9月22日(木)~24日(土)に東京・ニッショーホールにて上演される、朗読劇「Every Day」。繊細かつユーモラスな世界観のもと繰り広げられる恋人たちの「いつもと変わらぬ奇跡の1週間」が、ピアノの生演奏とともに紡がれる。
原作となる映画「Every Day」は、音楽家・haruka nakamuraの楽曲「every day」から着想を得て執筆された冨士原直也の短編シナリオを基に手塚悟が監督を務めた。
今回の朗読劇はメインキャスト2役を3組の俳優が日替わりで務め、9月22日(木)が「林遣都×瀧本美織」、23日(金・祝)が「相葉裕樹×北原里英」、24日(土)が「赤澤遼太郎×瑞季」、という組み合わせで、各日2公演ずつの上演となる。
2.5ジゲン!!では、主人公・三井晴之役を務めるキャストの1人、赤澤遼太郎にインタビューを実施。本作の見どころや朗読劇の魅力、自身が感じる「日常の中の幸せ」などについて聞いた。
会話劇×恋愛もの「初めての挑戦を楽しみたい」
――今作の見どころや、観客に注目してほしいところはどこですか?
まずはなんといっても、ピアノの生演奏ですね。繊細なピアノの音は今作のイメージにぴったりで、よりエモーショナルな作品に仕上がると思いますので、ぜひ期待してください。演じ手としても、生演奏に乗せて朗読できるというのはとても貴重な機会だと感じています。
2つ目の魅力は、ストーリーの持つ広がりです。今作の中で起きる出来事については、いろいろな解釈が可能です。ありえない出来事を「実際に起きたこと」と受け取ることも、「主人公が作り出した幻想」と受け取ることもできる。正解が観客に委ねられるというか、人によってどんな感じ方をしても自由なところが、今作の一番の面白みだと思います。僕も、どう受け取ってもらえるのか考えながら演じるのが楽しみです。
3つ目はとても個人的なことなんですが、今作ではいろいろな要素が僕にとって初めての挑戦になります。新しい自分をどんなふうにお見せできるのか、今からすごく楽しみです。ストレートプレイのシンプルな会話劇、しかも恋愛ものということで、ファンの方ももしかしたら驚いているかもしれませんね。そこは役者としてしっかりお芝居に引き込んでいきますので、初めての赤澤遼太郎を楽しんでいただけたら嬉しいです。
――原作映画「Every Day」の印象はいかがですか?
現実にはあり得ない幻想的な出来事が、役者さんたちの自然体のお芝居を通してリアルに描かれる映画です。この「現実と非現実」の対比がとても面白いと感じました。鑑賞を終えても、これは主人公の妄想なのか、それとも……?と、どんどん想像が広がっていく感じがとても好きだなと思います。アルバムをめくるような演出も素敵です。
――物語が生まれるきっかけとなったharuka nakamuraさんの楽曲「every day」は、いかがでしたか?
こちらは心にスッと沁み込むような楽曲でした。聴いていると切なくてたまらない気持ちになるけれど、同時にそっと優しく包み込んでくれるような、不思議な感覚があります。映画のシナリオ自体が、この曲から着想を得て執筆されたというだけあって、曲とストーリーとがぴったりリンクしていますよね。
映画には、要所要所でクスッと笑って息抜きできるコミカルなお芝居も盛り込まれていて、そこも素敵だなと思いました。今回の朗読劇にもユーモラスな会話がたっぷり散りばめられているので、切なさ、優しさ、楽しさ、いろんな感情をお客さまに持ち帰っていただけたらと思っています。
朗読劇は「シンプルな分ごまかしがきかない」
――赤澤さんが感じる、朗読劇ならではの魅力はどんなところですか?
