3月4日(土)東京・紀伊國屋サザンシアターにて『七人のおたく cult seven THE STAGE』が開幕した。
本作は、一色伸幸の「七人のおたく cult seven」を原作に、モラル・池亀三太が脚本、元吉庸泰が演出を手掛ける。2.5ジゲン!!では、初日直前に行われた開幕会見とゲネプロ(公開通し稽古)をレポートする。
ミリタリーおたくの星亨(演:栗山航)は、隣に住んでいるティナ(演:石田千穂(STU48))とその子ども・喜一を助けるため、自身と同じ「おたく」を集めて作戦を練ろうとしていた。声を掛けたのは、格闘技おたく・近藤みのる(演:林翔太)、パソコンおたく・田川孝(演:校條拳太朗)、無線おたく・水上令子(演:諸橋沙夏)、アイドル&車改造おたく・国城春夫(演:矢部昌暉)、そして田川が連れてきた美女・湯川りさ(演:藤岡沙也香)。
なぜ呼ばれたのか不思議に思いながらも、星に集められた全員が井加江島へ上陸し、島の実力者・高松一(演:松尾貴史)からあるものを奪還する「作戦」を立てる。果たして「おたく」たちは、それぞれの得意ジャンルを駆使し、作戦を成功に導けるのか…?
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おたくの聖地、秋葉原駅のホームのアナウンスが鳴り響く中、出演者たちがステージ上に集まってくる。
扇子を持ってお立ち台で踊る人々がいるなど、作品の舞台となるのがバブル時代だとわかる。その頃は、アニメおたく、アイドルおたくなどは「ちょっと変わった人」という目で見られ、学校では肩身の狭い思いをしなければならなかった。
格闘技おたくの近藤みのるは「俺はおたくじゃない!」と言いながら、実践の場を与えられないまま体を鍛え続けてきた。近藤を演じる林は会見で「体を鍛えたことがないから、急いでジム通いをした」と語っていたが、キレのあるカンフーのポーズで闘う姿に正直驚いた。アクションシーンが想像以上に多く、これはぜひ実際のステージで林の迫力あるアクションを観てほしい。
ミリタリーおたくの星亨は、ちょっとズレているけれども正義感あふれる温かい人物。隣に住んでいる外国人・ティナのために壮大な計画を立てて仲間を集めると聞くだけで、人の好(よ)さがわかるだろう。演じる栗山が、軍服の似合うこと! スラっとした体型が見事に映え、銃を持つ姿も様になっている。
もともとはおたく仲間から嫌われていた星。仲間がいない寂しさを味わってきたが、ティナを助ける作戦のために集まった仲間たちと、次第に絆を深めていく様子に心が温まる。
そしてパソコンおたく・田川孝を演じる校條は、長髪で一心不乱にパソコンに向かっている姿がおたくそのもの。会社の社長という設定だが、セクシーな部下・レジャーおたくの湯川りさを好きなのにも関わらず、上手く立ち回れない不器用な雰囲気を上手く醸し出していた。
今回登場するおたくの中で、一番ハマっていたといえるのが、アイドルおたく&車改造おたくの国城春夫を演じた矢部だろう。大きいリュックを背負って秋葉原をウロウロし、おどおどしながら話す姿につい笑ってしまう。アイドルの同人誌を作ることに命をかけているため、資金となるお金には目がない。お金につられて騙されてしまう…という困った面もあるおたくだ。
おたくたちが目指しているのは、井加江島で力を持っている高松から、ティナの大切なものを取り返すことだった。島の住民で元フィギュア職人の丹波達夫(演:なだぎ武)が内緒で協力するところから、本格的に彼らの計画が動き出す。
この丹波を演じるなだぎが、最初に協力を申し出る格闘技おたくの近藤を演じる林と掛け合うシーンが特に面白い。芸人のなだぎが「アドリブ?」と思うようなせりふを言ったり、それに林が頑くらいついてついていったり、なかなか見応えがある。恐らく日によってやり取りに違いが出てくるような予感がするので、リピート観劇の際には楽しみにチェックしてみてはいかがだろうか。
一方、女性陣も負けていない。田川の部下のレジャーおたく・湯川りさを演じる藤岡は、セクシーな声やしぐさがとても魅力的だ。無線おたく・水上令子を演じる諸橋は、湯川と真逆な“ザ・おたく”な女性を面白おかしく演じている。作戦の1つとして敵の高松を誘惑するシーンにぜひ注目してほしい。
また、アイドルおたくの国城が応援する若手アイドル・藤堂のぞみを演じる後藤紗亜弥は、ひらひらのステージ衣装が可愛らしく、アイドルらしさがよく出ている。そしてティナを演じる石田も片言の日本語で外国人らしさを表現しつつ、芯の強い女性をしっかり演じている。
ラスボスとなる高松を演じる松尾は、目つきが悪く、女性をものとして扱う最低男をリアルに演じていた。「こういう人、どこの世界にもいるよね~」と納得してしまうキャラクター作りはさすがだ。
本作は勧善懲悪で、最後はスッキリ悪者が成敗される。しかしそこにたどり着くまで、何かと特異な目で見られがちだった“おたく”たちの苦悩が吐露されるなど、考えさせられるシーンもあった。30年前におたくたちが味わっていたであろう事情をリアルに知っている筆者にとって、現在、おたくに対する考え方がこれだけ変化したことに、改めて感慨深い思いがした。
