音楽劇「黒と白 -purgatorium- amoroso」が6月30日(水)に東京ドームシティ シアターGロッソで幕を開ける。本作は音楽劇「黒と白」シリーズの3作目。人として転生して生きる黒天使とそれを見守る白天使を中心としたストーリーで、今回はA・B・Cの3つのオムニバス形式で構成される。
2.5ジゲン!!では、Aルートの岩永徹也・平井雄基・末原拓馬・縣豪紀、Bルートの五十嵐拓人・石川竜太郎・吉田知央・鷲尾修斗・鈴木翔音、Cルートの塩澤英真・須賀京介・千葉瑞己・植田慎一郎・鈴木遥太の14人にルートごとにインタビューを実施。それぞれのルートの見どころや主題歌、各キャラクターの“二つ名”と自分との共通点などについて話を聞いた。
Aルート
――本作でシリーズ3作目となりました。今回のテーマとストーリーを教えてください。
岩永徹也(傲慢・ルシフェル役):サブタイトルの「amoroso」の通り、テーマは愛です。とある天使が人間に恋をしてしまう禁断の話なんです。天使はみんなを愛さなければいけないのに、1人だけを愛してもいいのか。1人の相手からだけの愛を求めてもいいのか? 愛は平等であるべきなのに…。
その愛に対する、ルシフェルとミカエルの考え方も異なります。ルシフェルは「愛には色々な形があるのだからいいじゃないか」、ミカエルは「愛というものは平等に与えるものなのに、それは“執着“なのではないか?」というように。
愛が行き過ぎると罪にもなってしまうという点も大事ですね。
平井雄基(奇跡・ミカエル役):マルートが“幸福/災禍”という二つ名を持っている点にも注目してほしいです。物語を観ていくうちに、マルートの生き方がこの字にあてはまると感じる部分が出てきます。
――登場人物は全員、自身のキャラクターを表す二つ名を持っていますね。
末原拓馬(幸福/災禍・マルート役):まずルシフェル。“傲慢”って無自覚であることがほとんどでしょう。でもルシフェルは、自分がそこそこ有害であることを達観して受け入れている。自分が傲慢であることを自覚しているのが面白いなと思います。そして、演じる徹也くん自身にもそういうところがあります(笑)。
“奇跡”のミカエルは、今回は特にミラクルなことは起こさないよね(笑)。“奇跡”ってよく言うけれど、人間は魔法を使えない。ミカエルは奇跡という切り札を持ちながら地に足がついているのを感じるから、天使なのにちょっと泥臭くて人間っぽいよね。
ハルートは“罪過”。罪の概念ってすごくふわっとしていると思うの。例えば国によって罪の考え方が異なるように。ハルートは天使としてのルールと人間のルールの間にいるような感じがするのね。胸の中にブレーキとエンジンの両方を持っていて、罪という概念をちゃんと持っている。演じている豪紀自身にもそういうところがあるなと感じています。
豪紀ってものすごく人当たりがいいでしょう。たくさんの人の中にいるときは、周りにとって必要な自分を探しているんじゃないかなって思う。その自分と本当の自分との間に生きているっていう感じがハルートに似ている。
ハルートは結構ドロッとしたところがあるけれど、豪紀は見るからにさらっとしているでしょう(笑)。でも、ハルートを演じることで豪紀は大きく化けていくんじゃないかなと思っています。
俺の演じるマルートはハルートと違って、罪を犯している自覚はないし、胸が痛むこともない。それから狂気と幸せという二面性を持ち合わせている。
――何かに夢中になっている時は幸せを感じますよね。
末原:うん、人目をはばからないほどになってしまう。狂気と幸せは、全く違うようで同じ物なのかもしれませんね。
――Aルートの主題歌の好きな点や聴いてほしいポイントを教えてください。
縣豪紀(罪過・ハルート役):アップテンポな曲で、すごく熱くなります。歌が入ったものを聴いて思ったのは、声がいい…(笑)。ソロの部分の声がみんなすごく甘くて、これは落ちるなぁって思いました(笑)。
それから声を聴いて思ったことがもう一つあります。お芝居の声とはまた違う声なのに、「あっ、マルートだ」「今のはミカエルだ」って感じるんです。歌詞の意味と重なって、ちゃんとそのキャラクターが歌っているんだと分かります。
