2022年1月に開幕する舞台「BASARA」。2012年に初演、2014年に第2弾、2019年に外伝が上演された「BASARA」が、この度、久保田悠来演出の下、新プロジェクトとして始動する。
原作は、1990年代に連載された田村由美の同名漫画。高度文明が衰退し、暴君によって支配されている日本。“運命の子”と予言されたタタラは、王族の子である赤の王・朱理に殺されてしまう。タタラの復讐を誓う双子の妹・更紗だったが、お互いに素性を知らずに出会った朱理と次第に絆を深めあっていき…。
2.5ジゲン!!では、舞台初演出にして、初演から10年ぶりに揚羽役として出演も果たす久保田に単独インタビューを実施。初演出に懸ける意気込みや「BASARA」への思い、芸能生活20周年を迎える心境などを聞いた。
舞台「BASARA」を最後まで描く
−−今回、初演出を務められます。演出に興味を持たれた理由を教えてください。
僕が年齢的に40歳という節目を迎えたというのもありますが、いろいろ作品に出演する中で、さまざまなアイデアが膨らんできたんです。その都度、現場では発信していますが、それを一手に担えるというのはどんな感じなんだろうかと。これまで多くの演出家の方とご一緒させていただいて、どの現場も刺激的なものだったので、その経験を活かしていきたいという想いですね。
以前、舞台版『PSYCHO-PASS サイコパス Chapter1―犯罪係数―』に出演させていただいたときにやったPV監督が楽しくて、並行して舞台演出もやりたいと思っていたんです。そこでOffice ENDLESSのプロデューサーに相談したときに、ちょうど原作の田村先生とやり取りする機会がありまして。舞台「BASARA」が物語の途中で終わっているので、再び形にできないかというお話をさせていただきました。今回は、最後までしっかり終わらせる構想でいます。
−−久保田さんがお考えになっている演出の魅力を教えてください。
「八王子ゾンビーズ」という作品で、監督の鈴木おさむさんがアドリブなどをこちらに任せてくれる場面が多くて。僕自身いろいろと提案させていただいたのですが、結構取り入れてくださったんですね。それでより一層、演出への興味が加速しましたね。
そして形にしたものが、多くのお客さまや他の演出家の方にも「いいね」って言ってもらいたい。人に喜んでもらえる、喜んでもらいたいっていう気持ちが大事なのかなと思います。
−−カンパニーの空気作りなど、今回どのような姿勢で稽古に臨まれるのでしょうか。
絶対王政(笑)。
うそうそ(笑)。それぞれの良さを引き出しながら、普段は楽しく、そして、やるときはやる。演出としてスタッフとの打ち合わせも多くあるのですが、新鮮さがあってまた楽しいですね。スタッフの皆さんは裏でこんなことをやってくれていたんだなって実感しています。
−−ご出演された2012年の初演「BASARA」を振り返ってみて、当時の思い出はありますか。
主演の高月彩良ちゃん、相馬圭祐くん、天野浩成…なんだろ、鮮明に覚えていますね。僕は初演しか出ていないんですけど、すごい思い出深くて。
僕が初めて出た舞台「switch」で演出をしていた西田大輔さんのチームの人たちが「『BASARA』はいいぞ。いつかやりたい」とおっしゃっていたのがきっかけで作品自体が元々好きだったんです。それに、ヒロインを見守っていく立場の揚羽のキャラクターもすごく好きで。
今回上演するにあたって、過去の公演の映像を見直したり、原作も読み直しました。群像劇というか、それぞれのキャラクターが主役になりうる物語だなと思っています。そういう作品に出会えることは役者としても喜びなので、改めてみんなで作り上げられたらなと思っています。
−−ご自身の演技を見直していかがでしたか。
かっこよかったです(笑)。
冗談はさておき、どの作品でもそうなんですけど「もっとこうできたな」って。毎回自分の作品を見る度にそう思うんです。でも、みんなすごいエネルギーで臨んでいた舞台だなと感じたので、それに負けないように我々も成長していきたいです。
−−今回も揚羽を演じますが、演技プランなどはありますか。
極力、出番は最低限にしていきたいなと(笑)。もちろん出ます! 出ますけど、自分で演出するにあたって、他のキャストがちゃんと輝けるようにしていきたいです。もちろん、揚羽は揚羽としての魅力が活きるようにしたいんですけど、自分が一番輝いている瞬間を演出するのはちょっと恥ずかしいなって(笑)。
−−更紗役の田中珠里さん、朱理役の宇野結也さんをはじめとしたキャストの皆さんが揃いましたね。
田中珠里さんと宇野結也くんはオーディションで選ばせてもらいました。更紗役の田中珠里さんは佇まいと眼力が強いこともさることながら、更紗の強い芯と女の子らしいかわいらしさの両方を持っていて、非常に魅力的でした。それが一番の決め手ですね。
宇野くんは、役を勝ち取ろうとする意気込みがすごくて。前にも共演したことがあるんですけど、それでも受けにきてくれたんです。他の役をやらせてもしっくりこなかったのですが、言い換えれば、間違いなく朱理役を取りにきたという雰囲気をたしかに感じました。彼も経験が豊富ですから、それを余すことなく発揮してほしいですね。