1番の魅力は、観客の皆さま1人1人が自由に情景を想像できるところだと思います。もちろんどんな舞台にだって想像力を働かせる楽しみはありますが、朗読劇では大道具や小道具、視覚的な演出がない分、より自由に想像が膨らむというか。ステージの上に椅子だけがあって、ごくシンプルな衣装を着た読み手が現れ言葉を重ねる。観客は読み手の声から想像を働かせて、見たい景色をそれぞれに見ることができる。この自由さは、朗読劇の魅力だなと思っています。
――反対に、朗読劇ならではの難しさはありますか?
僕はこれまで朗読劇を、オンラインと生のステージで1作ずつ経験させていただいていますが、それぞれに違う難しさがありました。オンラインの朗読劇で難しかったのは、やっぱりお客さまの反応を見られないところです。これは朗読劇以外でもそうなんですが、オンラインでお芝居をする上での最大の苦労というか、課題ですね。逆に生で朗読劇をさせていただいたときは、今まで経験したことがないほど緊張したのを覚えています。
――朗読劇では、普段の舞台より緊張されたんですか?
僕の場合はそうでした。最初に役をまとわない「素の赤澤遼太郎」として舞台に登場するからなのかなと思います。普段は登場した瞬間から役としてお芝居に入っているけれど、朗読劇では袖からステージに出て椅子に腰掛けるまで素の状態で、台本を開いて初めて役に入るという……その一連の流れにものすごく緊張したのをよく覚えています。
逆に、お客さまはむしろ普段よりリラックスしていらっしゃるように感じましたね。前のめりの気持ちで物語を楽しむというよりは、椅子にゆったり腰掛けて落ち着いて聞き入っているという印象で、それも新鮮でした。
――そんな朗読劇に参加する上で、今から意識していることはありますか?
滑舌や話し方といった基礎的な部分を、より鍛えなくてはと意識しています。それから、今回はどちらかというと穏やかな物語、観客の皆さまが自然に物語に入っていけるよう工夫したいです。セリフのスピードや声のトーンなど、お芝居を駆使してストーリーに入り込んでいただけるよう努めます。
――朗読劇は身体の動きが少ない分、演じるのが難しいのでは……と想像してしまうのですが、その辺りはいかがでしょうか?
そこはそれほど心配していません。「じっとしているから感情を込めにくい」という感覚はあまり無くて、むしろ丁寧に気持ちを込めてセリフを言えるように思います。ただ、舞台装置がシンプルということは、「お芝居にごまかしがきかない」ということでもあります。動きがない分、気持ちとセリフがきちんとリンクしていないと伝わるものも伝わらなくなってしまうので、ひとつひとつのセリフにしっかり気持ちを乗せていきたいです。
小さな幸せといえば「朝ごはん」、その理由は?
――今作で演じる主人公・三井晴之という役柄について、共感できる部分やご自身との共通点はありますか?
僕はすごくインドア派で、家でダラダラするのがめっちゃ好きなんですね。晴之もダラダラするのが大好きで、ハワイに行きたがっている恋人に「ニコタマの河川敷でキャッチボールじゃダメ?」って言っちゃうタイプ(笑)。ダラダラ好きという点で、彼にはすごくシンパシーを感じました。
――今作のテーマは、日常と非日常が交錯する「いつもと変わらぬ奇跡の1週間」。そこで伺いたいのですが、赤澤さんが「小さな幸せ」を感じる日常のひとときは?
朝ごはんを食べているとき、ですかね。朝は太りにくいということで、カロリーを気にせず好きなものを食べられるので……朝ごはん大好きなんです(笑)。今朝は、トーストと目玉焼き、コーヒー、納豆、それと昨夜からずっと食べたいのを我慢していたミスドのドーナツを食べました。
朝ごはんタイムは、家族となにげない会話をする時間にもなっているんですよ。すごくたくさん喋るわけじゃないけど、「昨日こんなことがあったよ」「明日からの舞台はこういう感じ」みたいな、本当に何気ない話をします。この時間があるのと無いのとでは大違いで、自分にとってはこういう時間が大事なんだなって感じています。
あとは、先程もちょっとお話しましたが家でダラダラする時間が好きです。これはあるあるだと思うんですけど、小さい頃、学校を休んで家にいるとき、普段見られないTV番組を見られることになぜか幸せを感じませんでした? その感覚が大人になってもずっとあって、オフの日の昼間に情報番組を流しながら「ああ今日休みだ、幸せだなあ~」ってしみじみ感じます。それで夕方のニュースが流れ始めると、ちょっと寂しくなっちゃったりして。
――最後の方も含めて、すべてあるあるですね(笑)。お仕事の面で幸せを感じるのは、どんなときでしょうか?
