2018年の初演以降、多くの原作ファンを熱狂させてきた『家庭教師ヒットマンREBORN!』the STAGE(通称:リボステ)が2021年夏、ついに最終章へ。「episode of FUTURE」として上演される本作は、たっぷり前後編で未来編を描く。
2.5ジゲン!!では、初演から主人公・沢田綱吉を演じる竹中凌平と、未来編のキーパーソンとなる入江正一を演じる佐伯亮にインタビューを実施。作品に懸ける意気込みや原作への愛、共演が楽しみなキャストなどについて話を聞いた。
物語は最終章、ついにバトンは未来編に
――シリーズ5作目はついに最終章です。2018年から沢田綱吉役を務めてきた竹中さんは、「未来編」上演が決まっていかがでしたか。
竹中凌平(沢田綱吉役):素直に嬉しかったっていうのが最初の気持ちですね。ツナを演じるときは「次の作品につながるように」っていうのを常に意識して演じていたので。原作自体が大きなコンテンツではありますけど、やっぱり舞台でもお客さまの満足度が得られないと次にはつながらないと思いますので、そういった意味でも(5作目が決まったということは)満足していただけていたのかなっていうところで安心感もありましたね。
――3作目「vs VARIA part II」ラストには、リボーンがいなくなるというシーンがありました。あのシーンを演じていたときはすでに「未来編」を意識していらっしゃったんですか。
竹中:そうですね、あれは予告というか次を感じさせるシーンですよね。でも、あの時点ではまだ未来編は「できたらいいな」くらいの気持ちで、上演が決まっていたわけではなかったですし…。
人気作だからといってそれに驕(おご)ることなく、初演で感じたものを忘れないで次につなげる気持ちを持ち続けるという意味では、あの場面でも「未来編」のことは常に意識していましたね。
――佐伯さんはシリーズ初参加となります。出演が決まった際の心境を教えてください。
佐伯亮(入江正一役):ありがたい気持ちでいっぱいでしたね。原作の大ファンで、舞台版も初演から全部劇場で観させていただいていたんですよ。
竹中:え! ありがとうございます。普通に嬉しい。
佐伯:だから自分が出られると思っていなくて。今回こうしてお話をいただいたこと、そして「未来編」のキーパーソンである入江正一を演じさせていただけるのが本当に嬉しくて。ずっと現実味がなくて、夢のようにフワフワした状態が続いていたんですけど、ビジュアル撮影をしたり、こうして取材を受けたりする中で、ようやく本当に始まるんだなって意識が芽生えてきた感じですね。
――過去作品もご覧になっているということですが、『リボステ』にはどんな印象を持っていますか。
竹中:印象…ドキドキ(笑)。
佐伯:とにかく原作ファンが楽しめるお芝居だなって、マジで思いました!
竹中:わ~めちゃめちゃ嬉しい!(拍手をしながら)
佐伯:もちろんアニメはアニメ、舞台は舞台の世界観がそれぞれあるんですけど、舞台だからこそできる戦い方の表現だったり、生身の人間が演じるからこそ出せる感情の起伏だったりがリアルに描かれているなと思うので、だからこそより観客としてすごく楽しめましたね。
――すごく作品が好きだなというのが伝わってきます! 過去の「リボステ」でお気に入りのシーンはどこでしょうか。
佐伯:好きなシーンか~難しいな…。
竹中:ちなみに原作では何編が好きなんですか?
佐伯:原作はヴァリアー編かな。
竹中:あ~! 人気ですもんね!