岩永:タイトルが「4tuneGear」っていうんですけれど、ギアがかかってきたなと思える歌です。
――平井さんは3作連続出演となります。これまでとの違いや今作の見どころを教えてください。
平井:今回は、これまでもずっと本作でマモンを演じている(五十嵐)拓人くんが振付に入ってくれています。オープニングやエンディングのダンスも、ただの踊りとしてだけではなく、キャラクターの立ち位置にも注目して観てもらいたいです。
例えば、高さの違う場所に黒天使と白天使が分かれていることで煉獄と天界を表現していると解釈できますし、立ち位置でキャラクター同士の関係性を考えてみるのも面白いと思います。
これまで観てくださっている方は、あるシーンでミカエルとルシフェルだけがみんなとは違う場所にいることに意味を見出してくれると思います。この2人は物語の設定上、特別な存在の天使なんです。
立ち位置や振り付け、決めポーズも物語に紐づいているので、オープニングも本編の前のプロローグとして観ていただけると楽しいんじゃないかなと思います。
――最後に、作品全体としての見どころをお願いします。
岩永:自分の気持ちを貫くものが見つかった、ダメだと分かっていても愛したい…。愛を貫くのってすごく勇気がいりますよね。そういう、何かに立ち向かう勇気や強さ、気持ちの移り変わりを届けたいです。
世界を敵に回しても譲れないものがあるのって、幸せだと思うんですよ。僕も、みんなが何を言おうとも自分はこういうことをしてきた人生だったと思いたいです。
観終わってから、一緒に来た人と愛について話し合うきっかけになれたらと思います。恋人や大切な人と観に来てほしいです。
Bルート
――鷲尾さんと鈴木(翔音)さんは今作が初参加となりますね。稽古場の様子はいかがですか?
鷲尾修斗(矜持・カマエル役):演出の(田中)彪くんも含めて、すごく仲良く和気あいあいとしています。みんな一緒に一つの作品を作っているという気持ちが強いですね。
はじめましての現場とはいえ、他の作品で繋がりを持ったキャストさんばかりなので、本当に楽しくやっています。特に鈴木翔音くんが面白いんですよ。
鈴木翔音(叡智・イオフィエル役):(鷲尾を見ながら)この人ね、稽古中に僕がちょっとミスをしたりすると「全然面白くない」「それ何?」とか言うんですよ!(笑)
鷲尾:もうね、鈴木(翔音)くんのボケだけは面白くないと分かりました。こんな(頭の上に両手を乗せてウサギの耳を模した)ポーズを取ったりして。だから、白天使のみんなでいる時に鈴木(翔音)くんがボケると、植田(慎一郎)くんと(鈴木)遥太と平井(雄基)くんが「…あれ、何なんですか」って僕の方を見てくるっていう流れができちゃっています。
――説明を求められるんですね(笑)。鈴木さんは、稽古で大変だなと思う点はありますか?
鈴木:天使なので、人間とは考え方や視点そのものが違うんですよね。だから、そういう感覚の違いを持つのが難しいです。それから、キャラクターの名前が白天使は全員「~エル」で似ているので分からなくなっちゃう時があります。あと、ハルートとマルートとか(笑)。
――五十嵐さんは今回、振付も担当しています。振付の見どころを教えてください。
五十嵐拓人(強欲・マモン役):「黒と白」も3作目で、できることが多くなってきたので、ステージングを難しくしたりしています。こういうことをさせてみたい、という要素も入れていますね。オープニングもエンディングも、何回見ても楽しめるように作っています。
今作から参加の人も、これまで出演してきた人たちに呼応するように頑張っていますよ。「やっとけよぉ」みたいなことは僕は言いませんけど!(笑)
――五十嵐さんの指導は厳しいですか?
石川竜太郎(暴食・ベルゼブブ役):怖いですよ! 服装とか上下レザーだし!(笑)
五十嵐:違うんですよ、年上の人も多いからレザーで威圧しないといけないのかなって(笑)。
鷲尾:あと、今回の劇場はシアターGロッソなので高低差がすごくあるから見やすくなっていると思います。Gロッソならではで、ワイヤーで鈴木(翔音)くんが飛んだりしますしね。
――ワイヤーアクションもあるんですか?
