2022年7月1日(金)、『NIGHT HEAD 2041-THE STAGE-』 が東京・シアターGロッソで開幕する。
本作は、2021年に放送されたアニメ『NIGHT HEAD 2041』(フジテレビ他)の舞台化作品。アニメ版は、1992年に放送のテレビドラマ『NIGHT HEAD』の監督であり原作者の飯田譲治が脚本を務め、全く新しい世界観でありながら、超能力を持つ霧原兄弟の苦悩が引き続き描かれた。
舞台では、霧原兄弟をはじめ黒木兄弟などもダブルキャストとなり、TEAM WHITEとTEAM BLACKという2チームに分かれて公演がおこなわれる。
2.5ジゲン!!では、霧原兄弟の兄・直人をダブルキャストで演じる猪野広樹と鍵本輝(Lead)に対談インタビューを実施。久しぶりの“共演”と聞いた時の気持ち、とっておきの兄弟エピソードのほか、生を味わえる舞台やライブで普段感じていることなどについて話を聞いた。
実際「兄タイプ」&本当は「めちゃくちゃ甘えたい」
――本作への出演が決まり、2017年の舞台『義風堂々!!』ぶりの“共演”と聞いた時のお気持ちを教えてください。
猪野広樹:エモいな! と思いました(笑)。輝くんは、親戚のお兄ちゃんのような温かさがある人なんです。前回の舞台『義風堂々!!』では本当にお世話になったし、また一緒に仕事ができるのは嬉しいですね。
鍵本輝:まじか! と思いました。あれから5年の時を経て、また猪野くんと一緒に一つの作品に携われるのがとても嬉しいです。前回は戦国時代で今回は近未来のお話なので、まるっきり逆ですね(笑)。前回は別役同士だったのですが、今回はダブルキャスト。なので、本番中に同じ舞台の上で共に高め合っていくことはできないのですが、その分、これから稽古場で切磋琢磨していきたいと思っています。
猪野くんは、稽古場の空気をぎゅっと引き締めてくれる存在なんです。舞台『義風堂々!!』では猪野くんは他の仕事の都合で少し遅れての参加になったのですが、猪野くんが現れた瞬間に、いい意味での緊張感が稽古場に生まれたのを肌で感じました。
猪野:そうだったみたいね。場を引き締めよう! というつもりはないんですけれど、僕がいるとそうなってしまうらしいんです。
鍵本:すごくいいことだと思う。僕は「みんなで楽しく盛り上がっていこう~!」というタイプなので、猪野くんが引き締めてくれることでカンパニーの空気がちょうどいい雰囲気になるんです。今回もそうなることを期待しています。
――脚本を読んだ印象はいかがでしたか?
猪野:観終ってからたくさんのことを自由に想像できる余白があるな、と思いました。例えば、映画『インセプション』(2010年)のように、答えを明らかにするのではなく観た人の想像に委ねて謎を残したまま終わる。そういう後味を残せる舞台になるんじゃないかな、と。
鍵本:演出の加古(臨王)さんも、本読みの時にそう言ってたね。「“謎さ”がすごくいい」って。
猪野:謎を楽しんでもらえたら嬉しいですね。
鍵本:僕は、アニメ版を舞台化するにあたって、こう変化したんだ! と感じました。アニメの12話分を2時間ほどの舞台におさめるためには、さまざまな要素を省かないといけません。でもそのおかげでストーリーがシンプルになって、より分かりやすくなっているように思えます。
――今作では霧原兄弟の兄・直人を演じますが、役を離れたご自身は、兄・弟どちらの属性ですか?
鍵本:僕は鍵本家の末っ子であり、事務所でも末っ子期間が長かったので、弟属性ですね! めちゃくちゃ甘えたいタイプです。
猪野:僕は弟がいるから兄タイプかな。
――ご兄弟にまつわるエピソードがあれば教えてください。
猪野:4つ下の弟がいるんですけれど、大学に行ってからも反抗期が続いていたんですよ。もう全然親の言うことを聞かない。でもなぜか、俺の言うことだけは聞くんです。社会人になった今でも俺が言ったことはすぐにやってくれます。どうやら俺のことが好きっぽいですね(笑)。
鍵本:僕が3、4歳の頃の話です。うちの両親は共働きだったので、兄弟で留守番をしていることが多かったんです。ある日、4つ上の兄が「おかんに会いに行こう!」と言い出して、奈良の田舎の田んぼ道を、手を繋いで一緒に2、3キロ歩いておかんの職場まで行ったんです。
職場に着いて「おかーん!」と呼んだら、もうおかん大号泣。「寂しい思いさせてごめんね」って。…というのを母から聞きました。僕は全然覚えてないんですけど(笑)。末っ子なので、小さい頃から兄貴に手を引っ張られてどこにでも行っていた、というエピソードです。
「最後に色をつけてくれるのは、お客さんなんです」
――本作は、物の見え方や自分が持っていた価値観が変わる、というのもテーマの一つだと感じます。この数年の間に、そのような経験はありましたか?
