演劇にイリュージョン、プロジェクション・マッピングなど多彩な要素を掛け合わせ、ジャパンカルチャー“忍者”を発信する新体感型イマーシブショー『真Ninja Illusion LIVE The REAL〜正義忍者vsゾンビ忍者〜』が、8月21日(土)まで東京・浅草九劇で上演されている。
現代に生きる忍者の末裔5人がよみがえったゾンビ忍者と戦うストーリー。チーム乱破(らっぱ)とチーム透破(すっぱ)のダブルキャスト体制で、イリュージョンや映像、ダンスなど各分野のクリエイターが結集し、殺陣あり、アクロバットありの盛りだくさんの構成となっている。
2.5ジゲン!!では、チーム乱破の佐川大樹にインタビュー。厳しい稽古を乗り切ったチームの絆や今作の見どころについて語った内容をお届けする。
“追いつかなきゃ” 不安のスタート
――7月3日に上演が始まりましたが、いかがですか。
始まった実感は、徐々に出てきました。特別に「やるぞ」というよりは、みんなでちゃんと一公演一公演、新鮮にやろうねっていう感じが強いです。この状況なので、何人来るかも分からない状態。1人でも来てくれる人のために、という思いでやっています。
――今回の出演が決まった時のお気持ちを教えてください。
周りが動ける人ばかりだから、僕自身は正直、最初は不安でいっぱいでした。ある程度、動く舞台は今までもやってきてはいるんですけど、それともまた別の方向というか。側転をきれいにやらなきゃいけないといった部分で、追いつかなきゃっていうのがありました。
でも、お芝居だけやっている方があんまりいない中で、僕がキャスティングされた意味って何だろう? と考えて、お芝居を引き上げていければなと感じていました。
――実際に稽古が始まってから、どんな苦労がありましたか?
ちょっとだけ遅れて参加したんですけど、序盤で、振りも殺陣もガンガンされている動画を見て、「なんだこれやばいぞ」って思いました。基礎の段階で僕よりできる人がいっぱいいる中で、「もうめっちゃ出来上がってるやん」って。同じペースでやっていてもここにたどりつけないと思ったので、帰ってから1人で練習したり、地道なことはやってきました。
――総合演出の菜月チョビさんをはじめとして、様々なクリエイターの方が携わっている作品です。
皆さん、初めましてだったんですけど、お名前は知っていて。チョビさんの劇団鹿殺しに出ている知り合いも何人かいたので、そういう話も聞いていました。プロジェクション・マッピングのSIRO-Aさんも、AGT(アメリカのオーディション番組「America’s Got Talent」)に出ているときに動画で見ていたりしていました。最初は、そんな人たちがいるっていうプレッシャーが正直大きかったです。
クリエイターさんたちが豪華すぎるので、それをパフォーマンスしてできなかったとき、クリエイターさんに対しても失礼なことになってしまうので、汚名を着せないようにという思いも込めてやっています。
――プレッシャーは、稽古の中でどのように解消していったのでしょうか。
キャストもみんなすごくいいメンバーがそろっていて、お互いが寄り添い合える。そういうのがすごく良かったなと思っています。話し合えるし、ダメなところも言い合える。地道な努力がそれぞれあったと思うんですけど、そうやってチームとしてできたのが大きいのかなと思います。
――今回演じられている三平役としては、どこに注目してほしいですか。
三平というキャラクターは、けっこう何もできない。唯一の特技が笑顔というくらい。バンドをやっていても売れなかったり、臆病だったりもする。でもそこが魅力でもあると思うんですよね。
できる人ばっかり集まっていてもしょうがないというか、そういう中でもできるだけ三平が愛されるように見えたらいいな、と思いつつやっています。あと、三平はギャップもある役なので、その差も見てほしいですね。
グループLINEで”ダメ出し当番”も
――長丁場で、しかも体力的にハードな舞台を乗り切るための工夫はありますか?
