2022年にシリーズ10周年を迎えたミュージカル『薄桜鬼』。
殺陣×ダンス×歌、そしてそれぞれの胸に抱いた信念のために戦い抜く姿で多くの観客の心を震わせてきた「薄ミュ」の最新作、ミュージカル『薄桜鬼 真改』山南敬助 篇が2023年4月に上演される。
2.5ジゲン!!では、山南敬助を演じる輝馬、そして作中で山南と深く関わることになる藤堂平助役の樋口裕太へインタビューを実施。
シリーズ初の「山南篇」とあって、多くのファンが初日を心待ちにしているだろう。そんなファンに負けず劣らず本作を楽しみにしている2人に、「山南篇」へ懸ける思いや、役作りのこだわりなどを聞いた。
――輝馬さんはシリーズ出演8年目ですが、ついに「山南篇」となりますね。「山南篇」を控えてのいまの心境をお聞かせください。
輝馬(山南敬助役):率直に嬉しいですね。プレッシャーは…ないかな? それよりも楽しみですね。自分がどんなふうにやるのか。やるのは自分ではあるのですが、まだわかっていない段階なので、いざ作品に向き合ったときに自分がどう消化して表現していくんだろうっていう部分で、今から楽しみにしています。
――樋口さんは「山南篇」上演決定を聞いていかがでしたか。
樋口裕太(藤堂平助役):いや~感動しました。
輝馬:泣いた?
樋口:いや、泣きはしなかったけど(笑)。泣くというよりも「(感慨深げに)いよいよ、くるんだな」と。“立つべき人が、ついに立つ”という感じがしましたね。
輝馬:おお~。でもあんまり僕が真ん中に立っているイメージなくない?
樋口:でもね、だからこそ輝馬くんが「薄ミュ」の真ん中に立つのを見てみたかったというのはありますね。
――先日の「HAKU-MYU LIVE 3」千秋楽で公演が発表された際も、ものすごい歓声でしたね。
樋口:全員で舞台袖で見ていました。期待していただいているなっていうのはすごく感じましたね。それにしても本当においしいタイミングでしたよね。「HAKU-MYU LIVE 3」千秋楽での発表って!
輝馬:もう初日に言っちゃいたかったもんね。(LIVE中のお楽しみパートで)綱引きしながら「次の座長は俺だ!」って。
一同:(笑)
――冒頭の山南さんの挨拶で変若水のカウントが増えていったのは「山南篇」への気合いの表れということでは…。
輝馬:(食い気味に)ありません! 変若水の本数では変わりませんし、本来は1本までです(笑)。あれは本編では絶対許されないので、ライブだから楽しくて“中の人”が少し出ちゃいましたね(笑)。
――それぞれ山南、藤堂とは長い付き合いになりますが、演じる際に大切にしていることはありますか。
輝馬:なんだろうな。あんまりこれっていうものは考えてないかもな。
樋口:俺は嘘をつかないことかな。素直な感情でお芝居をすることですね。お客さんも(「薄ミュ」を含めて)舞台をたくさん観ている方が多いので、目が肥えていると思うんです。細かいところまで観ている方も多いと思うので、嘘をついたお芝居だとそれが客席にも伝わってしまう。だから、嘘なく作っていくことを大切にしています。
あとは、平助ってみんなから「藤堂」じゃなくて「平助」って呼ばれるじゃないですか。それってやっぱり親近感があるからだと思うので、すぐ近くにいる“親近感を抱きやすい存在”っていうのは意識して役作りしています。
輝馬:絡むのが1番楽しいしね、平助は。俺だって絡むなら平助かな。
樋口:山南が?
輝馬:いや、輝馬が。輝馬が絡むなら、(しばし悩んで)…やっぱり平助じゃなくて斎藤一がいいかもな。
樋口:それはしゃべんないからでしょ?
輝馬:そう。静かにしっぽりがいいな(笑)。で、役作りの話でしたっけ?
――はい!
