インタビュー

【俳優のおうち時間】橋本真一が「#シイタケつなぎ」ツイートに込めた密かな思いとファンへのエール

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新型コロナウイルス感染症対策の流れを受けて、外出を自粛する生活が続いている。緊急事態宣言は解除されたものの、まだまだ日常が戻ってきたとは言えない日々だ。

普段は多忙な俳優たちも、家で過ごす時間が増えている。彼らは今どのような日々を送っているのだろうか?

「2.5ジゲン!!」では俳優たちの「おうち時間」に注目。新しいチャレンジや今感じていることなど、彼らの「今」をオンラインで取材した。

今回のゲストは、ミュージカル『テニスの王子様』2nd、「メサイア」刻シリーズ、リアルファイティング「はじめの一歩」、「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stageなど、数々の作品で活躍する俳優・橋本真一。

Twitter上で披露した「シイタケ栽培」の詳細から、今あらためて感じている芝居への思い、ファンへのメッセージなどをじっくり語ってもらった。

橋本真一プロフィール
1989年10月9日生まれ、俳優。ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン(樹希彦役)、「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage(青山優雅役)、リアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!!(速水龍一役)など、2.5次元作品にも多数出演。現在は『アルゴナビス from BanG Dream!』プロジェクト(里塚賢汰役)にて声優としても活動中。

公式サイト:http://www.manasepro.co.jp/m_artist_05hashimoto.html

「アルゴナビス」共演者から生まれた「#シイタケつなぎ」の輪

――先日、Twitter上でシイタケを栽培する様子を公開されていましたね。意外な「おうち時間」の過ごし方に和んだファンの方も多いかと思いますが、育て始めたきっかけは?

僕は今、『アルゴナビス from BanG Dream!』プロジェクトに出演させていただいています。シイタケ栽培が始まったのは、その共演者の輪の中からでした。

僕が声を担当しているキャラクター・里塚賢汰は「GYROAXIA(ジャイロアクシア)」というバンドを組んでいるんですが、最初にシイタケを育て始めたのは同じバンドメンバーの宮内告典くん(界川深幸役)です。

宮内くんがなぜか突然、旭 那由多役の小笠原仁くんにシイタケの原木を郵送し、そこから「#シイタケつなぎ」の輪が始まりました。

――おうちにシイタケの原木が届いたときの感想は?

TwitterやLINEグループで宮内くんと小笠原くんがやりとりするのを見ていたので、「そのうち僕のところにも来るかも」という予感はありました。

だから宮内くんから1本目の原木が届いたときは「おお、ついに来たか」という感じだったんです。

ただ、翌日になって小笠原くんから2本目が届いたときは「まさか……」という気持ちでした(笑)。箱を見た瞬間に「これ知ってるぞ、このサイズ感。昨日も見た!」って。

――2本目は予想外だったんですね。

「#シイタケつなぎ」の概念に食い違いがあったようで、宮内くんは「自分からいろんな人にシイタケを送りつけていく」というイメージ、小笠原くんは「リレー形式で繋いでいく」というイメージだったんですね。

せっかくなので、それぞれの原木に「宮内きのこ」「小笠原きのこ」と名前をつけて、2本同時に栽培を始めました。

――栽培した感想を一言で言うと?

とっても簡単でした!原木を最初に水で湿らせたら、あとは毎日1〜2回霧吹きで水を吹きかけるくらいで、ほぼ何もしなくて大丈夫でした。

あとシイタケって成長速度が早いので、朝と夜でも大きさが変わるんです。だから、そばを通るたびにチェックしては「大きくなってる〜!」と実感できて、毎日楽しかったです。

育て始めた翌日には、黒っぽい原木に白い斑点がポツポツと見え始めて、その日の晩にはポツポツが大きくなって。1週間も経たないうちに、1本目を収穫できるくらいまで育ちました。

――栽培していて楽しかったことは?

2本の原木の育ち具合がまるで違うので、それぞれの個性を観察するのが楽しかったですね。

「宮内きのこ」は1本のサイズは小さいけど本数がたくさんできて、「小笠原きのこ」は本数は少なめだけど1本1本がかなり大きくて、軸もしっかりしていました。

――2本の原木を置いた環境は全く同じだったんですか?

全く一緒です。並べて置いておいたのに、成長スピードや育ち方は全く違いましたね。

なかなか1本目が生えてこない小笠原きのこが心配で心配で、「この子大丈夫かな?」「何か傷つけるようなことしちゃったかな?」「最初の湿らせ方がまずかったのかな?」とハラハラしていました。

――1本目のシイタケを収穫したときの感想は?

「いとおしい」という気持ちでしたね……。自分が成長を見守って育ててきたきのこを収穫するのはワクワクドキドキしましたし、1本1本が可愛くてたまらなかったです。

宮内きのこは小さいものも含めると30〜40本、小笠原きのこは大きいものばかり4〜5本収穫できたので「大きいのは形が見えるバター醤油焼き、小さいのは刻んで混ぜる料理に使って……」と調理方法も工夫しました。

――Twitterに公開していたシイタケ料理はご自分で作られたのですか?

