インタビュー

「語りかけるような音を出したい」財木琢磨・古田一紀:舞台「この音とまれ!」インタビュー

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ジャンプSQ.(スクエア)にて連載中の人気コミックス「この音とまれ!」が2019年夏、舞台化される。

「この音とまれ!」は、箏にかける高校生の物語だ。廃部寸前の箏曲(そうきょく)部を守るために部員を集めようと必死になる部長の2年生・倉田武蔵(くらた たけぞう:古田一紀)と、誤解をされやすいが心優しく一生懸命な久遠愛(くどお ちか:財木琢磨)、箏の家元の出身であり天才少女と呼ばれている鳳月さとわ(ほうづき さとわ:田中日奈子)を中心に話は進む。

舞台では、演者たちによる箏の生演奏が披露される。稽古真っ最中の2人に、この舞台にかける思いから役者としてのあり方まで、さまざまな話を聞いた。

「初めて」から知っていく驚きと楽しみ、そして苦労。

――2月からお箏の稽古に入られていると伺っています。苦労・工夫されている点や、逆に楽しいこと、新しく発見したことなどがあればお聞かせください。

財木:何もかもが苦労の連続です。テンポやリズムを刻むこともですし、楽譜も読めなかったので暗譜するのも大変でした。

先生たちが弾いている公式の動画を見ても、最初の印象は、いろんな音があってどこの音が僕が演じる愛の1コトなのかまったく分からなすぎて(笑)。

でも聞いているうちにだんだんメロディも分かるようになってきて、かっこいいなぁと思ったり、ソロのここは聴かせてるなぁと思ったり。

本当に難しいんですけど、今までできなかったことが少しずつできていく楽しさがあります。まだ僕は全員と合奏できていないので、早く全員と合わせたいです。

古田:今回演奏する『龍星群』という曲の難しい点は、一人でもできないと演奏にならない、というところです。

全員がそれぞれ違うパートを弾いてひとつの曲になる、だから自分だけができてもダメだし、周りだけができてもダメなんです。みんながちゃんと頑張らないといけない。本当に練習がたくさん必要です。

自分は箏をやったことがあるんですけれど、その時は現代曲ではなくて、みんながイメージするような古典的な曲をやっていました。

それで今回、実際に現代曲に触れてみて「あ、お箏ってこういうメロディが作りだせるんだ」って思いました。ポップなメロディもあるし、そういう聞かせ方もあるんだなって。

財木:僕は箏に触れたのは初めてです。音そのものも、聞いたことはあるかもしれないけれど意識的に聞いたことは無かったです。だから本当に「初めて」っていう印象ですね。

弾いてみて分かったのは、絃を押さえても音が変わるし、爪じゃなくて指で弾いても音色が変わるし、すごく奥深い楽器だなぁって。絃も思っていたよりもずっと硬かったです。もっとやわらかいと思ってました(笑)。

原作の漫画みたいに、指先の皮がむけて血がたくさん出るというところまではまだいってないんですが、マメができては治って、という感じです。あとは、演奏用の「爪」をつけているので指先がうっ血して痛くなります。

古田:体に力が入っていると、どこかしら痛くなります。

一度、力が入っていて手首が痛くなった時がありました。クセになったらいけないと思って、早めに練習をやめて2日くらい休ませたら治ったんですけど。

身体の使い方がすごく大事。重心の移動ですね。何かできないなと思ったら姿勢を正すとできるときもあります。

ひたむきにがむしゃらに、しかし自己管理はしっかりと。無茶はせずに最大限の努力をする2人から、高いプロ意識が伝わってくる。

役者にとっての「稽古」ーストイックな努力

――自主練習などもされていると思うのですが、ご自宅でやるにしても、まさかお箏を持ち帰るというわけにもいかないですよね。練習はどのようにされていますか?

古田:あ、家に送られてきました(笑)。

――家に!

財木:もちろん、音をなるべく出さないようにする器具はあるので、それを使って練習しています。そのままの音で練習していたら、家で龍星群弾いていたら「この舞台に出る人だ」ってバレちゃいますね(笑)。

古田:自宅で自主トレをやらないと完全に間に合わないです。

楽器って、稽古場では「発表する」っていう考え方じゃないとうまくならないんです。自分で、自宅などでやってきたことを見てもらうのが「レッスン」。稽古のその場でうまくなろうとしちゃダメです。

だから楽器の場合は特に自主練習が必須です。塩田さん(塩田康平/足立実康 役)も言ってたけど「稽古場で稽古しようとするな」って。もっともです。

「自分でこうやってきたんですけど、どうですか」って。そうしないと永久にうまくならない。

財木:学生時代の部活を思い出しますね、僕はバスケ部だったんですけど、ボールに慣れるために暇さえあればボールを触ってました。

こうやって制服を着たりすると、あの頃を思い出します。役者をやってると、こうやってまた青春を味わえて嬉しいですね。

キャラクター、ストーリー。それぞれのお気に入りのシーンは?

