映画と舞台の連動型プロジェクト「東映ムビ×ステ」の第2弾「死神遣いの事件帖」シリーズが再始動。映画1作目「死神遣いの事件帖 -傀儡夜曲-」のその後を描く、舞台「死神遣いの事件帖 -幽明奇譚-」が6月に上演、2022年冬には舞台の続編として映画「死神遣いの事件帖 -月花奇譚-」が公開予定だ。
2.5ジゲン!!では、映画1作目に続き久坂幻士郎を演じる鈴木拡樹にインタビューを実施。幻士郎の魅力や新たな相棒・亞門との関係、ムビ×ステならではの面白さなどを聞いた。
――まずは続編が決まった際の心境を教えてください。
第1弾の映画の際に、なんとなく話していたんですよね。事件があればあるだけ作品を続けられるねって。それを形にしてもらって、東映ムビ×ステでは初の続編ものとしてやらせていただけて。なので、まずは実現できたことが嬉しいですね。
――久々に演じて感じる幻士郎の魅力とは。
幻士郎はちゃらんぽらんな役どころなので、演じていて楽しいですね。好き勝手できるので。日常生活ではやっぱりルールとか気をつけるべきものがありますが、舞台上ではそういうものも一旦忘れて、全部開放して(笑)。普段も別にストレスを感じているわけではないんですが、こういう自由な生き方っていうのも素敵だなって思わせてくれるのが、幻士郎の魅力だと思います。
――前回演じた際は映画でしたが、今作は舞台も出演となります。役の作り方の違いなどはあるのでしょうか。
大きく違うのは作品の雰囲気ですかね。今回の舞台は“傾く(かぶく)”というテーマがあるので、テンポの良い会話シーンも多い印象です。そういう部分で、同じ人物を演じていますが、呼吸の違いを感じていますね。映像だと自然な呼吸のままお芝居をして、編集をしてもらう。
だけど舞台は編集がないので、その編集部分をセルフでやっているっていう感覚ですね。舞台はまだ稽古中で完成形ではないんですが、みんなで良い呼吸のテンポを作っている最中です。まだ稽古序盤ですが、(手応えは)すごく良いと思っています。この時点で良い感触を得ている分、ブラッシュアップしていったこの先が楽しみですね。
――その空気感の違いは、ファンが観ても感じられるものでしょうか?
すごく感じられると思います! 前回の舞台もそうでしたが、(演出の)毛利亘宏さんの世界観がすごく出ているなって思いましたし。映画は映画で、特撮作品を多く手掛けてきた柴﨑貴行監督の子どもが観ても楽しめそうだなっていう世界観がありましたし。シリーズを通してどちらも生きていて、そこも面白いところだなと思います。
――今作は幻士郎が幽霊になってしまいますが、幽霊を演じるというのはいかがですか。こだわっている部分や難しさを感じる部分はどんなところでしょうか。
そこは自分というより周りが大変ですよね、幻士郎を見えていないことにしないといけないので。僕は普通に見えている状態なので、好き放題できます(笑)。でももちろん幽霊であることの難しさもあって、見えない存在だからコミュニケーションが取れないんですよね。その状態でどうやって事件を解決していくのかっていうのは、台本上でも難しかったんじゃないのかなと思います。でもそこがうまくからくりとして事件に絡んでいくので、なかなか面白いし、他ではあんまりない作品になるのかな、と。主人公が冒頭から死んじゃってますからね(笑)。
――幽霊だからこそのからくり、ますますどうなっているのか楽しみです。今作では新たな死神・亞門が登場します。相棒となる小林亮太さんとの雰囲気はいかがですか。
現時点ですでに台本から飛び超えた部分も一緒に作れているので、すごく楽しいですね。ここからもっと色々生まれていくんじゃないかな。亞門は今作から登場のキャラクターなので、みなさんもどんな人キャラクターかわからない状態じゃないですか。そういう部分もあって(小林くんが)トライしてくれていると思うんですが、そのおかげですごく愛せるキャラクターになっていますね。
――そんな亞門と関わることで、幻士郎の変化というのもありますか?
