7月23日(土)、舞台『佐々木と宮野』が東京・シアター1010にて開幕する。本作は、春園ショウによる『佐々木と宮野』(MFCジーンピクシブシリーズ/KADOKAWA 刊)の舞台化作品。BL漫画を愛する“腐男子”宮野由美と少し不良の先輩・佐々木秀鳴との恋愛模様や、彼らを取り巻く友人たちの日常を描く、甘酸っぱいボーイズライフ作品だ。
2.5ジゲン!!では、本作のダブル主演である菊池修司(佐々木役)と竹中凌平(宮野役)に対談取材を実施し、漫画・アニメを見ての印象などの話を聞いた。佐々木役と宮野役としてお互いに伝えたい胸きゅんメッセージとは……? 本作の公開稽古と取材会の様子とともにお届けする。
なお、本記事には、稽古で披露された原作でも人気のシーンの写真を含むため、「全ては劇場で観たい」というファンは注意してもらいたい。
原作へのリスペクトを忘れずに、自信を持って面白いと言える作品を
――まずは、本作に出演が決まった時のお気持ちから教えてください。
菊池修司(佐々木秀鳴役):お話をいただいて原作に触れたところ、とてもほのぼのとしていて自分自身も幸せになれる作品だと感じました。同時に、細かい感情やちょっとした動きのひとつひとつも大事にしている作品なので、どう舞台で表現しよう、どう届けよう、とも思いました。
佐々木と宮野として、お客さんにどう受け取ってもらえるだろうか……というプレッシャーも同時に感じたのを覚えています。
竹中凌平(宮野由美役):情報が解禁された時、女性からだけではなく男性からもたくさん声をかけていただいたんです。反響の大きさに、頑張らなければと改めて感じました。『佐々木と宮野』というタイトルで宮野役をさせていただくことにプレッシャーはありますが、これまで持っていなかった価値観が広がっていくことにワクワクしています。
――お2人は2019年の舞台以来の共演となります。
菊池:その時はそれほどがっつりと絡む役ではなかったのですが、一度共演していると壁やフィルターが外れるので、安心して稽古に入れます。何よりも、宮野役が凌平くんだと聞いてぴったりだと思ったので、とても楽しみになりました。
竹中:佐々木先輩はすごくかっこいいので、イケメンの修司が演じたら絶対かっこいいだろ! と思いました。SNSで、修司が3月・4月にものすごく怖い不良の役を演じていたのを見ているので、今回とのギャップがすごいなと感じています(笑)。
――ご自分の演じられる人物の好きなところをそれぞれ教えてください。
菊池:自分の気持ちに正直だけれど、相手の気持ちを大事にしているところですね。本当はこうしたいけれど宮野の気持ちを考えると……とドギマギしてしまっているのを見ると、魅力的だなと思います。
竹中:宮野はすごく素直だし、嘘をつかないところが好きです。原作と脚本には、佐々木を好きになっていく宮野の気持ちの道筋が綺麗に描かれているので、それをもとに丁寧に役を作っていくつもりです。
それから何といっても、かわいいですよね! ビジュアル撮影では、目を開き眉を上げて、眉間にしわが寄らないように気を付けました(笑)。
――本作は漫画から始まり、ドラマCD、アニメなどのメディア展開がされてきています。
菊池:アニメももちろん見たのですが、とにかく絵がきれいで、きらきらと輝いているように見えたのが印象に残っています。今までに見たことのないアニメだと感じて、あっという間にワンクール分の12話を見てしまいました(笑)。
かわいいエフェクトもすごく効果的で、だからこそ、舞台でこのきらきら感をどう出そう? と考えました。
竹中:僕もアニメを見て、絵がきれいだなぁと感じました。それから、春夏秋冬を描いている作品なので、季節ごとのイベントなどに合わせて服装が変わっていくのもいいな、と。時間の経過もきちんとあるし、それに合わせて相手への呼びかけ方が変わるのもいいですよね。
菊池:呼び方と言えば、佐々木は普段宮野のことを「みゃーちゃん」と呼んでいるのに、たまに「宮野」って呼ぶときがあるんです。その瞬間はドキッとして、胸がちょっとキュッとなります(笑)。
――脚本・演出は伊勢直弘さんが務められます。伊勢さんの脚本と演出はいかがですか?