佐伯:『リボステ』のヴァリアー編のとき、ヴァリアーが客席を通る演出が多かったじゃないですか。そのとき、舞台ファンの気持ちがようやく分かったというか。
竹中:(笑)。
佐伯:なんかこう息を呑む感じで。「わっ…ヴァリアーがそこにいる!」っていう感覚がすごく印象的で、鳥肌が立ったんですよね。バトルシーンもリング争奪戦が舞台ならではの戦い方で、すごく面白かったなって印象に残っていますね。
――竹中さんのお気に入りのシーンはどこでしょうか。
竹中:初演の(六道)骸と戦っているときにグローブから火が出たり、最後黒い花びらが舞う中で戦うシーンがあるんですけど、それがすごくいい演出だったなって覚えていますね。
またこれは芝居のシーン以外の部分になりますが、初演の大千秋楽のトリプルカーテンコールで(リボーン役の)ニーコさんと一緒に舞台上に出たときに、お客さまがスタンディングで迎えてくれたことをすごく覚えています。その景色はとても感動しました。あと舞台上で誕生日を祝ってもらったのが、この作品が初めてで。それはやっぱりすごく嬉しかったことですね。数えればきりがないほど、本当にすごくいい思い出ばかりの作品です。
好きなシーンは? 溢れる原作への愛
――ツナを演じる際に意識している部分やこだわっている部分はありますか。
竹中:『家庭教師ヒットマンREBORN!』ってツナの成長物語でもあるので、自分が今抱いている感情でお客さまをリードするというか。抱いた感情を分かりやすくお客さまに提示するようにっていうのはいつも心掛けています。
あとはツナを形容する言葉で「眉間にシワを寄せ祈るように拳をふるう」っていうのがあるんですけど。ツナは戦いが好きじゃないんですよ。だからいくら自分が優勢であっても、なるべく戦いながら心のどっかでダメージを負うようにしていますね。
――そんなツナの好きなところはどこでしょうか。
竹中:やっぱり緩急がすごくあるところですかね。普段はヘナチョコなところがあって見た目も癒やし系なんですけど、戦闘になるとすごくかっこいいし。実は僕も読者だった頃は、雲雀(恭弥)とか骸が好きだったんですけど、こうして自分自身で演じて、知れば知るほどツナのことがどんどん好きになるというか。愛おしくなる魅力を持っているなって思いますね。
――佐伯さんは入江正一という役をどう捉えて演じたいと考えていますか。
佐伯:今回、前編から後編で形を変えながら、全編通してボンゴレを導く存在が入江正一だと思っているので、そこをしっかり稽古で培って、みんなの道しるべになるような存在になれたらいいなと思っていますね。
あとは一見ナヨナヨしていて繊細な部分とかも持ちつつ、すごく熱い気持ちというか正義感を持っているキャラクターなので、そこの部分を忘れないようにしっかりと演じたいなと思っています。
――ここに資料として未来編のコミックスが積み上げられていますが、原作でも未来編はボリュームがあります。
竹中:この山はプレッシャーでしかない。
一同:(笑)。
――実際の舞台でそのシーンがあるかどうかは別として、未来編で演じるのが楽しみなシーンやバトル、または好きなシーンはありますか。
竹中:前半でいうと、ツナが雲雀に修業をつけてもらう場面で、ツナが密閉空間に閉じ込められるシーンがあるじゃないですか。そこで歴代のボンゴレのボスとのやり取りの末に、ツナが一つの覚悟を決めるシーンが、もうめちゃめちゃかっこよくて。かっこいいだけじゃなくって、ツナが未来編で一つ成長するトリガーになっていると思うので、そこは大切に演じたいなって思っています。
後編はVS白蘭。白蘭戦は『リボステ』の歴史での最終の戦いになると思うし、お客さまにもそこはすごく期待していただいていると思うので、丸さん(脚本・演出の丸尾丸一郎)がどういう演出をするんだろうっていうのがすっごく楽しみです。
ヴァリアー編ではリング争奪戦で、炎の属性ごとに全部テイストの違う演出になっていたので、今回はどうなるんだろうってすごくワクワクしますね。もうこれまでの演出全部盛りになるんじゃないのかな(笑)。原作で白蘭は空も飛んでいますしね、そこも含めて楽しみですね。
佐伯:僕はちょうど昨日アニメを見返していて。多分舞台には出てこないんですけど、(黒川)花と(笹川)京子の関係性がすごく好きで、泣きました(笑)。
竹中:家でかくまってあげるところか。いいシーンだよね。
佐伯:花が京子に掛ける言葉がすごくアツくて好きですね。日常とか、戦っていない人たちにもフィーチャーされているのがこの作品の魅力の一つだと思うので。今回そのシーンは別の形で描かれることになるのですが、戦い以外のシーンがどういうふうになるのか注目したいなって思います。
――「未来編」といえば10年バズーカがカギとなります。10年後の自分、もしくは10年前の自分にメッセージを伝えられるとしたら何を伝えたいですか?
