舞台に映像作品にと活躍する崎山つばさの初主演映画となった『クロガラス』。その続編『クロガラス3』、前日譚にあたる『クロガラス0』がそれぞれ2021年9月3日(金)、9月17日(金)より公開される。
新宿歌舞伎町を舞台に解決屋・神崎黒斗があらゆる依頼を颯爽と解決していく痛快ダークヒーローアクションが、再びスクリーンに戻ってくる。
2.5ジゲン!!では、主演を務める崎山つばさにインタビューを実施。連続公開となる『クロガラス3』『クロガラス0』の見どころや、黒斗を演じる際のこだわり、相棒・悠哉を演じる植田圭輔や新たな共演者とのエピソードなどを聞いた。
黒斗でいるため“無駄削ぎ落とす”
――続編制作が決まった際の心境を教えてください。
まず映画を撮ること自体が難しい状況ではあると思うんですが、その中で映画を撮れること、しかもシリーズものとして演じられることが純粋に嬉しかったです。1・2作目の時にシリーズ化できたらいいなという思いもあったんですけど、僕の体感的には思っていたより短いスパンで続編をやらせてもらえるんだなと、そこも嬉しかったです。
――2年ぶりに黒斗を演じてみていかがでしたか。
撮影に入る前に「1」「2」のDVDと台本を見返して、それから撮影に入って。「黒斗ってどんな感じだったっけ?」って思うのかなと思っていたけど、意外とそんなことなく自然に(役に)入ることができて。最初が解決屋のシーンだったんですけど、監督やスタッフさんがセットやいろんな部分で「クロガラス」の世界を作ってくださっていたので、すんなりと入れたのは、それも大きかったですね。
――今回再び黒斗を演じてみて、新しい発見はありましたか。
結構ありましたね。今回は走るし、叫ぶし、怒るし。黒斗に欠落していた部分が垣間見える瞬間が多くて、逆にここまで(感情を)出していいのかなって思うくらいで。「0」は過去の話なのでそこまで気にしなかったんですけど、「3」に関しては既に「1」「2」が公開されているので、そこに繋げるっていう意味でも色々気をつけて演じる部分はもちろんありました。それでも、それを考えなくていいくらい新しい一面が多くて、すごく新鮮でしたね。新しく知る部分があったのと同時に、よりミステリアスで謎に思う部分が増えたなっていうのが今回すごくあって。知れば知るほど謎が深まって、まだまだ底知れない人物なんだなって思いましたね。
――たしかに前作の淡々としたクールな姿と違って、今回は感情が見える黒斗が印象的でした。“崎山スマイル”を封印した作品ですね。
そうですね。なかなか珍しいかもしれないですね(笑)。
――そんな黒斗を演じるにあたって、例えば声のトーンなど役作りで意識している部分はありますか。
声色とかよりも居方の方が大切かなと思っていて。解決屋のシーンは基本座っているんですが、その座り方一つでも「黒斗の座り方」じゃないですけど、そういうのが結構難しくて。他の部分でも「黒斗っぽい絶対領域」みたいなものが自分の中にあって、物を取る動作一つにしても「黒斗の取り方」があって、そういう行動の一つ一つで黒斗を意識していたかもしれないですね。「こうしよう」じゃなくて、「こういうとき黒斗ってどうするんだろう」っていう思考回路で演じた部分が大きかった気がします。制限されているわけじゃないんですけど、黒斗としてそこにいるために無駄を削ぎ落とすじゃないですけど、そういった作業が多かったかもしれないです。
――「3」では現在の黒斗、「0」では過去の黒斗が登場します。それぞれの注目ポイントを教えてください。
「0」の方は警察官時代の黒斗で、どうして黒斗がそういう人物になったのか、幼少時代のことも描かれていますし、これまで描かれてこなかった時間軸でもあるので、やっぱりそこに注目してもらいたいですね。「3」の方も、黒斗ではないけど悠哉の過去が少し描かれたりするので、そういう意味では続きではあるけど過去の話だし、過去の話だけど未来に繋がる話でもあるので、そういうところに注目してもらえたらなという想いがありますね。あとはアクション。結構激しいアクションがあったり、植ちゃん(植田圭輔)との共闘のシーンもあったりするので、そこもぜひ注目してほしいですね。
――警察官時代のアクションは、これまでの解決屋のアクションと違いはありましたか。
警察官時代は、「警察官である」ということを忘れずにいなければならない時と、それを取っ払って1人の人間として戦う時と、置かれた状況によって心情が変わるアクションというのが新鮮で楽しかったですね。なので、アクションから黒斗の心情が伝わったらいいなと思っています。
「そこにいるだけで分かる」空気感
――植田圭輔さん演じる悠哉とのバディも見どころかと思いますが、久しぶりのタッグはいかがでしたか。
やっぱり前作より親密度というか心の距離というか、もちろん現場で話もするんですけど、二人の間にある言葉じゃない空気感が「そこにいるだけで分かる」という域まで来たんじゃないのかなと。僕が勝手に感じていて、僕だけだったら寂しいんですけど(笑)。黒斗を演じる上で、撮影現場でもあんまり人と関わらないようにしていて、なるべく1人でいる時間を多くしているんです。僕がそれをできているのも、それを感じてくれた植ちゃんがそうさせてくれているという部分もあって。お互いがいやすいようにする環境づくりみたいなものが、言わずとも出来ていたのが今回は印象的で、それって「1」「2」の関係性があったからこそなのかなってすごく思いました。
――現場に入ると自然とそういう空気感に?
