ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』が、2024年2月6日(火)に東京・帝国劇場で開幕する。本作は、荒木飛呂彦原作「ジョジョの奇妙な冒険」(集英社ジャンプ コミックス刊)の世界発の舞台化作品だ。
2.5ジゲン!!では、本作の主人公であるジョナサン・ジョースターをWキャストで演じる松下優也と有澤樟太郎にインタビューを実施し、帝国劇場ミュージカルで初主演を担う気持ちや、本作の魅力などについて語ってもらった。また、同日おこなわれた製作発表記者会見の様子もあわせてレポートする。
座長の悩みは…差し入れと楽屋!?
――おふたりは今作が初共演ですね。会う前のイメージと、実際に会ってからの印象はいかがですか?
松下:お会いするのは今日が2回目なのですが、お会いする前もお会いしてからも「でかい人」。それから、爽やか! 自分が28歳のころはこんなに爽やかだったかな…? と思っています(笑)。でかくて爽やかって、まさにジョナサンですよね。
地元が一緒(兵庫県)なので親近感を持っていましたし、お会いして一気に距離が縮まったと感じています。
有澤:以前から一方的にお名前は存じ上げていたので「いつご一緒できるかな」と楽しみにしていたんですよ。お会いしてすぐにSNSをフォローしちゃいました(笑)。カリスマ性があって華があって、舞台の真ん中が似合う方です。同郷でもあるので、仲良くさせていただけたらと思っています。
――今回Wキャストでジョナサンを演じられます。Wキャストの面白さについてどのように感じていますか?
松下:他の作品で初めてWキャストを経験したとき、稽古の前に「お相手とはライバル的な関係になってしまうのかな…」と思っていたんです。でもそうではなくて、“心強い存在”でした。Wキャストの相手が稽古しているのを見ると、自分が見逃していたことに気づけるときがあります。1つの役を2人で一緒に深めていけるのは、役作りの面でも気持ちの面でも、とても心強いです。
同じセリフであっても、役者が変われば違うものになります。対峙する相手によっても生まれるものが変わるので、お客さまには、その違いやケミストリーを楽しんでもらいたいです。
有澤:1人でやっていると、自分のことだけに集中してしまい周りが見えなくなってしまうこともあるのですが、Wキャストの場合は客観的に見られます。それから今作で言えば、松下さんは同郷なので分かち合えるものが多そうで、パーソナル的にも頼もしさを感じています。いろいろな面で頼りにしたいと思っています。
松下:兵庫公演もあるしね!
有澤:そう! 偶然にも本作は千穐楽が兵庫公演なんです(2024年4月9日(火)~14日(日)兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール)。
――おふたりとも本作が帝国劇場での初座長となりますが、“帝国劇場での主演”へのイメージや、今のお気持ちはいかがですか?
松下:「ついにきたか!」とワクワクしています。「ジョナサンとしてあのステージの上に立ったらどんな景色が見えるのだろう…」と楽しみで。一方、“帝国劇場の主演・座長”ということは考え過ぎないようにしています。帝国劇場は歴史のある素晴らしい劇場ですが、どんな劇場であっても自分がやることは変わらないので、気張りすぎずにいつもどおり舞台に立てるように、と。
作品を引っ張っていくのはもちろん、大勢のスタッフさんとともに切磋琢磨しながら、楽しんで取り組める余裕を持ちたいですね。
有澤:歴史ある劇場の舞台に、主演として立てるのを大変光栄に感じています。親にも観に来てほしいですね(笑)。
先日、舞台『キングダム』(壁役)で帝国劇場の舞台に立たせていただいたとき、「特別な劇場だ」と感じました。カーテンコールで、挨拶をしている座長たちには自分とは違う世界が見えているのかな…? と思ったので、その景色を自分も見られるのが楽しみです。
松下:それから、“座長”であるからには「差し入れを頻繁(ひんぱん)にした方がいいのか?」と悩み中です(笑)。どういうお弁当にしようかな…。
有澤:僕は楽屋が気になっていて。
松下:そんな変わらんやろ(笑)。
有澤:主演の楽屋は主演しか見られないじゃないですか、神聖な場所だと思っているので気軽に入っていけないし…。だから以前から気になっていたんですよ。でも今回の僕の楽屋は居座りもウェルカムなので、共演者の皆さんにはどんどん来てほしいです(笑)。
“ジョジョ愛”のあふれる世界を
――演じるジョナサン・ジョースターに対してのイメージや、どのように役作りをしていきたいかお聞かせください。
松下:正義感にあふれていてピュアで真面目で…見れば見るほど「かっこいいしかわいい」と大好きになっています。舞台化にあたってはさまざまな部分で「どう表現していくのだろう?」と謎に思っている部分が多いので、みなさんにもぜひ楽しみにしていただけたら。
演出が長谷川寧さんなので、アクションシーンでも波紋(特殊な呼吸法により生み出される秘術)の表現方法など、想像を超えてくるものが出てくると期待しています。
