6月2日(金)、舞台『吸血鬼すぐ死ぬ』が東京・天王洲 銀河劇場にて開幕した。
TVアニメ2期が好評のうちに終了した少年漫画『吸血鬼すぐ死ぬ』を原作にした本作は、拙者ムニエルを主宰する村上大樹が脚本・演出を手掛け、山本一慶が最弱吸血鬼・ドラルク、鈴木裕樹が吸血鬼退治人(ハンター)・ロナルドをW主演で演じる。
ドラルクとロナルドの出会いから、ドラルクの事務所を訪れる依頼人、新横浜の街に現れるバラエティーに富んだ吸血鬼たち、そして彼らを取り締まる神奈川県警吸血鬼対策課やロナルドの仲間の吸血鬼ハンターたちなど、次々に強烈なキャラクターたちが登場し、事件を巻き起こしていく。
2.5ジゲン!!では、初日直前に開催されたゲネプロを取材した。
ライブ配信概要
■対象公演・チケットリンク■ライブ配信販売期間
2023年6月4日(日)12:00~6月18日(日)20:00まで■ライブ配信販売価格
各3,700円(税込)■ライブ配信時間
2023年6月11日(日)17:00~公演終了まで■ディレイ配信時間
準備が整い次第~2023年6月18日(日)23:59まで■アーカイブ配信販売期間
2023年6月27日(火)12:00~7月10日(月)23:59■アーカイブ配信販売価格
各3,700円(税込)■アーカイブ配信視聴期間
ご購入から7日間※ディレイ配信とは、公演の映像を後日期間限定で視聴出来るサービスです。
※詳しい視聴デバイスに関してはサービスサイトをご覧ください。
オープニングから、ドラルクを演じる山本一慶とロナルド役の鈴木裕樹は、ギア全開のハイテンションで爆走していく。原作からそのまま飛び出してきたようなビジュアルは、期待していた以上のものがあり、せりふ回しや声のトーンなど、原作ファンを納得させる仕上がりだ。
テンポの良い掛け合いで観客をぐいぐい引き付ける。本作のようなハイテンションなギャグ作品は、少し間がずれただけで、思い切りしらけてしまう恐れもあるが、そういう場面が一切なく山本と鈴木の抜群のコンビネーションと2人の演技力の高さを改めて実感した。
稽古期間にインタビューをした際、「インパクトのあるビジュアルに惹かれ、ぜひドラルク役をやりたいと思った」と語っていた山本。ビジュアルはもちろん完璧だが、立ち居振る舞いがドラルクそのもの。高等吸血鬼ならではの紳士的なふるまいや、ちょっと離れた立場からものごとを見つめるクールさを上手く表現していた。
そしてファンにとって最も気になるのは、ほんの少しの衝撃ですぐに死んで砂になってしまうドラルクをどう表現するのか…ということだろう。実際、冒頭からドラルクはたくさん死ぬことになるのだが、「なるほど、こうきたか!」という演出方法を起用しているので楽しみにしてほしい。
ロナルド役の鈴木は「ロナルド役だからこそやりたいと思った」と語っていただけあって、役に対する愛情がたっぷり感じられる役作りをしていた。
ビジュアルはもちろんのこと、電話を取るときの第一声やドラルクに対して怒鳴り散らす声のトーン、そしてフクマ(演:寿里)に、ロナルドの著書『ロナルドウォー戦記』の原稿締め切りを追い立てられた時のあわてっぷりなど、さまざまな表情を見せてくれる。
ロナルドは実に感情表現が豊かなキャラクターだと感じたが、それを演じる鈴木には相応の演技力とパワーが必要なのだろうと強く実感した。
そんなロナルドを敵対視している神奈川県警吸血鬼対策課の半田 桃を演じる吉高志音の“母親好き”ぶりもパワーがあった。インタビューでは「セロリがキーアイテム。なんとかロナルドを嫌がらせたい」と語っていたが、その目的は十分に達していたと思われる。
母親のことが大好きな半田は、『ロナルドウォー戦記』に夢中な母親を嘆いている。その嫉妬と怒りは100%ロナルドに向けられ、ロナルドが大嫌いなセロリを両手に持って追い詰める姿はなかなか迫力がある。そしてセロリさばき(という言葉があるかどうかは分からないが)も十分検証したのか、俊敏でかっこよく、吉高が演じる半田の見せ場はインパクトのあるシーンとして強い印象を残した。
本作で注目すべき点は、歌とダンスをふんだんに取り入れているところだ。筆者はこの作品の舞台化が決定した時「ドラルクとロナルドには、ぜひ歌って踊ってほしい」とひそかに思っていた。
TVアニメのシーズン1、2のオープニングテーマ映像をご覧になっている人ならわかると思うが、音楽やダンスと親和性の高い作品だと感じていたからだ。
ミュージカルと銘打ってはいないものの、歌とダンスのある作品だったことで、筆者と同じように「よし!」とガッツポーズをとる人も少なくないだろう。ドラルク、ロナルドをはじめとしたさまざまなキャラクターたちがそろってテーマソングを歌う場面は、華やかで観ていて楽しい。
ちなみにテーマソングは、頭の中でリフレインするほど耳に残る心地よい曲だ。また、原作では音痴といわれているドラルクが、「舞台版の私は~」と前置きしながら美しい声で歌を披露するのも面白い。
徹底的に“ハイテンションギャグ”の世界観を追求し、クセの強い吸血鬼たちが登場して終始笑いの絶えない本作。電撃チョモランマ隊のリードボーカルを務めるOH-SEは、最強のクセ強吸血鬼・Y談おじさんを熱演し、本作の振付もすべて担当している。
ミュージカル界で活躍するベテラン、ドラウス役の今拓哉も全力で本作のノリに乗っかって、その実力を惜しげもなく発揮している。
しかし、笑って終わり!ではなく、その背後には、意外なほど心に刺さるメッセージが隠されていることを明記しておきたい。
キャストコメント
ドラルク役:山本一慶
・本番を目前に控えた今の心境をお聞かせください。
ただただ楽しみです。キャスト全員で作り上げる舞台なので、みんなで仲良く千秋楽を迎えられるよう頑張ります。
・お客さまへのメッセージ
ドラルクを演じられること、本当に嬉しいです。みなさんに舞台『吸血鬼すぐ死ぬ』も愛していただけるよう、全力で楽しい時間にしたいと思います。おたのしみに~!
