インタビュー

鈴木拡樹・小澤廉…カメラマン・金山フヒトが見つめた役者の情熱 奇跡の一枚を生み出す「必然」

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素晴らしい舞台を作り上げているのは俳優だけではない。演出や衣装、メイク、デザイナーなど多くの制作者が関わっている。「2.5ジゲン!!」では、普段は見られない舞台裏の仕事にスポットをあてていく。

第2弾の今回は、舞台「幽☆遊☆白書」で宣伝写真を手がけたフォトグラファー・金山フヒト氏にインタビュー。2.5次元の舞台・ミュージカルとの出会いを中心にうかがった前編に続き、キービジュアル撮影の裏側について深掘りした後編をお届けする。

※前編はこちら
舞台幽白・ペダステ…40作品以上のビジュアル撮影を手がけたカメラマン・金山フヒトが語る2.5次元の世界

撮影を通じて現場の熱量を上げるのもフォトグラファーの仕事

――CGで合成せず、実際に現場で原作のワンシーンを“再現”されているとのことですが、具体的にはどのように撮影されているのでしょうか。

煙で霊ガンを再現する以外だと、たとえば舞台「幽☆遊☆白書」の蔵馬のキャラビジュアルでは“ 薔薇棘鞭刃(ローズウィップ)”がカメラに迫ってくるところを撮ったんですが、現場で実際に鈴木拡樹くんに鞭を持ってもらいました。

ただ鞭はいうことをきかないので、スタジオマンにも持ってもらって、ある程度固定してから撮っています。その状態で上に下に回してもらって、鞭の先端の動きをカメラに収めた形です。釣り糸でレンズの前にローズウイップを固定して拡樹君に振ってもらいました。

別の舞台の撮影で、同じ方法を使ったのですが、振るわれた鞭が自分に当たってしまって(笑)。慌てて固定しました。試行錯誤の連続ですね。

――そういったアイディアは、ふだんからストックされているんですか。

ストックではないですが考えるのがとにかく好きです。

思いついたら、メモに残すようにしています。見たひとがどうやって撮っているかわからないような写真を作り出すことで、現場やファンの熱量を上げていくのが、僕なりのフォトグラファーとしての仕事だと思ってるんですよね。

あとは単純に、デザイナーさんの負担を減らしてあげたいっていう思いもあって。よく仕事で一緒になる羽尾万里子さん(舞台「幽☆遊☆白書」など、多くの作品で宣伝美術を手がけるデザイナー)にしてもめちゃくちゃ忙しいひとなので、なるべく撮ってそのまま世に出せる写真にしてあげたいっていうのは、こだわりかもしれないです。余計なお節介ですけど。

――あえて極限までCGを排した現場で撮られた写真からは、生身であること、2.5次元らしさをより感じられるように思います。

舞台『弱虫ペダル』の撮影現場は、とくに肉体勝負です。さっきも言った通り、衣装がサイクルジャージだから、身体にぴたっとくっついている状態で。ほかの作品なら、衣装の裾や袖が揺れることでスピード感を表現できるんですが、『弱虫ペダル』ではそれができない。

スモークを焚くなどの演出もするんですけど、自転車を思い切り傾けたりして役者に無理な体勢をとってもらうことで、スピード感だったり迫力を生み出しています。

たとえば巻島裕介というキャラクターは、自転車をものすごく傾けて走らせるタイプなんですね。撮影のときはスタッフが自転車を傾けた状態で押さえて、役者にはその角度に合わせて思い切り斜めの姿勢をとってもらっています。その状態で風を吹かせたり、自転車を揺らしたり……。

心身ともに追い込む撮影になるんですけど、みんなの納得感も違うと思うんです。仕上がりを見たときに「こんなはずじゃなかった、撮影のときと全然違うじゃん!」とはならずに、役者にもスタッフにも、その場で納得してもらえる撮影を心がけています。

“奇跡の一枚”ではなく“必然の一枚”を撮り続ける

――撮影にあたって、事前に原作をチェックされていくタイプですか。

もちろんです。とくに僕はカメラマンとしてまだまだなので、そういうところから埋めいかなきゃなと思っています。ほんと天才だらけなんですよ、カメラマンって(笑)。

僕は天才ではないから、舞台本番も撮るし、レタッチも自分でやります。ほかのビジュアル担当のカメラマンってあまり本番は撮らないんですよ、機材も変わってくるので。レタッチも基本はデザイナーさんが担当されるんですけど、僕はなんでもやります、ほんとに。

全部やることによって気づくことも多くて、たとえばレタッチしているときに「こういう陰影のつけ方もあるんだな」って発見したり、舞台本番のライティングや演出からビジュアル撮影のヒントを得たりしています。