有澤:ジョナサンは、突き抜けた正義感を持った真っすぐな人です。この先のシリーズでは“スタンド”(形になった超能力)なども出てきますが、より人間らしさを際立たせているのが1部の「ファントムブラッド」だと思っていて。帝国劇場の世界観にも合っていると感じますし、周りの方々に助けていただきながらどう演じていこうか楽しみにしているところです。これから、体作りも含めてビジュアルを寄せていけたらと思っています。
準備稿(脚本・歌詞/元吉庸泰)を拝見して、原作のファンの方も、初めて「ジョジョ」に触れる方も、絶対に楽しめる作品だと感じました。「あのセリフが歌になるんだ!」と思ったり。
寧さんは「死刑執行中脱獄進行中」(2015年)でも荒木飛呂彦先生の作品を構成・演出・振付されているので、本作においても信頼しています。クリエイターの皆さんも“ジョジョ愛”の強い方ばかりなので、その愛の中でしっかりとやっていきたいです。
――ただ今お話に出た、本作の準備稿(脚本)をご覧になっていかがでしたか? 今楽しみにしていることも教えてください。
松下:脚本を読む前は「これを舞台に…どう表現するんだろう」と思っていたのですが、驚くほどにしっかりとまとまっていました。それと同時に「大変そうだな!」とも。脚本を読んだ限りでは「このシーンどうなるの?」「いくら帝国劇場とはいえ、いけるの?」と思った箇所もありました(笑)。
有澤:でも、寧さんはみなさんが納得いく世界を作ってくださるんだろう、と期待しています。「これでまだ1幕?」と思うほどに表現されていて、本当に余すところなく脚本になっているので楽しみにしていてほしいです。
それから、共演者の方々もクリエイターさんたちも多種多様な方ばかりなので「異種格闘技戦みたいだな」と感じていて(笑)。まだ全貌が見えてきていないので「どうなるんだろう」とワクワクしています。
――共演者の方につきまして、ジョナサンと敵対するディオ役の宮野真守さんへのイメージをお聞かせください。
松下:10年以上前ですが、イベントで1度お会いしているんです。楽曲を担当させていただいたアニメ作品に宮野さんが声優として出演されていて。とても面白い方で、僕にとっては“ツボ”ですね。舞台上で笑ってしまわないようにしないと(笑)。宮野さんがどんなディオを演じてどう対峙するのか、今からとても楽しみです。
有澤:僕も、出演していたドラマのイベントに、宮野さんがゲストで出演してくださったことがあって。多くのアドリブも心から楽しんで演じられていて、「こんなに楽しみながらできる人がいるんだ」と感じました。自由だけれども枠から外れることはしない。引き出しも多いし、何よりやっぱりおもしろい方です(笑)。
それから、僕たちはふたりでジョナサンを演じますがディオはお1人なので、タフですよね。
松下:うん、すごい体力があってタフそう。
――演出・振付の長谷川寧さんについてはいかがですか?
有澤:今作にあたり、寧さんのワークショップに何度か参加させていただきました。「そんなことまでやるのか!」と思うほどに、身体的なことはもちろん脳も使って…。ゾンビになってくださいとか、水が入っていると想定した箱に入って中の枠を触る、とか。
松下:有澤くんとは別の日ですが、僕もワークショップに参加しました。アートを感じさせる方だし「うちとけにくい方なのかな?」と思っていたのですが、とても気さくな方でした。僕たちが表現したいことをお話ししても受け入れてくださったりして、とても器が大きいんです。
それから、ダンスへのアプローチの仕方が興味深いです。僕は長くダンスをやってきていますが「こんな体の動かし方、したことがない!」というものばかりで(笑)。
有澤:2時間ほどのワークショップで足がパンパンになりました(笑)。
――最後に、「ジョジョ」の作品そのものの面白さと、本作を通じて伝えたいことをお聞かせください。
松下:「ファントムブラッド」に関して言えば、“表裏一体”感がとても魅力的です。例えば、ジョナサンがいてディオがいる、ジョナサンがいなければディオもいない。ディオはただの“敵”ではなく、特にラストシーンのセリフは、生身の人間が演じるうえで大切にしたいものです。
有澤:心を強くつかむセリフや印象的なシーンが多い作品です。ファンタジーではあるけれども、人として納得できる話や、現代にも通じるテーマがしっかりとあります。
僕が原作に触れたのは20代のはじめごろですが「すごくおもしろい!」と夢中で読みました。その長い物語の始まりのストーリーですから、「ジョジョ」の作品としての魅力を舞台で届けられたらと思っています。
ビジュアル的には、先日共演したなだぎ武さんに体をしげしげと眺められながら「(ジョナサンとしての体作りは)これからやんなぁ」と言われたので、しっかりと作り上げていきたいです(笑)。
松下:お互い、3年くらいかけて体作りしなきゃね!(笑) 原作はもちろんアニメも見させていただいていますが、人間が演じるからこそ、コマとコマの間にあるものや、描かれていない部分をシームレスにつないでいけると思っています。また、ただ“寄せる”のではなく、“寄っていける”ようにちゃんと作っていきたいです。
千穐楽に全員でぶっ倒れるくらいのつもりでやっていきます!
