インタビュー

KIMERUが追求する「鉄ミュの面白さ」とは?過去公演を振り返って思うこと

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2015年11月に上演された「ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』」からスタートした鉄ミュシリーズ。2019年10月30日からいよいよ「ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』コンサート Rails Live 2019」が開幕した。

シリーズ初のコンサートを記念して、鉄ミュシリーズ全作に出演しており、2019年5月のスピンオフ公演では座長を務めたKIMERUにインタビューをした。

初演の思い出から最新作の見所まで、鉄ミュの面白さの秘密を探っていく。

原作の第一印象は「難しい」

ーーまずは、初演で初めて原作「青春鉄道」に出会った時の印象を教えてください。

原作が難しいな、という印象でした。鉄道路線の歴史についてのエピソードなど、鉄道の知識があることが前提になっている笑いも結構多い。鉄道好き向けの作品ですよね。

もちろんわかる部分もあるんですが、「なんでこれで笑うんだろう」とわからない部分もあるので「難しい作品来た!」というのが第一印象でしたね。

ーーKIMERUさん自身は、これまで鉄道への興味は特になかったのでしょうか?

乗り物は好きなんですけど、歴史までは……。出身の熊本にいたころから電車は使っていましたし、身近なものではあります。でも、歴史や知らない路線が出てくるところは難しかったですね。

わかりやすい2.5次元の作品ってよくあるんですけど、今回は歴史を知らないといけないところが難しいなと思いました。

ーーKIMERUさんが演じられた西武池袋線に対してはどのような印象を持たれていますか?

西武池袋線は人間味があるというか、意外とまともな人間なんじゃないかと思っています。一途なところが変な人に見えているだけで実はちゃんとした人なんじゃないかって。

他の路線も同じですが「生き切る」というところが人間と電車の違いなんじゃないかと思います。他に迷惑をかけてでも「生き切る」ことが、もしかしたら路線特有の愛の表現なのかもしれないって思いながら読んでいました。

スピンオフ(ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』~すべての路は所沢へ通ず~)で西武池袋線は自分を作ってくれた西武鉄道創始者の会長と「またご一緒したい」っていうのをずっと言っているんです。

会長は亡くなっていてもうお墓の中にいるのですが、西武池袋線は、修理すれば直すことのできる電車や路線と同じように人間も直るんじゃないかと思っているような気がします。だから、あそこまで生き切れているんじゃないかって演じていて感じました。

路線の方が長生きしてしまうので作った人たちは彼らを残していってしまう。切ないですけど、歴史を感じますね。

ーー今のお話は演じていく中で気づいたのでしょうか?

そうですね。演じていく中で気づいた僕なりの路線側の解釈です。

他のキャストがどう思っているのかはわからないですが、自分は特に愛を叫ぶキャラクターなので、よく考えるようにしています。

原作よりもわかりやすいミュージカル作品に

ーー3作目のミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』3~延伸するは我にあり~では西武池袋線に加えて、銀座線と常磐線が加わり3役を演じられました。複数の役を演じた中で苦労された点があれば教えてください。

役が重かったですね。もっとサブ的なキャラクターが来ると思ってたんですけど「銀座線来たー!」みたいな。常磐線は常磐線で震災のエピソードがありますし。

でも、キャラクターがそれぞれ3役とも違うので、肉体的な疲れはあっても、精神的にはすごく楽しいです。絡まない役の人とも別の役で絡むことができるので、そこも楽しいですよね。

役の切り替えも衣装さんやメイクさんの力も借りつつ、すっと入れます。ただ早替えは大変でしたね。

西武池袋線だと会長に向けた愛を叫んで、銀座線だと東京地下鉄の創業者である早川徳次さんに向けて、常磐だとメガネ(千代田線)に向けてと、愛を叫ぶ役が多いかな。はっきりしていて好きですね。高崎翔太(東武東上線・信越線 役)もそうなんですけど。

ーー3作目で登場した常磐線と千代田線の「in the box.」のエピソードは原作でも人気のエピソードです。このエピソードを作る上で千代田線役の神里優希さんとお話されたことはありますか?