舞台『七人のおたく cult seven THE STAGE』は、3月12日(日)まで東京・紀伊國屋サザンシアターにて上演、その後18日(土)・19日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼにて上演される。
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ゲネプロ前の会見には、林翔太、栗山航、校條拳太朗、矢部昌暉、藤岡沙也香、諸橋沙夏、石田千穂、後藤紗亜弥、なだぎ武、松尾貴史の10人が登壇。
「(ゲネプロ前で)時間がないから」と自らタイムキーパーを買って出た林が「1人20秒でいきましょう!」と仕切り、開幕に向けての力強い意気込みが語られた。
最初に林が「格闘技おたくの近藤みのる役の林翔太です。近藤みのるは18年間体を鍛え続けている男なんですが、私、なんと33年間体を鍛えたことがありませんでした。なので(出演が決まってから)急いでジム通いをしまして、本日ようやくお披露目できるということで、非常に楽しみでございます。皆さま本日はよろしくお願いします」と挨拶すると、代わりに時間を計っていた校條が「おー! 20秒23! 完璧!」と、時間ピッタリに挨拶を終えた林に驚く一幕があった。
すると「さすがジャニーズ! こういう時にもってるよねー!」と出演者から声が上がるなど、和気あいあいとした雰囲気で会見が進行していく。以下、登壇キャストのコメントを紹介する。女性キャストが何%の力を出すのかにも注目してご覧いただきたい。
栗山航:ミリタリーおたくの星亨役、栗山航です。よろしくお願いいたします。今回、唯一僕だけ監修がついています。おたくに監修がつくなんてよくわかんないんですけど、この衣装は本物を使っております。細かく最後まで見ていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
校條拳太朗:田川孝役の校條拳太朗と申します。10文字で名前が長いです(笑)。よろしくお願い致します。僕はパソコンおたくということで、家にパソコンがありまして、少しでもパソコン慣れするように家でいっぱいパソコンゲームをやってきました。精一杯頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。
矢部昌暉:アイドルおたく&車改造おたく国城春夫役の矢部昌暉と申します。この作品は皆さんがいろんな役をやったり、スタッフの皆さんも後ろでバタバタしたり、本当にてんやわんやな舞台となっております。ぜひ最初から最後まで楽しんでいただけたらと思います。よろしくお願いします。
藤岡沙也香:レジャーおたく湯川りさ役の藤岡沙也香です。時間がないということで、いろんなところを見ていただきたいということと、私自身も一生懸命7000%の力で頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。
諸橋沙夏:無線おたくの水上令子役の諸橋沙夏です。私は7憶%の力を振り絞って頑張ります。
石田千穂:喜一の母、ティナ役の石田千穂です。私は日本人ではない役、そしてお母さん役ということで新しい挑戦がたくさんあるんですけれど、7兆%の力を振り絞って頑張ります。よろしくお願いします。
後藤紗亜弥:劇中アイドル・藤堂のぞみ役を演じます、後藤紗亜弥です。ダンスあり、盆がまわるアクティブな機械があり、私は7京%の力を持って頑張りたいと思います。よろしくお願いします。
なだぎ武:フィギュアおたく・丹波達夫役のなだぎ武です。30年前に上映された映画『七人のおたく』は、私の大好きな映画ですけど、当時おたく文化というのはサブカルチャー中のサブカルチャーだったんですよ。それが今となっては1つの文化になりまして、30年前とはおたくのイメージがまったくく変わりました。
30年前のおたく文化を知っている人は懐かしいなと思いながら楽しんでもらって、今のおたく文化を知っている方は「30年前はこういう形だったんだ」と楽しんでいただけたらいいなと思います。よろしくお願いします! はいピッタリ20秒!(まわりから49秒! と突っ込みが入る)
松尾貴史:高松一役の松尾貴史でございます。若い人たちに混じって、老体に鞭打って頑張っております。介護されるようにやっております。とにかく子どもの頃から『七人のおたく』の舞台に出るのが夢でしたので(一同爆笑)、負けないように7%の力で頑張ります。
そして最後に林が「『七人のおたく cult seven THE STAGE』本日ついに開幕でございます。こんなに面白い作品は、ほかにありません。このステージ上にいる豪華キャストの皆さん、そしてアンサンブルの皆さん、スタッフの皆さん、全員でバチバチのアクションコメディー作品をお届けできたらと思います。そして演出は、売れっ子演出家の元吉(康泰)さんでございます。この時点で面白いこと間違いなし! 元吉さんの力でなんとか完成しました。各メディアの皆さま、ぜひバンバン宣伝をしていただきまして、1人でも多くの方に観ていただけたらと思います。演出は元吉さんです! よろしくお願いいたします!」と元気に作品をアピールし、会見を締めた。
取材・文・撮影:咲田真菜
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