変化はすごくありますね。十蘭(演:安井謙太郎)との関係では、幻士郎がちょっかいを掛けにいっては、十蘭が僕を否定して会話がスパッと終わることが多いんです。だけど亞門は幻士郎のノリに近いので、死神の性格としては亞門と十蘭は180度くらい違う。だから幻士郎と亞門は「これ誰が止めるんだ?」っていう、ノリのいいバディになっていると思いますね。
――小林さんとはどんな雰囲気で2人のシーンを作っているのでしょうか。
普段は「これまでどういう作品やってきたの?」とか、そういうことを話すんですが、作品に関してはすごく話すわけじゃないですね。話し合って決めるというよりは、稽古の中で出てきたものに対してどう返していけるか、という作り方です。彼はすごく熱いタイプで、吸収力がすごいんですね。周りが彼の「なんでも吸収したい」っていう思いに応えたくなるというか。だからいろんな球を投げたくなるし、彼にもいろんな球を投げてほしい。お芝居のキャッチボール相手として最高だなと感じていますね。
――映画と舞台が連動するムビ×ステですが、取り組む上で普段の舞台作品との違いは感じていますか。映画との連動ということで、意識している部分などがあれば教えてください。
時系列としては今回の舞台の次に映画が位置するんですが、もう映画は撮り終えてるんですよ。だから逆算の考え方になるんですかね。映画で描かれた部分に、この舞台がちゃんとつながるようにって。幻士郎は映画1作目に比べて2作目の方が、事件解決に乗り気というか前向きなんですよ。でもその理由って、舞台版の台本を見るまでは明確に語られていなかったんです。だから今回の舞台は、その幻士郎の成長を見せるお話にもしないといけないなと思っています。
――「その後」が分かっている上でのお芝居は難しいように感じるのですが、実際はいかがですか。
未来が分かった状態で過ごすって、本来の人生では味わえないものなので楽しいですね。いかに未来を感じさせずに、そこにつながるまでの成長過程を描けるか。ゼロなんだけど、1の時点を描き直すというか。難しさももちろんありますが、台本の読みがいを感じています。
――冒頭にもお話があったように、シリーズものとしてさらに展開できる作品だと思います。今後続編があるなら、幻士郎のどんな活躍を演じたいですか。
父親は戦でも活躍した久坂家一の天才傀儡子だったので、彼が残した功績と同じくらい大きな事件にチャレンジしてみたいですね。大きな事件を解決して、名が売れて、ちょっとだけウハウハしてみたりとか。あの性格なので、お金持ったらバカやっちゃう気がするんですけど(笑)。
――それはそれで観てみたいですね! では最後に、本作の見どころとともにファンへのメッセージをお願いします。
前作をご覧になった方は、「どうやってあの状態から幻士郎が出てくるの?」と思うかもしれませんが、いよいよその真相が舞台で描かれます。幻士郎の身に何が起きたのかを楽しんでいただきつつ、舞台の裏テーマとして“傾く”というのがありますので、もともとかなり傾いている幻士郎の生き様と相まって、不意に傾いた音楽が聴こえてくるような作品になっていたら嬉しいなと思います。この舞台がシリーズ初見という方も、幻士郎の人生が終わっちゃったところからのスタートなので、難しいことは考えず観ていただけたらと。そして続きは、ぜひムービーをご覧になっていただいて、舞台と通して楽しんでいただけたらと思います。
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江戸で活躍する“3枚目ヒーロー”幻士郎が新たな相棒を連れて帰ってくる舞台「死神遣いの事件帖 -幽明奇譚-」。舞台という空間で、今度はどんな騒動と活躍を見せてくれるのか。稽古での手応えを語る鈴木の姿からは、作品への自信が窺えるとともに、彼自身が何よりこの役を楽しんでいることが伝わってきた。今年6月、ヒューリックホール東京で幕が開く瞬間を心待ちにしたい。
取材・文:双海しお/撮影:友野雄
鈴木拡樹=半袖シャツ・パンツ:PAZZO(パッゾ)/長袖シャツ:NUMBER (N)INE(ナンバーナイン)/その他:スタイリスト私物
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