コラム

ついに舞台は「体感する」次元へ?進化する舞台効果とシステム

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2.5次元舞台は、2次元の漫画やアニメなどを三次元の世界で表現したものだ。

原作の世界を忠実に再現するために、時には現実ではありえない舞台効果などが必要となることもあり、そしてそれは、舞台ごとの個性となり、年々進化を続けている。

ここでは、2.5次元舞台の特殊効果や舞台の工夫、進化などについて紹介していく。

ピンスポットとラケットの音から始まったーテニスの試合を舞台で表現


「テニスの王子様」がミュージカル化されると聞いた時、どのように?とファンの間では話題になった。球を打ちあう球技を、そして時には常識外れのものとなる軌道をどうするのかと想像もできなかったのだ。

しかしそれは、ピンスポットの光と、キャストがラケットを振りぬくタイミングと効果音で見事に再現された。「あっ…球が見える!」まさに漫画やアニメの世界。キャストたちが歌いながら踊りながら、テニスボールが縦横無尽に舞台を跳ねまわっていた。

CGも特殊効果も使わずに、しかし舞台上では確かに二次元の世界が再現されている。その不思議さを味わった瞬間だった。

何も無いのに自転車が見える!?役者たちの体による限界ギリギリパワーマイム

2012年の、「弱虫ペダル」は衝撃的な舞台となった。

「舞台で自転車?」「さすがに自転車は」「え?ハンドル?」いやいやハンドルを持ってペダルを踏んでいるように走るってそれは無理でしょう、という予想は、見事に良い方向に裏切られた。

上半身を傾斜し前のめりになった姿勢で、両手は固定されていないハンドルを空中で握る。

あとはひたすら、ペダルをこぐようにダッシュ、ランニング。ただ1時間、2時間走るよりもよほどキツい体勢だ。息は切れ、汗が飛び、必死の形相となる。ぶつかりあいながら坂道を上り、叫び、喜びに涙する姿は、観客の強い感動を呼んだ。

演出方法も斬新だった。ただ走るだけではなく、フォーメーションを組みながら隊列移動のように横へ、斜めへ移動する。まるでカメラが移動するかのような視点で、レースを見守っている気分だった。

ごくごくシンプルな舞台セットと、あとはキャストたちの演技のみ。小道具を使わずに、セリフと役者の動きだけで表現をする、演出家・西田シャトナーならではのパワーマイム、「パズルライドシステム」と呼ばれる演出方法だ。

舞台のセットは「パズルライダー」と呼ばれる、キャスト兼黒子の役者が場面に応じて素早く動かしている。

このパズルライダーは、メインキャストたちのアクロバティックな動きをサポートしながら、自らも舞台の役者となって演技もしなければならないという重要な役目を担っている。

これらの、若い役者たちの身体と体力を大いに活用した舞台演出は、以降の2.5次元舞台に大きな影響を与えることになった。

二次元と三次元が融合?プロジェクションマッピングを使った特殊効果

舞台に置ける映像技術の進化には、目を見張るものがある。中でも、プロジェクションマッピングと2.5次元舞台の相性は抜群だ。

舞台上の壁面、床、それからキャスト自身の衣装にも、水のうねりや飛び散る羽根、時には原作コミックスのワンシーンなどの映像が投影され、演技と融合するように2次元の世界が再現される。

特殊効果による映像演出は、原作の世界を、3次元寄りではなく、2次元に近い2.5次元にとどめて表現するのに最適な方法だと考えられる。舞台セットとして使用する大がかりなものから、効果としてとどめるものまで、映像技術の進化は止まらない。

ライブスペクタル『NARUTO』

アクションとプロジェクションマッピングなどで忍術を表現。キャラビジュアルも「原作そのまま」と評価が高い。

舞台『ハイキュー!!』

バレー経験者の役者を多数採用することでリアルなフォームを再現。そのチームに合ったダンスで派手さと賑やかさを表現したり、コミックスのワンシーンをそのままプロジェクションンマッピングで投影したりもする。運動量の高い原作そのままの舞台に、ファンは多い。

原作のプレイを体感できる?!最新鋭システムを導入する舞台も

2018年夏に上演された、超体感ステージ『キャプテン翼』は、これまでのどの2.5次元舞台にもなかった技術を取り入れたものだった。

SONY独自の「体感できる装置」を身に着けることにより、舞台上でボールを蹴る、受け止める、などを4DX映画のように体感できるシステムだ。実際に身に着けて舞台を観たとき「これがタイガーショット…」と足に来る衝撃を感じた。

また、特に身体能力の高いキャストを採用し、アクロバティックな動きで、不可能と思われた原作のプレイを舞台で再現。DVDでは決して感じることのできない体感と、人間離れした動きが融合した舞台だった。

これからどんな風に変わっていくのか?2.5次元舞台の効果の世界

2.5次元舞台に限らず、映画なども音響を重視したり、積極的に4DX上映がされるなど、さまざまな工夫がされている。

生身の人間が目の前で演じている舞台も、新しい演出方法などが取り入れられていくことだろう。今後、どのように2.5次元の世界が変わっていくのか、期待は大きい。

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WRITER

広瀬有希
								広瀬有希
							

金融・印刷業界を経てフリーライターへ。エンタメメディアにて現場取材・執筆の他、日本語・日本文化教育ソフト監修、ゲームシナリオ、ノベライズなどで活動中。感動が伝わる文章を目指して精進の日々を送っています。

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