漫画家・柴門ふみが1988年に発表した漫画『東京ラブストーリー』。ドラマ版では「月曜の9時には渋谷から人がいなくなる」と言われるほどの社会現象を巻き起こした。今回はジェイソン・ハウランドによる全編書下ろしの音楽で、漫画を原作として初のミュージカル化、11月27日(日)から開幕する。
2.5ジゲン!!では、主人公・永尾完治を演じるWキャストの柿澤勇人と濱田龍臣に取材を実施。今作の見どころや、赤名リカ役の笹本玲奈・唯月ふうかへの印象などを語ってもらった。
――はじめに、今作へご出演が決まった時のお気持ちをお聞かせください。
柿澤:どうなるんだろうって不安でいっぱいでした(笑)。今も想像ができなくて、不安ですね。でも、日本でミュージカルを作るという挑戦はすごく素敵で頑張ろうと思いました。より良いものにするために、千秋楽まで1公演ずつ、探りながら作り上げていく作品になるかと思います。
濱田:東京ラブストーリーがミュージカルに!? という驚きもありました。僕はミュージカルの経験があまりないですし、Wキャストも初めてで。同じ役を柿澤さんが演じられるということもずっとドキドキしていました。
本読みが始まるまで色々考え過ぎて眠れない日もあったんですけど、ここでお仕事をいただけたというのが何かの縁だと思いますし、新しい挑戦をして、自分の限界を越えられるように頑張りたいと思っています。
――原作や脚本に触れた感想を教えてください。
柿澤:僕はドラマ版を観ていて、漫画は稽古に入ってから読みました。でも、舞台の脚本というのは原作やドラマをなぞるだけではなく、舞台ならではの魅力があると思います。だからあまり影響を受けないよう漫画は深読みし過ぎないようにしています。
その中でもカンチという役は正解があまりないような気がしていますね。キャラクター性や性格というものはもちろんあると思うんですけど、“受ける”芝居が多いんです。リカに振り回されたり引っ張られたり、自分が経験のないできごとに反応をしていくということが多いんですよ。
濱田:僕は原作やドラマは見たことがありません。実は、それまで知らなかった作品は、基本的に出演が決まっても見ないようにしているんです。役の方向性は演出家さんや脚本家さんが何となく持っているものがあるので、そのイメージを固めていきたいと思っています。
柿澤さんが言うように、カンチは受けの芝居が多いんです。でも、役者が違うと反応もまったく違ったものになると思います。原作やドラマに対する知識が新しいからこそ出来る反応もあると思うので、そういう作り方をしていきたいと思っています。
――今作の見どころを教えてください。
柿澤:この作品は、心のベクトルの行き違いや恋模様をひたすら描いています。日常を切り取ったような、ありふれた話をミュージカルにするのは挑戦だと思いました。皆さんも経験したことがあるかもしれない恋愛を身近に感じたり、共感できる点が魅力だと思います。
濱田:東京という街の良さやカンチたちの成長の対比、関係性の移り変わりが、曲を通して感じることができるのが魅力だと思います。それを観客の皆さんにどう届けるかが、今の一番の課題ですね。
――先ほどからお話にも出ていますが、お2人から見たカンチはどのような人物ですか?
柿澤:優柔不断ですね。今回の舞台では、最後まで自分からアクションすることはあまりないんです。本当は初恋の人をずっと思っているのに好きと言えなかったり親友に取られちゃったり、その中でリカと付き合っちゃったり…気持ちがずっと揺れ動いています。
自分から何かをすることはないので演じていてちょっとストレスが溜まるんですが(笑)。でも、リカちゃんと恋愛している時のエネルギーはありますし、仕事も含めてちゃんと成長をしていくことのできる人物です。
濱田:優柔不断っていうのはもちろんなんですけど、さらにすごく不器用な人だと思います。中途半端に自分の感情を殺そうとして、逆に辛くなってしまうということもあるんです。諦めをつけたい、決意をしたい、でもそうしなきゃよかった…って後悔をしてしまう。優柔不断で不器用だからこその悩みがあります。
でも、いろいろなことに誠実に取り組もうとする部分はすごく素敵ですね。皆が満足できるものを作るためには仕事で悩んだり、誠実さはすごくあるんです。そういう真面目な姿と、「何やってんだカンチ!」って言っちゃいそうになるギャップが彼の魅力で、そこに惹かれる人も多いと思います。
――同じ役柄を演じますが、お互いの印象はいかがでしょうか。
柿澤:22歳なのにしっかりしているし、心臓が強いなって思いますね。東京ラブストーリーのミュージカル化って、ミュージカルの経験がそんなにないなら普通は断っちゃうと思います(笑)。でも、挑戦する姿勢がすごいですね。僕はメンタルがあまり強くないので、たくさん勉強させてもらっています。
濱田:柿澤さんは、歌の説得力がすごいんです。僕は同じ歌を歌えているんだろうか? と不安に思うくらいです。稽古中に「ここはどうですか」と質問をさせてもらったり、お芝居のお話をさせてもらったりする中で、柿澤さんは役に対してすごく考えて向き合っている方だと感じました。でも、お芝居を見ていると、すごく自然なんです。物語の全体から細かいシーンまで、理解度の深さがすごいからこそだと思います。
僕は行き当たりばったりの人間で、お芝居もそういうところがあるんですけど、全体を脚本として見ながらちゃんと演じられているところが勉強になっています。
――それぞれのお相手・リカ役の笹本さんと唯月さんの印象を教えてください。
柿澤:(笹本)玲奈ちゃんは動物的なパワーを持っていて、なかなかお会いしたことがないタイプの方ですね。リカは本能で動いていて、でも賢くて、実は傷つきやすくて…。引っ張っていったり引っかき回す役を担うことが多いので大変だと思いますが、すごくぴったりだと思います。
濱田:僕が178cm、(唯月)ふうかちゃんが153cmなんですが、25cmの身長差を感じさせないくらい内包しているエネルギーが強い方です。華奢な体のどこからそのエネルギーが出ているんだろうってびっくりするくらいの熱量を感じています。儚い(はかない)お芝居をしている時には見ていて心を締め付けられたりするので、すごい役者さんだと感じます。一緒に舞台に立たせていただけて、光栄です。
――最後に、楽しみにしているファンの皆さんへ一言お願い致します。
柿澤:日本で初めての『東京ラブストーリー』のミュージカル。すごく緊張しています。東京で起こる日常を切り取って、現代に書き換えたこの作品がどうなるんだろうって皆も思っていると思いますし、僕らも思っているんですけど(笑)。「面白いじゃん!」って感じてもらえるように、一生懸命頑張ります。
濱田:東京に住んでいる人もそうじゃない人も、東京に対するイメージを変えてくれる出会いになるかと思います。『東京ラブストーリー』というミュージカルの世界でどれだけ自分らしく表現ができるのか、役者として新たな挑戦の場でもあります。150%の力で自分なりのカンチと東京ラブストーリーをお客さまに届けて、心を動かせるように頑張ります。
取材・文:水川ひかる/撮影:井上ユリ
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