2019年4月20日に上海でスタートした「ミュージカル『刀剣乱舞』 加州清光 単騎出陣 アジアツアー」の最終公演となる日本凱旋公演が5月7日(火)に上演された。
上海、バンコク、マカオとアジア各地への“出陣”を経て、ついにたどりついた幕張メッセ。
真紅に染まる会場を彩っていたのは、佐藤流司演じる加州清光を情熱的に見守る客席の熱気だった。
今回は「ミュージカル『刀剣乱舞』 加州清光 単騎出陣 アジアツアー」日本凱旋公演の様子を、会場に満ちていた熱気に負けない熱さでレポートしたい。
3度目の単騎出陣だからこそ表現できた重厚な世界観
開演前そして『Overture』では水の滴る音が鳴り響いていた。それは加州清光という刀剣男士が纏う“紅”の色とは対称的なイメージを連想させた。
しかし、ステージの中央に現れた加州清光に一気に湧き上がる会場を目の当たりにし、滴る水を一瞬で沸騰させてしまうほど熱い情熱を秘めた刀剣男士が、いまステージの中央にいる――そう実感させられた。
激しく踊るダンサブルな楽曲が冒頭から続き、全身で「これが刀ミュの加州清光だ」と伝えてくるようなパフォーマンスが続いていく。息つく暇を与えてくれないのだ。
パフォーマンスに汗を流すステージ上の出演者たちを見つめながら、その場から一歩も動いていない筆者がなぜか息苦しくなっていた。
それだけ濃厚な世界観を生み出すことができるのは、キャラクターの魅力や佐藤流司自身のカリスマ性に加え、公演を積み重ねてきたからだと筆者は感じた。
加州清光 単騎出陣は2017年、2018年公演に続き今回のアジアツアーが3度目である。ミュージカル本公演とはまた違った魅せ方を求められるであろう単騎出陣。普段とは勝手が違うことは容易に想像できる。
たった1振りで広い会場を隅から隅まで魅了する。そのために発せられる、加州清光役の佐藤流司の熱量は公演を重ねるごとに高まっていったように思う。
今回の幕張メッセのような広い会場でも、端や後方の席まで気配りを欠かさない姿が印象的だった。
魅力的なステージであることは2017年の単騎出陣から変わらない。
しかし、ステージの中央に立つ佐藤流司にこれだけの貫禄を感じることができたのは、加州清光を演じてきた佐藤流司の歴史があるからなのだろう。
会場を回るパフォーマンスで会場の幸福度が一気に上がる
刀ミュのミュージカル本公演では、1部のミュージカルのあとに、2部としてオリジナル衣裳を纏った刀剣男士によるライブがあり、刀剣男士たちが客席通路を歩きながらのパフォーマンスもある。
今回の広い会場ではさすがに無理なのでは……と思っていたのだが、中盤ではMCからの流れでステージから中央通路へ移動。
さらに『Promise You』は中央通路に用意されたトロッコに乗って披露された。ステージまでの距離を感じていた会場後方の客席の幸福度が一気に上がっていくのを肌で感じたのは言うまでもない。
間近で観たいがために足を運んでいるわけではない。が、やはり少しでも近くで観られたら嬉しいというのがファン心理だろう。
客席を縦横無尽に動いてのパフォーマンスも、観客を虜にする完璧な流れだった。
前半では加州清光のソロ楽曲が多かったが、このトロッコでの『Promise You』の歌唱のあとは公演を思い出させる楽曲が一気に駆け抜ける。
これまでの公演を振り返りながら聴いていたら、あっという間にクライマックスが過ぎ、エンディングに到達していた。
時間の概念が完全に失われるほど、加州清光 単騎出陣の世界に没頭していたのだ。
アンコールでは『mistake』のイントロに大きな悲鳴が上がった。観客にとっても、何年も聴きこんでいる曲なだけにそれぞれ思い入れがあるのだろう。
メドレーも含め、アンコールだけで7曲を披露。最後は『解けない魔法』で会場に魔法をかけてくれた。
審神者の大きな愛が一箇所に注がれる特別な場所
日本凱旋公演をもって終幕した「ミュージカル『刀剣乱舞』 加州清光 単騎出陣 アジアツアー」。
1振りしか刀剣男士が登場しない“単騎出陣”では、観客の想いが加州清光1振りに注がれる。会場全体が加州清光を見つめ、その一挙手一投足に感嘆のため息をもらし、次第に一体感が生まれていくのだ。
その空気は、この単騎出陣でしか味わえない特別なものでもある。
今回の公演はBlu-ray&DVDの発売が決定している。会場で観劇出来なかったファンも、映像で余すところなく味わってほしい。
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