『しんみゅ 幕末歌劇 新撰組 ~土方・藤堂の篇~』が、1月14日(土)に三重公演で初日を迎え、2月6日(月)からは東京・草月ホールにて東京公演が幕を開けた。
本公演は「風」「海」という一部ダブルキャスト体制で行われる。2.5ジゲン!!では、東京公演で初お披露目となった「海」キャスト回のゲネプロをレポートする。
熱い新選組の「誠」の生き様を豪華に描く
本作は幕末に活躍した新選組を題材とした作品。その中でも、主に新選組副長の土方歳三(演:徳山秀典)と八番隊組長の藤堂平助(演:江田剛)にスポットを当てて描かれている。
ストーリーは2部構成になっており、1部は、近藤勇(演:菊地まさはる)の道場である「試衛館」に平助が入門するところから始まり、伊東甲子太郎(演:佑太)の加盟と暗躍、山南敬助(演:堀田怜央)の離反まで。2部では、山南の切腹や伊東の離脱、平助と斎藤一(演:兼崎健太郎)の追従・御陵衛士の結成、油小路事件、鳥羽・伏見の戦い、戊辰戦争までが描かれる。
やわらかくほがらかな時間が多い1部と、シリアスで忠義と己の誠に生きる男達の戦いがメインの2部というコントラストが絶妙で、1部の振りがしっかりとつながって2部の重みに効いている。また、1部においては新選組内外の関係性がじっくりと描かれるのも見通しが良く、その後に来る怒涛の展開が熱を帯びて押し寄せる。生演奏の音楽も相まってまさに静と動を感じられる構成だ。
実在する人物たちだからこその、各役の見どころも目立つ。
遊女たちの艶やかな“いでたち”と楽曲がその悲哀を物語る。土方に想いを寄せる遊女・菊姫(演:北澤早紀)の生き様は、時代を反映した女性ならではの物語。
力だけの新選組に知性を与えるため、信念を持って自身の道場を捨て加入することになる伊東甲子太郎。
今後の新選組を案じ自らの死期を悟り、組が分断されることを阻止するため、自らの命を賭して行動に出た山南。その気持ちに報いるため、脱走した隊士としての切腹を強行する。
倒幕を目論み暗躍する桂小五郎(演:緑川雄志)、指示を受ける岡田以蔵(演:本川翔太)。
薩長同盟を結ぶために会談を重ねる坂本龍馬(演:荒川裕介)、西郷隆盛(演:かとうしんご)、桂小五郎。
最後まで自身の誠を貫き通した平助の最期。自分が信じるもの、自分がやらなければならないことがぶつかり合い、譲れない「誠」がそこにはあった。
戊辰戦争についてきた仲間たちと最後の生き様を見せつける土方。その他を圧倒する覇気より、倒幕派の桂小五郎に「ここで死ぬべき男なのか?」と言わしめた。
男気溢れる行動力で新選組を引っ張る土方歳三。
陽光のような優しさで新選組を包み込む藤堂平助。
近藤と土方を慕う薄幸の剣士、沖田総司(演:宮下舞花)。
力強く新選組を支える新選組隊長、近藤勇。
明るく快活で新選組を盛り立てる原田左之助(演:柏木佑介)。
寡黙ながら新選組を慮る平助と同期の斎藤一。
新選組の未来を見据えて行動に移した山南啓介。
最後まで平助の可能性を模索し続けた永倉新八(演:成沢心)。
「しんみゅ」と題される本作は、新選組の「しん」、そして新しい挑戦の「しん」が掛け合わされたダブルミーニングな印象を受けた。
新選組という題材は、これまで何度も様々なメディアで描かれている。それを今作では2つの視点に焦点を置き、かつ真っ向から描く。
さらに、ステージ上に生バンドを設置し、BGMや楽曲を生演奏で魅せる新しさ。笛・三味線・和太鼓・箏に続き、ギター・ベース・ピアノというアコースティックバンドに、ヴァイオリン/ビオラ・チェロという弦楽器も並ぶ。時に力強く、時につやめき、また時におだやかに…。心情を表した音色が舞台に彩りを与え、生演奏ならではのライブ感が心をざわつかせる。
この様々なエンターテインメントが融合した「しんみゅ」に興味を持った方は、ぜひ、会場まで足を運んでご覧いただきたい。
取材・文:木皿儀隼一/撮影:ケイヒカル
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