2.5次元舞台の黎明期を駆け抜け、一大コンテンツへと成長したミュージカル『薄桜鬼』。シリーズ10周年となる2022年、春には原点回帰となる「真改 斎藤一 篇」を上演、10月~11月には6年ぶりの開催となる「HAKU-MYU LIVE 3」も控えている。
そんな「薄ミュ」のメモリアルイヤーを飾る10周年特別番組『集まれ! みんな斎藤一PARTY』がスカパー! 時代劇専門チャンネルにて10月28日(金)25:30に放送決定。
2.5ジゲン!!では、収録を終えた、初代斎藤一を演じた松田凌、彼から誠を受け継ぎ二代目斎藤一を演じた橋本祥平に話を聞いた。番組収録の様子とあわせて、お互いに人生の大きなターニングポイントとなった「薄ミュ」斎藤一への思いをお届けする。
歴代斎藤一が大集結! 特番収録レポート
スタジオに集まったのは、初代から五代目までの歴代斎藤一役のキャスト陣。残念ながら四代目である赤澤燈は参加できなかったが、松田凌・橋本祥平・納谷健・大海将一郎の4人が一堂に会するという、「薄ミュ」ファンにとっては夢のような空間が生まれた。
4人は2つのチームに分かれ、罰ゲームを回避するべく、斎藤一にちなんだゲームに挑戦。
最初のゲームでは、それぞれが演じた斎藤一のシーンを振り返るクイズが登場。さらに、刀の代わりに箸を握りあるゲームにもチャレンジ。
劇中では冷静だった彼らが、思わぬ苦戦を強いられることに……!? そして後半のゲームでは、公演当時の記憶を手繰り寄せながら、各キャストが大切にしてきた「斎藤一」としての信念なども明らかになっていった。
歴代の斎藤一役が一堂に会したことで、斎藤一を演じる人にはこんな共通点があるのかも? といった新たな発見もあるかもしれない。劇中では物静かな斎藤一と、素顔の彼らとのギャップもぜひ楽しんでほしい。
松田凌の物語から、橋本祥平の物語へ。2人をつなぐ斎藤一の信念
――『集まれ! みんな斎藤一PARTY』へ招待されて、いかがでしたか。
松田凌:率直に嬉しかったです。自分が斎藤一を演じることが決まった10年前には想像もしていなかったことなので、未来にちゃんとつながっていたんだなと。存分に楽しもうという気持ちで収録に臨みました。
橋本祥平:僕も嬉しかったですし、これまでミュージカル『薄桜鬼』という作品で、同じ役を演じたキャストが一堂に会するという機会はなかったと思うので、貴重な場を設けてもらったことをありがたく感じました。
大海(将一郎)くんも(納谷)健もすごく素敵だなと思って。普通だったら恐縮しちゃうのかなって思うんですよ。僕も凌くんの前ではいつも恐縮しちゃっているので(笑)。でも、収録では2人のラフな感じに助けられましたし、めちゃめちゃ楽しい雰囲気で収録できました。
――収録で一緒だった納谷さん、大海さんの印象を教えてください。
松田:健は男らしくて潔い男ですよね。今日も「緊張する~」って一番言っていたのですが、実は一番楽しんでいたんじゃないのかなと。いい意味で自分の気持ちの持ち方を考えられる人だと思います。それは彼が演じる斎藤一にも表れていたと思うし、不思議と久しぶりに会う感じがしなかったです。
橋本:健とは別作品で共演はしているのですが、会うのは久しぶりで。全然当時の印象と変わらず、かわいい健もいましたし、番組も盛り上げてくれたし。ずっと関西弁なんだなって思っていました(笑)。でもその感じがすごく心地よくて、いい雰囲気を作ってくれましたね。
松田:大海くんはすごく物腰が柔らかくて、みんなのことを見てくれていましたね。すごく優しい人なんだなって。
あと、これ言っていいのかわからないんですけど、今日の収録で彼の横顔が視界に入ることが多くて、廣瀬大介にそっくりだなと(笑)。斎藤役である彼に、沖田総司を演じた大介に似ているねって言うのもおかしな感じになってしまうんですが、びっくりするくらい似ていました(笑)。影でまとめてくれていることも多くて、すごく心強かったです。
橋本:そうですね。周りを見て気を遣ってくれて、すごく素敵な人でした。以前、事務所の配信番組にゲスト出演してくれたことがあって、それ以来だったのですが、距離感もいい感じに詰めてくれて、すごくありがたかったですね。思ったのが、斎藤一ってクールなキャラクターじゃないですか。だからなのか、みんなこういう場で爆発するんだなって。
一同:(笑)
松田:たしかに。4人共通で根は斎藤一に近いと思うんですが、まんま斎藤一っていう人はいないかもしれないね。
橋本:そうですね(笑)。
松田:今回、赤澤燈くんが収録に参加できなかったのはすごく残念なんですが、彼もとっても優しくて、芝居にも愛がある人で。今日、彼がいたらまた違う空気感の番組になったんじゃないのかなって思うくらい素敵な人です。今日の収録では僕が最年長だったんですが、燈がいたら彼が最年長になるので、また違った雰囲気になっていたんでしょうね。
橋本:でもMC的な立ち位置は凌くんで変わらないと思います……。
松田:僕はもう……。次があったらそのときは祥平に頼みます。
橋本:無理です、無理です(笑)。
――根は近しいとのことですが、斎藤一役のキャストに感じる共通点はありましたか。
橋本:みなさん、それぞれのこだわりを持って挑んでいたんだなっていうのは、収録を通して感じましたよね。
松田:そうだね。斎藤一役が集まって話すことってなかったので(笑)、改めて話を聞いてみたことで、各々のこだわりが聞けたし、こだわりが強い役者が斎藤一を演じているような気がしますね。
――具体的には?
