ミュージカル『眠れぬ森のオーバード』が8月19日(木)に開幕する。本作は、原田優一、オレノグラフィティ、小柳心、鯨井康介の“パッと集まった4人”によるプロジェクトチーム「PAT Company」の第2回公演。山奥の館で起きた殺人事件を捜査する探偵ホムロと助手ワトウを中心としたストーリーで、ミュージカル+ミステリーの「ミュステリー」と称されている。
2.5ジゲン!!では、ホムロ役の鳥越裕貴とワトウ役の椎名鯛造にインタビューを実施。本作で楽しみにしていることや今後のビジョン、コロナ禍で改めて気づいたことなどについて話を聞いた。
「自分にないもの生み出せる」期待込め
――まず、今作のお話が来た時のお気持ちを教えてください。
鳥越裕貴(ホムロ役):PAT Companyについては、“自由な大人の方々が動き出したぞ”と思っていました。この4人がまた、活動している場所や個々のスキルが全然違う方々なんですよね。その人たちが一つに集まって力を合わせて公演をやるのだったら楽しいことは間違いないし、自分にないものが生み出せるんじゃないか? と、お話を頂いた時に思いました。
椎名鯛造(ワトウ役):僕も、面白そうな人たちが集まって活動しているなと感じていました。お話を頂いた時は、このメンバーと鳥越くんと一緒にお芝居をするならもう絶対面白い! と。ミュージカルだと聞いて少し不安に思ってしまったんですけれど、鯨ちゃん(鯨井康介)が「大丈夫大丈夫!」って(笑)。そう言うなら大丈夫か! と思って出演させていただくことにしました。
――今回お2人が演じられるのはどんな人物なのでしょうか?
鳥越:僕はいわゆるホームズ、探偵です。思わぬ壁にどんどんぶち当たっていって、ボロを出しながら色々な経験をしていきます。周りに振り回される側の人間なので、振り回されてる感をたくさん出していけたらいいですね。
椎名:僕は、そんな鳥ちゃんの助手を務めるワトウ役です。助手が優秀かどうかで探偵の働きやすさや捜査のしやすさが決まってくるので、鳥ちゃんが仕事しやすいように情報をかき集めたりしてサポートしたいと思っています。きっと優秀な助手ですよ、見た目的にもね(笑)。
――あらすじによると、結論が出てからも推理が二転三転していくお話のようですね。ご自身でも、何か決めた後に別の道が開けたり、違う道を選んだりした経験はありますか?
鳥越:僕はやっぱり、舞台にハマったことですね。最初は「やっぱり映像だろ!」なんて思っていたんですけれど、舞台を知ったらどんどん面白さが広がっていって。もちろん映像も面白いんですけれど、みんなでひとつの舞台を作り上げる楽しさもあるし、たくさんの面白い人から多くのことを学べるので、やっぱり舞台は面白いなと思います。
椎名:僕は、姉から影響を受けた中学生の時のエピソードがあります。中学2年生くらいの時に「男っていうのは黙っていた方がかっこいいんだよ」と言われまして。それまで僕はすごく明るくてリーダーシップもとりたがる、よく喋る子だったんですけれど、姉にそう言われてちょっと黙ってみようかなって…そこから黙るようになりました。
鳥越:黙ってないよ、取材で嘘つかないで!(笑)
椎名:姉の言葉を信じてクールな男になったんですけれど、やっぱり無理が生じてやめました(笑)。道を選び直したと言えばそれですね。
鳥越:まぁ僕も、クールな方がいいなと思って喋らない道は通ったから分かる。怖いって言われてからは、“面白い”を取ったけどね(笑)。
――本作で楽しみにしていることは何でしょう?
鳥越:歌がすごく面白いんですよ。
椎名:そうそう、歌がね。歌が本当にうまい人が揃っているんですけれど、うますぎると聞いていて笑っちゃうってことがあるんだな、と歌稽古の初日に思いました。スキルを磨いた方のパワーと声量を身体でドンと感じて、プレッシャーも感じましたが、そのスキルを学びたいし楽しみに思っています。
鳥越:オレノグラフィティさんの作られる楽曲が本当に素晴らしいんです。ジャンルがさまざまでキャッチーなので、聴いていて楽しいと思いますよ。
「どの回も初日で千秋楽」の思いで臨む
――お2人の今後について伺います。どのように過ごしていきたいというビジョンはありますか?
