舞台「文豪とアルケミスト」異端者ノ円舞(ワルツ)、国木田独歩役の斉藤秀翼と島崎藤村役の小西成弥。2.5ジゲン!!は、今作からの参加となる2人に、カンパニーの様子や役作りについてインタビューをした。
ビジュアル撮影の裏話から、役を自分のものにするための苦労、役者として普段大切にしているものまでを熱く語ってくれた様子をお届けする。
もくじ
今作から参加の2人。まるでホーム、溶け込みやすかったカンパニー
――今作から新しく加わったお2人。稽古場のお写真をよくツイッターで見かけます。和やかで楽しそうな現場ですよね。カンパニーの印象と雰囲気はいかがですか?
小西成弥(島崎藤村役):初演に出られていた方が半分くらい。演出の吉谷さんを筆頭に稽古場の空気感はできあがっていて、そこに新メンバーが「転校してきた」って感じです(笑)。すぐにみんな受け入れてくれて、仲良くワイワイやっています。
斉藤秀翼(国木田独歩役):久保田くん(久保田秀敏・芥川龍之介役)や谷やん(谷佳樹・志賀直哉役)は少し遅れて合流してきたんですが、最初、初演のメンバープラス僕ら、っていうときが何日かありました。
それですぐにご飯に行ったりして、現場で気を遣うっていうのは全然ありませんでした。
小西:役者同士はもともと知り合いだったり、共演していたりもするので入りやすかったですね。僕は今回、谷やん(谷佳樹)も大志くん(杉江大志)も前から知っているので、ホームな感じで入れたかなと。
斉藤:まったく新しい現場に入るのであれば、流れも分からないし多少緊張します。でも僕も3、4人知っているし、顔合わせのときも「久しぶり!」って感じでした。
小西:わりと楽でしたね。全員知らないメンバーだと緊張してしまうけれど、そういうのも全然無かったし。谷やんと大志くんをはじめ、初演メンバーが引っ張っていってくれてます。
実在人物だからこその役作りの難しさ。舞台での自分の役割を探す
――役作りについてお聞きします。今回の人物たちは、ゲームの登場人物とはいっても実在の文豪をモデルとしているので、その点難しいと感じるのですが……
小西:僕は今回、取材をよくしている人物を演じます。知識量や情報量がすごい。それと同じくらい知っておかないとセリフも言えない。だから、島崎藤村本人のことはもちろん、今回の舞台で言えば、志賀と武者小路の関係性についても知らなければいけない。
潜書する本のこと、本を書いた人、その作家と周りの人との結びつき……単純に島崎藤村の人生だけではなく、みんなのことも勉強しないといけないので大変ですね。
斉藤:例えば新撰組であれば、同じ時代で同じことをやっていた人たちの集まりですよね。でもこの話はそうではない。生きていた時代が違う人、当時リアルに交流を持っていなかった人もいる。
彼らの関係性を知るとともに、僕にとっての「一番」は台本。その話の中での役割を探します。自分は今回、この物語の中でどういう立場や役割を担っているのか。
この役割のキャラだから、こういうときにこういうことを考えているのかな、とか。このタイミングでこれに気付いているのかな、とか。
僕たち2人は、基本的にいつも一緒にいます。だから稽古が終わるタイミングが一緒なので、稽古場を出る時間も同じです。駅へ歩くほんの5分、10分。そこで生まれた話。そういうものの積み重ねで培ったものが、舞台上で生きる仕事だと思っています。
初めての人の場合、その役者のことを知らなければ、とも考えています。この小西成弥という男を知ることで「こういうお芝居をしてくるな」「こういう風に役を作っているんだ」と理解できる。
お互いが出せるアイデアの幅や、世界観が広がりますね。それが、生身の人間がやっている意味だと感じています。まずは小西成弥がどういう人なのかを知りたいです。
小西:何回かご飯に行ってますね。
斉藤:うん、カレーしか食べてないけど(笑)。
小西:ほんとに、一番一緒にいるかな。役もそうだし、行動的に2人でひとつ、みたいな(笑)。
ビジュアル撮影の裏話。「腰がつるかと思った!(笑)」
――今回のお2人は、弓を使う人物ですね。これまでの舞台の中で、お2人とも弓は初めてだと思うのですが……
斉藤:そうですね、舞台では無いです。僕はプライベートで弓を持ち歩いてるタイプなので。
小西:やばい(笑)。確かに弓って最初、どうやるんだろう? と思ってたんですよね。
斉藤:実際の矢の現物を撃つわけではないから、その形も難しい。剣とはまた違いますね。
弓の戦い方としては遠距離ですよね、例えば舞台上で誰かがやられそうなのを遠くから援護するとか。近距離だと、……相手が剣なのに弓で殴るとか?