橋本:役作りに対するこだわりはそれぞれ違ったのですが、一貫してそこに信念があるというか。僕も話を聞いていて「なるほど、そういうこだわり方とか作り方もあるよね」っていう発見がありましたね。
松田:各々、器用なところがあるんですけど、それとは別に不器用な部分をみんな持っている気がします。
斎藤一のように、自分の得意なところに特化していて、それがどこかちょっと不器用に見えて。だけど、得意なところとか好きなことに対しての情熱は誰よりもある、みたいな。それは今日の4人にも、斎藤一というキャラクターにも共通しているのかもしれないですね。
――お互いの演じる斎藤一をどう見ていますか。
橋本:この先何年経っても、いろんな役者が斎藤一を演じても、僕の中の斎藤一は一生、松田凌くんしかいないですね。今こうして僕がここに座っていられるのもこの作品と、凌くんが斎藤一を演じてくれていたおかげなので。アニメよりも先にミュージカル『薄桜鬼』に触れて、そこで初めてキャラクターを知ったので。
松田:そっか!
橋本:だからもう、(僕にとっては)凌くんが斎藤一なんですよ。
松田:僕ら以外の3人もすごく素敵な斎藤一を演じていたと、もちろん思っているんですが、私情を挟ませてもらうと、やっぱり僕が初めて自分の演じてきた役を「この人しかいない」と感じてつないだのが橋本祥平で。だから、10周年というタイミングで橋本祥平の「斎藤一 篇」が上演されるというのを聞いたときが、僕が一番報われた瞬間でした。僕の物語という感覚だったんですよ、「斎藤一 篇」は。
僕が始まりではあったけれど、彼の演じる「斎藤一 篇」を観終わったときに、これは「橋本祥平の物語」だと感じたんです。祥平の言葉を借りれば、僕の中では橋本祥平が斎藤一なんですよ。お互いがそう思っていることは、きっとみなさんにも届いていると思うし、そういった思いがあるからこの作品を愛せているんだと思います。
――先日まで舞台『漆黒天 -始の語り-』で共演されていましたね。同じ舞台に立って、お互いの目にはどんな役者として映りましたか。
松田:一言で言うと「でっかくなったなぁ」です。その背中を誇らしく思いますし、また共演できるように自分も高みを目指していきたいなって思わせてもらっています。
橋本:ありがたいお言葉です。僕の一番のお兄ちゃんと共演できるというのが嬉しかったんですが、現場ではあまり家族感がなくて。役者同士として過ごせた気がします。というのも、凌くんの弟役で長妻怜央が出ていたんですが、凌くんがずっと怜央といるんですよ。だから弟としては怜央に嫉妬しながらも、そこに入ってはいけないなと思って過ごしていました(笑)。
久しぶりにご一緒して、稽古場でのあり方とか舞台に対する姿勢を見せてもらって、自分の取り組み方を見つめなおすいい機会になりましたし、憧れの先輩の背中は本当にでかいなって実感しました。
――斎藤一という役との出会いは役者人生において大きな意味を持つと思いますが、もし斎藤一に出会っていなければ?
