2009年に初演、その後、2014年までに3度上演されたトライフルエンターテインメントのオリジナル舞台「双牙〜ソウガ~」。7年ぶりとなる新作公演、舞台「双牙〜ソウガ~」新炎が3月5日(金)に開幕。現在、東京・シアター1010で上演中だ。
2.5ジゲン!!では開幕前、ダブル主演を務めるオウカ役の猪野広樹とツムギ役の伊崎龍次郎にインタビューを実施。お互いの印象や注目のキャスト、今作への意気込みなどを聞いた。
お互いの印象とカンパニーの雰囲気
──ご出演が決まった際の心境をお聞かせください。
猪野:役者として好きなメンバーが集まっていましたので、彼らと作品を作ることが楽しみだと思いました。
演出家の町田慎吾さんが過去に演じていた役を務めるので、そこをどう裏切ろうかな…と今は考えています。
伊崎:今作は、最強の矛と盾という、いつまでも男心をくすぐるシンプルで面白いストーリーです。だからこそ、難しいお話だと思いました。
ただシンプルなものを出してしまうと味気ないし、飾り過ぎると何を言っているのか分からなくなってしまいます。表現の方法がたくさんあって、役者の力量が試される作品だと感じました。
あと、僕もこの共演者が集まった作品作りがすごく楽しみです。シンプルで面白いものを作るのがどういうことなのか、今は稽古場で頑張っている最中です。
──お二人は共演が続いていますね。お互いの第一印象、共演を経た現在の印象を教えてください。
伊崎:「古風な人だな」って思いました。いわゆる昭和の映画に出ていたような、今時あまりない価値観を持っている人だと感じましたね。
ものが溢れている令和の時代の中で、いろいろなものを削ぎ落して生きている人だと思います。猪野くんはたくさんの魅力を持っている男で、そこは最初の印象と変わっていないですね。
猪野:第一印象は「髪、長いな」かな(笑)。
真面目ですごく素敵な人という印象は今も変わってないですね。あと、彼は反骨心があるなとも思いました。このままで終わるような男じゃないなと(笑)。“やってやるよ”という感じが滲み出ているところが好きです。
──今作では、お二人が今まで共演されてきたキャストさんも多く出演されています。カンパニーの雰囲気を教えてください。
猪野:それぞれがそれぞれの仕事を務めようとしている最中なので、カンパニーの雰囲気が出来上がっていくのはここからですね。僕は稽古の合流が少し遅れたのですが、みんな、僕の出方を見守ってくれていてありがたいです。帰り道では談笑したり、仲は良いですね。
伊崎:よく知っている人が多いので、緊張する必要がないですね。今はいざ集まった時に何を稽古で出していくのか、各々が頑張っている状態です。
──注目しているキャストさんを教えてください。
猪野: 萩野(崇、デンベイ役)さんですね。圧倒的にかっこいいです! かっこいいだけじゃなくて “漢”なんですよ。
伊崎:確かに。“役者は人”ということを体現してくれている人ですね。喋ること全てに深みがある方だと思います。
──猪野さんは、萩野さんと共演が続いていますね。共演する中で教えてもらったことや尊敬しているところはどこですか?
猪野:役者としてはもちろん、人間としてもとても尊敬しています。
2年ぐらい前に初めて共演させていただいた時に、僕はふざけなくちゃいけない役をやったんですよ。やりすぎかな、周りがついてこないかな? と思って、萩野さんにもっと抑えた方がいいのか相談しました。
でも、「広樹、そのままでいてよ。抜群という字は、群から抜けるって書くんだ。群でいるな、孤高であれ」って言ってくださって。それからずっとその言葉が大好きですね。
意気込み、オウカとツムギについて
──2019年の初演以降、再演、再々演、スピンオフなど、長く愛されてきた作品です。今回の出演にプレッシャーは感じますか?
伊崎:マイナスの意味でのプレッシャーはあまりなくて、「やってやろうぜ」「楽しいものを作ってやろうぜ」という気持ちでいます。
“新炎”というタイトルをつけてもらったことや、僕たち二人に主演を任せてくださった意味を考えていきたいです。
猪野:プレッシャーはあまりないですね。プレッシャーを感じても、いいことは経験上あまりないんですよ。いつも通り、自分がやるべきことを頑張ります。
──同じ役を演じる際は、前のキャストさんのお芝居を参考にされますか?
伊崎:僕は逆です。映像って視覚に残る印象が強いですし、今回も迷いました。
でも、過去の映像作品をお借りしてみて、本当に素敵な作品だと思いました。ですが、それをあえてなぞらないようにしたいと思っています。過去とは違う素敵な面を出していきたいですね。
猪野:基本的に過去作品はあえて見ないようにしています。目の前の台本と向き合って作品を作ろうと思っています。
今作では町田さんと僕、それぞれが思い描くオウカ像もあると思います。2人で1つの役を作るというか、そこが面白くて難しいところですね。楽しみです。
──オウ力とツムギは、それぞれどのようなキャラクターだと捉えていますか。
伊崎:オウカとツムギは、椎名という国の矛と盾として他国に知れ渡っています。ツムギは軍司、盾の方ですね。仲間思い、国思いの青年です。
物語の最初から最後まで通してみないと分からないところも多いので、そこに伊崎龍次郎という役者が入って、生きるにあたって、どの要素を残そうかと今は考えている最中です。
猪野:オウカは国を大切にして、仲間にプライドを持っています。あと、ずっと恋をしているんですよ。言ってしまえば、今作はその人のための戦でもあるので…。そういうところから見ても、オウカはすごく愛のある人だと思っています。
──お互いに見て、各々が演じるキャラクターとの共通点を挙げるとすれば何でしょうか?