実は神里優希が震災の話だと気づいたのは稽古終盤だったんです。曲自体が軽やかだったからこそ気づいてなかったみたいです。それくらい原作が難しいということでもあります。

なんの話なのか演じていたり、演じている他のキャストを見たりするなかで、気づくことが多いです。

漫画よりもわかりやすくなっているのがミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』なのかなって思います。演出の川尻さんも「歴史がわからない人にもなるべくわかるように演出したいね」と話していました。

ーーご自身でも鉄道について調べられているんですね。

例えばスピンオフ公演の最後で鐘が10回鳴るのですが、これは西武グループについてみんなで勉強していく中で演出家と相談して入れたものです。銀座駅にある早川徳次さんの銅像も見に行きました。

あとは日常の路線の動きも気になるようになりました。台風でも銀座線だけは無傷で「銀座強っ!」って言われているのを見たり。

ーー最初におっしゃっていた鉄道好きな原作ファンの立ち位置に近づいて来ているんでしょうか?

そうですね。北陸新幹線が台風の被害で水没して、思わず渡辺コウジ(北陸新幹線 役)に連絡しました。路線が身近になってきました。

原作への愛情があるから原作を超えたキャラクターが受け入れられる

ーー最初に西武スピンオフ公演のお話を聞いた時はどう思われましたか?

「いや、無理でしょ」って言いました。地方の人からすると西武池袋線自体がマイナーなのに、他の路線はさらにマイナーでよくわからない人が出てきて大丈夫ですかって。

ずっと前から西武だけで公演をやりたいというのはプロデューサーから聞いていたので、実際にできるかどうかは別としてやりたいとは思っていました。

いざ、公演が始まって初演で1人でやっていたのがみんなで具現化できて泣きそうになりました。2.5次元舞台はみんなそうなんですけど、成功しないと続けられないので、こうやってスピンオフ公演までできたことと、新しいメンバーでできたことはすごく感慨深かったです。

最初の方は西武池袋線1人だったし、2作目で2人(西武新宿線と西武安比奈線)に増えるんですが、軍団とはちょっと違う関係性だったので。やっと一緒に万歳してくれる人たちが増えたという感じです。

ーー新しく鉄ミュに参加されるキャストの方に対してはどんな風に接してらっしゃいますか?

顔見知りのキャストが多いので僕が繋ぎになっているところはあります。

演出の川尻さんがミーティングの時間を設けてくれるので、そのときに原作を超えて行かないといけないという話はしています。

原作のネタが難しいからそのままやってしまうとお客さんはわからないまま終わってしまうので、キャラクターの表情やドタバタしている様子で「よくわかんなかったけど面白かった」と言わせる舞台づくりをしようと。

そのためにはキャラクターが魅力的でなければいけないので、自分の魅力で出すことのできる自分のキャラクターを掴んでと最初に入ってきたキャストに難しい要求を伝えています。

ーー原作を超えるということで原作とだいぶキャラクターが変わった人もいますよね。

京浜東北線(高橋優太)は2作目(ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』2 ~信越地方よりアイをこめて~)で覚醒してしまって。もはや舞台ならではのキャラクターになりつつあるのですが、 そこがいま愛されているので不思議です。

原作者の青春先生がほぼ毎公演見にきていらっしゃるので、たまに原作がミュージカルに寄っているのも面白いですね。

ーー青春先生も原作を飛び越えたキャラクターを楽しんでいらっしゃるんですね。

「あれはもうしょうがない」って言われています(笑)。青春先生もミュージカルが成功するためならなんでも協力するってくらい鉄ミュのことを愛してくれていますね。

スピンオフの打ち上げで涙ながらに「成功してよかった」とおっしゃっていたのを聞いて、僕も頑張ってよかったと思いました。

ーー原作サイドの方も含めてすごく愛に溢れた作品なんだなと感じます。

スピンオフのときはキャラクターが僕も把握しきれていなくて。そのときに青春先生とテレビ電話でミーティングをする機会を作っていただき、キャストが一人ずつ「このキャラクターはどうですか」と話をしました。