竹中:僕は伊勢さんとは初めてです。実は、ちょっと厳しそうな方なのかな……? なんて思っていたんです。でも、こういう作風の作品だからかもしれないのですが、シーンの意図などをものすごく優しく教えてくださっています。
菊池:伊勢さんは締めるところは締めてくれます。脚本のことで言えば、だいぶ長い分量のストーリーを2時間ほどの舞台としてまとめるのはとても大変だと思うんです。でも台本を読んでも、ストレスを感じずにゴールまで持っていけるのはやっぱり素敵ですね。
大事なシーンをこぼさずに拾って散りばめているし、漫画やアニメ以外の部分(ドラマCDやノベライズなど)からも要素を持って来ていて世界をさらに広げているので、ファンの方は嬉しく思ってくださると思いますよ。
竹中:僕は他の仕事の都合で少し遅れての合流になったのですが、もう通し稽古をしているのに驚きました。それから、感情の対比などの心理描写がものすごく丁寧ですよね。思っていることと言っていることが全然違うシーンでのモノローグの扱い方が面白いです。
菊池:この作品は、キャラクターの心の声もどんどん実際の声に出して表現しているんです。でも、それが不自然には見えないようにするにはどうしたらいいか、といろいろと模索しています。2人の心の声のすれ違いやシンクロにも注目してもらえたらと思います。
――佐々木と宮野は、漫画やCDの貸し借りをしながら仲を深めていきます。もしお2人が本作『佐々木と宮野』のコミックスを貸すとしたら、どんな人に、どう言って貸しますか?
菊池:ピュアな心を失ってしまった人や、落ち込んでいる人、いろいろ抱え込んでしまっている人に貸したいです。「1回難しいことは忘れて、これを読んでみて!」「読む前と後では、自分の中で何かが変わるかもしれないよ」と伝えます。
何なら、様子を見ずに少しずつ貸すのではなく最初から全巻渡しますし、スピンオフの『平野と鍵浦』も一緒に貸しちゃいます(笑)。
竹中:きゅんきゅんする気持ちが足りていない人や、恋愛で傷ついてしまった人に貸したいです。ピュアな気持ちを思い出して、またいちから始めたり、一歩前に進んで欲しいなと思います。
――本作の見どころとファンの皆さんにメッセージをお願いします!
竹中:多くのファンの方に愛されている作品なので、プレッシャーも感じていますが、原作へのリスペクトを忘れずに、自信を持って面白いと言える作品を作り上げます。公演が始まってからも口コミでどんどん良さが広まっていったらいいなと思うので、SNSに感想をたくさん投稿してもらえたら嬉しいです。
菊池:本作『佐々木と宮野』は、多くの人が楽しみにしてくださっているとても大きな作品だと思っています。舞台には舞台ならではの面白さがありますし、2人を中心とした空気感は劇場でしか味わえないと思います。ぜひ、ワクワクを胸に劇場へ来てもらえたら嬉しいです。
――最後に、佐々木と宮野としてお互いに一言伝えてください。
菊池:好きな本について話している宮野はすごくかわいいです。稽古中はマスクをしているんですけれど、マスク越しでも楽しそうな気持ちが伝わってくるんです。
僕がCDを貸したりした時、宮野が嬉しそうな顔をすると僕も嬉しくなります。もっとそういう宮野の顔を見たいし、ずっと見ていたいなと思っています。
竹中:そうですね、僕から佐々木先輩には……「落としてください」でお願いします!(笑)。
「夏にぴったりなきゅんきゅんする作品」!
インタビューの前には、公開稽古と取材会がおこなわれた。公開稽古では、宮野が佐々木に初めて漫画を貸すシーンや、風邪の影響で居眠りをしてしまった宮野に佐々木が葛藤しながらも触れるシーンなど原作でも人気のシーンなどが情感たっぷりに披露された。
取材会には菊池修司、竹中凌平、上田堪大、川隅美慎、北村健人、阿部快征、伊崎龍次郎が出席。本作への意気込みや、丁寧な心理描写を大事にしている本作ならではの演じがいなどについてのコメントが寄せられた。
――お1人ずつコメントをお願いします。
菊池修司:この作品は「ボーイズライフ」ということで、言葉のひとつひとつがあたたかく、観てくださった方もすごく心が温まる作品だと思っています。佐々木と宮野の関係性もより濃く出していけたらと思いますので、ぜひ本番を楽しみにしていただけたらと思っております。
竹中凌平:公演が7月の後半なので、夏にぴったりなきゅんきゅんする作品をお届けできればと思います。皆さまのご来場、お待ちしております!