輝馬:裕太が言っていた「嘘をつかない」もそうですが、あとは「余計なことをしない」ですね。余計っていうと表現がよくないかもしれませんが、シンプルにということですね。もちろんいろいろ増やしていくことも大切だと思うのですが、持ったからこそ全部捨てる作業というのもやっていきたい。それを稽古場で作っていって、本当に残ったシンプルな感情を板の上で見せたいなと思います。
どの作品もその考え方は変わらないのですが、『薄桜鬼』はそれが顕著に求められる作品だなと。やはり人の命がかかっていますし、命を奪ったり奪われたりというやり取りも多いので。命のかかった場面で「なんで俺はこいつを殺すんだ」みたいな雑念っていらないじゃないですか(笑)。だからそこは今回も変わらず、シンプルに作っていきたいですね。
――原作では山南と藤堂の関係性も印象的なルートですが、「山南篇」で楽しみなことを教えてください。
樋口:今までにないシーンが多いと思うので、そこでの山南との会話がどういう形になるのかっていうのはすごく楽しみですね。まだ台本をいただいていないので、どこがどうやって描かれるのかはわからないのですが、新しいものが観られるというのは確実なので、そこはぜひ楽しみに期待して待っていてもらいたいです。
輝馬:初めての「山南篇」なので、お客さんもきっとまだ想像ができないと思うんです。僕もまだできていないですし。きっとこの作品は、山南と千鶴という関係だけでなくて、そこに平助が深く関わってくる形になると思うので、その関係性がストーリーのなかでどう表現されていくのかっていうのも、楽しみにしていただけたらと思います。
――ちなみに2人のシーンを作る場合、どちらかが意見を出して引っ張っていって、というようなことはあるのでしょうか。
輝馬・樋口:ないですね。
樋口:前回の「真改 斎藤篇」で山南と戦うシーンがあったのですが、そのときの殺陣もけっこう日によって違う感じでしたね。その駆け引きは事前に話し合っていたわけでもないですし。
輝馬:どこかの回で、裕太が階段でつまづいたんですよ。そのときに楽しくなっちゃって。本気で斬りにいきましたね。
樋口:あったね! あれはもうやばいと思って、必死に受けました。
輝馬:けがをしちゃうような本当に危険なことだったら、もちろんそんなことはしないですよ。個人的には、小道具を忘れて板の上に出ちゃうような、それくらい楽しめる余地のあるアクシデントだったので、やっちゃおうかなと(笑)。
樋口:体勢を崩した瞬間、間合いをグッと詰めてきたんですよ。あのときは、「殺し合いをしているんだな」って、改めて感じましたね。
輝馬:それができるのも、ベースの信頼関係があってこそなので。それこそ裕太じゃなかったら間合いを取って、相手が立て直すのを待っていたと思いますよ。
樋口:お、いいこと言うね。いまの「裕太じゃなかったら」っていうの書いておいてください(笑)。
――信頼関係が垣間見えるエピソードありがとうございます! 最後にファンへのメッセージをお願いします。
樋口:初めての「山南篇」の上演となりますが、台本をいただいて感じたものを素直に板の上で表現していきたいと思います。きっと新しい要素が増えると思うので、それに応えられるように努力しますし、やっぱりミュージカル『薄桜鬼』を観にきてよかったと思ってもらえるような作品を作っていけたらと思いますので、あとは輝馬くんに締めの言葉を託します。
輝馬:自分のやるべきことをやるというのは変わりませんので、今回も真摯に山南敬助を演じさせていただきます。なおかつ「山南篇」ということで、これまで山南は千鶴どころか人と濃く関わること自体がほとんどなかったので、人と関わるシーンが僕のなかで山南敬助として新たに加わることになります。ぜひそういった部分も観ていただきたいですね。
また新しくカンパニーに加わるキャストもいますので、彼らを含めてどう新しく変わるのか、どう変わらないものがあるのかを、ぜひ劇場で感じてもらえたらと思います。
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幕末という激動の時代に誠を掲げ愛とともに駆け抜けた男たちの物語は、2023年に11年目へ突入する。次の10年の第一歩となるこのミュージカル『薄桜鬼 真改』山南敬助 篇は、どんな景色を見せてくれるのだろうか。
今回のインタビューでは、言葉の端々から2人が「薄ミュ」に関わるすべての人に圧倒的な信頼を寄せていることが感じられた。その大きな作品愛のなかで生み出される新たな1ページ「山南篇」は、2023年4月、新たに「薄ミュ」の歴史に書き加えられることとなる。その瞬間をお見逃しなく。
取材・文:双海しお/撮影:遥南碧/ヘアメイク:城本麻紀/スタイリスト:MASAYA
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