はい、もともと料理が好きなんです。外出自粛の期間中はたくさん作りました。シイタケ料理も、「バター醤油炒め」「シイタケの肉詰め」「シイタケのレンコン挟み焼きカレー風味」……と、いろいろ作りましたね。

「シイタケとレンコンの炊き込みご飯」もしました。シイタケの中でも小さい子たちと、レンコン、大根、油揚げを小さく刻んで炊き込みご飯にしたんですが、美味しかったです。

それから、「シイタケの胡麻豆乳スープ」。これはシイタケと豚バラを細かく切って、すり胡麻と豆乳で中華スープベースの味付けにしました。

せっかく育てたきのこなので、ちょっと凝ったものを作りたいなと思って頑張りました。

▲手作りの「シイタケとレンコンの炊き込みご飯」。そのほか手作り料理写真は記事下の「画像一覧」に掲載

――育て方で難しかった点はありますか?

しいて言えば、原木を入れる袋の口の開け具合ですかね。ちょっとだけ空気を入れる穴がないと、きのこが呼吸をできなくなってしまうそうなので。

あとは、収穫のタイミングです。傘が完全に開くと胞子が飛んでしまうそうで、適切なタイミングで収穫しなきゃいけないらしくて。

だから原木を何本も同時に育てようとすると、チェックが大変かもしれません。

――「#シイタケつなぎ」の輪は、さらに広がっていますね。

予想以上に繋がっていますよね。僕からは2人に繋ぎました。

1人は『アルゴナビス』で僕と同じ「GYROAXIA」のバンドメンバー・曙涼役の秋谷啓斗くん。もう1人は、僕が演じている里塚賢汰の弟(的場航海)役の前田誠二くんです。

前田くんが演じているのは僕らのライバル関係にあるバンド「Argonavis」のメンバーなので、そこから「Argonavis」のメンバー内にも「#シイタケつなぎ」が広がっていきました。

コロナ禍で感じた「無力さ」。そして新たな挑戦への思い

――今回シイタケ栽培にチャレンジされていましたが、ほかに今後「やってみたい」と感じていることはありますか?

仕事の話で言うと、「家で1人でもできる表現手段を増やしたい」ということを最近よく考えています。

――具体的にはどんなことですか?

たとえばファンクラブやイベントのロゴ、グッズのデザインなどは今までも自分でやっていたのですが、その他の今までスタッフさんにお任せしていたことや自分が歌っている動画の簡単な編集など、少しずつチャレンジしていきたいと、最近とくに思うようになりました。

僕はもともと機械があまり得意ではないんですが、パソコンに新しいデザインソフトをインストールして使い方の勉強も始めたんです。iPadを使ったロゴやグッズのデザインにも挑戦してみたいなと思っています。

――そうした分野にチャレンジし始めたのは、何か理由があるのでしょうか?

新型コロナウイルス感染症対策の影響で、多くの舞台が公演中止・延期になりましたよね。やはり役者として、俳優として、色々と感じるところがありました。

今までは「稽古をして、ステージの上に立って、お客様にお芝居や歌を届けること」が僕の仕事であり、そこに全てのエネルギーをかけたいし、かけるべきだと思い続けてきたんです。

当たり前のように仕事をしていけると思っていたし、それだけに専念できたら充分だとも思っていた。でも今こうして、ステージに立てない状況になってみて、なんというか……とても「無力さ」を感じました。

お芝居が仕事の本分なのに、それができない。ということは「つまり僕は無職だな」と思った瞬間もあります。

――それで「できることを増やしたい」と。

そうです。もちろん役者としてお芝居することが一番大事な軸ですが、そこに付随して自分でできることがもっと増えたら、発信の幅も広がるなと。

ロゴやフライヤーをデザインしたり、動画を編集したり、クリアな音で歌を録音したりする。そういう技術を身につけられたら、それもまた1つの表現の形になると気づきました。

今までもやっていたイベントのロゴやグッズのデザインだけでなく、さらに色々な表現・発信ができるようになりたいです。

――外出自粛時間で、表現への思いが強まったのですね。

Twitterもそうですが、やっぱり稽古や本番がなくなったとたんにツイートすることがなくなってしまったんですよね。もちろん日常をツイートしてもいいんですけど、それは役者・橋本真一のファンの方々に求められていることなのだろうか?と考えてしまって。

こだわり過ぎているのかもしれませんが、役者である僕を応援してくださっている方々に対して、仕事と関係のない日常ばかり発信して「楽しんでもらえるんだろうか?」と悩んでしまい、結局何もツイートできない……ということもあったんです。

そういう意味では、シイタケ栽培はいいきっかけになってくれました!

シイタケつなぎは役者同士の輪の中で生まれたものだったので、見ている方にも楽しんでもらえそうだなという思いがあって。自分の日々の楽しみにもなりましたし、いろんな面で良かったです。

今演じてみたいのは「悪役」と「長期スパンの役」

――あらためて今感じている、俳優としての今後の目標や夢を聞かせていただけますか?

