サン=テグジュペリの名作「星の王子さま」を原作とした音楽劇『星の王子さま』が、2022年4月~5月、兵庫・東京・愛知で上演される。
本作は、「鍵盤男子」などのコンサートや自作のオペラなどで活躍中の音楽家・中村匡宏による音楽で、2019年に上演された作品をブラッシュアップ。歌と芝居、時にはダンスも織り交ぜ、ピアノの生演奏で披露する。
2.5ジゲン!!では、飛行士役で出演する山本一慶にインタビューを実施。作品に対する想いや公演に懸ける意気込み、王子さま役の河下楽(AmBitious/関西ジャニーズJr.)との稽古場での雰囲気などについて聞いた。
――『星の王子さま』で、飛行士役に決まった時のお気持ちをお聞かせください。
子どもの頃に「星の王子さま」を読んでいたので、作品のことは知っていたのですが、どんな話だったのか、意外と覚えていないことに気付きました。(挿絵の)あの独特の絵はすぐに思い浮かぶのですが、改めてどんな話か聞かれると説明できないんです。
今回、音楽劇『星の王子さま』に飛行士役として出演させていただくことが決定し、この年齢になって、子どもの頃に読んだ「星の王子さま」という作品を深く掘り下げられることができるのでとてもうれしいしですし、光栄なことだと思いました。
――すでに稽古が始まっているとのことですが、飛行士役として苦労していること、楽しんでいることは何ですか?
苦労しつつ楽しんでいることなんですが、歌が難しいです。(河下)楽くんと二人で別々の歌詞を歌うシーンが多いですし、なおかつ歌うパートが違っていたり、似ている曲が多かったりします。
似ている曲がごちゃごちゃになったり、ハモるところが違ったりするので、曲ごとに気を付けなければいけないところがたくさんあります。複雑ですし、それを楽くんと一緒に歌うのですから、難易度が上がります。
でも、そういう難しい状況の中、楽をはじめとして、みんなで一生懸命一つのことに取り組めているので、すごくいいカンパニーだと思います。
――河下楽さんと一緒に歌うシーンが多いとのことですが、飛行士は王子さまと絡む場面が多いと思います。河下さんの印象はいかがですか?
稽古が始まったばかりで、まだまだ作品を探っている段階だとは思いますが、楽くんは一生懸命なところが王子さまとかぶるところがありますね。
王子さまって「こうじゃないの?」と問いかけたりする場面が多いんです。せりふの量がものすごく多いので、楽くんも「大丈夫かな…」と不安に思っているみたいなのですが、頑張ってせりふを言っている姿を見ていると、王子さまが一生懸命話しかけてくる必死な姿とリンクしていて、ナチュラルだしかわいいなと思っています。
楽くんが今の感じを維持しつつ、王子さまという役を作り上げていけば、すごく素敵な『星の王子さま』になるんじゃないかと思います。
――今回の公演で挑戦したい! と思っていることは何ですか?
音楽劇ということで、歌をたくさん歌わせていただきます。実は僕、プライベートではほとんど音楽を聴かないんですよ。音楽を聴いていると、「この歌詞はどういう意味なのだろう?」と考え出してしまってリラックスにならないんです(笑)。
でも音楽劇であれば、演じる役の想いがそのまま音楽にのっているわけですから、役の気持ちで歌えばいいので、すごく楽だしノーストレスで楽しいです。
ただ僕の感覚では、今回の作品はお芝居にかけるウエートが大きいと感じています。そこにスパイスとして音楽が載っているので、お芝居と歌がいい感じに混ざり合っていますから、お客さまに飽きずに観ていただけたらいいなあ…と思っていますし、その点で挑戦だと感じています。
――飛行士を演じるにあたり、役作りはどのようにしていますか?
(演出陣から)「今回のキャストだからこそできる『星の王子さま』にしたい」と言われているので、役作りをするというよりは、どちらかというと山本一慶に近い飛行士を作り上げていく感じで演じています。割と素の自分が出ていると思いますから、飛行士という役に自分のキャラクターを寄せていくことや、役作りに対してあまり壁は感じていないですね。
――役作りに壁を感じていないだけあって、飛行士の衣装がとてもお似合いですよね!
昔の飛行士のイメージそのものの衣装ですよね(笑)。
今回の公演は、衣装がかわいいのもポイントですし、舞台セットも不思議な雰囲気があっていい空間になるのではないかなと思います。そういう部分もぜひ、じっくり見ていただきたいです。
――現段階で「星の王子さま」という作品について、どのようなことを感じていますか?
稽古が始まって台本を読んでみて、改めて難しい作品だと感じています。今までどれだけ難しい台本でも何か感じるものがあったんですが、「星の王子さま」に限っては、まだ分からないことが多いんです。
冒頭でもお話しましたけど、子どもの頃に本を読んで、話の内容をしっかり覚えているわけではないけれど、なぜか心に残っている…。そういう作品なのだから、きっと何か深いものがあるんじゃないかと感じています。
その「何か」を、この公演が終わる時に自分の中で決められたら、そして残っていたらいいなと思います。
――今はまだ、その「何か」は見つけていないということですか?
まだ探しています。例えば星の王子さまがその後どうなったのかということなど、いろいろな解釈があるみたいですが、答えは実際にはなくて、各々が思うことでいいと思うんです。
今回は、ポジティブで明るい作品にしたいということですし、僕自身も台本を読んでポジティブなイメージで捉えたので、そこは共通していたので良かったですね。
――改めてファンの方々へ意気込みと公演の見どころをお願いいたします。
まずはこの公演をきっかけにして、改めて「星の王子さま」という作品の魅力に向き合っていただけたらいいなあと。
子どもの頃に「星の王子さま」を読んで、何となくほんわかしたいい話だった気がするな…と記憶している人がいると思います。そういう人たちが、いろいろなことを経験しいろいろな知識を得た大人になって、音楽劇として改めてこの作品を観た時に、これまでとは違う何かを感じ取っていただきたいですし、僕らも皆さんが何かを感じ取れるようなお芝居をしたいと思っています。
そして僕は、作品について事前に勉強せずに劇場に来ていただくことをおすすめしたいです。なぜかというと、この作品は感じるもので、理解するものではないと思うんですよね。あまり予習せず、音楽劇だとどんなふうになるんだろう…という感覚で観にいらしたら、いい気分で帰っていただけるのではないかと思います。
僕自身の役でいえば、王子さまに翻弄されるところがあるので、ポップな雰囲気が出せたらいいですね。皆さんの中には、名作の音楽劇ということで肩に力が入った状態で観に来てくださる方がいるかもしれません。僕は物語の最初に登場しますから、ストーリーテラーとしてお客さまに寄り添い、肩の力を抜いてあげられるような存在として物語の世界へ導いていきたいです。
そして本公演は、ピアノの生演奏でお送りするというのも見どころの一つです。ピアノの演奏は、せりふを音楽に載せやすいし、僕たち役者が言うせりふは毎日変化しますので、その時の気持ちに合わせて演奏してくれるピアノの存在はとても大きいんです。そういう意味でピアノの生演奏が僕たちのせりふに寄り添ってくれていると思いますから、ぜひ楽しみにしていただきたいです。
これまで舞台を観たことがない方がご覧になって「舞台っていいな。また違う作品も観てみたいな」という衝撃を与えられる作品にしたいと思います。
取材・文:咲田真菜/撮影:ケイヒカル
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