コラム

球児たちの想いがぶつかり合う。リアルで熱い部活生活を描いた「ダイヤのA The LIVE」がわたしに観せてくれたもの

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毎月のように新作が発表され、数多くの公演がおこなわれている2.5次元舞台。

その中で「あなたにとってのマイベスト2.5は?」と聞かれれば、迷いながらも私は「ダイヤのA The LIVE(通称:ダイステ)」と答える。

ここでは、個人的な観点からダイステの魅力について語っていく。

ダイヤのA The LIVEについて

公演 2015年8月
出演 小澤廉 廣瀬智紀 和田琢磨
脚本/演出 浅沼晋太郎
制作 Office ENDLESS
原作 寺嶋裕二(週刊少年マガジン/講談社)

中学最後の試合、自らのクセ球によるサヨナラ負けを喫した投手・沢村栄純は、高校野球の名門・青道高校で天才捕手の御幸一也と出会う。沢村は青道高校で「エース」となることができるのだろうか?

ダイステの魅力1. キャスト面から見たダイステ 絶妙にリアルとかぶる関係性

2.5次元舞台のキャストは、どの舞台もほとんどが「そのキャラらしく舞台で生きられるか」を重要視され選ばれている。

結果、舞台経験は無くとも選ばれることも大いにあるし、他の舞台で経験を積んだ若手2.5次元俳優がキャスティングされることも多い。

原作の「ダイヤのA」は、登場人物が全てイケメンキャラというわけではない。

そのため舞台も、多くの2.5次元舞台とはひと味違ったキャスティングがされた。舞台経験の数もさまざまで、多くの経験を積んだベテランもいれば、ほぼデビューしたての若手もいた。

上級生や監督など、指導する立場のキャラには舞台経験が豊富なキャスト、一年生には比較的経験の浅いキャストが多かった。そして主役で座長は、同年5月に『薄桜鬼』で初舞台を踏んだばかりの小澤廉だった。

※降谷暁役の廣瀬智紀は舞台経験豊富だったが、それもまた降谷という役らしかった。

舞台にまだ慣れない小澤を、実績のある上級生たちが指導し、カバーする。

役柄でも指導者として沢村栄純を導く滝川・クリス・優役の汐崎アイルは、まさに「クリス先輩」として小澤の面倒を見ていた。

小澤が何か失敗をすれば汐崎はクリスとなって周りに謝る、稽古が足りないと思えば公園に呼び出してセリフの稽古をする。

小澤は後日イベントで「無人島に3つ持っていかれるなら?」と聞かれ「友達とゲームとアイルくん」と答えるほどに汐崎を師匠として慕っていた。

そして、キャストという関係性を超えていたと感じられるのは、この二人だけではなかった。

主将がいて、主将を支える副主将がいて、皆を後ろから見守る監督がいた。カンパニーの構成と役柄がダブり、演じる役者・演者と言うより「野球部の面々」と呼んだ方が似つかわしいのではと考えていた。

ダイステの魅力2. 「これは舞台なのか?」と感じるほどの野球への真剣さ

ダイステを見るうえで欠かせないのが「野球への真剣さ」だ。

キャストたちは、表現としての野球ではなく、舞台上で真剣な野球をきちんと見せてくれていた。そしてそれは、野球に真剣である原作をそのまま体現することになっていた。

野球の経験があるキャストたちが、本格的なスイングやピッチングフォームを指導する。

稽古の前後には素振りをし、筋トレで体作りをする。結果、あくまでも演技であり舞台であるにも関わらず、どの役も、原作の役そのもののバッティングフォーム、ピッチングフォームを再現していた。

私自身もともと野球好きであり、原作ファンでもある。その目から見ても、皆自然で綺麗なフォームだった。

ストーリーも、野球を中心として進む。ひたすら試合をしているだけの時もあった。「これは舞台なのか?」と思う人もいたことだろう。

しかし、それでこそ「ダイヤのA」の舞台化だった。高校生活を野球にささげたキャラたちそのものだった。

「甲子園に向かって真っすぐな普通の高校生たちが野球に打ち込んでいる」。

ひとことで言ってしまえばそうなのだが、しかしそれが実にリアルで熱く、生々しい。

派手なセットもダンスも音楽も無い中で、球児たちの想いがぶつかり合う。

2.5次元舞台の中でも、ダイステは、カンパニーの一体感が異質だったと言ってもいい。他の舞台・カンパニーももちろん、一体となった絆がもちろんある。

しかしダイステは、役柄と関係性がそのままリアルの関係性となり、舞台が終わって数年が経過してもいまだにキャストたちが集まって草野球を続けている。

まるで、青春時代をともに過ごし、野球に打ち込んだ「部活」そのものであったかのようだ。

望んでもいいのであればⅥを

ダイヤのA The LIVEは、2017年9月のⅤ以来公演が行われていない。

キャストを集めるのが難しかったり、会場を押さえるのが困難だったり、演出都合などさまざまな事情があるのだろう。

しかし、原作ファンとして、そしてダイステのファンとしては、Ⅴで幕を下ろすのはあまりにも残念すぎる。

ほぼ初舞台だった初演で、あれだけ周りに引っ張られながら必死に座長を務めていた小澤は、今や多くの2.5次元舞台で経験を詰み、大きく成長した。

もしⅥが上演されるのであれば、沢村がクリスに恩返しをできるシーンまで進められることだろう。これもまた、リアルと舞台の内容がシンクロする。

望めるならば、望んでもいいのであれば、全員そろった状態でダイヤのA The LIVE Ⅵを。秋の紅白戦。部活を引退していく三年生から下級生への引き継ぎ試合が見られるのであれば、ファンは何年でも楽しみに待ち続ける。

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WRITER

広瀬有希
								広瀬有希
							

金融・印刷業界を経てフリーライターへ。エンタメメディアにて現場取材・執筆の他、日本語・日本文化教育ソフト監修、ゲームシナリオ、ノベライズなどで活動中。感動が伝わる文章を目指して精進の日々を送っています。

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