チャレンジしてみたいことはたくさんあります。当たり前ですが俳優としてもっともっとステップアップしていきたいですし、声優のお仕事にもさらにチャレンジしたいです。

声優業は『アルゴナビス』で始めたばかりですが、すごくやりがいを感じています。プロジェクト内で担当しているギターも含めて自分はまだまだ未熟なので、経験を積んで技術を高めていきたいです。

その先にある夢として、「影響力・発信力のある人」を目指したいという気持ちもあります。

実力も発信力もある俳優になれたら、僕を通してより多くの人を勇気づけたり元気づけたりできるのかな、という思いがあって。

――勇気や元気といったプラスの感情を引き出せる人になりたいと。

おこがましいかもしれないけど、僕を見てちょっとでも明るい気持ちになってもらえたり、何かいい意味で心を動かしてもらえたりするような、そんな人間になりたいんです。

それは、元気とか勇気といったダイレクトな感情だけではなくて。たとえば、僕が舞台上で演じているのが悪役だったとしたら、その役に感じる気持ちはマイナスでもいいんです。

作品を見終わった後、僕の演じた悪役について「あの行動はダメだよね」「もっとこうした方がいいよね」という感想を持ってもらえたなら、それも素敵ですよね。

観ているお客様に対して、明るくて楽しい役からパワーを発信できるのも嬉しいし、悪役として反面教師になれるのも嬉しい。どういうルートであるにしろ、結果少しでも良い方向へ心を動かせる役者になれたら嬉しいです。

――ちなみに今「こういう役をやってみたい」という役柄はありますか?

悪役については、今までも何度か演じたことがありますが、もっと演じてみたいなと思っています。

悪に理由がある役というか、悪として生きざるを得なくなったバックボーンや過程を持つ役をやってみたいなあという気持ちがありますね。

それから今は、どんな役にしろ年単位のような長期スパンで演じる役もやりたいです。

「メサイア」刻シリーズで演じた小暮洵は、約3年という長い時間をかけて内面のかなり深い部分まで表現させていただいた、とても印象的なキャラクターでした。

どの作品のどの役も、今の自分に大きく影響しています。それぞれを演じたからこそ知ることができた考え方や感情が、どのキャラクターにもあります。

その中で、やはり3年間かけてじっくり関わった小暮洵は、橋本真一という人間が生きていく上で大きな影響を与えてくれました。そういう作品や役柄に、また出会ってみたいです。

――なるほど。長いスパンの役柄は、演じる上でどんなところが楽しいですか?

役の内面もそうですが、キャラクター同士の関係性に色々な変化が起きるところも、演じていて楽しいです。

1作目では予想もしなかったような展開が2作目に待っていて「えっ、こうなっちゃうの!?」という驚きがあったりしますしね。

時間をかけて役の内面や関係性が変化していく様子は、観ている方も楽しいと思いますし、演じている側も楽しいです。

演劇を愛するファンに今伝えたいメッセージ

――本日は貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。最後になりますが、読者の方々に今伝えたい思いはありますか?

演劇を愛する全ての方々に、「演劇を好きである気持ちに誇りを持っていてくださいね」と伝えたいです。

コロナウイルス対策として、演劇・エンタメ業界は真っ先に影響を受けました。公演ができなくなったことで、演劇が「世の中に必要ない」と言われたように感じて、つらい気持ちになった方もいらっしゃると思います。

だから「そんなことはないですよ」って伝えたい。俳優やスタッフさんたちにとっても、お客様にとっても、演劇は大切なものです。

少なくとも僕は、お金や生活のためだけにお芝居をしているわけじゃない。僕は演劇がないと、心が生きていられないんです。

それはお客様も同じだと思います。演劇やエンタメが大好きで、「この作品の、この日の公演を観に行くために頑張ろう」と、そんなふうに過ごしていらっしゃると思います。

演劇は娯楽ですから、「お金や時間に余裕があるから観に行く」という人ももちろんいるでしょうし、それを否定する気は全くありません。

ただ、生きる上で演劇が必要だと感じている人は、作る側にも観る側にもたくさんいる。絶対に不要なんかじゃありません。

だから、たとえ否定する人がいたとしても気にしないで、演劇への愛情を誇りに思っていてほしいです。

そして、いつかちゃんと演劇が再開されるときには全力で楽しんでください。もう存分に演劇を浴びてほしいし、僕らも全力で浴びたいです。

僕たち俳優も、それからスタッフの方々も、今は「演劇欲」みたいなものが体の中にギューッと満タンになっている状態です。

舞台が再開できる日が訪れたら、100%に戻るのではなく、120%、200%のパワーで放出されるはず。そのときは、演劇を「できる幸せ」と「観られる幸せ」をお互いに噛み締めながら劇場に戻りましょう!

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WRITER

豊島 オリカ
 
							豊島 オリカ
						

観劇好きのフリーライター。2.5次元が大好きです。頂いた日々の活力、勇気、心を揺らす奇跡のような感覚に、どうにか恩返しできないものかと願いながら執筆しています。カーテンコールで拍手することと、鼻ぺちゃな犬も大好きです。

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