椎名:まだ35歳になったばかりなので少し先の話になりますが、40歳を過ぎてもバック転をポンポンできたらかっこいいなと思っています。よく「30歳を過ぎたら腰が痛くなるよ」とか脅されていたんですけれど、何も衰えていないです。アクションをガンガンやっても余裕です。でも、ケガは治りにくくなったかも(笑)。体力作りを続けて、今後もアクションをたくさんやっていきたいですね。
鳥越:僕は、色々なことを焦らず、変わらずコツコツと。ずっと芝居を好きでいられたらいいなと思っています。
――お2人ともいつもモチベーションが高く前向きな印象ですが、逆に“つらいな”と感じるのはどんな時なのでしょうか。
椎名:肉体的に疲れていて、100パーセントのパフォーマンスをお客さんの前でできないかもしれない、と思ってしまう時が一番つらいです。殺陣が多ければ足をくじいたりもするし、たくさん叫べば喉も枯れて消耗します。
もしそこで無理を押して普段通り100パーセントのものを出せたとしても、反動でその次の公演では50パーセントになってしまうかもしれない…。そう考えてしまうのがつらいし、もしも実際に怪我をして100パーセントではないものをお見せすることになってしまったとしたら、その回を観てくださっている方に申し訳ないことになってしまいます。
どの回も初日であり千秋楽というつもりで、観てくれる方がいることを常に感じて本番に臨んでいます。ケガをしないように気をつけていきたいですね。
鳥越:僕が今つらいと感じるのはやっぱり、コロナの影響ですね。稽古終わりにみんなでご飯を食べたりお酒を飲んだりできないのは色々な面でダメージがあります。一緒にご飯を食べることで仲が深まって、人となりを知ることでカンパニーが温まって作品がより良くなるんです。それができないのは正直しんどい。
稽古中に「どういう意図で今の演技をしたんだろう?」と思うことがあっても、これまでだったら居酒屋で話が聞けたのに今はそれができないから、稽古場だけで完結させないといけないんです。
椎名:そう、ディスカッションをあまりできずに本番に入ることもあるんです。でも今のところはどの舞台でも意思疎通ができる人ばかりだったので、幸い大きな支障が生まれたことはありません。
――生活が変わり、新しく気づいたことなどはありましたか?
鳥越:長時間の稽古ができなくなってしまった代わりに、決められた短い時間でぎゅっと濃密な稽古ができるようになったと思います。今までは、特に終盤は朝から夜遅くまでというのも珍しくなかったんですけれど。
椎名: うん、効率のいい稽古ができるようになったと思う。また少し元に戻りつつあるけれど(笑)、この稽古の感じは残していけたらいいなと感じます。
鳥越:それから、配信による可能性がたくさん見えてきたと思います。配信映像のカット割りがすごくうまいから、ストーリーがより分かりやすくなっていることもあります。もちろん生に勝るものはないけれど、遠征費などを考えると…と舞台を観られなかった地方の方々にも、配信によって観ていただけるようになったと思います。
椎名:僕は、エンターテインメントがファンの皆さんにとって生きる力になっていたんだなと改めて知ることができました。お手紙やSNSで、その舞台があるからお仕事を頑張れるという声や、観に行けずに本当に悲しいという声をたくさん頂いています。舞台を観たりイベントに参加したりするのを生きがいにしているという人が本当に多いんです。
何でもない日常が早く戻ればいいなと思うと同時に、鳥ちゃんも言っているように、配信の技術が進歩していくのはすごく嬉しいことですね。
――最後に、本作の見どころとメッセージをお願いします。
鳥越:前情報なく、すっとこの世界観に入って楽しんでください。クセになる作品だと思います。
椎名:ミュージカルとミステリーで「ミュステリー」というジャンルの舞台です。ミステリーと聞くとちょっと怖いのかなというイメージを持たれるかもしれないですけれど、楽しい作品に仕上がるはずです。バカバカしかったりかわいいシーンもあったりするので、楽しく観ていただけたらと思います。
取材・文:広瀬有希/撮影:ケイヒカル
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