インタビュー

舞台幽白・ペダステ…40作品以上のビジュアル撮影を手がけたカメラマン・金山フヒトが語る2.5次元の世界

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素晴らしい舞台を作り上げているのは俳優だけではない。演出や衣装、メイク、デザイナーなど多くの制作者が関わっている。「2.5ジゲン!!」では、普段は見られない舞台裏の仕事にスポットをあてていく。

第1弾は、舞台「幽☆遊☆白書」でキービジュアルなど宣伝美術を手がけたデザイナーの羽尾万里子氏を紹介。第2弾の今回は、同じく舞台「幽☆遊☆白書」で宣伝写真を手がけたフォトグラファー・金山フヒト氏にインタビュー。前編・後編にわけてお届けする。

2.5次元との出会いは「それいけ!アンパンマン」ミュージカル

――金山さんはフォトグラファーとして、2.5次元の舞台やミュージカルにおいて、具体的にどのようなお仕事をされているんでしょうか。

宣伝に使うキービジュアルを撮ったり、パンフレットやブロマイドや缶バッジ、クリアファイルといったグッズ用の写真などを担当しています。2.5次元を撮りはじめてから7年ぐらいです。

近頃は、僕ひとりではすべての現場に行けないことも多いので、(カメラマンの)渡部俊介くんに頼みます。

彼はスタジオの後輩で、『刀剣乱舞』のほか、現在上演中の『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』や舞台『GOZEN-狂乱の剣-』などでもお互いに仕事をシェアしあっています。

――カメラの道には、どのように入られたんですか。

東京・月島にあるスタジオギアの面接に行ったのがきっかけです。常に何か2.5次元作品の撮影をやっているぐらい有名なスタジオなんですけど、僕、最初は機材のデリバリーの運転手の面接に行ったんですよ。

面接を受ける前のちょっとした時間に、目をキラキラさせて働いている若者をスタジオでいっぱい見かけて。あのひとたちは何をやっているんですかと聞いたら、「スタジオマンだよ、写真を撮る手伝いをしてる」と教えてもらって、その場で「僕にもやらせてください!」って言いました(笑)。

当時23歳だったんですけど、急にカメラマンの道が開けたというか、そこからはじまって。ほかのスタジオマンは、ほとんど写真の学校に通っているひとでしたね。専門学校とか、芸術学部の写真学科みたいなひとたちのなかに、何も知らない状態でいきなりポンッと入りました。

――すごい行動力ですね……!

ちょうど次の目標を探していたタイミングだったのですが、ノリで言ってしまった部分が強いです。(笑)。でもすぐに写真の世界にはまってしまいました。毎日スタジオに居残って作品撮りをしていたくらいです。スタジオマンのあとに直のアシスタントになって、1年半くらいで独立しました。

最初は結婚式の式場のカメラマンとか、情報誌の写真を撮りながらお金を貯めて機材をそろえました。その頃はアンパンマンのミュージカルのパンフレットを撮っていました、年に1回くらい。僕にとっての最初の2.5次元の舞台ですね。

――「それいけ!アンパンマン」のミュージカルから、舞台「幽☆遊☆白書」や『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』などの作品には、どうやってつながっていったんでしょうか。

別の作品の撮影時にテニミュ関係の方に気に入って頂き、テニミュ2ndシーズンミュージカル『テニスの王子様』青学vs比嘉のDVDのブックレット用の写真を撮りはじめました。そしたら今度は「『弱虫ペダル』の舞台をやるんだけど、やってみる?」と声をかけてもらったんです。原作が好きだったので「やります」って言って、3作目(舞台『弱虫ペダル』インターハイ篇 The First Result)から撮らせてもらうことになりました。

舞台『弱虫ペダル』の現場で垣間見た“役者魂”

――これまで数々の2.5次元の舞台・ミュージカルに携わってこられましたが、そのなかでもとくに印象に残っている作品を教えてください。

やっぱり、舞台『弱虫ペダル』ですかね。本番の撮影だけじゃなくキービジュアルも担当させてもらったこともあるし、原作が好きなのもあるんですけど、何より鈴木拡樹くんから受けたインパクトがすごくて。“テニミュ”のあとだったかな、拡樹くんが出演していたミュージカル『薄桜鬼』シリーズで、僕は当日のステージ撮影を担当したことがあったんです。

余談なんですけど、舞台『GOZEN-狂乱の剣-』の脚本・演出を手がけた毛利亘宏さんを筆頭に、ミュージカル『薄桜鬼』シリーズとスタッフがほとんど同じなんです。主人公・望月八弥斗を演じる矢崎広くんも、土方歳三役として出ていたりして。

そのミュージカル『薄桜鬼』シリーズで、拡樹くんは南雲薫という役を演じていました。女装もしながら、狂った演技と、すごくいいひとを演じ分けてて……。

「ああ、すごい役者がいるなあ」と思いながら撮影した数日後に、舞台『弱虫ペダル』の撮影が入ったんですね。この前の役者さんだと思いながら挨拶したら、すごくぽわっとしてて(笑)。なんだかまるでおじいちゃんみたいだなと思っていたら、撮影がはじまった瞬間に、急にヤンキーに変わったんですよ。荒北靖友という役なんですけど、それを見たときにすごいなあと。

(役への)入り方にびっくりしましたし、こういう世界があるんだって圧倒されました。

――金山さんが2.5次元の世界にハマった瞬間だったんですね。

御堂筋翔役の村田充くんも、すごくオーラが出ていましたね。最初は、なんだか変わった場所で撮らされるんだなって思ったんですよ(笑)。ちょっと汚れた水場で歯を磨くシーンだったんですけど、撮影がはじまった瞬間から、御堂筋の怖い雰囲気がどっと出てきて。