松田:実は当時、別の役でオーディションを受けていて。斎藤一に選んでもらったことで、人生の第一歩が想像もしていなかったほど大きな一歩になりました。
橋本:斎藤一に出会えていなかったらそもそも役者ができていなかったかもしれませんね。役者を目指して学校に通ってはいましたが、そこでくすぶっていた人生もあったと思いますし、役者を目指すのをやめていたかもしれないし。
違う世界線で僕が起業して億万長者になっているっていう可能性もあるんですが、それがあるとしても、今のこの人生を選んで本当によかったなって思います。
松田:俺がそこで働いている未来もあったかもしれないよね。「松田、もう少し業績上げてくれる?」って橋本社長に言われていたかもしれない。
一同:(笑)。
松田:僕は役者をしていなかったらバックパッカーになっていたかな。世界中を旅したかったので。でも今は役者としていろんな世界を生きて、台本の世界を生きられているので、ある意味その夢は叶っていますね。
――「薄ミュ」が次の10年続くために、受け継いでいってほしいものはなんでしょうか。
松田:僕はやっぱり新選組の魂ですかね。本当に魅力的な作品だと思うんですよ。千鶴というヒロインを中心に隊士との愛を描くだけでなく、歴史に基づいたストーリーが描かれていて、作品の中に新選組の魂が根付いていて。
まだ2.5次元という言葉も(広まって)なかった時代に、僕たちが役をつかめたのはそこでした。「今のこの時代を動かしたい、俳優として一旗揚げたい」という自分たちなりの誠の旗を掲げてやっていて。思いの形や掲げるものは違うとしても、隊士たちが夢見ていたような思いを持ち続けてもらえたらと思います。
そんなミュージカル『薄桜鬼』だったら、この先も応援したいと思えるんじゃないかなと。
橋本:10年の月日の中で多くのものが変わりましたし、主題歌も変わったのですが、今年改めてカンパニーに加わった際に、当時と変わらない空気感があって。新選組としての誠の心をちゃんと感じましたし。
その理由を考えると、やっぱり(近藤勇役の)井俣太良さんの存在が大きいんです。この先、10年、20年続くとして、太良さんにはずっと「薄ミュ」の歴史を見届けてほしいと思います(笑)。逆に言うと、太良さんが卒業した「薄ミュ」っていうのがあるとしたら、それが新たな章に突入するタイミングかなと思うので、それもどうなるのか楽しみといえば楽しみですね。
松田:ミュージカル『薄桜鬼』も、きっといつかは終わると思うんです。でもそれが美しいと思うんですよ。桜のお話なので、散る瞬間が一番美しくなるように、これからも続いていってほしいですね。
***
“微衷を尽くし”役に向き合ってきた松田と橋本の対談は、一つひとつの言葉に斎藤一を演じた者にしか分からないであろう思いが込められていたように思う。一方で4人が集結した番組収録では、全員が柔らかい雰囲気を持ちつつもどこか職人気質な一面を覗かせていて興味深かった。
まずは今秋開催される「HAKU-MYU LIVE 3」へ期待を膨らませながら、「薄ミュ」がさらに咲き誇るであろう次の10年を楽しみにしたい。
取材・文・撮影:双海しお/スタイリスト:MASAYA(ADDICT_CASE)/ヘアメイク:城本麻紀、成谷充未
番組概要
<3ヵ月(10月~12月)連続企画>10周年記念!ミュージカル『薄桜鬼』一挙放送
ミュージカル『薄桜鬼 真改』斎藤一 篇(京都大千秋楽公演版)■放送日時
10月22日(土)23:00~
■原作
オトメイト(アイディアファクトリー・デザインファクトリー)
■脚本・演出
西田大輔
■出演
橋本祥平、牧浦乙葵/久保田秀敏、北村健人、樋口裕太、川上将大、小池亮介、輝馬、椎名鯛造、井俣太良/横山真史、末野卓磨、川本裕之/鈴木勝吾 ほかミュージカル『薄桜鬼』斎藤 一 篇
■放送日時
10月28日(金)23:00~
■原作
オトメイト(アイディアファクトリー・デザインファクトリー)
■脚本・演出
毛利亘宏
■出演
松田凌、廣瀬大介、吉田仁美/池田純矢、小野健斗、宮崎秋人、天野博一、森大、柏木佑介、江戸川卍丸/清水順二(30-DELUX)/鈴木勝吾/矢崎広 ほか※ミュージカル『薄桜鬼』シリーズ全14作の一挙放送は、10月22日(土)より3ヵ月連続で、毎週金曜・土曜日23:00に放送
ミュージカル『薄桜鬼』10周年記念特番「集まれ!みんな斎藤一PARTY」
■放送日時
10月28日(金)25:30~
■出演
松田凌・橋本祥平・納谷健・大海将一郎※シリーズ本編・特別番組は、スカパー!番組配信でも初回放送後から視聴可能。特別番組は、スカパー!番組限定で収録後のアフターパーティーを含む拡大版を配信。
詳細は特設HPをご覧ください。
■時代劇専門チャンネル特設HP
https://www.jidaigeki.com/osusume/m-hakuoki-ikkyo/
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