ビジュアル撮影や稽古場にも何回か来られていたんですが、気軽に原作者に稽古場で聞ける2.5次元舞台の現場は珍しいです。

スピンオフはそこで台詞が変わるということもありましたね。例えば、スピンオフは西武池袋線が武蔵野鉄道だった過去のシーンも描かれているのですが、台本で「貴様」となっている台詞があったのを、この時の武蔵野鉄道は見下してないから「お前」にしてほしいと修正いただいてすごく助かりました。

ーー原作を大事にしている部分と原作を超えようという部分それぞれあるのが面白いです。

初演の時は過去に共演したメンバーが多くて同窓会っぽい雰囲気がありました。ただ、僕はオタクなので、キャスト同士の同窓会にしてほしくない原作ファンの気持ちがものすごくよくわかるんです。

僕たちは過去にすがって勝負をしたくない。この「青春鉄道」という作品の良さでやりたいって。

ーー他のキャストやスタッフさんはそれを聞いてどう思われたのでしょうか。

僕がオタクの代表として言ったんですけど、他のみんなも「そうだよね」って言ってました。座長の永やん(東海道新幹線 役:永山たかし)も「今の自分たちで勝負したいよね」って。

ーーそれを聞いてよかったと思う原作ファンもいると思います。

2.5次元は、各々のキャラクターにすでにファンがついた状態から始まるんです。いかに原作を大事にしつつ、自分なりの表現でその役を演じるか。ファンが敵にも味方にもなる作品が2.5次元だと思います。

僕や共演したメンバーのファンは一緒にやるだけで喜ぶと思うので、あとは原作のために頑張ることにしました。でも、原作が難しくて。初演からずっと戦っていますね。

「稽古場は家みたい」というチーム鉄ミュの絆

ーー前回のスピンオフ公演では西武軍団としてどんな雰囲気で稽古をしていたのでしょうか?

めちゃくちゃ話し合いをしました。というのも、全員同じ金の髪に青い服なので、普通にやるとキャラクターがわからなくなってしまうという前提があったんです。声色や立ち姿、あらゆる物を使って原作を超えて行かないと舞台で映えないという話をしました。今までで一番悩んだ作品かもしれないです。

衣装が似ているのはすごくネックで、軍団感は出るんですけどモブ感も出てしまうので、いかにモブっぽく見せないかというのが課題でした。西武多摩川線はモブっぽい役なのでいいんですけど。個性を出していこうと話し合いをしました。

ーーKIMERUさんから見て一番個性が出たと思うのは誰ですか?

西武狭山線(岩城直弥)ですね。すごく悩んでいて、最初は声も小さくて。でも、途中で開花しました。

ーー初演から今回のRails Live 2019にかけて稽古場の雰囲気に変化はありますか?

より仲良くなってますね。初演の時は何かって言うとちょっとライバル視するような感じが見えたんですよね。初演メンバーは過去に共演してからしばらく共演がなかったメンバーが多かったので。

この十何年でどれくらい成長したのか見てやろう感がありました。今までの集大成を出している向き合い方でした。そんな初演を経てもっと仲良くなって。後から入ってきた後輩の子たちもみんな立ててくれますしね。

Rails Live 2019の稽古場もみんな溶け込んでいて普通に「いる」と言う感じです。前回初舞台だった子役の子たち(西武有楽町線 役:橋本星、土方柚希)も「稽古場、家みたいです」ってめちゃくちゃリラックスしてます。

鉄ミュはスタッフさんも含めてみんな楽しそうにしていて、演出部の方も稽古場のキャストをにこにこ見ながら作業しているので、いい現場だなって。みんな馬鹿なことをやっているので飽きないですよね。

新曲がたくさんある!? ただのコンサートでは終わらないRails Live 2019のみどころ

ーー10月30日から開幕するRails Live 2019の見所を教えてください。

スタンディングになり今まで使えなかったペンライトもあります。ライブということでどんどん声を出していってほしいですね。本当はスピンオフ、過去作品の応援上映と客席参加度を段階を踏んで上げて行きたかったんですが、残念ながら応援上映が中止になってしまったので……。