上田堪大:ちょうど先日、粗(あら)通しを行いました。今作はキャスト皆と少人数でつくる演劇なので、まだまだブラッシュアップしていきます。劇場で素敵なものをお届けできるように、健康管理に気をつけながら残りの稽古も頑張っていきたいと思います。引き続き応援していただけると嬉しいです。
川隅美慎:この作品では、他では味わえないような“カップル萌え”みたいなものができるのではないかと思います。非日常的なものを描いている作品が多い中、本当にこの世界のどこかで起きているような高校生活を描いた作品です。
きっと登場人物たちと同じ悩みを抱えている人たちもいると思いますので、そういう方々に向けても“腐男子”“腐女子”がいる世界を皆さんにお届けできたらと思います。ぜひ劇場まで観に来ていただけると嬉しいです。
北村健人:情報解禁がされてから、SNSでも皆さんの反応を見させていただいて、これまで舞台を観たことがない方も多いのかなと感じました。これを機に初めて舞台に観に来てくださる方にも「舞台ってこんなに面白いんだ」と思っていただきたいですし、初日から千穐楽に向けて口コミでも広がっていくような作品にしていきたいです。
僕らも最後までこだわって、稽古最終日まで頑張っていきます。ぜひ、観に来てください。
阿部快征:……恋って難しいですよね。(周りから「どうした?」と突っ込みが入る)恋って難しいんです。いろいろな形があります。この作品を観たら、その1つの答えが分かると思いますので、恋に悩んでいる方! この舞台を観に来て答えを見つけてみてはいかがでしょうか。ぜひ恋を学びに来てください。よろしくお願いします。
伊崎龍次郎:漫画から展開して、アニメ・朗読があって、今回は舞台です。「佐々木と宮野」という舞台ならではの表現を、「佐々木と宮野」のファンの方そして、演劇を観たことが無い方、演劇を愛してくれている方、皆さんに舞台ならではの空気感を劇場で体験していただけたらと思います。
男子高校生ならではのわちゃわちゃとした感じや、佐々木と宮野2人の繊細な言葉のやり取り、心の機微や物理的な距離などの1つ1つに息をのんだり、笑ったり、きゅんきゅんしていただければ、舞台でやる意味があるなと思います。ぜひ劇場に体験しにいらしてください。お待ちしております。
――本作は、男子高校生の日常と心理描写を丁寧に描いた作品です。アクションやダンスなどのある作品に多く出演されている皆さんが感じる、本作での俳優としてのやりがいや、チャレンジしていることなどを教えてください。
菊池:普段は、キャラクターの気持ちを想像して楽しんでいただくことが多いのですが、本作は、佐々木と宮野をはじめ登場人物たちの心の言葉を丁寧にひとつひとつ出していく作品です。今までにない観点でお芝居をしていて、とてもやりがいを感じています。だからこそ、その言葉に嘘がないように丁寧に届けていきたいです。
竹中:本作では、ダンスや殺陣といった身体的なアクションがない代わりに、繊細な心理描写の“心のアクション”がとてもたくさんあります。そういう所がしっかりとお客様に伝わるように、繊細に描いていきたいと思っています。
上田:アクション、ダンス、歌といったものは目を引きやすいものですが、本作では、シンプルに芝居を届けています。それから、音楽、照明、衣装などの各セクションのスタッフさんといつも以上にコミュニケーションを取って作り上げることを意識しています。
川隅:とてもリアルな作品です。でも、大きな劇場でリアルにやりすぎてもお客さんに伝わらない部分も出てきてしまうかもしれないし、だからと言っていつものエンタメ性の強い作品のように大きく演じるのも少し違うかもしれません。
本作はそれらの中間にある作品だと感じていて、ちょうどいい塩梅をみんなで試行錯誤しているところです。佐々木と宮野が触れ合う大事な瞬間がどこまでお客さんに伝わるか…とても難しいのですが、そこは注目してほしい部分です。
北村:本作は、非日常的な大きな事件や問題が起きる話ではありません。日常的な出来事の中に、彼らにとっての事件や問題へと発展していく要素があるので、それはどれなんだろう? とすくいだしていく作業が大切になっていきます。普段とは違う発想で台本に取り組んでいかなければいけない作品だな、と感じながら臨ませていただいています。
阿部:役者をやっていて快感を覚えるのは、発した台詞が皆さんに伝わった時です。だから今作も、広い劇場ではありますが、観に来てくださったお客様に伝わればいいなと思いながら、もっともっと台詞に想いを込めていきたいです。
伊崎:原作にある瑞々しい言葉と感情と“間”を、集中して丁寧に、楽しみながら作っています。原作で描いているものがリアルな分、お客様も感情などを共有して楽しんでいただけたら嬉しいです。
取材・文・撮影:広瀬有希/編集:五月女菜穂
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