そうですね、何も話し合っていないですね。撮影に入る前に「よろしくね」って連絡を取り合ったくらいで、あとはもう台本のこともそんなに話し合ってないですし。だけど現場では、もともとそこに二人がいたような空気が出来上がっていて、それが嬉しくもあり楽しくもあり、ありがたかったです。
――「3」では真柴役の渡部秀さん、「0」では兵頭役の徳山秀典さんと初共演されています。お二人の印象について教えてください。
渡部さんは既に解決屋のボスの雰囲気がすごくあって、圧倒されそうになりました。黒斗として、「この人には本気出さないとヤバいな」って思わせてくれて。彼の醸し出す空気感とか佇まいとかにすごく帝王感があって、さすがだなと感服致しました。
徳山さんは本当に素敵な方で。言葉では表したくないほどの優しい人。「優しい」とか「いい人」っていう言葉じゃ足りないくらい、本当に優しくていい人で。だからこそ、作中での展開にすごく僕自身も悲しくなりましたね。待ち時間とかカメラが回っていない時間も、いろんなことを教えてくれて、いろんな話をして。作中で一緒にラーメンを食べるシーンがあるんですけど、そこがすごく印象的で記憶に残っていますね。めちゃくちゃ寒かったんですけど、徳山さんの優しさでその寒さを忘れられたというか(笑)。それくらい、貴重な出会いをさせていただけて嬉しく思いましたね。
――作品を見た人にどんなメッセージを受け取ってもらいたいですか。
純粋に作品を楽しんでもらいたいという部分もあって、あんまり難しいことは言いたくないですけど……。正義についてだったり、こういう世界観って自分とはかけ離れたところにあるように感じても意外と近くにあったり、人間の深層心理を描いていたりもするので、共感までいかなくても、少しでもこういう世界観があるんだとか、こういう人がいてこういう風に思うんだとか、もしかしたら自分がそういう状況になるっていうこともゼロじゃないと思っていて、だからこそ「リアル」として見てほしいっていう気持ちがあります。単純に「1」「2」と続いている作品ではあるので、人物にフォーカスしてその人の成長を見てもらいたいっていう部分ももちろんありますけどね。
――今後どのようにこのシリーズが成長していってほしいですか。
非日常を描いているんですけど、それを日常として感じてもらいたいというところもあるし、目まぐるしい日常の中でこの作品を見ているその瞬間だけは世界観にどっぷりハマってもらって日常を忘れてもらいたいという部分もあるし。見る人にとっていろんな見方のできる作品になっていったらいいなっていう想いがありますね。
――依頼内容によっても、いろんな色を出せそうですよね。
そうですね。意外にポップな話もできると思うし、これまで以上にダークな話もできると思うし。多種多様な物語がこれからもできたらいいなと思います。
――「3」では新しい登場人物も加わって、さらに続くんじゃないかなと期待しています。
原作がないので、オリジナルストーリーでどうとでもできる部分があるので、今作を見て「今度はこういう物語が見たいな」っていうのがあっていいと思うし、それを言っていただけたら実現する可能性もあるので、そうやって楽しんでもらえたらなと思います。
***
クールで淡々とした作中の黒斗とは対照的に、時折笑顔も見せながら真剣に言葉を紡いでいた姿が印象的なインタビューとなった。言葉の端々から、初主演映画となった『クロガラス』シリーズや黒斗への想いが受け取れることだろう。
取材・文:双海しお/撮影:ケイヒカル/ヘアメイク:車谷結(do:t)/スタイリスト:OBU-
衣装:カットソー(ATTACHMENT)、パンツ(トラディショナル ウェザーウェア)、スニーカー(YOAK)、その他スタイリスト私物
配給:エイベックス・ピクチャーズ/(C)エイベックス・ピクチャーズ
広告
広告