお弁当を、みんなで集まって一緒に食べ始めていたんですよね。みんなそれぞれに楽屋があるのに。今はもうそれを通り越して、誰がどこで食べていても何とも思わないし、特別に何かたくさん話さなくてもいい。でも、誰かが何かおもしろいことをやった瞬間、急に集まってきたりするんです。いつから仲良くなったか分からないし、いつからこんなに熟年夫婦みたいな距離感になったのか…(笑)。
植田:特別に何かがあったのではなく、ただ“作品が良かったから”だと思います。どの話もとてもいい内容で、だからこそぎゅっと仲良くなれたのかな。ここにいたらお客さまを感動させられて、自分たちも役者冥利に尽きる感覚を持てて、なおかつ楽しい。キャストたちのいろいろな面がどんどん見えてきて、こういうやつなんだと分かり合える。そういうことが、とても速いスピードで顕著に出ている感覚がありました。
――皆さんお互いに、いい意味で遠慮のない関係性ですね。
植田:ないですね! 若い子でも年上のおじさんたちに「うるせえ!」とか言ったり(笑)
――シリーズが進むにつれ新しい仲間も加わってきましたが、皆さんどのように受け入れ、ともに歩んできたのでしょうか。
長江:僕らは受け入れる側なのですが、「あなたのペースでいいよ」という気持ちでいます。無理に仲間に入れるつもりもないし、そうかと言って突き放しているわけでもない。僕らはこのペースでたまたま合致しているだけだから、あなたもあなたのペースでいてくれれば、そのうちうまく交わって楽しくなれるんじゃないかな、という感じで。でも、ジェーくん(山田ジェームス武/スペイン役)は最初ものすごく緊張したって言っていました(笑)。
植田:彼も、今とはだいぶ雰囲気が違っていたね。今はみんな、年齢を重ねてやわらかくなっているし。裕太くん(樋口裕太/ロマーノ役)は、もともと共演経験のあるキャストが多かったこともあって最初からなじんでいましたね。
長江:彼は、現場の空気を見て、自分の立ち位置や立場を把握して中に入っていくのがうまいんです。技術ではない、人徳や性格そのものなんでしょうね。この作品を支えるピースとして、最初からいてくれているすごさを感じていました。
――「The world is wonderful」では、初日の直前に大きなトラブルがありましたね。その時のことを聞かせていただけますか?
長江:その知らせを受けてから初日の幕がおりるまで、あっという間に時間が流れました。どうなってしまうんだろう…と不安を抱えて現場に入ったときに目にしたのは、「いけますよ!」「やれますよ!」というスタッフさんたちの笑顔でした。この逆境さえも楽しもう、という心意気を感じました。久しぶりに帰ってきて初日にこんなことが起きるんだ、とも思いましたが、今思えば、僕らがよりひとつになるための“何か”だったのかもしれません。
初日の記憶はまるで無いのですが、僕ら以上にお客さまの緊張を感じたのを覚えています。劇場内に、ピンと張りつめたものがありました。それを、アメリカ役の龍乎(磯貝龍乎)さんが「もう笑っていいんだぜ、ハッピーにいこう!」というようにパンと壊してくれたんです。そこからはもうどんどん盛り上がって、お客さまを笑いの渦に巻き込んでいって…これが「ヘタミュ」だ! と思いました。
植田:「絶対に幕を開ける」という目的は決まっていて、今やれることとやるべきことでいっぱいいっぱいでした。もちろん、くらったしショックだったし、僕ら以上にショックな人がたくさんいていろいろなことを思いました。でも、ひとつの目標に向かって全てのセクションが動いて過ごしている時間を楽しんでいたりもしましたし、いろいろな奇跡も重なって幕を開けることができました。
正直、特に音響などの面では損害が大きく美談にはしがたいですが、僕たちがさらにぎゅっとなるための大きな試練だったのかなと思います。乗り越えて幕を開けられて、今こうして皆で笑っていられるのは、本当に幸せなことです。
長江: 10年、20年経ったらこのハプニングも1つの歴史として「大変だったよね」と言えるようになると思います。僕は、このできごとを「ヘタミュ」という歴史に重ねて、じんとくるものを感じました。
――最後に、お2人にとって今「ヘタミュ」はどんな存在ですか?
植田:「支え」ですね。役者をやるうえで、柱はひとつではないですし家族や仲間などいろいろな支えがありますけれども、その中でこのミュージカル「ヘタリア」が僕の役者人生の支えになっているのは間違いありません。
長江:仲間や家族、というのもあるのですが、それだけでは当てはめきれないです。「ヘタミュ」は、僕が初めて座長として立たせていただいた舞台であり、それがこんなに長く愛される作品になったのは役者としてとても幸せなことです。こんな経験をしている人はあまりいないのでは? と思うくらいに。だから、他の言葉では代用できなくて…。
答えになっているかわかりませんが、「ヘタミュ」は「ヘタミュ」でしかなくて、“楽しい”や“嬉しい”と同じように感情の1つであり、僕に何かをくれる場所なのかな、という感覚です。
取材・文・撮影:広瀬有希
ライブ配信概要
■対象公演・チケットリンク
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■販売期間
2022年10月28日(金)12:00~■販売価格
1,100円(税込)■視聴期間
7日間(C)日丸屋秀和/集英社・ミュージカル「ヘタリアWW」製作委員会
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