竹中:僕は10年前に伝える方がいいかな。10年前だと学生の頃なんですけど、学生の頃って世界が狭いし、今考えるとなんであんなことで悩んでいたんだろうってことってたくさんあるじゃないですか。だから「大人は楽しいぞ」って伝えてあげたいですね(笑)。
佐伯:僕は11年前にこの業界に入ったんですけど、10年前とか全然仕事がなくって。当時は広島から通いで、30分のオーディションのために片道4時間くらいかけて東京に来たりしていて。当時はコレ続くのかな…とか思っていたんですけど、そういう経験の積み重ねが今に活きているので、10年前の自分に「しっかり通いなよ」ってことを伝えたいですね。
竹中「最後まで進化し続けます」
――竹中さんから見た『リボステ』カンパニーならではの空気感があれば教えてください。
竹中:やっぱりアニメにも出ていたニーコさんがリボーンとして出演しているというのはすごく大きくて。ニーコさんが大黒柱というか、ニーコさんという太い幹があることで、僕たちもすごくやりやすい空気感になっていますね。
あとは芝居に熱い人が多い。残念ながら、こういうご時世なので今はご飯に行ったりもできないんですけど、以前は稽古終わりでご飯行ったりすると、一回芝居の話になるとずっと語り合う感じになるんですよね。稽古場でも、ずっと筋トレしている人がいたり台本読み耽っている人がいたり、じゃれている人がいたりするんですけど、丸さんが始めるって声を掛けると、みんなガガッと集中するような感じで。すごく居心地のいいカンパニーですね。
――カンパニーの先輩として佐伯さんになにかアドバイスはありますか。
竹中:分かんないことがあったら全部ニーコさんに聞いて、です。
一同:(笑)。
竹中:そうすると正解が出てくるから(笑)。
佐伯:分かりました(笑)。
――佐伯さんは新キャストとしてカンパニーに加わる立場となります。意識していることはありますか。
佐伯:やっぱり緊張はしますよね~どうしても。でも今回は稽古が始まる前に、取材だったり座談会企画があったりして皆さんと話す機会を設けていただいているおかげで、少しずつ皆さんのことを知ることができているので。なので、カンパニーに入りにくいっていう気持ちは全然なくて、むしろすごく今から楽しみですね。
――新キャストも含め大所帯のカンパニーになりますが、心がけていることはあるのでしょうか。
竹中:この時代だからこそですが、まずは人数も多いので、みんなで感染症対策はしっかりと、ですね(笑)。あとはあんまりないですかね。アニメから携わっているニーコさんっていう存在が大きいので、僕が無理に引っ張ろうとするよりも、そこは生き字引のニーコさんに任せて、あとは自分のやるべきことをしっかりやるっていう感じですね。
今回、アンサンブルで事務所の後輩もいるんですが、直接何かを言うよりは僕の背中を見て育ってくれればいいかなって思っています。
――今作は半数近くが新キャストとなりますが、共演が楽しみなキャストはいますか。
竹中:亮くん、先いいよ。
佐伯:あ、僕からでいいですか。僕、(山本武役の)山本涼介っていう人が同期なんですよ。
竹中:「っていう人」(笑)。
佐伯:2人とも2009年に一緒にジュノン・スーパーボーイ・コンテストを受けて、最終選考まで残ってデビューして。そこから11年を経てようやく共演できるということで、個人的にはすごく熱いです。
竹中:それは熱いヤツだ! さっきの広島から通っていた一番大変な時期に知り合っていたんだ。
佐伯:そう。山本も奈良から通っていて。だから熱いんですよね。あともう一人、(フラン役の)甲斐千尋って人も、僕が初めて役付きで舞台に出た作品で、彼女も初めて役付きで出演していて。そこから数年来の知り合いなので、今回一緒っていうことで、それも熱いですね。