また演出の(西田)シャトナーさんが、役者の才能を引き出す天才なんですよ!本当に怖いくらいです。羨ましい才能です。

舞台『弱虫ペダル』の撮影を通じて、あっという間に2.5次元の世界に僕もハマったというか、それからはいろんな作品を撮らせてもらっています。

――カメラマンも役者を乗せながら撮影するイメージがあるんですが、金山さんはいかがですか。

僕もそのタイプだと思うんですけど、舞台『弱虫ペダル』のメンバーには全然必要なかったですね。カメラの前に立つときには、すでに役が憑依しているので。

拡樹くんの場合は、撮影中、何かつぶやいているんですよ。舞台『弱虫ペダル』箱根学園篇~野獣覚醒~のときは、前作(舞台『弱虫ペダル』インターハイ篇 The Second Order)のセリフをつぶやいてました。「福ちゃん、福ちゃん……」って、すごい入り込んでるなあと。

初代・小野田坂道役の村井良大くんからも「フヒトさん、フヒトさん。何巻の何ページのシーンをやってみたいんですけど、いいですか」って、そんな注文が飛んでくるんですよ。制作(スタッフ)が焦って、「えっ、どれどれ?」って確認するという(笑)。

――役者陣がそこまで作ってきていると、スタッフもますます熱が入りますよね。

本当は、おとなが引っ張っていかないといけないんですけど(笑)。僕は舞台『弱虫ペダル』がはじめてのビジュアル撮影だったんですけど、これは負けていられないと思って、いろいろアイディアを出すようになりました。

2.5次元の場合、衣装をたなびかせて動きを出すというか、雰囲気を作っていくところがあるんですね。でも舞台『弱虫ペダル』の衣装は基本的にサイクルジャージだから、ぴたっとしてるんですよ。だから自転車を思い切り傾けたりして、役者に無理な体勢をお願いして撮影しました。

でも舞台『弱虫ペダル』のメンバーは、自ら率先してやってくれるんです。みんなが同じ方向を見て、ゴールに向かってがんばっている。撮る側としても、本当に尊敬する役者さんたちです。

フォトグラファー冥利に尽きる瞬間とは……

――最近では、舞台「幽☆遊☆白書」の宣伝写真も担当されました。キービジュアルなど宣伝美術を手がけたデザイナーの羽尾さんからは、「幽助の“霊丸”はストロボの光をあてるライティングを作った」というお話をうかがいました。

舞台の演出からひらめいたんです、スチール(写真)だったら距離感わからなくなるんじゃないかなと思って。昔からある手法なんですけどね。桑原の“霊剣”も基本は同じ撮り方で、郷本直也さんに透明な黄色の筒を持ってもらってます。剣からパチパチと放たれてる光は、羽尾さんが加工してくれてます。

――郷本さんの桑原は「似ている」というより、もはや「そのまま」でしたね。

すごいですよね、思わず現場で笑いました。郷本さんがメイクルームから降りてきた瞬間、そこに桑原がいたので。

――撮影の際、郷本さんとはどんなやりとりを。

いやあもう、郷本さんに関しては何も言うことないですよ! 本当にすごすぎる役者なんで。単純に“霊剣”を横に切ってください、縦に切ってくださいと伝えたぐらいですね。

――蔵馬役の鈴木さんは、今回も何かつぶやかれて……。

そういえば、なんか言ってました。なんて言ってたんだろう、ちゃんと聞いておけばよかったです(笑)。拡樹くんは、ものすごく考えながら撮られる役者さんで。どの現場でも、いっぱい考えてポーズをとってくれます。

――舞台化にあたって現場のプレッシャーも大きかったと聞いていますが、いかがでしたか。

郷本さん、拡樹くんを前にして、むしろ僕は安心させてもらったというか。撮影のアイディアを出すのも、すごく楽しかったです。

言ってしまえば、“霊丸”も“霊剣”も、CGで再現することもできるじゃないですか。でも、その場でストロボを当てたり、蔵馬の“薔薇棘鞭刃(ローズウィップ)”みたいに実際に鞭を振ってもらったほうが、役者もよろこぶなあと思っていて。

同じ写真でも、現場の雰囲気によって、見たときの印象が変わっちゃうんですよ。なので現場の空気感であったり、役者のテンションをすごく大切にしてます。

――舞台「幽☆遊☆白書」の撮影現場は、どんな雰囲気だったんですか。

(撮った写真が確認できる)パソコンやモニターを、みんながスマホで写真を撮ってました。あとで、ちゃんとした画像がもらえるのに(笑)

みんなが思わず自分のスマホで撮りはじめるぐらい盛り上がったので、僕としては合格点が取れたのかなとは思ったんですけど。

――フォトグラファーとしては、うれしい瞬間ですよね。

あと僕、会場の物販を結構見に行くんですよ。おじさんがひとり、こっそりと(笑)。

やっぱりお客さんがよろこんでる表情を見るのは、うれしいですよね。あの光景は本当に特別です。

「同じ写真でも、現場の雰囲気によって、見たときの印象が変わってしまう」と語る金山氏。インタビュー後編では、舞台『弱虫ペダル』や舞台「幽☆遊☆白書」のキービジュアル撮影の裏側について深掘り! さらに自身にとって「転機になった」という、『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』の撮影時のエピソードもうかがった。

※後編はこちら
鈴木拡樹・小澤廉…カメラマン・金山フヒトが見つめた役者の情熱 奇跡の一枚を生み出す「必然」

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WRITTER

藤谷燈子
 
							藤谷燈子
						

ライター。取材のほか、ノベライズやゲームのシナリオなどを手がけています。役者さん、スタッフさん、お客さんでつくりだす、現場の空気感が大好きです。最近の口癖は「ぜひ推させていただきたい!」。

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