――幽助の“霊丸”も舞台の演出からひらめいた、と仰っていましたね。

アニメやマンガからインスピレーションを得ることも多いです。この技はストロボで再現できるんじゃないかとか、しょっちゅう考えてます(笑)。

僕ら商業カメラマンは“ 奇跡の一枚” という偶然を狙って撮るわけにもいかないので、やっぱりそのための準備が必要なんですよね。プロとしてのクオリティーで何十人も、しかも何パターンも撮らないといけない。

偶然じゃなくて必然になるように、そして打ち合わせのときにみんなの頭の中に浮かんだ絵より、モニターで見たものがクオリティーが高くなきゃいけないのがプロの仕事だと思っています。

――撮られている役者さんには偶然に思える一枚でも、カメラマンからは必然の一枚なんですね。

大きな声では言えないんですけど、テスト練習撮影はしています。本番とは別日に、スタジオでこっそり(笑)。本当に奇跡を起こせるカメラマンだったらいいんですけどね、そういうひとが天才なんですよ。僕は天才じゃない分、あれこれやってます。

――お話をうかがっていると、金山さんはたとえどんなに努力されていても、ご自身ではそうとは思っていない方ですよね。

なんだろうな、努力はしてきたつもりなんですけど……2.5次元を撮るようになってから仕事が楽しくなったんですよね。羽尾さんをはじめスタッフに対してもそうなんですけど、2.5次元の役者の子たちって、戦友でもあるんですけどライバルでもあるというか。

舞台本番の撮影中、郷本直也さんや拡樹くんに、何度も泣かされてるんですよ。プロとしてはダメなんですけど、写真を撮りながら、利き目じゃないほうの目から涙がこぼれたりして……。

僕も負けていられないな、今度の撮影ではまた新しいことをしてびっくりさせてやるぞって思いながら、日々アイディアを練ってます。

――とくに印象に残っている作品として、舞台『弱虫ペダル』を挙げていただきました。そのほか、ご自身にとって転機になったと感じる作品はありますか。

『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』かもしれないですね。

それまでは肉体派というか、わりとゴリゴリした雰囲気の作品が多かったなか、トップアイドルを目指す男子高校生たちを撮ることになって。オラオラした写真じゃなく、キラキラした子たちをキレイに撮ってあげる、っていう方向に転換しました。

――現場の雰囲気や、役者さんとのやりとりも違ってきそうですね。

撮影にあたって、僕もテンションを上げていきますね。自然と声も高くなって、撮り終わったあとに喉がガラガラだったりして(笑)。

『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』の現場は大人数なうえ、若手の子が多くて、それこそ舞台初経験の子も少なくなかったんです。カメラを前にして緊張から思うようにポーズがとれない子もいて、僕のほうから「こんなふうに動いてみようか」って提案する機会が多かったですね。

とくにグッズの撮影では何パターンもポーズが必要になるので、「実際に歌いながら歩いたり、振り付けのまま動いてごらん。それにあわせて僕がずーっと撮り続けてあげるから、君はゆっくり動いてごらん」なんて具合に声をかけてました。

でもみんな努力家なので、撮影を重ねるごとに、生き生きと動けるようになっていきましたね。

――役者陣が成長していく様を垣間見られるのは、シリーズ作品ならではですね。

僕は役者じゃないし、成長だなんて言うのはおこがましいんですけど……。明星スバル役の小澤廉くんは『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』では本当にキラキラしていて、こんなに輝いてる子がいるんだなと思ってびっくりして。

そのあと『劇団シャイニング』でも一緒に仕事をしたんですけど、役の入り方がすさまじかったです。アイドルとしてのキラキラだけじゃなく、役の入り方がすごくて。

今年の春の公演(劇団シャイニング from うたの☆プリンスさまっ♪『Pirates of the Frontier』)では、躍動感を出すためにロープアクションも取り入れたんですけど、海賊として生き生きとした姿を見せてくれました。

――まだまだうかがっていたのですが、残念ながらお時間となってしまいました。最後に「2.5ジゲン!!」の読者へのメッセージをお願いします。

これからも全身全霊全愛情で2.5次元舞台を盛り上げていきたいと思います。

そして、カメラマンの僕から言うことじゃないんですけど……。舞台役者、2.5次元のキャストの子たちを応援してくれて支えてくれてありがとうございます。ファンの方たちには感謝しかないです。

役者も、僕らスタッフも、みんながこだわりをぶつけあって作品をつくっています。「2.5ジゲン!!」の読者の皆さま2.5次元舞台のファンの皆さま、これからも応援よろしくお願いします。

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WRITTER

藤谷燈子
 
							藤谷燈子
						

ライター。取材のほか、ノベライズやゲームのシナリオなどを手がけています。役者さん、スタッフさん、お客さんでつくりだす、現場の空気感が大好きです。最近の口癖は「ぜひ推させていただきたい!」。

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