竹中:僕は今回から雲雀役の北村健人くんが楽しみです。っていうのも、どんな風に雲雀を演じるのかなっていう興味もありますし、ボンゴレファミリーっていうある程度出来上がったチームに後から入るのは大変な部分もあるとは思うんですけど、健人くんが新しい風となってさらにボンゴレファミリーの層が厚くなったりしたらいいなって。あとは彼とは同い年なので、単純に仲良くやれたらいいなって。…会ったことないですけど。
一同:(笑)。
佐伯:え! 今の流れで会ったことないの!? すっごいびっくりした(笑)。すごい仲良いのかと思いながら聞いてた。
竹中:会ったことないない、まだしゃべったこともない。稽古始まって「初めまして」だよ。
佐伯:あ~びっくりした。すっかり騙された(笑)。
――ツナは「大空」、入江は「晴」の炎の属性を持っています。ご自身はどの属性に当てはまると思いますか。
竹中:僕は自分では雲だと思うんですよ。でもニーコさんは「凌平は大空だ」って言ってくれるので、きっと大空(笑)。物事に対してけっこう俯瞰的に見ることが多いし、あんまり怒ったりもしないし。そういった意味では大空の包容力がある程度はあるのかな、って思いますね。大空で…いいですか?
佐伯:いやでも大空っぽいですよ! まだ3回しか会ってないし、そんなに深い話したわけじゃないけど(笑)。なにか大空っぽいものを感じます。
竹中:あ~じゃあ大空だ。だって会って3回目でそれを感じるってことは、大空の空気が出てるってことですもんね。じゃあ大空で!
佐伯:僕はなんだろうな。(しばらく悩んでから)何っぽいですか?
竹中:喋っている感じ、ってまだ深い話はしてないけど(笑)。明るいから晴とかかなって。僕自身は晴の属性に憧れを持っているんですよ。そんな僕から見て、なんか晴っぽいなって。
佐伯:あ~、晴は仕事モードの佐伯ですね。だから晴にしとこうかな(笑)
竹中:自分的には?
佐伯:晴でありたいけど、僕もけっこう雲とか雨とかかな…。難しいなあ、こだわって答えたいもんな。でもやっぱり晴な気もするなあ。
竹中:晴は「明るく大空を照らす日輪」だね。
佐伯:日輪、そうか。じゃあ晴にします!
――無事属性が決まったところで(笑)、最後にファンへのメッセージをお願いします。
佐伯:本当に僕自身も原作が大好きで今までもたくさん観客として観させていただいてきて、今回からは作り手として加わることがすごく嬉しいです。これまで作ってこられたキャストやスタッフの皆さまの思いを受け取って、また新しい風を吹かせられるように届けていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
竹中:まずは『リボステ』も「未来編」まで来たということで、それもひとえに応援してくださるお客さまのおかげですので、「ありがとうございます」ということを伝えたいです。最終章を謳ってはいますけど、匣(ボックス)やアニマル、ミルフィオーレが出てきたりと、新しい要素がたくさんありますので、彩度の最後まで進化し続ける『リボステ』を一緒に見届けていただけたら嬉しいなと思います。ぜひお楽しみに! ちゃおちゃお。
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3回目の対面だとは思えないほど、竹中の包容力と佐伯の明るさで話が弾むインタビューとなった。原作愛あふれる作風に定評のある『リボステ』は、「未来編」でどんな熱い“死ぬ気”を見せてくれるのだろうか。
『家庭教師ヒットマンREBORN!』the STAGE -episode of FUTURE-は、東京・天王洲 銀河劇場で7月16日(金)〜22日(木・祝)に「前編」、7月27日(火)〜8月1日(日)に「後編」、大阪・サンケイホールブリーゼで8月6日(金)〜8日(日・祝)に「前編」、8月13日(金)〜15日(日)に「後編」がそれぞれ上演。熱い『リボステ』の夏が待ち遠しい。
文:双海しお/撮影:ケイヒカル/ヘアメイク:古橋香奈子、海野由香(LaRME)
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