あと、細貝圭くんが入ってくれたので、ひたすらいじっていけたらいいなとは思うんですけど、彼もキャリアも立場も変わってきたので、そこは尊重しつつ(笑)。それぞれがリスペクトを持って稽古できたら素敵な現場になると思いますので、そういう形を目指したいと思います。
−−「BASARA」は1990年代の漫画です。連載開始から30年以上の時間が経っていますが、それでも変わらない面白さは何でしょうか。
少女漫画というカテゴリーに当てはめていいのか分かりませんが、男女共に読んで熱くなれる作品です。何より一人一人のキャラクターが持つメッセージ、田村先生の作品特有の言葉の力が強いんです。人生の格言にしてもいいくらいの台詞がいくつもある。読んでいて復唱しちゃいますよね。いろいろな人たちにとって助けになっている作品なんじゃないかな。
−−田村先生は今回の舞台化について、どのようにおっしゃっていますか。
作品を愛してくれるならばと我々のことを信頼してくださっていて、「どういう料理をしてくれるのか楽しみにしています」と言っていただきました。
「BASARA」初演のときも僕みたいな一キャストにも別け隔てなく接してくれて、愛情を注いでくだいました。それが魅力なんだと思います。田村先生はすごく柔軟で素敵な方です。
諦めかけた瞬間は何度もあった
−−久保田さんはもうすぐ芸能生活20周年です。これまでさまざまな困難もあったかと思いますが、どのように乗り越えてきたのでしょうか。
常にポジティブではありますね。諦めかけた瞬間も何度もありました。そもそも僕が初めて舞台に立ったのは25歳くらいで、それまではモデル業やお芝居もちょこちょこやらせてもらう程度で。もう役者じゃなくてもいいかなと思っていた時期もありました。
バイト生活もしていて、これに落ちたら辞めようと思って受けたのが、ミュージカル『テニスの王子様』だったんです。誰よりもスタートが遅かった分、一公演一公演に対する想いというか、常に全力を尽くしてきたという自負はあります。
ポジティブシンキングと今自分にできることを探すことを心がけていますね。どんなにつらいことでも楽しみに変換することが得意なのかもしれません。楽しさを見つけることは長けているかな。
−−気持ちの切り替え、そのような思考方法はどういうところから生まれてきたのですか。
小学校3〜4年くらいのときに、嫌なことがあって悩んだことがあったんですけど、次の日に忘れたらすっきりしたんですよ。忘れて前向きになればいいんだと。多分そこで気づいたんです。
あと僕、小さい頃から水泳をやっていて選手だったんですけど、そこでの気持ちの切り替えですかね。毎週のように大会があったので、レースだからいつも緊張しちゃうんですけど、楽しむ方向に変えるとやっぱり結果が良かった。
悩んだら頭かゆいんですよね。この先、禿げるの嫌だなって(笑)。ひょんなことから始まったんです、ポジティブシンキング。前向きなことの方が何事もうまく進むでしょうし、言霊もありますからね。ネガティブなことを言うよりは、みんなで笑っていた方がいいなって。
−−演出家としての目標は何でしょうか。この作品を完走させることもあると思いますが、それ以外の部分で構想など教えてください。
僕の初舞台で演出してくれた西田大輔さんや、よくご一緒する毛利亘宏さんとか、浅沼晋太郎さんも…名前を挙げると全員言わなくちゃいけない…(笑)。お世話になった演出家の方をはじめとした皆さんとのこれまで経験、僕の血潮をアウトプットしていくつもりです。
誰みたいになりたいということはではなく、やりたい演出を、それぞれが輝く一番かっこいいシーンが作っていけたらいいなと。幕開けの1秒前までそれを考えていく演出家になりたいです。
−−念の為お伺いしますが、役者としてのお仕事も続けていきますよね…。
そうですね(笑)。やるからには当然しっかりと向き合っていきます。ここで引退宣言の方が見出しとしてはいいと思うんですけどね(笑)。
−−改めて、舞台「BASARA」への意気込みとファンの皆さんにメッセージをお願いします。
更紗の運命を背負っていく悲壮感。それでも強く生きてく姿が軸にはありますが、周囲も更紗という人間に惹かれて、みんなが奮い立ち、引っ張られていくことでそれぞれの人生が変わっていきます。この座組でも、同じような空気を出せたらいいですね。
何よりも、この素晴らしい「BASARA」という作品を上演するために、本当にいいメンバーが力を貸してくれることになりました。キャストもそうですし、スタッフさんも昔から一緒にやってた方が多くて、本当に信頼しています。
僕らの「BASARA」をスタートさせて、みんなでこの舞台を大きくしていく。それをお客さまにも体感していただき、巻き込んでいきたいです。
撮影:ケイヒカル
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