ファン待望のシリーズ3作目となる「僕のヒーローアカデミア」 The “Ultra” Stage 平和の象徴が4月9日、KAAT神奈川芸術劇場にて幕を開けた。
2.5ジゲン!!では緑谷出久を演じる田村 心、爆豪勝己を演じる小林亮太に対談インタビューを実施。神奈川公演を完走した直後の2人に、本作へ懸ける思いや見どころ、お互いの関係性などについて話を聞いた。
U-NEXTでライブ配信■対象公演・チケットリンク
▶2022年5月8日(日)12:00東京公演
▶2022年5月8日(日)17:30東京公演(大千秋楽)
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――神奈川公演の完走おめでとうございます。今作も「ヒロステ」の醍醐味である、進化を感じられる作品で胸を打たれました。神奈川県公演を終えた気持ちを教えてください。
小林亮太(爆豪勝己役):去年12月に上演した「本物の英雄(ヒーロー)」はコロナ禍でのいろんなことがあって、準備の時間が倍近くあったし、そこからの新作だったので、「壁を超えていかなきゃいけない」というプレッシャーを掛けていたし、観ていただいた皆さんにもそれを感じてもらわなきゃいけないと思っていたので、今、「進化」という言葉をもらえて率直にすごく嬉しいです。今作は特にお客さまがいて完成する「ヒロステ」だと思うので、無事幕が開いて嬉しいですね。
田村 心(緑谷出久役):そうですね。2カ月くらい稽古をしてきたので不安はなかったんですが、ゲネプロまで割とバタバタしていたので、どこかで「大丈夫かな」という気持ちはあったんです。でも亮ちゃんの言う通り、お客さまが入ると「ヒロステ」は完成するなって改めて思いましたね。今回はミニライブもあるので、お客さまが入らないと僕らもイメージできない世界でした。そういう意味でも、お客さまに助けられたなって思います。
――今作に挑む上で、大切にしたことやこだわった部分はどこでしょうか。
田村:(出水)洸汰くんかな。子役との舞台共演が初めてだったし、子どもって僕ら以上に素直で繊細で敏感だと思っていて、しかも今回はダブルキャストで。だから1人と集中して作っちゃダメだなって思って、2人それぞれに話しかけたり、稽古場の端っこの方に連れて行ったり…。
小林:それじゃ呼び出しみたいじゃん(笑)。
田村:でもね、2人と話していると子どもなりにライバル意識を感じる部分がやっぱりあって。そこを刺激しないように、1人ずつ稽古場の端っこの方に誘拐していって(笑)、読み合わせの時間を作るようにしていましたね。
――子役が加わると稽古場の雰囲気も違うものですか?
田村:全然違うよね。
小林:大人組が溺愛していましたね。
田村:A組では(蛙吹)梅雨ちゃん(演:野口真緒)がまじでお母さん状態でした。
小林:梅雨ちゃんは、本当にママかのように舞台袖でもずっと見守っていますからね。なんなら洸汰くんのセリフを一緒に唱えていて、出番が終わったら「うちの子よく頑張った」ってホッとしていて。ママかな?って(笑)
田村:すごく癒やされていますね。でも洸汰くんとのシーンは難しかったです。子どもは好きだけど、子どもと触れ合う機会ってあんまりないじゃないですか。稽古中も亮ちゃんから「子どもに対してあんなに真面目な感じで接するかな?」って言われることもあって、そう言われてみると「たしかにな〜」ってなったし、かなり苦労しました。
小林:洸汰とのシーンは今までの「ヒロステ」で見てきた心ちゃんの顔じゃないんですよね。僕はそこがすっごい好きで。本当に見たことのない顔をするし、デクの新しい一面も知れるし。心ちゃんらしさとデクの間の、すごく絶妙なところでのお芝居をしている感じがして、すごくいいんですよ。ダブルキャストだからこそ、それぞれに対するお芝居も違うし。稽古場でそのシーンを観ていると、やっぱりこの「平和の象徴」ではオールマイトのシーンとデクのこのシーンがすごく大きいんだなって実感しました。
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――小林さんが今作でこだわった部分はどこでしょうか。
小林:これまで築いてきたものがあったんですが、今回はそれをただ積み重ねるだけじゃなくて、新たに組み直さなきゃ通じないんじゃないかっていう感覚があって。作中で敵(ヴィラン)にあれだけ囲まれるのも初めてですし、今回多分、今までで一番セリフが少なかったんですよ。言葉で表せない部分をどう表現するか、というのはすごくこだわりました。
敵(ヴィラン)と対峙するにしても、皆さんすごく個が強いので、本当に空気が全然違うんですよ。A組の中にいるのと、敵(ヴィラン)に囲まれるの。それがすっごい刺激的で楽しかったし、一つの作品でA組の中と外の両方を味わえるのはすごく面白いなって日々感じています。
――敵(ヴィラン)とA組、稽古場での雰囲気もかなり違うのでしょうか。
小林:年齢層の違いもあるのかもしれないんですが、敵(ヴィラン)組は一つの方向を向いているようで、それぞれの軸があるんですよね。その軸もすごく強い。A組としては、今までにない敵(ヴィラン)に対しての焦りみたいなものを感じていました。
田村:実は(演出の)元吉庸泰さんから稽古の最初の頃に言われたんですよね。「A組が敵(ヴィラン)に負けてるよ」って。それがすごく悔しくて。今作ではかっちゃん(爆豪勝己)がA組と一緒にいないことが多くて、だからこそA組を客観的に見られる立場だったんですよ。
だからいつも以上にアドバイスをくれたり、自分が入っていない振りも覚えて教えてくれたり。そういうことがあったから余計に、かっちゃんはA組にいなきゃダメだし、小林亮太も「ヒロステ」に必要なんだなって思った今作でしたね。