ロナルド役:鈴木裕樹
・本番を目前に控えた今の心境をお聞かせください。
初舞台のように緊張しておりますが、それ以上に楽しみで仕方ありません。きっと、今までにない作品になると思います。ぜひ、ご期待ください!
・お客さまへのメッセージ
どんな作品でも、お客様に楽しんでいただけることを考えています。ですが、今作は「とびっきり」楽しんでいただけたら嬉しいです! 劇場でお待ちしております。
ヒナイチ役:其原有沙
・本番を目前に控えた今の心境をお聞かせください。
約1カ月間「吸血鬼すぐ死ぬ」の世界観を舞台でどう表現するか、意見を出し合い試行錯誤を重ねてきました。この座組みは本当に笑いが絶えず、毎日のお稽古が楽しかったのでオフの日は少し寂しかったです。本番では自分自身が1番楽しむ勢いで精一杯頑張ります。
・お客さまへのメッセージ
この舞台はコメディ作品なので「面白い!」と思ったらたくさん笑っていただけたら嬉しいです。皆さまの笑いが私たちのパワーになります!私たちもたくさん準備してきたので…お客さまも笑う準備は忘れずにしてくださいね~!
半田 桃 役:吉高志音
・本番を目前に控えた今の心境をお聞かせください。
本読みの段階での不安が嘘みたいに消えて、今では早く皆さんに観ていただきたい気持ちでいっぱいです。そして皆さんの声や反応がとても楽しみです。いろんな意味でドキドキです。
・お客さまへのメッセージ
今日までカンパニー一同、様々な事をそれぞれの方向から挑戦して作品を作ってきました。「吸血鬼すぐ死ぬ」の世界を全身で表現して、しぬステでしか味わえないコメディを楽しんでいただけると嬉しいです。笑いが溢れる空間になりますように。
フクマ 役:寿里
・本番を目前に控えた今の心境をお聞かせください。
ドタバタと稽古を終えてあっという間に初日が目の前です。冷静に伝えていく部分と、楽しむところをしっかりと切り替えて演じていければと思っています。
・お客さまへのメッセージ
いよいよ開幕のしぬステ。皆さまもどんな作品になっているのかドキドキでしょう。しかし、我々もドキドキでハラハラです! 初日はそのハラハラドキドキを楽しんで、一緒にしぬステを育ててくださいね!
Y談おじさん 役:OH-SE
・本番を目前に控えた今の心境をお聞かせください。
まずは楽しいひと時を皆さんにお届け出来る様に、1つひとつ丁寧に全力で挑みたいと思います。そしてどこまでY談を引き出す事ができるのか? 僕自身、大きな課題がありますので、そこも全力で取組んでいきたいと思います。
・お客さまへのメッセージ
今回Y談おじさん役、そして振付を担当させていただきました。ダンスって、同じ踊りをみんなでしてもキャラによって全然違うのが面白くて。だからこそ、同じなようで同じじゃない。そこを大事に振り付けさせてもらいました。ぜひエンタメなキャラクターを楽しんでいただけたら嬉しいです。
ドラウス 役:今 拓哉
・本番を目前に控えた今の心境をお聞かせください。
ナンセンスでご機嫌なギャグワールドをどう舞台化できるのか! このミッションに仲間と稽古場で励んで来ました。アナログな感性とともに、おバカなことをあくまで真剣にやり切ろうと思います。さぁ、劇場にどんな笑いが生まれるのか楽しみでなりません。いよいよ開幕。最後のピース「客席」と一緒に笑いの結界を創ります!
・お客さまへのメッセージ
感動的なヒューマンドラマではありません。原作はハイテンションのギャグ漫画です。舞台化してもそこは変わりません!! そう、楽しんだもの勝ちな作品なのです。舞台と客席が一緒になって劇場中をギャグワールドにしちゃいましょう。そして梅雨空も笑いで吹き飛ばしちゃえ! 合言葉は「ヌーッ!」
舞台『吸血鬼すぐ死ぬ』は、6月11日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて上演。上演時間は約2時間だ。
取材・文:咲田真菜
(C)盆ノ木至(秋田書店)/舞台『吸血鬼すぐ死ぬ』製作委員会2023
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