あと、まさかの新曲が多いんですよ。新曲は1,2曲程度だと思っていたんですが、台本をもらったら思った以上にあったので、新しい気持ちで見られると思います。頑張ってついてきてください。

初演からスピンオフまでの集大成でありつつ、お話もちゃんとある4.5作目のような作品です。今までの曲をやるだけだと思わず、体験型の新作公演のつもりで来てください。

ーー関東公演では東武東上線・信越線役の高崎翔太さんが出演されることが発表されました。西武池袋線と東武東上線のバチバチしたところも見られるのでしょうか?

ありますよ。「おのれ東武」をやりたかったんですけど、スピンオフに翔太が出られなかったので。今回出られることになってそのあたりも描かれています。

東武東上線は今回秩父鉄道(森山栄治)がいなくて、スピンオフでは秩父鉄道がいたのに東武東上線がいなくて……と、すれ違っている感じもいいなと思っています。

ーーでは最後に、ライブを楽しみにされている読者のみなさんにメッセージをお願いします。

心おきなく叫んでもらえるライブです。知らない路線があると思いますが、からだで体験していただきたいなと思っています。電車は乗り物なので、電車に乗るつもりで会場に来ていただけたら嬉しいです。

「ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』コンサート Rails Live 2019」は2019年10月30日(水)~10月31日(木)まで舞浜アンフィシアターで、11月3日(日・祝)~11月4日(月・休)までCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで上演される。観客参加型ライブを存分に楽しんでほしい。

また、ミュージカル「青春-AOHARU-鉄道」公式フォトブックが2019年10月26日(土)に発売。今回インタビューしたKIMERUの舞台写真やコメントも掲載されているので鉄ミュファンは必見だ。

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公演情報

タイトル

ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』コンサート Rails Live 2019

原作

『青春鉄道(あおはるてつどう)』(KADOKAWA / コミックウォーカー、Comic BRIDGE連載中)

原作者

青春(あおはる)

主催

ミュージカル『青春鉄道』製作委員会(マーベラス/ネルケプランニング/KADOKAWA)

脚本・演出・作詞

川尻恵太 (SUGARBOY)

音楽

あらいふとし+ミヤジマジュン

振付

EBATO

公演日程・会場

【東京公演】
2019年10月30日(水)~10月31日(木)
舞浜アンフィシアター

【大阪公演】 2019年11月3日(日)~11月4日(月・祝)
COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

キャスト

東海道新幹線:永山たかし
西武池袋線・銀座線・常磐線:KIMERU
高崎線:郷本直也
東海道本線:鯨井康介
京浜東北線:高橋優太
りんかい線・山形新幹線:山本一慶
宇都宮線:稲垣成弥
北陸新幹線・西武安比奈線・丸ノ内線・横須賀線:渡辺コウジ
西武新宿線:橋本汰斗
秋田新幹線・千代田線:神里優希
IGRいわて銀河鉄道:岩義人
長野新幹線・上越線:板垣李光人
西武秩父線:滝口幸広
西武西武園線:馬場良馬
西武狭山線:岩城直弥
西武有楽町線:橋本星/土方柚希(Wキャスト)
山手線:髙木俊

公式HP

http://www.marv.jp/special/aoharutetsudou/

公式ブログ

http://aoharumusical.jugem.jp/

公式Twitter

@aoharu_musical

主催

マーベラス/ネルケプランニング/KADOKAWA

©青春 ©ミュージカル『青春鉄道』製作委員会 [主催]ミュージカル『青春鉄道』製作委員会(マーベラス/ネルケプランニング/KADOKAWA)

WRITTER

ゆうり藍
 
							ゆうり藍
						

2.5次元舞台をはじめとしたサブカル系コラムライター。舞台遠征でも観光を忘れないくらい旅行も好き。観劇がもっと楽しくなる記事をお届けできればと思います。

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