鷲尾:冗談です、飛びません(笑)。
一同:(笑)。
――Bルートの主題歌のお気に入りポイントを教えてください。
吉田知央(破滅・アバドン役):仮歌を頂いたときに「前奏、めちゃくちゃかっこいい!」と思いました。ロックな感じがこの5人に合っていますし、サビにすごく爽快感があります。AメロもBメロも全部かっこいいですよ。
他の舞台で歌うときはキャラクターが決まっていることが多いので、歌い方が縛られてしまうんですけれども、今回はそうではないので、すごく自由に歌わせてもらいました。歌唱指導の方からも「もっとクセを出して!」なんて言われました(笑)。こぶしをきかせたりもしています。
Bメロは僕から入って、そこに誰かが絡んでいったり声を乗せていったりするので、そこに注目して聴いてもらえたらと思います。
――キャラクターそれぞれに二つ名がついていますが、皆さんそれぞれにも当てはまっていると思うことはありますか?
石川:僕は実際、ものすごく暴食です(笑)。ものすっごくたくさん食べちゃいます。でも演じる時は、美食家な暴食、スタイリッシュな暴食を心掛けています。
他の皆も、当て書きなんじゃないかなって思う部分が多いですね。拓人なんてレザーだし、怖いし、強欲でしょ。知央も破滅している(笑)。
吉田:物を壊したりする方の破滅かなって思っていたら、まさかの「人の心を破滅させる」方の破滅でした。2ではメンタルブレイクさせる動画も撮りましたしね(笑)。
石川:新しいキャストも含めて全員、顔合わせの時点から「キャラクターと合っているな」と感じました。稽古でも、すごく役作りに苦労している人はいませんね。
――最後に本作の見どころを教えてください。
五十嵐:新しい天使が加わることでエッセンスが足されて、キャラクターのスタンスや関係性なども、これまで見えていなかった色々なものが見えてくると思います。
それからやっぱり、Bルートでは主題歌のダンスに注目してください。得意分野のアップテンポなのですぐに振付ができました。楽しみにしていてください。
Cルート
――塩澤さんはシリーズ通してのご出演ですね。今回の稽古場の様子はいかがですか?
塩澤英真(色欲・アスモデウス役):とてもお芝居が好きで、優しい雰囲気の役者が多いです。初めて出演する人も多いですけれど、それぞれのルートの仲間たちや関係性を築きたい天使役の人たちとコミュニケーションを取っています。時間の使い方がうまい人たちが集まっていて、無駄のない充実した時間を過ごしているなと感じています。
毎日どの稽古でも、誰かしらがチャレンジしている瞬間が見えるんです。続けて出演している役者たちは、新しい人たちのことも考えながら動いています。新しい人たちも、試行錯誤しながら稽古に臨んでいて。本番が一番いい状態になるようにと全員が探りながら稽古していますので、いいものがお見せできると思いますよ。
――植田さんと鈴木(遥太)さんは、このシリーズには初めてのご出演ですね。
植田慎一郎(寵愛・ハニエル役):この現場は初めてなのですが、別作品でご一緒した方、共演ははじめてですが元々知っている方もたくさんいます。だから「シリーズものに途中参加だ!」っていう変な気負いもありません。これまでずっと出ていらっしゃる皆さんも「俺たちずっと出ていますし?」みたいな顔もしないです(笑)。こんなにすぐに馴染めるんだって思いました。
長の2人であるルシフェルの岩永さんとミカエルの平井さんが雰囲気を作ってくれているおかげですね。お2人がみんなを引っ張ってくれているんだなと感じるから自然とついていけるし、お2人のこともみんなで支えています。あの2人、みんなにすごく愛されているんです。素敵な現場ですね。
鈴木遥太(夢想・ラミエル役):本当にその通りで、素敵な現場です。僕も初めてで、しかも最年少なんですけれど、他の現場で共演している方が多いので、実家のような安心感があります。休憩中も稽古中も楽しいので、毎日稽古場に行きたい! って思っています。
――千葉さんは初演からのご出演ですね。今回の見どころやシリーズを通した面白さを教えてください。
千葉瑞己(寛容・ガブリエル役):毎回違う天使がピックアップされるので、シリーズでも作品の雰囲気が全く違うのが特徴です。今回も新しいキャストが入ってきていますが、毎回新鮮で新しいものが生まれている作品です。
新しく出てきた天使と絡む時、「ガブリエルにはこういう一面があるんだ」と発見することが多くて自分のキャラクターがアップデートされていくし、煉獄や天界全体の密度も上がっていくのを感じます。
シリーズのどこから観ても楽しんでいただける作品になっているので、少しでも気になっている方は「3回目だから…」と躊躇せずに観ていただきたいです。続けて観てくださっている方は、今回も新しい発見をたくさんしていただけると思います。
――キャラクターの二つ名について、自分の本質の部分と似ているなと感じることはありますか?