猪野:相手に自分の考えを伝えたい時に、その人に合わせて伝え方を変えるようになりました。例えばアドバイスをする時も「この人には、どう言ったら分かってもらえやすいかな?」と考えてから言うんです。人によって受け取り方も違いますしね。
鍵本:目線が演出家みたいだね。
猪野:うん、いずれは演出もやってみたいなと思ってるけど、まだ説得力が足りないからもう少し先かな(笑)。
それから、いい意味で相手に対して勝手に大きな期待を持つのをやめるようになりました。勝手に期待をしてしまうと、それにそぐわなかった場合失望してしまうのでよくないな、と思って。
鍵本:それは共感するね。期待をするって、自分の願望を相手に押し付けているようなものなので、わがままな考え方でもあると思うんです。
僕は、“当たり前の大切さ”を改めて感じています。今は舞台も「最後まで皆揃って千秋楽を迎えよう!」が目標の一つになっていますが、以前はそれは当たり前のこととして考えていました。
ライブで思い切り声を出して皆で盛り上がれたあの時、あの空間が当たり前のことではないと気づいていれば、もっと味わい方も変わっていただろうな…と考えることがあります。また、あの頃のように声を出して楽しめる時が来ればいいなと願っています。
――『NIGHT HEAD』はテレビドラマから始まり、小説、ゲーム、アニメなどさまざまなメディアミックス展開がされてきました。今回舞台化されるにあたり、舞台ならではの面白さは何だと思いますか?
鍵本:やっぱり、生もの(なまもの)である点ですね。どれだけ精度を高めた稽古を積み重ねて同じことを何度も繰り返したとしても、公演ごとに絶対にどこか違うものが生まれます。臨場感があって、自分がその場に住人や目撃者として存在している感覚になる。それは舞台ならではのものです。
猪野:アナログ感と、ドライブ感じゃないかなと感じています。鴻上尚史さんの言葉で好きなものがあって「カーブを40キロで安全に曲がってもつまらない。でも120キロで事故っても意味はない。100キロで曲がるのがいい芝居だ」って。いい芝居って、ワクワクさせてもらえるものだと思うんですよ。
それから、熱を直接届けられるし受け取れるのも舞台のいいところです。
鍵本:お客さんと気持ちのキャッチボールができることですね。ライブで言えば、ここは一緒に盛り上がりたい! という時にわっと盛り上がってくれたらすごく嬉しいですし、舞台では、例えば「ここで笑ってもらえたら嬉しいな」というシーンで客席から笑い声が聞こえてきたら気持ちがアガっていきます。
キャッチボールがうまくいっているな、と分かると僕たちもどんどん楽しくなっていくし、きっとお客さんも同じ気持ちなんじゃないかな。舞台と客席でお互いに高めていけるのが生もののいいところですね。
猪野:お客さんが入って舞台は完成するとよく言われますが、これは本当です。稽古を重ねて、劇場に入って場当たりをして、ゲネプロで通す…これらは全部絵で言えば下書きで、最後に色を付けてくれるのはお客さんなんです。だから僕は舞台が好きなんですよね。
――最後に、公演を楽しみにしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
鍵本:ストーリーや世界観など、楽しんでほしいものがたくさんあります。それから何よりも、このカンパニーの熱を感じてもらえたら嬉しいですね。今回は歌もダンスも無いので翼をもがれた気分ですが(笑)、芝居の力と個々の役者が持つ精神エネルギーを受け取りに、ぜひ劇場に来てもらえたらと思います。
猪野:本作は、TEAM WHITEとTEAM BLACKという2つのチームに分かれて公演をおこないます。チームそれぞれ、見えてくる謎が全く違うものになるんだろうな、と僕も楽しみにしているところです。ぜひ両方のチームで観て、「TEAM WHITEではこう思った、TEAM BLACKはこうだった」など、さまざまなものを受け取ってもらえたら嬉しいです。
取材・文:広瀬有希/撮影:泉健也/編集:五月女菜穂
広告
広告