伊崎:猪野くんとオウカの似ているところは、「自分の道は自分が決める」というところですね。自分の人生を貫くという姿が、すごく似ていると思います。
猪野:龍次郎は、頭の中がずっと動いてるんだろうなっていう感じがするんですよね。今、ツムギを演じているからかもしれないですけど。
100パーセントの言葉の中に3パーセントくらいの含みがあったり、頭の良さを感じます。台詞通りじゃない、一筋縄じゃいかないところが似ています。
伊崎:そう思ってもらえているなら、僕の思惑通りです(笑)
──殺陣にパルクールの要素を取り入れるそうですね。猪野さんはパルクールに初挑戦ということですが、今はどのような稽古をされているのでしょうか。
伊崎:現状は、皆で基礎を一通り経験しているところですね。
「舞台上では自分のやれないことをしない。無茶をするのではなく6割で動けるものを出して、いかに当たり前にできることをかっこ良く見せられるか。それが舞台上でパルクールをやる意義だ」ってパルクール演出のHAYATEさんから教えを受けているんですよね。
ちょっとずつ、当たり前にできることを増やしていくのが基礎練習。今はそれを積み重ねて、現状できることをしっかりやっていくのが大事だと感じています。
──パルクールの入る演出と入らない演出では、舞台表現に変わりはありますか?
伊崎:シンプルに「ただ走っている人」と「意外な動きをして、かっこいい走り方をしている人」っていう違いがありますし、着地の瞬間も少し違ったり、その人を目で追う可能性が増えると思います。
パルクールはあくまで役の魅力を底上げしているというような感覚で見てもらえたらと思います。
──今作の見どころ、魅力を教えてください。
猪野:それぞれが何に義理を通しているのかという話なんですよね。僕は台本を見ただけだと共感できないキャラクターもいたんですけど、それをどう思うかは人それぞれの価値観だと思います。そういった違いが出るところにも面白さを感じますね。
何に義理を通しているか。何を大事にしているか。そこを表現できればすごく深い作品になると思います。
伊崎:見ている方の人生にとって、ちょっとしたプラスになる作品だと思います。僕たちが必死に生きて演じることで、登場人物に共感もしてもらえると思います。
賢明に生きているキャラクターたちを通して、皆さんの心を動かせたらいいですね。
それぞれの“譲れない正義”は…?
──今作のテーマの1つは、譲れない正義のぶつかり合いだと思います。お2人にとって、譲れないものはありますか?
猪野:役者としても人としても、たくさんありますね。
人として譲れないものは、義理を通すことです。お世話になった人に、恩を返したいと思っています。言い方を変えたら、感謝かな。礼儀や恩義というものを譲りたくないです。役者としては嘘をつかないこと。それだけあれば十分だと思います。
伊崎:2つあります。1つ目は家族です。血の繋がりだけじゃなくて、仲間などの広い意味での家族ですね。
2つ目は楽しむことです。プライベートでも仕事でも、どんなことでも楽しむように心がけていますね。もう、なんでもこい! っていう感じですね(笑)。
役者としては生きること、嘘をつかないことです。猪野くんは、普段から嘘をつかないんですよね。そこがすごくかっこよくて好きなんです。僕も役者として嘘をつきたくないと思っていて、舞台の上にいる時は素直にいるようにしています。
──最後に、意気込みとファンへのメッセージをお願いします。
猪野:この座組って、そんなに若くないんですよ。何というか、「若手俳優」って呼ばれたくない頃のキャリアの俳優が集まっていると思うんです。いつまでも若い芝居をしてちゃ駄目だぞ、抜けなきゃ、って分かり始める年齢。なので、それぞれの個性がどんどん見えてくると思うので、すごく楽しみです。
伊崎:僕も25歳の時、そう思いましたね。
今の年齢のままでいられないという、反骨心を持っているメンバーが集まっています。それが弾けて、溢れ出る瞬間に、何が生まれるのかが楽しみですね。
猪野:役者はお客さんがいないと始まらない職業です。この状況の中でも来てくださる方がいることに、本当に支えられています。お客さんがゼロだったら舞台ってどうなるんだろうって考えるんですよね。今日、幕は上がるの? って。
誰かの明日にはならないけど、誰かの明日を作る礎にはなるかもしれない。そう思って臨みますので、ぜひ楽しんでください。
伊崎:舞台は毎日の活力を与えるものだと思います。観劇することで、ちょっとでも元気になってほしいですね。
仕事を頑張ったり、腰が重かったことに挑戦してみたり、一つのきっかけになればいいと思っています。観劇をしている時は全部を忘れて、楽しんでください。
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舞台「双牙〜ソウガ〜」新炎は3月14日(日)まで東京・シアター1010で上演。同日16:00の千秋楽公演はStreaming+でライブ配信。
撮影:ケイヒカル
※記事初出時、一部キャスト名に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。
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