――チカと武蔵、それぞれにどんなイメージを持たれていますか?好きな部分などがあれば教えてください。

財木:僕は、愛が笑った顔が好きです。

愛は最初の頃は荒れていたけれど、それから箏と出会って仲間と出会って、どんどん変わっていきますよね。仲間を大切にしているところも箏にひたむきなところも好きだし、ちょっとバカなところも可愛いなって思います(笑)。

古田:武蔵はけっこう怒るんですけど、そういうところが好きです。

自分の中に飲み込んでしまわずに怒るところが好き。それから武蔵は「自分は真面目じゃない」と思っている。やって当たり前のことを「頑張っているね」って評価される。

武蔵が、おとなしそうなのに言いたいことははっきり言うのに対して、愛は意外と内面にためこみますよね。

――そうですね、外見とのイメージにギャップを感じます。そこが魅力的ですね。

▲原作コミックス(ライター私物)を手に取り「ここがいいよね」と話す2人

ーー原作で好きなシーンを教えてください。

古田:僕全巻読んでるんですけど、武蔵で一番好きなのは「だって僕たち絶対一番練習したよ」(13巻)のシーン、超泣けた。

他の学校も練習してるけど「僕たちが一番練習した」って笑顔で言い切れる、そのくらいまで練習したんだなって。

財木:これ、ここの描写なんか僕経験してますから!(笑)(2巻「やっぱダメかもしれない…」とチカがサラサラ…と砂になっているシーン)

今はまず「箏が弾けるように」って我流で弾いているんですけど、これからはチカとして弾いていかないといけないんです。語りかけるように弾いたり…座り方や姿勢、音色の優しさや強さで役を表現しないと。

チカは「弾くときの手の形が綺麗」ってさとわ(鳳月さとわ/演:田中日奈子)に言われているので、そこに寄せていく必要もあります。客席から見て綺麗な手、っていう。こうかな、とか考えてはいるんですけど……

――綺麗ですね、なかなか手をゆっくり拝める機会もありませんので、たくさん撮らせてください……!

――ありがとうございます……(拝)。

古田:あ、僕も手綺麗ですよ。

――あーっ綺麗ですね!ありがとうございます(拝)。

――心が潤いました。

心を繋ぐ『龍星群』ー舞台上での役者の想いとは

ーー今回のメインの曲『龍星群』は、弾く人と聴く人の心を繋いでほしいという思いが込められた曲、とされています。舞台で役を演じられている中で、客席と想いが伝わったな、ということを感じる瞬間があれば教えてください。

財木:もう、お客様たちが会場に入られた瞬間から熱気や思いは伝わってきます。舞台はやっぱり、そういうところがいいですよね

僕らが作ったものをお客様が感じ取ってくれて、その空気を僕らが感じる。一体感をすごく感じますし、舞台が終わった時の拍手、合間の拍手、本当に嬉しいです。

古田:僕は逆に、できるだけ意識しないようにしています。舞台の上で起きていることは舞台の上として、役者としてその物語をお客様にお見せする。

でも、他作品でダンスなどのノリの良さが求められるシーンでは、お客様の盛り上がりが伝わってきてそれがパワーになります。嬉しいですね。

財木:今度の舞台は生演奏なので、何が起こるか分からない楽しみと同じくらい心配もあります。爪が飛んで行ったり、琴柱(箏の絃を支える部分)が倒れたり…

古田:本当に何か起こるか分からないよね。

クライマックスのシーンでは、観客は体育館にいる生徒の気分で舞台上の演奏を見て聴くことになる。生演奏ならではの、その一度きりの音を楽しみたい。

久しぶりの共演!心許せる仲間たちとの思い出を語る

――お2人の共演は久しぶりですよね。
※2015年2月~2017年5月 ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンにて共演

財木:共演は久しぶりです。でも、テニミュ卒業してから会ってないこともないですよ。

古田:遊びに行くことも多いよね。この前もけっこういっぱいで集まったし。

財木:うん、(青学)全員ではないけど。

古田:やっぱり、気を許せる度合いがすごいなって感じます。特別。

――お二人のテニミュはだいぶ見に行きました。

古田:まじですか!

この後、当時のテニミュの思い出話をしながらの撮影になった。「俺あの時めっちゃ誰かに雪投げた!」「あー全部思い出した!」

▲撮影時に古田に思いきり笑わされる財木

「いい作品に出会えた」と思ってもらえるように。時間をかけて作り上げていきます!

――最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

財木:原作が好きな方や、この舞台そのものに興味を持って見に来てくださる方、逆に箏が好きで来てくださる方もいらっしゃると思います。いろいろなものをひっくるめて、舞台と箏を好きになっていただける、そういう作品にできたらいいなと思います。

「いい作品に出会えたな」って、そう思ってもらえたら嬉しいです。

古田:ひとつの舞台にこれだけ長い時間をかけて準備することってなかなかありません。稽古を含めて半年近くですね。

皆様が今までに見たことのないものをお見せできたらと思っています、楽しみにしていてください。

舞台「この音とまれ!」は、2019年8月19日(土)~9月15日(日)まで、東京・全労済ホール/スペースゼロ、福岡ももちパレス、森ノ宮ピロティホールにて上演される。

不器用ながらまっすぐで純粋な、箏にかける高校生たちの熱い思いと情熱のこもった音を、ぜひその胸と耳に響かせてほしい。

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WRITER

広瀬有希
							広瀬有希
						

金融・印刷業界を経てフリーライターへ。エンタメメディアにて現場取材・執筆の他、日本語・日本文化教育ソフト監修、ゲームシナリオ、ノベライズなどで活動中。感動が伝わる文章を目指して精進の日々を送っています。

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