ーー弓での接近戦だと「ロード・オブ・ザ・リング」のエルフ、レゴラスが思い浮かびますね。
斉藤:かっこいいですよね、矢を握ってそのまま刺したりするし!(笑)刺さった矢を抜いてまた撃ったりするの、かっこいいなぁ。
小西:実際の矢があれば、そういう戦い方もありですよね。
斉藤:物としての矢が無いからこそ、形をちゃんと見せないといけないという面もある。そう、武器めちゃくちゃ凝ってるんですよ。歯車が付いていたり。
小西:すごく秀逸に作られています。衣装もそうだけれど、細かい所まで精巧に作られているんです。壊さないようにしなきゃ(笑)。
――ビジュアルを拝見したのですが、本当にカッコよくて、衣装も武器も細かく作られていますよね。この撮影時のエピソードなどがあれば教えてください。
小西:そう、ビジュアル撮影のときはまだ稽古前なので、台本を見て稽古してみないと分からないことがたくさんありました。
斉藤:人物の動きのクセなんかが分かっていると、ビジュアルも撮りやすいんですよね。それから武器の扱い方。例えば剣だったら、こういう画が欲しいのかな、こういうポーズかな、とか分かるんですけど「……弓?」ってなって(笑)。
弓でのポージングが分からなくて。もうね、脚を大きく開いたりして腰がつるかと思った!(笑)
小西:やったことない体勢ですもんね。しかもね、弓が意外とでかいんですよ。扱いもだし、居どころが難しくて。
斉藤:矢が脚に被るとか被らないとか、ちょっとした角度もいろいろ試しながら撮影しました。
役者の武器は引き出し、手数の多さ。役作りとキャラクターの内面について
――扱ったことの無い武器だと、そういう苦労もあるのですね。稽古を始めてみて、キャラの内面はいかがですか? 今まで演じたキャラとの共通点などがもしあれば。
斉藤:けっこう似てる部分ある……かな? いつも「誰かになる」と思ってやっているのではなく、似ている部分や違う部分を探しながらやっています。
結局自分が演じるので、自分が持っているものでしかできません。それがよく言われる「役者の引き出し」というか、バリエーションなのかなと思っています。手数の多さ、キャパシティ。
自分が演じるからこうなる、っていうものを見つけてやっていきたいです。自分ではないものにはなれない。知っているものをいかに繋げて出していくか。
この役が自分にオファーが来た理由がわかるな、と思えるのはすごく大事なことです。今まで自分の演じたものを見てオファーしてくれた。求められているものが分かります。
――ファンは「この役にこの人、なるほど」と納得することもあり、意外だなと思っても舞台を観て「そういう引き出しもあるんだ」と思うこともあります。
斉藤:そう、分かりやすく例を挙げれば竹内力さん。あの方にコワモテの役が来る理由は誰しもわかるし説得力があります。でも逆に、あの方のメイド役を見てみたい、っていうのもありますよね。
分かりやすくて説得力のあるオファーと、この人の新しい面も見てみたい、っていうチャレンジ。自分たちにもそういう両極はあると思います。新しい面を引き出されるのも楽しみです。
――この舞台で、お2人のどんな面が引き出されるんでしょうね。小西さんはこれまでの舞台だと、元気いっぱいの少年を多く演じられているイメージがあります。
小西:そうですね。ミュージカル『テニスの王子様』の不二裕太役、『あんさんぶるスターズ!』の南雲鉄虎役、SCHOOL STAGE『ここはグリーン・ウッド』の蓮川一也役……、快活で明るい役が多いですね。あんまり、暗い役のイメージは無いかな。普段の自分はそうでもないんですけれど。
斉藤:クールな人なんだろうな、って印象あった。
小西:そんなにクールではないですよ! でもこのビジュアル……そう、島崎藤村は目が死んでいる!(笑)
だから稽古場では、こう、ね……(ぼんやり死んだ目で遠くを見つめる)。こういう感じでいるんですけれど、そのうちぼうっとしてくるんです!(笑) それで、引っ張られるのかあんまり元気になれない……。
別の舞台だと楽屋でもうるさいくらいにワチャワチャしているのに、そこまでテンションが上がらないんですよ。自分の性格ともけっこう離れているし、難しいです。そもそも藤村自体が、普通の人が経験しないような壮絶な人生を送っていますよね。
斉藤:大事なものを失ってきているんだよね。
小西:そうなんですよね。そういう人だから自分とは真逆。
斉藤:この期間中に何か失ってみたら? LINE全部消すとか。
小西:絶対無理!(笑)
斉藤:あと、ギャラを全部僕に渡す。
小西:せめて親に渡します!(笑)
キャラクターを自分のものにしたい。新しいアプローチと時間をかけての役作り
――2次元のゲームキャラでありながら、モデルとなっているのは実在の人物、というのも役作りのバランスが難しいですね。
小西:そうなんです、本当に最近まで生きていた人だから。今回、いつもやっている役作り方法ではうまくいかなくて、切り替えて新しい方法でチャレンジしています。
斉藤:うん、「悩んでるんだろうな」とは何となく思ってる。
小西:芝居としてはね、成立するんですよ。でも、藤村のキャラクターをまだ落とし切れていないのかな、自分の中で完全に納得していないんです。藤村がどうしてこの死んだ目になっているのか……。
斉藤:うん、そこは僕も同じ感じ。まだ見つかっていないものが多い。
求められているもの、やらなければいけないラインは分かっているんです。でも、自分の中で突き抜けるものを探し中ですね。
役によっては、スパンと腑に落ちて表現できるものもあります。悩みながら自分のものにしていく役と、スッと入れる役。どちらが良い悪いというのは無いですが、時間をかけて考えながらの方が、その役に接している時間が長いですよね。いつも考えているから。
だから、気づいた時には深くて厚みのあるものができあがっています。プロセスがあって見解があるから。すぐ理解できると、理解してから理由が来る。技術的な面では有利です。
本番ギリギリまで悩んでもいいのかもしれないし、本来そうあるべきなのかもしれないですね。初日と千秋楽で演技が変わってくることもあるし。
――複数回観て確かめないといけませんね!
小西:ありがとうございます!
斉藤:そういうことですね!(笑)
迷いながら探りながら、納得するまで「役を自分のものにしたい」という強い思いが伝わってくる。さまざまな役を演じてきた2人の新しいキャラクター、新しい顔に期待してやまない。
※載せきれなかったふたりの特別カットは記事下の「画像一覧」に掲載
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