お仕事では、ファンの方からいただいたお手紙(ファンレター)やDMを読んでいる瞬間がものすごく幸せです。こちらは小さいどころか特大サイズの幸せですね。お手紙って本当に嬉しいんですよ。コロナ禍の影響で紙の形で受け取ることが少なくなって、それはそれで寂しいです。
あと、舞台のライブシーンでコールアンドレスポンスできたこと、お客さまと声を交わし合えたことについても、振り返っては「めちゃくちゃ幸せな瞬間だったんだなあ」と思っています。当時も充分実感しているつもりでいたけれど、今となってはさらに心に沁みますね。
共演者の方々とご飯に行くのも僕は好きで、ざっくばらんに話す中で関係が深まったり、アイデアが生まれて作品が進化していったりしたことが数え切れないほどありました。今はご飯も打ち上げもできないので、仕方ないけれどやっぱり切ないです。
こういう「失って初めて気づく」という感覚も、今回の「Every Day」で描かれていることの1つです。つらい気持ち、しんどい気持ちも含めて、さまざまな感情を込めて演じきりたいです。
「小学校では女子に混ざって携帯小説を読んでいた」
――読書家で、普段からさまざまなジャンルの本を読まれる赤澤さん。朗読劇として「演じてみたい」と感じた作品はありますか?
朗読劇なら、星新一さんのショートショートでチャレンジしてみたいです。読み手の想像力を掻き立てる文章、かつ分かりやすいストーリーで、朗読劇の良さを発揮できそう! 観客の方もすごく引き込まれるんじゃないかと思います。星さんの著作でとくに好きなのは『あと五十日』というタイトルの作品で、ある男のもとに突然謎の存在が現れて、「あと〇〇日です」と日付をカウントダウンしていくお話です。いつかお芝居として読んでみたいですね。
――実現のあかつきにはぜひ観劇したいです! ちなみに、最近読んだ本の中で心に残った作品は?
最近読んだ中では、瀬尾まいこさんの『幸福な食卓』がすごく良かったです。あの作品もやっぱり日常の大切さを教えてくれるストーリーで、とても心に残りました。僕、そういう系統の物語が大好きなんですよ。一番好きな映画も『私の頭の中の消しゴム』ですし。小学生の頃から女子に混ざって携帯小説や恋愛小説をたくさん読んでいました。
――ということは、今作「Every Day」も……。
大好きなタイプのお話です! ただ、読んだり見たりするのと違って演じるとなるとやっぱり、精神的に削られますね。演じる側としていざ台本を読んでみたら「うわ、これは大変……」って。この物語を1日2回上演するのか、と考えるとかなり気合が入ります。これまでわりとどの作品でも明るく元気!というイメージの役を任せていただくことが多かったので、全く異なる今回の役は僕もファンの方にとっても新鮮なんじゃないかと思います。そういう意味でも、新しい一面をお届けできたら嬉しいです。
――貴重なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、今作を楽しみにしていらっしゃるファンの方へメッセージをお願いします。
1日しかない大切な公演、僕の全てを絞り出してやりきります。絶対素敵なものにしますし、観てくださった方を後悔させない作品にするよう頑張りますので、この物語をぜひ一緒に体験してください。こんなご時世ではありますが、足を運んでくださったらとても嬉しいです。劇場でお待ちしています!
取材・文 豊島オリカ/撮影:井上ユリ
広告
広告