まず大前提としては、けがをしないように。入念なストレッチは休みの日でもやっておくことです。
それから、この公演のすごくありがたいんですが大変なところが、公演が一日おきなんですよ。ロングランで一日おきって、モチベーションを保つことや勢いを持続するのが難しいんですが、そのためにもキャスト陣の中で連絡を取り合ったりしたいですね。
僕の所属するチーム乱破は、グループLINEがあって、そこでけっこう連絡が飛び交うこともあるんです。感想やダメ出しを言う当番も決めています。風太郎役の佐久本歩夢を筆頭に、まとまりのある感じが出ているので、休みでも、どんなことでもコミュニケーションを取るっていうのは大事かなと思います。
一日おきなのは僕たちの体のためっていうのもあると思いますし、そういう面ではしっかり休めるので、その休みをどう使うかっていうことも大事だと思います。
――2チーム制ですが、もう一つのチーム透破(すっぱ)を意識することは。
僕のキャラクターの三平は、透破では女性(中原穏乃)が演じるので、性別がまず違う。僕にしか出せないものと、その子にしか出せないものっておのずとあるので、相手よりこうしよう、というのはあんまり思ってはなかったですね。
僕は僕のやり方でやる。ただやっぱり、男性のキャラクターを女性がやるっていうのは、僕よりも挑戦だと思うんですよね。多分、一番苦労しているんじゃないかなって思っていて。できるだけサポートしながら、お互いの色を出せたらなと思っています。
全体としては、全くチームカラーが違うので、それがダブルキャストの面白いところだなって感じています。最初の頃はよく、「乱破はまとまりはあるけど、それぞれ主張があんまりないよね。透破はまとまりはないけど、主張するよね」って言われるくらい違いました。
お互い初めての通し稽古を経て、どう思ったか言い合ったりしました。透破の人たちを見ていると、俺らってこういうところは無いよなっていうのが、はっきり分かるんですよ。逆に言えば、こっちにしかないものもあったりして。採り入れようと思う部分が多いので、本当にダブルキャストの意味があったなと思います。
根本的にはみんなそうだと思うんですけど、ダブルキャストなんで負けたくないんですよ。でも僕は、ライバルだと思うことも、意見するのも、すごくいいと思うんです。筋を通した会話だったら、けんかしていい。お互い相手の話をちゃんと聞いた上で言い合うんだったら、必要なけんかだと思うんです。そういうのもいっぱいしてきました。いいメンバーだからこそ、それができるのかなと思います。
――チームワークや共演者の印象を改めて教えてください。
チームとしては、最初からけっこう仲がいいというか、まとまりがありました。それも全部、歩夢の風太郎があってこそだと思います。歩夢は年下なんですけど、ちゃんと主役として引っ張ろうっていう思いがある人だったから、そのサポートに徹せられた。歩夢が何かモヤモヤしているときは話を聞いて、それに対する助言をするっていう方にいこうと思えた。
歩夢がそう思っていなかったら、年齢的にも経験知的にも、僕とか年上の人たちが思うことだと思うんです。ちゃんとまとめようとしてくれた歩夢がいなかったら、多分ここまでまとまりはなかったと思うので、歩夢が乱破を作ってくれたと僕は思います。
こだわり抜かれたクリエイターの知恵
――いろいろなクリエイターと仕事をして、刺激になったことは。
すごく刺激になりました。まず、クリエイターの人たちのそもそもの考え方も違う中で、結局まとめ上げるのはチョビさんなんですけど、チョビさんは、ある程度決め終わってから、さらにこだわってこうしたいっていうのがどんどん出てくるんですよ。
それに対して、CRE8BOYさん(振り付け)もHARAさん(イリュージョン演出)も、SIRO-Aさんも、全員すぐに、「じゃあこうしよう」って言える。人間的な部分もそうですし、吸収しようと思う部分が多かったです。
最初は難しい部分もありましたけど、丁寧に教えてくれるので、分かりやすかった。殺陣も未経験者がいるし、お芝居も初めて声を出す人もいるくらいキャストに極端な差がある中で、これが出来上がったと思うと、みんなのポテンシャルもあるし、教えてくれた一流の人たちがいるからだという思いが大きいですね。
――見どころがたくさんある舞台だと思いますが、おすすめのポイントは。
一つはゾンビ忍者ですね。動きに関して、死ぬほど練習したんですよ。チョビさんのすごいこだわりがそこにあって。もう何時間やるのっていうくらいギリギリまでずっとやっていて、ゾンビの動きってこれしかないって思えるほど。なので、ゾンビの動きは見てもらいたいですね。
あとはやっぱり、SIRO-Aさんの最後のプロジェクション・マッピングもすごく印象深いです。物語ももちろんなんですけど、イリュージョンも随所にあって、実はここもだよっていうところがある。それを見つけられるかなっていうのもあります。
あとは、殺陣もたくさんあるんですけど、未経験者がいるとは思えないくらい、このキャパで人数がめちゃめちゃいる中での殺陣は、見どころかなと思います。
――今後、目指す俳優像を教えてください。
役者としては、もちろんいろんなものをやっていける方がいいと思うんですけど、本質的に実力のある人が使われる舞台にじゃんじゃん出ていきたい。やっぱり歌や音楽も好きなので、ミュージカルとかにも広げていけたらなと思っています。
それから実は僕、映像がやりたい人間なので、そっちの方に広げていけたらなっていう思いも強くあります。事件系なら犯人役をやったり、お医者さんの話だったら患者役をやりたいんですよ。そういうポジションから伸びていくっていうイメージが僕の中であるんです。
僕がお芝居を初めてやったのは15、6歳の時。基礎から教わってきた経験を踏まえた上で、生かせる役者でいたい。それだけで満足せず、自分が学べると思ったものはちゃんと吸収していきたいと思っています。うまい人って、パッと見て分かるじゃないですか。そういう人たちがどういう考え方をしているんだろうっていうことは、吸収するようにはしています。
今は全然、まだまだ。誰もが、「芝居できるよね」「うまいよね」って言ってくれるような役者になりたいですね。
――最後に意気込みとメッセージを。
物語は、正義忍者とゾンビ忍者の戦いなんですけど、トータルとして熱いものというか、迫力というか、そういうのって、劇場でこの近さで見てこそより伝わると思うので、ぜひとも劇場へ来ていただきたいという思いがあります。そして、浅草の劇場なので、これをきっかけに浅草と忍者を存分に楽しんでいただける作品ではないかと思います。
撮影:ケイヒカル
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