塩澤:僕は“色欲”ですね。ひょっとしたら、このシリーズが始まる時にはそういう一面が強く見えていたのかもしれませんし、逆に、そうは見えないからこそピックアップしたら面白いと思ってキャスティングしていただいたのかもしれませんね。
毎回、この「黒と白」の稽古に入る前に“色欲”の意味を調べ直すんです。自分なりに解釈して捉えようと思って。
観てくださっている方はアスモデウスの愛らしい部分を好きと言ってくださっているので、毎回“色欲”の言葉の色んな意味を見せていきたいと思っています。どんどんキャラのニュアンスが変わっていくんですけれど、脚本の方が割り当てた意味合いをきちんと出していきたいです。
千葉:僕は「自分に近い部分があるな」と思いつつ、天使なのでより象徴的に“寛容”という意味を捉えないといけないなと思っていますし、自分が割り当てられている裏側の役割を考えたりもします。もう3作目なのですが、一筋縄ではいかないな…と台本を読みながら試行錯誤しています。
須賀京介(嫉妬・レヴィアタン役):嫉妬というのも一概に悪い感情ではないと思っています。今、SNSやYouTubeなんかでフォロワー数や登録者数が目に見えるから、自分と周りとを比較しやすい世の中ですよね。人と比較するのはよくないけれど、嫉妬は自分の向上心にも繋がります。
嫉妬ってある意味、一番人間的な感情なのかな。僕も1日3回くらい嫉妬しますし、今回のキャスト全員にも嫉妬しています(笑)。
鈴木:夢想…、一番未知数で謎ですよね。皆さんの予想と期待を超えるものを見せていかれたらと思っています。
植田:“寵愛”という言葉が合っているかどうかは分からないんですけれど、キャストはみんな愛を持って作品を作っています。「お客さまは神様」っていう言葉がありますよね。お客さまは神様で、僕らは天使として神様を楽しませるために一生懸命稽古して舞台に立っています。
僕はこの作品の中で “寵愛”の看板を背負っているので、神様であるお客さまに寵愛していただけるといいなと思っています。
――Cルートの主題歌の気に入っているところを教えてください。
須賀:サビの「Life is beautiful」の部分です。ユニゾンで皆の声が重なるのですが、レコーディングの時に「Life is beautiful」と何度も繰り返していると気持ちが高まっていくのを感じました。
このCルートは命を扱う話なので、畳み掛けるように繰り返される美しいサビを聴いて、命の重みを感じていただければと思います。
塩澤:僕も同じところが印象的です。歌詞を文字で見ても印象的ですし、歌ったものを聴いてもそう感じます。Cルートのストーリーの根底となるものですし、観てくださった方にもその部分は印象に残るんじゃないかと。メロディーは優しいんですけれど、力強いメッセージが届くと思います。
――最後に、Cルートの見どころをお願いします。
須賀:「黒と白」もシリーズ3作目となりました。これまでは、ルートごとのお当番が2人や3人だったんですけれど、今回は5人体制です。人数が増えたことで、どう絡みあっていくのかなと自分自身もとても楽しみです。
Cルートではテーマとして命を取り扱います。改めて死生観や命の重さというものを考えますし、今だからこのテーマをやる意味があるんじゃないかという想いがあります。より大切に物語を扱っていけたらと思っております。
取材・文:広瀬有希/撮影:ケイヒカル
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