――作品全編を通して成長がキーワードとなる作品ですが、そんな中で本作はデク(緑谷出久)やかっちゃん(爆豪勝己)にとってどんな意味を持つ作品になっていますか。
田村:今作、デクは失うものが多くて、そういう意味ではあんまり成長はしていないかな。だからこそ、この先でデクは変わろうとしていくので、今作は成長へのピースが集まった回だと思っています。
小林:かっちゃんは今回、もらうものが多いかな。作品に携わるようになってから「爆豪と自分の共通点は?」という質問にたくさん答えてきたんですが、今回初めて気がついたのは、周りを見て悟る部分が、僕とかっちゃんで似ているなって。後半の大きな戦いを、かっちゃんは見ているだけしかできなくて。
そこから、ネタバレになっちゃうので詳しくは言えないんですが、あの最後の伏線めいたシーンにつながっていくんですけど…。その最後の演出も、稽古終盤で変わったんですよ。だからかっちゃんとしては、後半のオールマイトの戦いを見て受けたものを胸に、そのまま最後まで一直線にいくので、特に今作は受け取るものっていうのを強く意識しています。
田村:けっこうな伏線になっているけど、原作知らない人にはどう映ってるんだろうね? 明らかにかっちゃんだけカーテンコールも雰囲気違うじゃん?(笑)
小林:ね。僕、初めてだもん、カーテンコールで頭下げなかったの。
田村:下げらんないよ、あれは。
小林:それをよしとしてくれる演出家だし作品なので、甘えさせてもらっているんですが、あそこは本当に嘘つきたくないなって思ってそうしています。初演の頃の自分だったら「こうしたい」ってならなかったと思うので、本当に「ヒロステ」に育ててもらっているなって思いますね。
――千秋楽はU-NEXTでライブ配信もあります。配信ではどう楽しむのがおすすめですか。注目シーンなどあれば教えてください。
田村:「ヒロステ」は特に俯瞰で観てほしくて、照明やセットを誰が動かしているのかっていうのにも意味があるので、そういうところもスイッチングを駆使して観てもらいたいです。初日に撮ってもらった映像を観たんですが、こだわりがすごくて。配信で観るなら配信のメリットを存分に楽しんでほしいですね。あと声も出せますからね。ライブで声を出しても、ペンライトも頭上まで上げても大丈夫だし(笑)、思いっきり楽しんでください。
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――ミニライブは「ヒロステ」初ですね。
田村:客席のあの光景、亮ちゃん初でしょ? どうだった?
小林:なんかドギマギしちゃった(笑)。正直あの物語をやった後なので、切り替えが難しいんですけど、こういうご時世だからこそライブがあることでハッピーな気持ちで帰ってもらえていたらいいなって思います。
――デクとかっちゃんの関係性が今作でまた複雑になりましたが、どんな思いで演じていますか。
田村:デクはまだ今作を終えた時点での、かっちゃんの気持ちに気づいていないので、いつも通りです。だけど彼が難しいんだろうなって思いながら、カーテンコールとか出ていますね(笑)。
小林:3年近く一緒にやらせてもらっているから、「語らずとも」みたいなところはプライベートでもあるので、それがいい形でデクとかっちゃんにも反映されていたらいいな。何も考えていないっていうとちょっと違うんですが、それくらい素直でいられるというか。
田村:あ~分かる。キャストとも作品とも出会って3年目ですけど、だからこそ生まれたものが今回もあるし、芝居を超越した何かが生まれているような気がしますね。今回からデクをやってくださいって言われたら、できるでしょうけど、気持ちの入り方は全然違ったと思うので、3年という月日はでかいですね。その分、僕らも年齢重ねちゃったんですけどね(笑)。元吉さんから「フレッシュさがなくなりかけています。初演の頃を思い出してください」って言われちゃいました。
一同:(笑)。
――「語らずとも」な関係ということですが、お互いに尊敬しているところは?
田村:今回はめちゃくちゃA組を引っ張ってくれたので、そういう部分はすごくありがたいです。
小林:みんなが心ちゃんに付いていきたいって思うんですよね。
田村:すごい、デクじゃん!
小林:冗談でなく本当に。初演からずっと引っ張ってくれているし、それを見て僕も負けたくないって思うし。普段から常にモチベーションが高いので、そういうところを尊敬していますね。
――3年の絆を感じますね。では、最後にファンへのメッセージと千秋楽へ向けての意気込みをお願いします。
小林:後半は特にそれぞれの表情に気持ちが出ています。そういうところは劇場でもオペラグラスを使わないと見えないと思うので、配信とかも活用して観てほしいなって思いますし、素直な気持ちとしては「ヒロステ」は意外と全景でも観てほしい。キャラクターも多い分、どこに誰がいて何をしているのかっていうのは、多分全景じゃないと追いきれないと思うので、応援している役者さんや好きなキャラクターを追いかけつつ、全景も楽しんでもらいたいです。この作品を最後までやりきりたいという思いでいっぱいなので、この思いをできるだけ多くの方に見届けてもらえたらと思います。
田村:詳しくは言えないんですが、僕らにとってすっごく大切な作品で思い入れのある作品で、全員懸けている思いが過去2作ともちょっと違う作品なんですよ。そんな僕らの覚悟を、千秋楽は特にすごい熱を持って届けることになるんだろうなっていう予感がしているので、それを見届けもらえたらと思います。大千秋楽まで頑張ります!
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気心知れた二人のリラックスした雰囲気が印象的なインタビューとなった。観劇前はもちろん、観劇後に改めて読み直してもらいたい。そうすると、もう一歩深くこの作品が味わえるのではないだろうか。
取材・文:双海しお/撮影:友野雄