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またこの日は、同作品の製作発表記者会見もおこなわれた。
登壇者は、松下優也(ジョナサン・ジョースター役/Wキャスト)、有澤樟太郎(ジョナサン・ジョースター役/Wキャスト)、宮野真守(ディオ・ブランドー役)、清水美依紗(エリナ・ペンドルトン役)、YOUNG DAIS(スピードワゴン役)、東山義久(ウィル・A・ツェペリ役/Wキャスト)、廣瀬友祐(ウィル・A・ツェペリ役/Wキャスト)、別所哲也(ジョースター卿役)、長谷川寧(脚本・振付)の9人。
会見は、この日初公開となるPVの上映からスタートした。
まずは長谷川から「この作品に携われて光栄です」と挨拶。檀上で一堂に会した役者陣を見て「おもしろそうだなと、さっき思って(笑)」とテンションの高い様子で、重ねて記者たちに「おもしろそうでしょ?」と問いかけて場内の笑いを誘った。
作品に対しては「新しいミュージカルを作っていこうと思っています」と意気込み、「フィジカルを使ったタフな作品になると思いますが、ここにいる方々ならできると信じています」と信頼を寄せる。
また、これまでさまざまなフィジカルに特化した作品を手掛けてきたことに触れ「いろいろな取り組みをしてきたうえでミュージカルをやるにあたって、総合芸術として届けられたら」と“新しいパフォーマンス”への思いを語った。
松下は「ディオではなくてジョナサン? と驚きました」と場内を笑わせると「帝国劇場のステージにはどんな景色が広がっているのか…それを楽しみにしています」と瞳を輝かせた。また、好きなシーンとしてジョナサンが木に触れて花を咲かせるシーンなどを挙げ、話が止まらなくなる場面も。
さらに、楽曲について「かっこいいです、これを寧さんがどう演出するのか…。ミュージカルなのですがライブ感があって、今から楽しみです!」とアピールした。
同じくジョナサンを演じる有澤は「この役を演じたい人が何人いただろうと考えると、身が引き締まる思いです」と緊張感を口にし、続けて「大きなスケールでお送りするので、自分もそのスケール感を楽しみながら最後まで熱いハートで演じ切りたいと思います」と意気込んだ。
さらに、別舞台で共演した、“ジョジョ”作品の大ファンであるなだぎ武からジョナサン・ジョースターのフィギュアをもらいうけたことを明かし「ジョナサンを頼む、というメッセージを感じました」と思いを新たにした。
ディオ・ブランドー役の宮野は、初めて顔を合わせた共演者たちに「みんな“ジョジョ顔”してるなと思いました」とジョークを飛ばし、「この濃いメンツで最後まで作っていきたいです」と笑顔でコメントにした。
また「僕、巷(ちまた)ではちょっとした有名な声優なんですけど…ちょっと人気もあって」と場内の笑いをさらうと、アニメの“ジョジョ”のオーディションに参加したものの縁が無かったことを明かし「自分の“初ジョジョ”が、まさか」と驚きを隠せない様子を見せる。
さらに、好きなセリフとして「さすがディオ! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれるゥ!」を記者たちにコールアンドレスポンスするように振る場面も。
エリナ・ペンドルトンを演じる清水は、子どものころにアニメの放送を見ていたという。さらに「気高く心美しく、気丈な女性を私が演じられるのかな…と不安な気持ちもありましたが、皆さんの足を引っ張らないように頑張りたいです」と真摯に語る。
スピードワゴン役のYOUNG DAISは「人生初めてのミュージカル出演です。よろしくお願いいたします」と、メディアと檀上全体にも挨拶。「初めてのことがたくさんありますが、スピードワゴンと自分の何かがフィットしたら」と期待を見せ、周りからは背中を押すような温かいコメントがたくさん寄せられたと感謝を述べた。
ツェペリ役のWキャスト、東山はもともと原作ファンであったことを明かし「舞台化・ミュージカル化されるのであればぜひ携わりたいと思っていた」と笑顔を見せる。また、ミュージカル化にあたって「何部をやるんだろう? と思っていたところ、僕の大好きな第1部で」と喜びを口にした。
同じくツェペリを演じる廣瀬は、未読であったものの今作をきっかけに原作に触れ、「この役は東山さんと僕にしかできない、と思いました」。また自身の帝国劇場での思い出を振り返り、建て替え前にまた帝国劇場の舞台に立てることへの感謝を述べた。
ジョースター卿役の別所は「お話をいただいたとき『“ジョジョ”ですか?』とお聞きしたところ、父でした」とおどけてみせ、「運命とは? 生きるとは? 皆さんと一緒に冒険できればと思っております」と期待を寄せた。
さらに「何を隠そう、僕はミュージカルをいろいろとやってきていて」と宮野のボケを受けて場内を笑わせると、「日本から生まれた作品を立体化してミュージカルにして届けられるのがうれしいです」と語った。
取材・文・撮影:広瀬有希
松下優也 ヘアメイク:ASUKA(a-pro.)/スタイリスト:YAMAMOTO TAKASHI(style³)
有澤樟太郎 ヘアメイク:田中紫央/スタイリスト:山田安莉沙
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