映画と舞台の連動プロジェクト「ムビ×ステ」の第3弾として、映画「漆黒天 −終の語り−」が6月24日(金)に公開、舞台「漆黒天 −始の語り−」が8月5日(金)に開幕する。
映画版は、江戸を舞台に記憶喪失の男・名無しが自分の正体に迫る様子を描くミステリー時代劇で、脚本を末満健一、監督・アクション監督を坂本浩一が担当。名無し役は荒木宏文、ヒロイン・喜多役は小宮有紗が務める。
2.5ジゲン!!では、荒木と小宮に対談取材を実施。ミステリー要素だけではなく、迫力のあるアクションシーンも魅力の本作で、リアルな命の取り合いが表現されたと語る2人に、映像作品への向き合い方や撮影現場の雰囲気などを、見どころと共に聞いた。
――はじめに、脚本を読んだ際の感想を教えてください。
荒木宏文(名無し役):以前「COCOON 月の翳り星ひとつ」という舞台で末満さんと一緒に仕事をさせてもらったのですが、そのときは2作同時上演ということもあり、作品のことでいっぱいいっぱいになってしまって、末満さんとコミュニケーションを取る余裕がなかったんです。もったいないじゃないですか。だから、またご一緒できるっていうのはありがたいなと思いました。末満さんは映画では脚本のみの参加で現場にいらっしゃらなかったのですが、舞台では演出もされるので、稽古が始まったときにようやく目標が達成できるかなと思います。
小宮有紗(喜多役):私は末満さんとは初めてだったんですが、監督の坂本さんとは何年か前にお会いしたこともあり即決で参加しました。他にも、「特命戦隊ゴーバスターズ ファイナルライブツアー」の時のプロデューサーの方々ともご一緒できるということで、お話を頂けて嬉しかったです。別のお仕事の関係でスケジュールが厳しかったんですが、「頑張って調整してください」ってマネージャーさんにお願いしました(笑)。
荒木:たしかに、小宮さん途中でいなくなってました。大変なスケジュールだったんですね。
小宮:ライブとかぶってしまっていて、(撮影現場から)1日だけ戻って仮組みでライブのゲネをしていました。でも、それでもいいからこの作品に出たいと思って。
――共演してみて、お互いの印象はどうでしたか。
荒木:とてもたくましい方だなと。まさに対等でいられる、役者仲間が増えたという感覚です。芝居のことを話したり、世間話をしたりしてもなんのストレスもない。男友達といるのと同じくらいの感覚で、フラットでいてくれるのはありがたいなと思いました。
小宮:私にとって荒木さんは、お母さんのような安心感がありました(笑)。最初からなんでも話せちゃう。性別を超えちゃって申し訳ないですけど、安心感がすごかったです。
荒木:多分そこなんですよね。性別が関係ない雰囲気を共通で持っていたから、変に気を使わずにストレスなくいられたのかもしれない。
――現場の雰囲気を教えてください。
小宮:作品とは全然違っていて和やかな感じでしたよね。
荒木:そうだね。初めましてじゃないんじゃないかと思うくらい、いつの間にか仲良くなっていました。長妻怜央くんとも初めてだったんですけど。
小宮:荒木さんにめちゃくちゃ懐いていませんでした? 子犬のように(笑)。
荒木:あれはびっくりしました。でも初日は彼の緊張も伝わって来ました。そこは、松田凌くんが頑張ってコミュニケーションを取ってくれたんだと思います。
――江戸が舞台ということで、衣装は着物、殺陣のシーンもあります。撮影現場で苦労をしたこと、または楽しかったことはありますか。
小宮:着物、すごく好きなんですよ。ただ撮影の時期が秋から冬に変わるくらいでちょっと寒くなっていたので、草履がちょっと寒いかなとは感じました(笑)。髪の毛はかつらじゃなくて地毛を結ってくださったのもポイントです。殺陣のシーンは私にはないんですが、荒木さんたちの殺陣がすごかったです。映画ってコマ数を減らすことで動きを早く見せるんですけど、そんなの必要ないくらい動きが早くて素晴らしかったです。
荒木:僕は映画を作るにあたってリアリティの割合をイメージしていますね。映画と舞台では演技をどこまで現実に寄せていくかという作業が違うので、その調整には苦労しました。例えば殺陣では、舞台だと刀を当てないよう演技をするんですが、映画だとカメラが寄るので当てざるをえない。草履に関しても、舞台では足袋にクッションの入った動きやすいものがあるんですけど、今回の映画では普通の草履でやったんです。撮影の現場には石が落ちていたので、それに足を取られながらやる殺陣はすごく臨場感がありました。膝をついたら痛いし、手をついても痛いし、倒れ込んでも痛いし、何をしても痛いところで、必死になって動いているから、役者のみんなの目が血走っているんです。妥協をしないで必死にやることが、命の取り合いの表現にリアリティを持たせてくれたと思います。
――映画と舞台が連動しますが、取り組む上で普段の舞台作品との違いは感じていますか。
荒木:時系列で言ったら舞台の方が映画より前の話なんです。だから映画は何も考えずに演じました。僕の役は記憶を無くしているから、ピュアなまま撮ろうと考えていました。他の記憶を無くしてない人たちは大変だなと思いますね(笑)。
小宮:私は映画しか出てないんで。何にも気にせずできました。
――名無しは圧倒的な剣技を持っていますが、ご自身のこれだけは他人に負けない! と思う特技を教えてください。
小宮:食い意地ですね。食べるのが大好きです。食に対して貪欲に生きているかな。今はリンゴジュースにハマっていて、特に「青森りんごシリーズ」が好きです。ストレート果汁100%なんですよ! しかも旬によって、つがるとかふじとか品種が変わるんです。私が一番好きなのは王林っていうリンゴジュースで、それが一番甘くて美味しいですね。でも、さっぱりとガーって飲みたいと思ったらつがるが爽やかで美味しいです。
荒木:僕は自分に自信がないところは負けないと思います。なんでもできるって思ったことが一切なくて、才能がないから頑張れます。自信がないことに関しては自信を持っています。自惚れる瞬間がなかったからプライベートも仕事も間違った道に進まず、ここまで頑張ってこられたんだと思います。
――最後に映画の見どころとともに、ファンへのメッセージをお願いします。
小宮:今回の映画ってすごく複雑なんですよ。だから私も台本を初めて読んだ時は衝撃を受けました。もう1回読み直して理解しましたね。こういう映画の宣伝って2回も3回も見てほしいって言うことが多いと思うんですけど、この作品は本当に2回目を見た方がより魅力が伝わると思うので、2回はマストで見てください。マストで!
荒木:そうですね。2回マストで(笑)。この作品を作るにあたって僕が意識したのは、表裏一体です。表裏、正義と悪といったものが均等に存在する世界を表現したので、見る人の置かれている環境や立場、その日のコンディションによって出す答えが変わる作品になっていると思います。前回は肯定したはずなのに今回は否定してしまう瞬間だとか、見え方が変わる面白さがあるので、やっぱり2回はマストで見ていただければと思います。
撮影:井上ユリ
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